今回は,令和時代の学費事情についてまとめてみたいと思います。
3歳になって幼稚園に通うようになってから,18歳になって高校を卒業するまで,1人の子供あたりいくらくらいかかることになるのでしょうか。
ここでは,文部科学省が行ってきた調査結果をもとに,授業料と学校外の活動にかかる費用を中心にみていくことにしましょう!
最新の学費調査結果
令和時代の調査結果については,令和3年度分(2021年4月~2022年3月)が最新です。
ですが,その結果についてはまだ発表になっていないため,ここでは,前回の結果(2018年度実施分)についてまとめておきましょう!
公立 | 私立 | |
幼稚園 | 65万 | 158万 |
小学校 | 193万 | 959万 |
中学校 | 146万 | 422万 |
高校 | 137万 | 290万 |
単位は円で,千の位を四捨五入しています。
小学校の学費が突出しているように思えるかもしれませんが,これは6年間の総額であることも影響していて,他の数字は3年間分です。
なお,幼稚園から高校まですべて公立だとすれば541万円ほどで済むのに対し,すべて私立だと1830万円程度かかる計算になりますが,これらはあくまで1人あたりにかかる学費ですので,子どもが2人となれば,その倍の学費がかかることにご注意ください。
また,小学校までは公立で中高から私立に通うなどすれば,約970万円がかかることになります。
厳密に言えば,入学検定料,それに普段の生活費などは含まれていませんので,それ以上かかることになるわけですし,塾に通う頻度が人より多くなりそうな方などは,後で個別に紹介している内訳を参考にしてください。
なお,以下は上の調査とは関係ない参考データですが,この後4年制大学に入学するとなると,国公立で250万円程度,私立大学だと400~600万円程度がかかります。
大学については,それこそ私立の獣医学部でも1000万円は優に超えますし,医学部ともなれば1億円以上かかってもおかしくありません。
大学ともなれば,本人が奨学金を借りることもできますが,親として大学費用までは出す方針の方はそちらの分も計算に入れておきましょう。
次章以降は,実際に行われている調査についてや,幼稚園から高校までの学費を段階別により詳しくみていきたいと思います。
令和時代の子供の学習費調査について
文部科学省の学習費調査は1994年から2年毎に行われてきましたが,令和時代は2021年(令和3年)に第1回目が行われました。
子供が教育を受ける,または学校外での活動を行う際にかかる費用を調査することで,国の施策に役立てることが目的です。
例えば,高校生の奨学給付金の額を決める際に,ここでの結果が参考にされていたりします。
もちろん,誰でも結果をみることができるので,我が子の教育費について考える際の目安にしたり,平均と比較することが可能です。
以下に調査の概要についてまとめておきましょう↓
期間:令和3年4月~令和4年3月まで
対象:公立または私立幼稚園,小中高に通う子を持つ保護者(1140校,29060人)
項目:子供1人の学費(教育費,給食費,学外活動費)がメイン
実施:文部科学省
回答方法は,従来の手書き以外にオンラインでも可能になるなど,年々改善されてきており,最近では情報化やICT活用,語学や国際交流体験活動についての扱いが議題に挙がったりもしています。
学費に含まれるものと含まれないものについては,しっかりと確認しておきたいと思いますが,例えば食費であったりスマホ代などは含まれません。
メインとなる授業料以外に,含められるものは以下の通りです↓
- 教科書や授業で使う図書費,文房具の購入費,体操着や楽器購入,実験実習費,部活や芸術鑑賞,修学旅行や林間学校のためにかかった費用,交通費,制服代,通学用品など
- 家庭内学習費(机やICT機器,教材),通信教育や家庭教師費,塾代,野外活動(ハイキングやボランティア,子供会),芸術文化活動に関する費用(ピアノや芸術鑑賞費),スポーツ関連費(チーム参加や観戦),国際交流体験活動に関する経費(留学や国際交流イベント),教養に関する経費(そろばんや絵本を買う,博物館に行く)など
このうち,1は「学校教育費」,2は「学校外活動費」と呼ばれ,別で集計されますが,「学習費総額」と並んでデータ分析の精度は重視されています。
なお,平成時代の結果についても以下のページから確認することが可能です↓
幼稚園の学費について
まずは幼稚園の学費からですが,2010年~2018年のデータをみると,
公立 | 学校教育費 | 学校外活動費 | 給食費 |
2010年 | 13.0万 | 8.4万 | 1.9万 |
2012年 | 13.2万 | 8.1万 | 1.8万 |
2014年 | 11.9万 | 8.4万 | 1.9万 |
2016年 | 12.1万 | 9.3万 | 2.0万 |
2018年 | 12.1万 | 8.4万 | 1.9万 |
私立 | 学校教育費 | 学校外活動費 | 給食費 |
2010年 | 35.8万 | 15.1万 | 2.8万 |
2012年 | 34.0万 | 12.0万 | 2.7万 |
2014年 | 32.0万 | 14.2万 | 3.7万 |
2016年 | 31.9万 | 13.4万 | 3.0万 |
2018年 | 33.1万 | 16.6万 | 3.1万 |
となっています。
大きな変化はなく,すべてを足し合わせた1年間の学費は公立幼稚園で23万,私立幼稚園で50万といったところです。
どの費用も私立の方が高くなっており,学校教育費は3倍,学校外活動費は1.5倍となっています。
傾向については以下の通りです↓
- 私立の授業料は15万円くらい高め
- 学校外では両者ともスポーツ・レクリエーション活動の割合が高い
学校外で使う費用の差は6万円ほどなので,私立の親は子に月5千円くらい多めに費やしていることになります。
なお,令和1年の10月には,内閣府から幼児教育や保育の無償化がアナウンスされました。
故に令和時代の調査からは学校教育費は大幅に減ることになります(2018年度の授業料は公立で6.6万,私立で21.1万円でした)。
小学校の学費について
次に小学校の学費ですが,2010年~2018年のデータをみると,
公立 | 学校教育費 | 学校外活動費 | 給食費 |
2010年 | 5.5万 | 20.7万 | 4.2万 |
2012年 | 5.5万 | 20.9万 | 4.2万 |
2014年 | 5.9万 | 21.9万 | 4.3万 |
2016年 | 6.0万 | 21.8万 | 4.4万 |
2018年 | 6.3万 | 21.4万 | 4.4万 |
私立 | 学校教育費 | 学校外活動費 | 給食費 |
2010年 | 83.5万 | 58.4万 | 4.6万 |
2012年 | 82.2万 | 56.0万 | 4.0万 |
2014年 | 88.6万 | 60.4万 | 4.6万 |
2016年 | 87.0万 | 61.3万 | 4.5万 |
2018年 | 90.4万 | 64.7万 | 4.8万 |
となっています。
年額の違いについては,公立小学校で30~32万円,私立小学校は142~160万円と少し幅のある結果となりました。
私立小学校自体の数は増加傾向にあるものの,それでも相対的に少ないので,誤差が少なくなるよう検査数を増やすなどして対応するとのことです。
学校教育費は私立のみ授業料が50万円弱あるので,その差が大きく影響しています。
その他の傾向については以下のようになります↓
- 公立では図書・学用品・実習材料費の支出が多い
- 両者とも塾や家庭教師,自宅学習の経費が最も多い
割合的には似ていますが,学校外活動費において,私立の子供は,月に3万円ほど多くお金をかけてもらっている結果です。
公立と私立の学校外活動費の差は小学校時代が最も顕著だったので,小学生のときのお金のかけ方は大きく違うことがわかります。
中学校の学費について
中学校の学費については,2010年~2018年のデータだと,
公立 | 学校教育費 | 学校外活動費 | 給食費 |
2010年 | 13.2万 | 29.3万 | 3.5万 |
2012年 | 13.2万 | 28.3万 | 3.6万 |
2014年 | 12.9万 | 31.4万 | 3.8万 |
2016年 | 13.4万 | 30.1万 | 4.4万 |
2018年 | 13.9万 | 30.6万 | 4.3万 |
私立 | 学校教育費 | 学校外活動費 | 給食費 |
2010年 | 99.0万 | 27.9万 | 0.9万 |
2012年 | 99.8万 | 29.4万 | 0.3万 |
2014年 | 102.2万 | 31.2万 | 0.4万 |
2016年 | 99.7万 | 32.1万 | 0.9万 |
2018年 | 107.1万 | 33.1万 | 0.4万 |
です。
こちらも小学校のときと同様,授業料の40万円強が,私立の学校教育費を高くする一因となっています。
その他,学校への納付金や通学費も高いですね。
興味深いことに,公立中学校の方が私立よりも塾や家庭教師,自宅学習にかける費用が高くなっており(2018年の例だと,公立24.4万,私立22.0万円),私立では,学校の授業を受けるだけで結構な学力が付くことの表れでしょう。
高等学校の学費について
高等学校にかかる学費ですが,これまでと同様,2010年~2018年のデータをみると,
公立 | 学校教育費 | 学校外活動費 |
2010年 | 23.8万 | 15.6万 |
2012年 | 23.1万 | 15.6万 |
2014年 | 24.3万 | 16.7万 |
2016年 | 27.6万 | 17.5万 |
2018年 | 28.0万 | 17.7万 |
私立 | 学校教育費 | 学校外活動費 |
2010年 | 68.5万 | 23.8万 |
2012年 | 72.2万 | 24.5万 |
2014年 | 74.0万 | 25.5万 |
2016年 | 75.5万 | 28.5万 |
2018年 | 71.9万 | 25.1万 |
となります(給食費は完全に無くなります)。
私立高等学校の学校教育費では,授業料や学校納付金が6割強を占めていますが,公立は3割弱です。
なお,令和2年の4月からは,私立高等学校の授業が実質無償化されたので,令和時代の結果は平成のものとは異なるでしょう。
また,学校外活動費は両者ともに,塾や家庭教師や自宅学習の支出が高くなっており,私立で19.4万円,公立で14.8万円となっています。
この差は月額で3~4千円のレベルなので,ほとんど差がないと言っても構わないでしょう。
まとめ
以上,令和時代における子供の学習費調査の内容をもとに,学校教育費と学校外活動費の違いや使い方についてみてきました。
小学校が私立か公立かの点で大きく異なりましたが,その違いの多くは授業料の部分であり,学校外でかかる支出のほとんどが塾や家庭教師や,自宅学習であることは両者とも共通です。
同調査では年収による違いも調べていましたが,以前書いた記事と同様,支出額との間に正の相関がありました↓
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令和時代になって,授業料が無償化されるなどの動きが出てきた他,GIGAスクール構想とも相まって,今後の調査結果が注目されます。
子供の教育は,住宅や老後と並び,大きなライフイベントの一つです。
公立と私立のどちらに通うかで学費は大きく変わってくるわけですが,かといって,中学校や高等学校選びにおいて,私立を選ばざるを得ない状況も出てくるでしょう。
その際は,学資保険や教育ローンの利用も考慮に入れつつ,しっかりと計画するようにしてください。
最後になりましたが,私立には私立の良さがあるので,払った学費分の経験が得られるのは確かですし,公立も公立の良さがあることに疑いはありません。
子供がどちらに進んでも,学費に関して迷いのない生活を送らせてやることが重要だと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。