今や多種多様な背景を持つ企業がオンライン教育のサービスを提供する時代となり,多くの企業が競い合っては工夫を凝らした魅力あるコンテンツを日々開発し続けています。
とはいえそれは20年くらい昔においても,予備校の個人ブースで受け取ったビデオテープをブラウン管式TVで再生して勉強するようなことは行われていましたし,教室に備えた大画面でサテライン授業を受けることも普通にありました。
私自身,講師の声をテープに録音し,それを数倍速で聴き直しながら「なんとも画期的なシステムが開発されたものだ」などと感心していたのですが,今になって思えば授業自体を見返すことはできませんでしたし,授業料も対人授業と変わらなかったわけで,授業後にFAXで質問するのも面倒でした。
しかし,当時PHSだったものは今やスマートフォンへと姿を変え,一般家庭におけるネット回線のスピードは信じられないくらいに早くなり,パソコンやタブレットを含めたオンライン環境は充実してきました。
ICTのおかげでどれだけ生活が便利になったのかは,不便な時代を生きた人ほど,よりまじまじと感じているでしょう。
しかしそれで万事解決かといえば決してそうなってはいないわけです。
そこで今回の記事では「オンライン教育を利用する上で知っておきたいこと」について,いくつか意見を述べてみたいと思います。
オンラインで勉強するのは難しい
今やYouTubeのような動画サイトを観れば,生活の暮らしに役立つヒント(例えばコンタクトの正しい洗い方や水道管が水漏れした時の対処法)から,一昔前だと習わない限り得られなかったような知識(例えばギタリストの超絶テクニックやアイディア料理)までが簡単に視聴できてしまいます。
最近のAIは将棋どころか囲碁すらをも理解し,生成AIがまるで人間のように会話をしたり本物と区別できない写真を作ったりするようにもなりました。
全世界に向けた英語ニュースが映像や字幕付きで自宅から簡単に視聴できるため,リスニング用の教材にも事欠きません。
私の親世代が,空港まで行って外国人を見つけて話しかけたり船便で海外の本を取り寄せたりと結構な努力を要していたことと比べれば雲泥の差でしょう。
しかし,なんでもかんでも調べればできるようになったかと言われれば決してそのようなことはありません。
ネットで調べたところで,上手にピアノを弾けるようになったり英語をすらすら話せるようになったりはしないのです。
これはどうしてでしょうか。
私はこれらが「難しいこと」だからだと考えています。
AIが苦手としていて人間にしかできないことと関係してきますが,後者は誰かに習わないといけず習得が難しい傾向にあり,例外的に簡単なのは運転免許の取得くらいではないでしょうか。
実際,プロのピアニストになることを諦めた友人は私の周りに多いのですが,運転免許の取得に挫折した友人に出会ったことがありません。
当サイトでは「勉強」を主なテーマとして扱っている関係上,ここでは
ということを声を大にして伝えさせてください。
もっと言えば,模試でA判定が出ていても不合格になってしまうのが大学受験だったりするわけで,私が数年前に担当した受験生は歴代の教え子の中で一番良い判定を叩き出してくれたものの,第一志望に補欠合格でした(残念なことに繰り上げ合格とはなりませんでした)。
その前の年に,彼女よりも偏差値が5くらい低い生徒がちょっと欲を出して同じところを受けたら見事合格してしまったこともあり,何とも言えない気持ちになったことをよく覚えています。
とはいえ,オンライン教育を使わずに勉強しろと言っているわけではなく,正しく使うことができれば大きな恩恵が得られるわけです。
次章から,いくつか注意したい点を述べていきます。
オンライン教育は使い人によって差がある
オンラインで勉強する上で難しいのがスマホやパソコンの「使い方」です。
これは単なる操作方法ではなく,調べ方に関する技法を含めたもろもろを意味しますが,例えば日本史を勉強している途中で知らない名前の人物が登場してきたと仮定してください。
これをネットを使って調べる気になるかどうかが最初の関門で,名前の読み方ですらわからないままにしておいて平気な人もいます。
歴史上の人物や地名の読み方までは気になるという方でも,英語の発音について気にならない方は多いでしょう(授業していてwarningを「ウォーニング」と読めない生徒は多いです)。
次に,検索結果に表示されてきた情報を使ってどれほど深く理解するかが第二関門となります。
その人物が何をしたのかだけ調べて終えるのか,その人物の生い立ちまでWikipediaなどを使って詳しく調べあげるのかなどの行動次第で本人の学力の上昇具合は変わるわけです。
Aという単語について調べている最中,今度はBという知らない固有名詞と出会い,それらについて調べることを繰り返していけば結構な時間がかかってしまうでしょう。
もちろん,時間が限られていればどこかで区切りをつける必要もあります。
しかし「知りたいことはすべて理解していく」という信念に発する根気強さが悪い結果に繋がったことはほとんどないわけです。
加えて,どの教材をどんな順番で学んでいくかといった学習方法についても予め考えておかなければなりませんが,その方法をネットで調べてみたところで,一番上に表示された記事の内容が自分に適しているかどうかは試してみないことにはわからないわけです。
その他にも様々な関門が立ちはだかることになるため,オンラインを使って勉強している途中で何度も挫折してしまいそうになると思います。
しかし,このようなことを理解していない人からは,
「そんなのネットで調べばすぐわかるじゃん?」
「不思議に思わなかったんですか?」
などの無慈悲な言葉が飛んでくるわけです。
何を調べたら良いかを瞬時に判断できることやすぐに疑問は浮かんでくること自体が立派な才能だと言え,先の言葉を口にする人たちはかなり深くまで理解できるまで調べることを止めないでしょう。
しかし私がここで伝えたいのは
- 勉強は難しいものだから結果が出るまでに時間がかかる
- 結果をすぐに求めることなく粘り強く続けていくことが大切だ
という2点のみなので,決して悲観することのないようにしてください。
オンライン教育を利用するメリットはやる気が出たときにすぐ始められて短期間で一気に集中して学力を大きく上昇できることなので,もしも嫌気がさしたようなときは,講義中であってもすぐに画面を閉じ,少し休憩してから再開すればよいだけの話です。
特にその恩恵を受けられるのは中学生までの時期のように感じていますが,頑張れば頑張った分だけ結果に反映されてくるのは大変愉快な経験になるでしょう。
高校生になってしまうと何かを犠牲にしない限り自由な時間が作れません。
なので,他にやりたいことがある場合,勉強が疎かになることは当然です。
なお,大学受験においては「勉強が楽しくてしょうがない!」とか「夢のためにどうしてもこの大学に入らなければならない!」といった熱意を早くからずっと持って頑張ってきた人(主に中高一貫校の精鋭たち)や受験勉強の才能がある人(とにかく要領が良い人たち)を相手にすることになります。
高校受験と比べて圧倒的に辛い戦いが繰り広げられることになりますが,それでも自分のペースで頑張って欲しいと思います。
次章ではオンライン教育との上手な付き合い方について考えてみましょう!
オンライン教育の選び方は人と同じ
オンライン教育の選び方は人のそれと全く同じです。
うまく付き合っていくためには相手のことをちゃんと知っておかなければならず,受験勉強では発信元がちゃんとしていて,最後まで責任を持って面倒をみてくれるサービスを選ぶことが重要です。
これは介護施設の選び方に通ずるものがあり,高い入居代だけ前払いして最初こそ満足なサービスが受けられたのも束の間,サービスの質が数年でがた落ちして今では退居を考えているという高齢者のニュースを耳にすることも少なくありません。
もちろん,直接人が関わる塾や予備校でも身分を隠して教えている講師がいるくらいなので,基本的に得体のしれない人には教わらない態度でいてください。
あくまでその瞬間,そのときの状態こそがその人のすべてです。
昔良い大学を出ていても努力を継続していない講師はおすすめできませんし,大学を出ていなくても自分を高め続けている優秀な講師もいます。
とはいえ,そうした「良い」先生が学生だと生徒が全部教わる前に卒業して退塾してしまったり,最初のうちは良くても学年が上がって内容が難しくなってきた途端に「もう無理!」と音を上げてしまうこともあるので悩みの種は尽きません。
勉強方針や教え方も人によって様々だったりするので,先生が変わればまた別の人と同じやり取りを1からやり直さなければならないのも厄介なところです。
そうした視点でみてみれば,最初に紹介した動画サイトやネット記事の多くが受験勉強に不向きな理由が見えてくるでしょう。
網羅性がないことはほとんどですし,複数人が書いていれば一貫性もなく,必要な情報に検索でたどり着くことが難しい場合もあるので,色々と調べているうちに多くの時間を浪費してしまうことにも繋がりかねません。
加えてネットにはアプリやマンガの広告など気が散る要素も多いわけです。
ゆえに,こうした教育用コンテンツには深入りせず,観て楽しむ程度に付き合うようにしてください。
その点,優れたオンライン教育サービスはそこら辺の事情をよく把握していて,講師は実績のある優秀な方が選抜されていますし,完成された状態,つまり全範囲の講座が用意された状態で世の中にローンチされてきています。
万一経歴を偽ったり不適切な振る舞いがあれば,すぐさまSNSやYahoo!のトップニュースに挙がってしまうでしょうし,途中で先生が変わって別の教え方をされる可能性も低いです。
そんなオンライン教育は検索性についても優れていますので,知りたい情報にすぐアクセスできて時間を無駄にすることはなく,講師陣は教え方が上手でわかりやすいですから,簡単に楽しく知識を増やしていくことができます。
加えて,オンラインという性質上,人に直接習う場合よりも料金が安く済むことが多く,浮いたお金は参考書代に回したり,場合によってはより多くの学校に願書を出したり押さえの学校の入学金の足しにできたりもするので,間接的に合格可能性を高めることにも繋がるはずです。
こういった話は具体的にみていくとイメージがしやすいと思うので,以下ではリクルートが提供する「スタディサプリ」を例に取り,オンライン教育の魅力についてもう少し詳しく説明していくことにしましょう↓
オンライン教育では必要な知識が揃うものを使う
1つ目は「学習内容の網羅性」に関する内容ですが,特に中高生の場合,勉強で分からないところがあってもネットでうまく検索することができず,必要な情報にたどり着けないことが多々あります。
あらかた学習内容を把握している我々講師が調べても大変なことがあるわけで,そもそも載っていないこともあるわけですから,当然といえば当然でしょう。
ネットで調べ物をするメリットは必要な情報にすぐにたどり着けることでしたね。
なので,ただでさえ習い事や部活動などで忙しくしている中高生はできるだけ面倒な作業は避けるべきです。
スタディサプリでは学年ごとかつ科目ごとに学習内容が整理されており,使っている教科書に対応した講座もあるため,簡単に欲しい情報にたどり着くことができました↓
小学・中学講座では,次に学ぶべき内容を自動で表示してきてくれるミッション機能も追加されています。
そしてこうした講座を担当するのは,大手リクルートに認められるほどの実力を持つ講師陣なわけで,もちろん教材の質も問題ありません。
自分に兄や姉がいて受験をすでに経験しているわけでなければ,実績ある大手から塾選びをすることになりますが,これはブランド物を購入することに似ています。
大手予備校の塾に混ざってスタディサプリの名前が挙がる昨今ですから,今はマイナーなオンライン教育サービスであっても来年には老舗をしのぐことがあるかもしれません。
なお,こういったオンライン教育が面白いのはコンテンツの利用に制限がないところです。
通信教育を利用する場合ですと,教材が送られてこない限りは先に進むことはできません。
もちろん,あえて小出しにすることで「山のような教材を前にして,変にその子のやる気を削がない」という効果が期待できるのですが,24時間いつでも使えるのがオンライン教育の魅力であることは確かで,やりたいときに好きなだけやれる環境が整うことは重要なことだと思います。
ただひたすらに1つずつ講義を視聴しては次に進んでいけばいいので,進度的にも迷うことなく知識を積み重ねていくことができます。
オンライン教育では楽しく学べるものを選ぶ
ゲームが好きな子ほど実は楽しんで勉強しているという事実についても忘れず述べておくことにしましょう。
オンライン教育は楽しくそしてラクに学べるところも魅力の1つです。
「勉強しているのに楽しいと思うなんて!」
と疑われるかもしれませんが,勉強は知識豊富な実力者に習うことで,1人で学んだときよりもずっと簡単に理解することができます。
無論,独力でもがき苦しんでたどり着いた結論と,人から教えてもらってラクに手に入れた知識とでは,形は同じものであってもその価値が大きく異なることは確かです。
ですが,高校受験や大学受験程度の次元においては,短期間である一定のレベルにともかく達しておくことが重要ですし,身近な目標を最短経路で実現してしまい,残った時間はひたすら哲学の勉強などに捧げて自分の内面を鍛える方が,よっぽど「理想の勉強」と呼べるのではないでしょうか。
私の経験上,中学校で1ヶ月かけて教える内容であっても,塾では4時間(中学内容なら2時間)で教え切ることができますし,文系志望の高校生の場合ですと,学校の数学の授業は文系科目の内職に充て,試験前の数回だけ塾で数学を習うことで赤点を回避する戦略を取ったこともあります。
予想に反して平均点以上を取れてしまい,結果を聞いて思わず驚いた表情を浮かべてしまったのは良い思い出です。
もちろん学校の授業をちゃんと受けることは大事だとは思いますが,中にはろくでもない先生が存在していることは自分にも経験があり,私としては個別指導を通して生徒の願いを叶えてやることも信頼関係を築くためにも必要だと思っています。
スタディサプリに出てくる先生は皆,わかりやすく伝えることを心掛けているように見受けられますし,令和時代らしくビッグデータを用いて視聴者の離脱ポイントを分析し,無駄なシーンを極力排除して動画を改善しているとも聞くので,わかりやすくて楽しい授業を期待してOKです。
「なんだ,そんなことなの?簡単じゃん!」
このような言葉を生徒の笑顔と共に引き出せたら,教える側としては最高の気分でしょう。
スタディサプリはスマホでも視聴できるため,わざわざ私の塾に来てまで動画を観ている子を見かけることもあります。
スマホが中高生に浸透しているのはなんとなく理解できているつもりでしたが,初めて見たときはさすがに敗北意識に囚われました。
しかし同時にスマホに入っているアプリが彼らの生活の中心を占めていることを知れたわけで,スマホ+オンライン教育の影響力は良い意味でも悪い意味でも想像以上でした。
近くに塾がない地域に住んでいる人や決まった時間に塾に通えない人にとっては朗報です。
長い時間をかけて中心街へ足を伸ばす必要もなければ,過密スケジュールに悩まされることもありません。
オンライン教育では費用をかけない
オンライン教育の魅力には「コスパが良い」ところも挙げられます。
忙しい学生であればあるほど,集団授業のように予め日時が決まっている講座は取りづらく,料金が高めに設定された個別指導塾に通うことが多くなるわけです。
しかし,その上,講習期間に多くの科目を塾で受講することになると家計は大いに圧迫されますし,普段習っている先生に勧められたら心理的にも断りづらい側面があります。
講習は短期間の集中講義が行われますが,そのような詰め込みにはたして料金分の価値があるのかと問われれば,講師をしている私であっても「その通りだ」と胸を張って答えることはできません。
余談ですが,私の塾はつい最近まで月謝制で現金で支払ってもらっていたのですが,1人の生徒に夏期講習だけで100万円近くの塾代を頂いたこともあり,自分の仕事の大きさを毎回のように感じさせられていたものです。
その子は大学になんとか合格できて今でも付き合いがありますが,「もし全落ちして浪人していたら…」と考えると本当に恐ろしいですし,そうなればもうとっくに私は引退して顔向けできなかったことでしょう(塾で土下座している同僚もいましたが,さすがにそこまではしないと思います)。
教えている側もそんな調子なわけですから,教わる側が講習中に
「これは単に塾の都合であったり,ただの気休め程度にしかならないのではないだろうか?」
などと勘繰ってしまうことになっても無理はありません。
その点,スタディサプリを使えば,夏休みや冬休みといった長期休暇のときだけ集中的に受講したり,普段満足に学べていない理社や,受験に使うかどうか疑わしい科目を一応受講しておいたりといった使い方ができてしまいます。
スタディサプリは月額2000円程度で利用できてしまうわけですから,そこらへんの問題集を1冊買うのと同じくらいの料金です。
それだけ支払ってどこまで学べるかと言えば,視聴できる科目や学年は無制限で,受験対策講座から英検などの資格講座まで受けられてしまうので,経済的に楽ができることは間違いありません。
時間があるときに申し込めば,より多くのことが学べてコスパも高くなります。
それで浮いたお金は参考書や受験費用の足しにしましょう!
きっぱりやめることも簡単にできてしまうのもオンライン教育ならではのメリットです。
ところで東京大学の大学経営・政策研究センターが以前実施した調査によれば,年収が低い家庭の子どもは,裕福な家に生まれた子どもよりも大学受験を諦める傾向にあることがわかっています↓
この調査は全国4000人の高校3年生とその保護者を対象に実施されたもので,上図赤線で示された「就職ではなく進学させてやりたい」という項目や,黄緑の線の「短大や専門ではなく4年生大学への進学をさせてやりたい」という項目が,年収の低い家庭(左側)ほど高くなっていました。
保護者の意識としては「経済的にゆとりがあれば本当は4年生大学に入学させてあげたい」と思う家庭が多いようです。
塾でも秋ごろを過ぎると
「お金がないから大学ではなく専門(短大)に進むことを決めました。」
と報告してくる高校生が毎年一定数います。
これは,子どもなりに親の経済状況を鑑みて,親孝行にも似た優しい気持ちの表れであって褒められるべき発言です。
が,「専門学校は大学の廉価版などではなく似て非なるもの」ということを誤解している生徒も少なくないのではないでしょうか。
専門学校はすぐ社会に出ても役立つ技術を学ぶところであり,教養を身に付けて幅広い考え方ができる人間を育てる大学とはそもそも存在意義が異なります(大学においても,やっていることは専門学校と変わらない実学だったりするところもあると聞くので注意が必要です)。
加えて,将来稼ぐであろう生涯賃金で考えてみても,大学に行くことでお金を稼げる仕事に就ける可能性が高まり,結果的に親孝行に使えるお金の量も増えることも十分に考えられるでしょう。
とはいえ,覚悟を決めた生徒の生活環境について私は多くを知らないわけですし,本人なりに必死に考えて出した結論なわけで,現場ではただ頷く場合がほとんどです(諦めているわけではありませんが,責任も取れないのです)。
高校受験においては受験校のレベルを下げてでも安全志向を貫き,確実に入れる公立校を受験する姿勢でいて結構ですが,ある意味人生のゴールともなりうる高校卒業後の進路については,今後数十年にわたって決定的な影響を与えるものなので,親子がしっかりと話し合っていただきたいと思います。
おわりに
以上,オンライン教育を利用する上での注意点や魅力についていくつか挙げてきましたが,提供する側には一体どのようなメリットがあるのか最後に考えてみましょう!
充実したサービスを安価で提供している場合,元が取れるのかと心配になってしまいますが,以下に紹介する2つの理由は納得がいくものです。
1つ目は,オンライン学習に切り替えることで,校舎代や人件費が抑えられることが挙げられます。
塾の経営に携わるとすぐにわかるのですが,私も広告費以上に家賃の高さに驚かされました。
駅前に塾を構えると決めた場合,月の家賃が100万円くらいかかることも普通で,それは生徒がいてもいなくても関係なく,必ず支払わなければならない固定費です。
特にできたばっかりの塾だと,家賃が支払えずに潰れてしまうことも多々あり,実際周りがそうなることを目にしました。
しかし,オンライン学習の準備段階としていったん動画さえ作ってしまえば,講師陣にその都度授業料を支払う必要がなくなるわけですから,提供元の収益が増えることはあっても減ることはありません。
データの更新も必要に応じて行っていけば,作りっぱなしで内容が古びてしまうことも少ないです。
理由の2つ目について述べる前に,オンライン教育で成績を伸ばせる子はどういったタイプに属する人物なのか考えてみてください。
それは,学ぶべき動画を自ら取捨選択し,効率良くどんどん知識を蓄えては夢を実現していくことができる生徒のように思われます。
そしてそのような能力を持った子が将来,かなりの経済力を手にする可能性は高くなるでしょう。
つまり,そういう「将来の富裕層予備軍とのつながり」を今から作っておけば,提供元は自社が提供する他サービス(リクルートの場合,就職や保険や結婚に関するもの)をいずれ利用してもらえる可能性が高まるわけで,これは長い目で見たときの堅実な投資の1つと見なすことができるのです。
なお,先の東大の調査からは,年収が1000万を超えている家庭の子どもは62%が大学に入学するのに対し,年収400万円以下の家庭は31%しか進学しないことも判明しています。
このような所得による教育格差を解消してほしいという世の中の思いに,オンライン教育が貢献できる可能性は高いでしょう↓
コロナ禍による混乱でやや熱気を帯びすぎていたようにも感じられるオンライン教育が今後どのようになっていくのか,塾業界に携わる1人としてしっかり見守っていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。