現在,色々な背景を持った企業がオンライン教育サービスを提供するようになりましたが,今後ますます多くの企業が競い合い,工夫を凝らした魅力あるコンテンツを提供してくれることでしょう。
私も昔は,予備校の個人ブースに入ってVHSをブラウン管のTVで再生しながら勉強したものですし,サテライン授業を教室にある大画面で受けていた時代もありました。
当時はなんだか画期的なシステムのように思えたのですが,今考えれば,授業を見返すこともできなかったですし,授業料も普通の授業と同じで,授業後にフォローが特にあるわけでもなく,メリットと言えば人気講師の授業を地方の校舎で受けられたくらいでしょうか。
しかし,当時PHSやケータイだったものは今やスマートフォンへと形を変え,一般家庭におけるネット回線のスピードは信じられないくらい早くなり,パソコンやタブレット含めてオンライン環境は充実してきました。
将棋はもちろん,あれほど不可能と言われていた囲碁界にすらAIは進出し,すんなりと人間は抜き去られてしまったわけです。
今回はそんなICT現代におけるオンライン教育を利用するメリットについて考えてみることにしましょう。
オンライン教育と受験勉強
今やYouTubeのような動画サイトを観れば,生活の暮らしに役立つヒント(例えばコンタクトの洗い方)から,一昔前であれば習わなければ得られなかった情報(例えばプロギタリストの演奏テクニックなど)まで,無料で視聴できてしまいます。
全世界に向けた英語のニュースも映像や字幕付きで自宅で簡単に視聴することができるので,リスニング用の練習素材を入手することも容易になりました。
情報は確実に得やすくなったように思われます。
家庭科の授業をまともに受けた記憶がない私にとってみれば,ちょっとした料理のレシピをみておいしい料理をすぐさま完成させられますし,つい先日に水道管の漏れが発生した際もネットで調べた防水テープを使って,簡単に補修することができました。
しかしこれらと同じ調子でもって,簡単に楽器を弾けるようになったり英語を話せるようになるかといえばそんなことはありません。
それはどうしてでしょうか。
私は,これらの対象が難しいことだからだと思っています。
ちょっと人に聞けばできるものと比べ,「誰かに習わないといけないようなこと」は習得するのが難しく,例外的に簡単なのは運転免許くらいではないでしょうか。
ピアノのプロになるのを諦めた人は周りに多いですが,運転免許の取得に挫折した人はあまりいません。
当サイトは主に「受験勉強」をテーマに扱っているサイトですので,訪問された方には「良質な教育を受けても,目標を勝ち取る(第一志望に合格する)ことは難しい。」ということをまず最初に伝えておきたいと思います。
勉強の途中で何度も挫折してしまいそうになるでしょうし,模試でA判定が出ていようと落ちてしまうことは多々あるものです。
最近担当した受験生は,歴代で一番良い判定が出ていたにもかかわらず,第一志望に補欠でした(しかも繰り上げ合格もできず)。
それより偏差値が5くらい低い子がちょっと欲を出して同じところを受けたら,見事合格してしまったことが前年にあったので,何とも言えない気分になりました。
とはいえ,みなさんを絶望的な気持ちに浸らせたいわけではありません!
ここで伝えたいことは,勉強は難しいものだから結果が出るまでに時間がかかるということと,結果をすぐに求めず,粘り強く続けていってほしいということであって,嫌になって投げ出してもまた戻ってきてくれればいいだけの話です。
特に今回のテーマであるオンライン教育を利用するメリットとしては,やる気が出たときにすぐ始められて,短期間で一気に集中して学力を大きく上昇させることが可能なことで,逆に嫌気がさしたような場合には,授業中であっても画面を閉じてすぐに止めてしまうことができます。
特にその恩恵を受けられるのは中学生の時期で間違いないでしょうが,頑張れば頑張っただけ結果に反映されてくるのは大変愉快な体験になるでしょう。
残念ながら,高校生になってしまうと何かを犠牲にしない限り自由な時間が作れませんので,他にやりたいことがあれば勉強を選ぶことと天秤にかけなければなりません。
しかも大学受験では,「勉強が楽しくてしょうがない。」とか「夢のためにどうしてもこの大学に入らなければならない。」などといった熱意を早期の段階から持ってやってきた人(主に中高一貫校の精鋭)や,受験勉強に才能がある人(とにかく要領がいい人)がライバルです。
高校受験と比べて,より辛い戦いになることは必至ですが,それでも自分のペースで頑張って欲しいと思います。
最後やや話が逸れましたが,次章ではオンライン教育との上手な付き合い方についてみていくことにしましょう!
オンライン教育を利用するメリット
オンライン教育も人と同じです。
つまり,うまく付き合っていくためには,相手のことをちゃんと知っておかなければなりません。
ところで,受験勉強では正体がちゃんとしていて,最後まで責任を持って見てくれるサービスを選ぶことが重要です。
似た例に介護施設が挙げられますが,高い入居代だけ前払いして,最初は満足なサービスがあったのも束の間,サービスの質が数年でがた落ちし,今では退居を考えているという高齢者の話も聞きます。
塾や予備校では身分を隠して教える講師もいるくらいなので,基本的に得体のしれない人には教わらない態度でいてください。
学ぶべき範囲を全部教わる前に先生が退塾してしまったり,最初のうちは良くても学年が上がって内容が難しくなってきた途端に「もう無理。」と音を上げてしまうような先生であれば,また1から別の人と同じやり取りを繰り返さなければなりません。
勉強方針や教え方も人によって様々だったりするので,そちらも問題です。
そういった視点で捉え直せば,最初に紹介した動画サイトやネット記事には網羅性がないですし,必要な情報に検索でたどり着くことが難しい場合もあり,ネットサーフィンをしているだけで多くの時間を浪費してしまうことにも繋がりかねません。
ゆえに,こういったものは観て楽しむ程度に付き合うようにしてください。
その点,オンライン教育はそこら辺の事情をよく考えていて,講師は実績のある優秀な方が引き抜かれていますし,サービスとして完成した状態,つまり全範囲分の講座が用意された状態で世の中に公表されることになります。
経歴を偽ろうものなら,すぐさまSNSやトップニュースに挙がってしまうので怖くてできませんし,途中で先生が変わって別の教え方をされることも普通はありません。
そんなオンライン教育ですが,先の動画サイト以上に気楽に付き合うのが一番です。
なんだか変な感じがするかもしれませんが,サービス上に知りたい情報が網羅されているので時間を無駄にすることはありませんし,教師となる実力派講師陣は教え方も上手でわかりやすく,簡単にそして楽しく知識を増やしていけます。
加えて,オンライン教育の性質上,人に直接習う場合よりも料金が安く済むことが多く,浮いたお金は参考書代に回したり,場合によってはより多くの学校に願書を出したり,押さえの学校の入学金の足しにできるため,間接的に合格可能性を高めることになるわけです。
こういった話は具体的にみていくとイメージしやすいかと思いますので,ここではリクルートが提供する「スタディサプリ」を例に取り,オンライン教育の魅力についてもう少し詳しく説明していきたいと思います↓↓
必要な知識がすべて揃う
1つ目は「学習内容の網羅性」に関する内容ですが,特に中高生の場合,勉強で分からないところがあってもネットでうまく検索することができず,必要な情報にたどり着けない場合があります。
場合によってはあらかた学習内容を理解している大人が調べても大変なわけで,そもそも載っていないことだってありうるわけですから,当然といったら当然でしょう。
ネットで調べ物をするメリットは必要な情報にすぐにたどり着けることなわけですから,ただでさえ習い事や部活動などで忙しくしている中高生はできるだけ面倒な作業を避けるべきです。
ちなみに,スタディサプリでは学年ごとかつ科目ごとに学習内容が整理されており,使っている教科書に対応した講座もあるため,簡単に欲しい情報にたどり着くことができます↓↓
もちろん,こういった講座を担当するのは先述した通り,大手リクルートに認められるほどの実力を持つ講師たちなわけですから,教材の質についても問題ありません。
これまでの実績もそれを証明しています。
とりあえず兄や姉が受験を経験したということでなければ,結果が出ている大手塾から通うところを選ぶのが基本でしょうが,これはブランド物を買う理由に似ているかもしれません。
大手予備校の塾に混ざって「スタディサプリ」の名前が挙がるようになった昨今ですから,一昔前はマイナーだったオンライン教育サービスが老舗をしのぐブランド価値すら持ち始めていると言っても過言ではないでしょう。
なお,こういったオンライン教育が面白いのは内容が制限されていないところです。
通信教育を利用する場合ですと,教材が送られてこないことには先に進むことはできませんね。
もちろん,あえて小出しにすることで「山のような教材を前にして,変にその子のやる気を削がない」という効果があるのですが,24時間いつでも使えるのがオンライン教育の魅力なわけで,やりたいときに好きなだけやれる環境を整えておくことは大切だと思います。
私の教えている塾では,小学6年生のときにスタディサプリに出会って,1年後に中3までの内容を終えた生徒もいました。
ただひたすらに1つずつ受講しては次に進んでいけばいいので,進度的にも迷うことなく知識を積み重ねていけます。
こういう子に限って,実は楽しんで勉強しているということも忘れてはいけない事実でしょう。
楽しく学べてラクができる
続いて2つ目の魅力ですが,オンライン教育では楽しくそしてラクに学ぶことができます。
「勉強なのに楽しいなんて!」と疑われるかもしれませんが,勉強は知っている人に習うことで,1人で学ぶよりもずっと簡単に理解することができます。
無論独力でもがき苦しみながらたどり着いた結論と,人から教えてもらって簡単に手に入れた知識とでは,形としては同じものであってもその価値が大きく異なることは十分承知の上です。
ですが,高校受験や大学受験程度の次元では,ともかく短期間である一定のレベルに達することが重要ですし,身近な目標を最短経路で叶えてしまって,残った時間はひたすら哲学の勉強などに捧げて自分の内面を鍛える方が,よっぽど「理想の勉強」と呼べるのではないでしょうか。
私の経験上,中学校で1ヶ月かけて教える内容であっても,塾では4時間(中学内容なら2時間)で終えることができますし,文系志望の高校生の場合ですと,学校の数学の授業は文系科目の内職に充て,試験前の数回だけ塾で数学を習うことで赤点を回避する戦略を取ったこともあります。
平均点以上をちゃんと取れていて,2人で驚いたのは良い思い出です。
もちろん学校の授業をちゃんと受けることは大事だとは思いますが,ろくでもない変な先生も多かったことは自分も経験済みですし,私としては,個別指導を通して生徒の願いを叶えてやることも大切なことだと思っています。
スタディサプリに出てくる先生はみな,わかりやすく伝えることを心がけているように見受けられますし,AI時代らしく視聴者の離脱ポイントなどを分析し,無駄なシーンを極力排除して動画を改善してきた経緯があることからも,わかりやすくて楽しい授業を期待して構いません。
「なんだ,そんなことなの?簡単じゃん!」
こんな言葉を生徒の笑顔と共に引き出せたら,教える側としては最高の気分です。
スタディサプリはスマホでも視聴できるのですが,わざわざ塾に来てまで動画を観ている子もいました(笑)
スマホが中高生に浸透しているのはなんとなく理解できているつもりでしたが,実際に生徒の話を聞いてみると,スマホアプリが彼らの生活の中心を占めていることに驚かされます。
スマホ+オンライン教育の影響力は良い意味でも悪い意味でも想像以上でした。
近くに塾がない地域に住んでいる人や決まった時間に塾に通えない人にとっては朗報です。
長い時間をかけて中心街へ足を伸ばす必要もなければ,過密スケジュールに悩まされることもありませんから。
費用が少なく済む
オンライン教育を利用するメリットの3つ目は「かかる費用」の話です。
忙しい学生であればあるほど,集団授業のように予め日時が決まっている講座は取りづらく,料金が高めの個別指導塾に通うことが多くなります。
また,講習期間に多くの科目を塾で受講することになれば家計を大いに圧迫しますし,普段習っている先生に勧められたらやはり断りづらいでしょう。
最近はコロナ問題で夏休みが短縮化され,そんな短い期間にこれまでと同じ数の講座を取らせようとする塾もあるようですが,そのような詰め込みに果たして料金分の価値があるかと問われれば,私は「Yes!」と胸を張って言うことはできません。
余談ですが,私の塾は月謝制で現金で支払ってもらっているのですが,1人の生徒に夏期講習だけで100万円近い塾代を頂くような際は,自分の仕事の大きさを毎回のように感じさせられます。
なんとか合格し今でも付き合いがありますが,「もし全落ちして浪人していたら…」と考えると,本当に恐ろしいですし,もうとっくに私は引退して顔向けできなかったことでしょう。
教えている側もそんな調子なわけですから,教わる側は「これは単に塾の都合であったり,ただの気休め程度にしかならないのではないだろうか?」と勘繰ってしまうのも無理はありません。
その点,スタディサプリを使えば,夏休みや冬休みといった長期休暇のときだけ集中的に受講したり,普段満足に学べていない理社や,受験に使うかどうか疑わしい科目を一応受講しておくような使い方だってできてしまいます。
「特別講習」と呼ばれるやや特殊なサービスもありますが,通常のスタディサプリで学べば月額2,178円で済んでしまうわけで,そこらへんの問題集を1冊買うのと同じくらいです。
それだけの料金で何ができるかと言えば,視聴できる科目や学年に制限はなく,受験対策講座から英検などの資格講座まで受けられてしまうわけで,経済的にラクができることは間違いありません。
先述の通り,浮いたお金は参考書や受験資金の足しにしましょう!
こういった気楽な使い方ができるのもオンライン教育を利用するメリットです。
ところで,東京大学の大学経営・政策研究センターが以前実施した調査によれば,年収が低い家庭の子どもは,裕福な家に生まれた子どもよりも大学受験を諦める傾向にあることがわかっています↓↓
この調査は全国4,000人の高校3年生とその保護者を対象に実施されたもので,上図赤線で示された「就職ではなく進学させてやりたい」という項目や,黄緑の線の「短大や専門ではなく4年生大学への進学をさせてやりたい」という項目が,年収の低い家庭(左側)ほど高くなっていました。
保護者の意識としては,経済的にゆとりがあれば,本当は4年生大学に入学させてあげたいと思う家庭が多いようです。
塾では秋ごろを過ぎると,「お金がないから大学ではなく専門(短大)に進むことを決めました。」と報告してくる高校生が毎年一定数います。
これは子どもなりに親の経済状況を鑑みて,親孝行にも似た優しい気持ちの表れであって褒められるべき発言です。
が,専門学校は大学の廉価版などではなく,似て非なるものだということを誤解している生徒も多いのではないでしょうか。
専門学校はすぐ社会に出て役立つ技術を学ぶところであり,教養を身に付けて幅広い考え方ができる人間を育てる大学とはそもそも存在意義が異なります(残念ながら大学においても,やっていることと言えば専門学校と同じような実学だったりすることもあり,大学と専門学校の区別が曖昧になってしまっているのは嘆かわしいことです)。
さらに,将来稼ぐであろう生涯賃金で考えた場合,大学に行くことでお金を稼げる仕事に就ける可能性は高まり,結果的に親孝行に使えるお金の量も増えることも十分考えられるわけです(もちろん絶対ではありませんが)。
もっとも,覚悟を決めた生徒の生活環境を私は知らないわけですし,本人なりに必死に考えて出した結論なわけで,現場ではただ頷く場合がほとんどです(諦めているわけではありませんが,責任も取れないのです)。
高校受験においては,受験校のレベルを下げてでも安全志向を貫き,確実に入れる公立高校を受験する姿勢で結構ですが,ある意味人生のゴールともなりうる高校卒業後の進路については,今後数十年にわたって決定的な影響を与えるものですので,子どもとしっかりと話し合っていただきたいと思います。
おわりに
これまでは利用者側からみたオンライン教育のメリットでしたが,提供元には一体どのようなメリットがあるのか,最後に考えてみましょう。
これほどのサービスを安価で提供していて元が取れるのかという点については心配になるくらいですが,次に紹介する2つの理由は納得のいくものです。
1つ目は,オンライン学習に切り替えることで,校舎代や人件費が抑えられるということです。
塾の経営をしていると感じますが,広告費以上に家賃の高さが堪えます。
駅前に塾を構えようとした場合,月に100万円くらいかかることも普通で,それは生徒がいようがいまいが必ず払わなければいけない固定費です。
家賃が支払えずに潰れてしまった塾も周りに沢山ありました。
しかし,オンライン学習の準備段階としていったん動画を作ってさえしまえば,講師陣にその都度授業料を支払う必要がなくなるわけですから,収入は増えることはあっても減ることはありません。
もっとも,データの更新も必要に応じて行われるので,作りっぱなしで内容が古くなることもないのでご安心を。
利用者としては,サービスがなくなる心配をせずに使っていきましょう!
理由の2つ目ですが,オンライン教育で成績を伸ばせる生徒というのはどういったタイプの子でしょうか。
それは,自力で動画を取捨選択し,効率良くどんどん知識を蓄えては夢を実現していくことができる優秀な生徒のように思われます。
そして,そのような能力を持った子が将来大人になったとき,かなりの経済力を手にする可能性は高いでしょう。
つまり,そういう「将来の富裕層予備軍とのつながり」を今から作っておけば,その会社は自社が提供する他サービス(リクルートの場合,就職や結婚に関するもの)をいずれ使ってもらえる可能性があるわけで,これは長い目で見たときの堅実な投資だと言えるかもしれません。
なお,先の東大の調査で他にわかったこととして,年収が1,000万を超えている家庭の子どもは62%が大学に入学するのに対し,年収400万円以下の家庭は31%しか進学しないことがわかりました。
このような所得による教育格差を解消してほしいという世の中の思いに,オンライン教育が貢献できる可能性は高いでしょう。
今現在,高校としては700校、自治体の数は20、さらに小学校と中学校を合わせて50校で実際に使われているスタディサプリを含めて,オンライン教育は今後どうなっていくのか,塾業界に携わるものとして楽しみに見守っていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。