自分に国語の読解力がないことに気づいた場合,当然,読む練習をすることになるかと思いますが,それ以上に,書く練習の方が効果的であることを知らない方は少なくないでしょう。
塾でみていても,「国語の成績を伸ばしたいから」と勉強しているにもかかわらず,ノートに解説や要点を書くことを面倒くさがったり,記述問題はすべて空欄にして飛ばしたりする生徒が結構な数います。
もっとも,今やデジタル化が進んでいて,デジタルデバイスを使って文字を入力する機会が増えていますが,これも広義の意味では書く作業の1つと見なすのが一般的です。
そこで今回の記事では,「書く作業や読む作業が読解力を高めるのに貢献している」ことについて,最近のデータを用いながら学術的に理解していくことにしましょう!
実は有用な書く行為

当サイトではこれまでに様々なノート術を紹介してきましたが,それは書く作業の重要性を認めているからこそです↓
といっても,何百・何千文字を書くだけとは限らず,ここではメモ程度の内容であっても立派な作業と見なすことにします。
実際,誰かの話の一部分を書き留めようとすると,なんでもない内容をわざわざメモにすることはないわけで,相手が話した内容を理解しては,
これは自分にとって重要な情報だな。
などと判断したからこそ記録するわけです。
人によっては,話を要約したものを書いてみたり,箇条書きにしたりイラストを描いたりもするでしょうが,いずれにしても,書く作業を行うにあたって色々と頭を使っています。
変な話,スーパーに買い出しに行くメモを見ても,書く練習を積んでいる人とそうでない人との間に確かな差を見て取ることができますし,何も記録せずに行った後で買い忘れに気づいてしまったことは誰もが経験しているでしょう。
私がよく覚えているのは,入院した際に説明(入浴時の手順など)を聞いていたときのことで,看護婦さんに
メモを取りながら真剣に聞かれる方は初めてです!
と驚かれてしまったのですが,書く作業が習慣化されるとこうした行動は自然なこととなり,当然,不具合が生じることはないです。
むしろプラスになることが多く,後で物を考えるための材料にもできますし,些末なことを長く覚えておかずに済むので,頭の負担を減らしてくれます。
書くことと読むことの累積効果についての調査

それでは,学術的にはどのような調査がこれまでに為されているのかと言うと,デジタル全盛の令和時代に筆記と読書の関係性を検証した調査結果が,NTTデータ経営研究所から2025年9月に発表されました(2025年9月6日取得)。
調査の内容は以下の通りです↓
手書き価値研究会の調査
調査対象:全国の18~29歳の学生1062名(読解力調査は180名が参加)
調査期間:2025年3~8月
調査内容:書くことについて,大学等の講義記録と日常のスケジュール管理における媒体や使用頻度を調査。読むことに関しても媒体や消費時間を調べた。その他,書くことと読むことの関連性や読解力への影響も調べている。
読む対象:文学作品,専門書・教科書,実用書,マンガ,パンフレット・カタログ,新聞,雑誌,論文誌(ニュースサイトや電子版も含む)など
読解力の測定:文章読解・作成能力検定の準2級の問題(2017年度第2回と2018年度第1回)を使用。
普通,こういった調査の本のタイトルは勉強的な内容のものに限定されますが,料理本やマンガやカタログといった娯楽的なものも対象に含まれています。
もっとも,マンガや雑誌もかなりの情報量を含んでいるものが見られますし,イラストばかりのカタログからは図鑑のような学びが得られるものです。
いずれにしても,読む力についてはSNSで見当違いなコメントをしている人が問題視されている昨今で,その能力をどのように伸ばせばよいかという具体的な対策は明確になっていません↓
よって,親との会話する時間を増やすなどの,「良さそうな」対策を行うことしかできないのが現状ですが,今回紹介する調査結果は書くことと読むことが読解力を高めると述べており,しかも,前者の方がより効果が高いとされているところに注目です(後述)。
読解力を高めようと本を読む量を増やしたり,国語の問題を多く解いたりする生徒が多い中,今回の調査結果を踏まえると,本を読んだ後に感想文を書いてみたり,記述問題を多く含む問題集を選んだりといった工夫を施せるようになります。
次章から,気になった調査結果をいくつかまとめていきましょう!
読解力を高めるのに書くことが有効

今回,読解力の調査で用いた「準2級」という問題レベルですが,高校レベルが3級,大学相当レベルが2級ということで,その中間に位置します。
問題種別の選択にあたり,記述を含まない図表または文章の読み取り問題を使用したとのことですが,上の画像をみていくとお分かりの通り,決して簡単なものではありません。
結果として,講義内容をノートなどに書く習慣がある学生の方が,有意で正答率が高かったです↓
- 書く習慣あり:57%の正答率
- 書く習慣なし:32%の正答率
選択肢の数は3~4つということから,後者の結果はテキトーに回答した場合と差がなく,書く習慣がない人は準2級レベルの問題の図や文章の内容をほとんど理解できなかったことがわかりました。
書くことに続いて,今度は読む方ですが,
- 読む習慣あり:56%の正答率
- 読む習慣なし:39%の正答率
となり,こちらも有意差が確認されています。
読む習慣がある人が読む習慣がない人より成績が良いのは当然のように思われますが,興味深かったのはもう1つの調査で,これら2つの習慣の組み合わせと正答率の関係性を調べたものです↓
| 書く習慣 | 読む習慣 | 正答率 |
| 〇 | 〇 | 約57% |
| 〇 | × | 約55% |
| × | 〇 | 約40% |
| × | × | 約25% |
緑と青と赤色で示した数値の間には有意差があり,これにより,書く習慣の有無が最も読解力に影響することがわかりました。
国語ができない人に,作文を真っ先に勧めることがあっても的外れではないわけです。
現在の学生の現状

メインとなることは伝えたので,ここからは参考になりそうなデータを補足的に紹介していきます。
まずは調査時における学生の現状について理解を深められるものですが,書く習慣と読む習慣において別々にみていきましょう。
書く習慣
- 大学等における講義内容を記録しない人は10%
- 書く習慣がある人のうち,記録するのが興味あることのみの人は32%
- 日々のスケジュール管理を記録に残さない人が24%
- スケジュールを記録する人のうち,46%は日常生活の予定を全て記録し,仕事や授業などに限る人は27%,不規則な予定のみの人が27%
多いや少ないの評価は控えますが,書く内容について,全部・要約・最低限の3つのどれにするかが分析要因として含まれることを覚えておきましょう。
読むこと
- 読む習慣がない人は20%
- マンガしか読まない人が20%程度いる
- 読む時間は,本の場合,1日40分程度で新聞・雑誌は30分程度
- 1日の読書時間の合計は男で91分,女で69分
マンガを電車内で読むのは恥ずかしいだの,くだらない内容の本(例えば,芸能人のエッセイ本)は読むなと言われて育った方もいるかもしれませんが,好きなものは大いに読むと良いと思います。
ただし,難しい内容の本を意図的に読まないようにしていると,困難な問題に立ち向かうことができない身体になってしまうので気を付けましょう。
デジタル派とアナログ派の違い

最近は議論されることが減ってきましたが,紙の本を読むことと電子書籍を読むことの間には確かな違いが存在します。
互いに一長一短があるので優劣を付けるべきではないですが,ここではデジタル派(電子書籍を好む)とアナログ派(紙の本を好む)に関する傾向をまとめてみましょう!
書くこと
- 講義を聞く際のアナログ派は48%,デジタル派は30%
- スケジュール管理におけるアナログ派は18%,デジタル派は70%
100%に満たない部分は,両方を同程度使うハイブリッド派と考えるようにしてください。
なお,書く習慣には中等教育までの影響が大きいように思われるので,今後はGIGAスクール構想下で育った生徒が増え,デジタル派がアナログ派を逆転することも大いに考えられます。
ところで,100%アナログ派の人は要約や最低限を記録するのではなく,全部を記録しようとする傾向が強いようなので,イメージ的には体育会系の人となるでしょうか。
逆に,デジタル派の人は印象に残った部分のみを留める傾向が強いようなので,効率を求める会社員のイメージです。
読むこと
- アナログ派の方がデジタル派よりも多数派(5対4くらい)
- 両者の読書時間に差はない
- アナログ派の好みは文学作品,マンガ,専門書の順
- デジタル派はマンガ,文学作品,専門書の順
最近はサブスクリプションなどで,電子書籍の雑誌を読み放題のサービスも見られますので,デジタル派の方がアナログ派よりも,新聞・雑誌の方を読む割合が多くなるのは想像するに容易いです。
先のGIGAスクール構想もそうですが,こうしたデータは真理というよりも時代の流れを反映していると言えるでしょう。
まとめ
以上,最近に発表された調査を元に,書くことと読むことが読解力の高さにどれだけ影響しているかを中心にみてきました。
読む習慣以上に書く習慣の有無が読解力の高さに大きく影響していたことは,多くの方にとって驚きだったのではないでしょうか。
もっとも,何かを書くにあたり,相手の言っている内容を理解しては文章にし,さらにはその文章を吟味してブラッシュアップするなどの作業が必要になるので,読む作業を内包しているより高度な作業と見なせるかもしれません。
とはいえ,読むことができなければ書くことはできないわけですから,読む習慣と書く習慣は別物と捉えつつも,両方をバランス良く行っていくことが肝要なのでしょう。
確かに,英語においても,文法や単語力があって初めて英作文ができるようになるわけです。
最後になりましたが,書く習慣がないことと読解力の低さには相関関係が見られたものの,どうしてそうなっているかはまだわかっていません。
調査結果内で述べられていたように,講義内容を書きながら理解しようとする姿勢が欠如しているのか,読解力が低くて講義内容を文字化できなかったのかはわかりませんし,それ以外の要因も考えられるでしょう。
これに関しては,定期的に受ける健康診断のように,ある方法を試してみては文章読解・作成能力検定のようなものを受けてみては成績を比較してみることが必要になります。
読解力は生活における重要な能力の1つです。
高めた分,その恩恵を得られる場面は多くなると思われるので,注意深く伸ばしていきましょう!