小学校で英語を学ぶようになったからといっても,学校に完全に任せっきりにしなければならない道理はありませんし,比較的自由にカリキュラムを組める私立校においては,公立校とは全く異なるアプローチでもって英語学習を行っているところがあります。
そういった私立校ではずっと昔から英語の教育カリキュラムを改善し続けており,これまでに多くのノウハウが蓄えられた結果,周囲の公立校を圧倒していることが多いわけです。
それならばと,自宅で小学生に英語を独自に学ばせようと思っても,周りの協力が不可欠になりますし,どのような教え方をするべきかをよく考えなければなりません。
親が率先して使う教材を吟味し,カリキュラムを考案しながら自らが指導に当たることはもちろん,場合によっては塾や家庭教師に依頼することを考えたり,テストを受けさせてやる気を高めたりするなどの工夫が必要です。
これについては各自が置かれた環境で,一概に決めることができませんが,テストについては候補に挙がるものは大体決まっています。
そこで,今回は「小学生が受けられる英語検定・資格」についてまとめてみることにしましょう!
小学生を対象とした英語資格・検定

まず,小学生が英語を学習する際の基本事項について確認しておこうと思いますが,例えば,中高生が受ける「英検」や社会人向けの「TOEIC」は目標とするにふさわしくないでしょう。
というのも,小学生にとって単語を覚えたり文法を学習したりすることは二の次であって,ビジネス業界の話をされたところで,たとえそれが日本語であっても,何を言っているのかちんぷんかんぷんだからです。
確かに,最近では中学受験で英検3級を取得していることが有利に働くようになりました(例:豊島岡女子学園の25年度入試)。
しかし,英語の定期テストがあったり英語の資格・検定の保有状況によって入試の方式が変わったりする中高生と比べれば,小学生が損得勘定に振り回されることはずっと少ないです。
この時期の強みが,仕方なく学ぶのではなく,自分の意志で学びを選択できることであることを忘れないようにしましょう。
なお,現在の学習指導要領にある外国語活動のページに行ってみると,小学5~6年生は,
- 英語を用いてコミュニケーションを図る楽しさを体験し,大切さを知る
- 積極的に英語を聞いたり,話したりする
- 英語の音声やリズムなどに慣れ親しむとともに,日本語との違いを知り,言葉の面白さや豊かさに気付く
- 日本と外国との生活,習慣,行事などの違いを知り,多様なものの見方や考え方があることに気付く
- 異なる文化を持つ人々との交流等を体験し,文化等に対する理解を深める
ことを重視すべきだと書かれています。
英語4技能のうち,読みと書きを中心とした能力アップは求められておらず,これまで中学でやっていた内容を,小学生のうちに素早く完了させてしてしまおうといった試みでは決してないわけです。
以上をもとに,小学生が目標にしたい英語資格・検定試験を考えてみると,以下の7つが挙げられます↓
- 英検Jr.
- JAPEC児童英検
- ケンブリッジヤングラーナーズ英語検定
- TOEFL Primary Step1
- ジュニア・イングリッシュ・テスト
- TECS検定
- 国連英検ジュニアテスト
当記事では,これら試験の概要をまとめていますが,次章では注意点についてもう少し述べることにし,その後,個別に紹介させてください。
小学生の英語勉強で気をつけたいこと

学習内容をどうするか以外に,小学生が英語を学ぶ上で気をつけておきたいことを2つ述べておきます。
英語に限った話でもないのですが,
- 子ども本人のやる気
- 費用対効果を無視する覚悟
が重要です。
子どものやる気
まずは,子ども本人のやる気からみていきますが,確かに,最初のきっかけこそ親の働きかけになるであろうものの,子どもが
楽しそうだからやってみたい!
と主張するからこそ,親はその行為を続けさせるわけであって,特別な理由があれば話は別ですが,泣いて嫌がっている子どもに無理矢理学ばせたところで,往々にして良い結果には繋がりません。
先述したように,英語を学ぶ必要性(得意になれば受験で有利だとか,学校の評価に英語の成績が関係してくるなど)は,中学入学後に初めて生じてくるわけで,それを初等教育に持ち込むべきではないのです。
中学生ともなると英語に苦手意識を持つタイミングが訪れ,その憂き目に遭ってしまうと,その後は英語力が関係するあらゆるテストにおいて,高いパフォーマンスを期待できなくなってしまいます。
もっとも,小学生においても挫折する経験はできるだけ避けるべきで,英語の検定・資格試験で失敗してしまえば,途端にやる気が失われてしまうでしょう。
なので,英語の資格・検定試験では不合格にならぬよう,余裕を持って臨むか,そもそも合否判定されない試験を選ぶことが重要です。
特に最初のうちは,簡単なことから取り組むようにしてください。
それこそ,小学生が毎日1時間も勉強するのは大変なことなので,好きなことだけやらせてみるとか,小さな頑張りであっても積極的に褒めることを強く意識しましょう。
親の覚悟
繰り返しますが,小学生に英語教育を施すことは大変です。
彼らは集中できる時間が短く,塾で教えていても,腰を据えてじっくり机に向かえる生徒は多くありません。
加えて,英語の勉強が先に進むほどに,今持っている知識だけで対応できない問題が増えてくることになります。
その場合,もはや英語力うんぬんではなく国語力(日本語)の問題になり,中でも語彙力の不足については,親が個別に教え込まなければなりません。
一方,結構な労力を子どもの英語学習に割いたとしても,中学生や高校生になって結局周りと変わらない成績になってしまう未来を否定することはできません。
それは,英語以外のやることが沢山出てくることが原因で,学習を継続できなければすぐに忘れてしまうでしょう。
日本で英語を学んでいる以上,バイリンガルにはなれませんし,子どもは概して親の思うようには育ってくれないものです。
なので,そうしたモヤモヤする結末すらをも覚悟に入れ,
若き日の試行錯誤は人生の糧になるものだ。
と前向きに捉えられる親にのみ,次章から紹介する英語検定や資格にわが子を挑戦させる権利が開かれると言っても過言ではありません。
まずは,英検Jr.から紹介していくことにしましょう!
英検Jr.

英検Jr.の概要
特徴:小学校の外国語活動に対応していて,その成果を検証する目的で用いることができる
級や目標:BRONZE(小学校低学年レベル),SILVER(小学校中学年レベル),GOLD(小学校高学年レベル)
形態:オンライン版
試験時間:約30分(BRONZE)~約45分(GOLD)
料金:2500円(BRONZE)~2900円(GOLD)
ペーパー版は5名以上のグループでないと申し込めないので,個人受験はオンライン版のみとなります。
受験する際は,ドリルや模擬テストからなるe-learningを利用でき(別料金),検定自体は決済後すぐに受験できて便利です。
なお,通常の英検が中等教育や高等教育の成果を検証するものなので,Jr.が同じ特徴を備えていることに異論はないでしょう。
過去問は再利用される関係で公開されませんが,聞くと話す(アウトプット能力)が重視されている小学英語だけに,リスニングテストのみとなります。
文字が書かれていないわけではありませんが,基本的には,聴き取った英語に合ったイラストを選んで丸をつけるだけです。
詳細は公式HPを確認してください。
JAPEC児童英検

JAPEC児童英検の概要
特徴:聞くと話す技能に注目し,コミュニケーション能力を評価してもらえる
級と目標:6級(3~7歳レベル),5級(5~8歳レベル),4級(7~10歳レベル),3級(8~11歳レベル),2級(9~12歳レベル),1級(10~14歳レベル)
形態:自宅受験(リスニングは保護者監督のもと,CDまたはQRコードを使用。スピーキングはzoomを使ったオンラインでの実施)
試験時間:筆記試験は約25分(5~6級)~約40分(1~2級)。口頭試験は約2.5分(6級)~約6.5分(1~2級)
料金:2500円(6級)~3100円(1級)
正確には「全国統一児童英語技能検定試験」と言い,日本児童英語振興協会(JAPEC)が実施するテストです。
早いと3歳から受けることができ,スピーキングテストが行われるところが大きな特徴と言えます。
参考までに,小学校で覚える単語は700語程度ですが,本試験の4級でも800語,3級では1000語が使用され,1級ともなると1600語に達するとのことです。
2級の筆記試験では道案内や童話の内容理解を求められ,疑問文に対して適切な答えを選べるようにならなければなりません。
口頭試験では絵を見ながら,状況や動作,様子などについて答えるようにします。
公式HPを訪れると,各級の問題の一部がサンプルテストになっていることに気付く他,「前回の問題と答え」のところから,1回分の過去問を丸々利用することが可能です。
ケンブリッジヤングラーナーズ英語検定(YLE)

YLEの概要
特徴:英語4技能全てが問われる楽しい試験。名前を英語で書く必要あり
級と目標:Pre A1 Starters,A1 Movers,A2 Flyers(全て6~12歳レベル)
形態:指定会場での受験
試験時間:Listeningが20分(Pre A1 Starters)~25分(A1 MoversとA2 Flyers),ReadingとWritingが合わせて20分(Pre A1 Starters)~40分(A2 Flyers),Speakingが約4分(Pre A1 Starters)~約8分(A2 Flyers)
料金:約10350円(Pre A1 Starters)~約12800円(A2 Flyers)
YLEは「ケンブリッジ英検」と略されることもありますが,英語を母国語としない児童がネイティブレベルに達するカリキュラムに沿って作られたものとなっています。
早くは4歳でも受けられ,逆に中学生が受験しても問題ありませんが,英語の面白さや楽しさを意図した問題構成になっていて,間違い探しやクイズといった出題が見られたり,評価基準で伝達力を重視していたりするところが特徴的です。
解答用紙はマークシートではなく,色塗りをしたり絵を描きこんだりできるユニークなもので,試験では英語4技能全てが問われ,ネイティブの面接官によるスピーキングテストやライティング問題もあります。
合否判定は存在しないものの,最も易しいStartersレベルですら,物の名前や単文を書いたり問題の指示文を英語で読まされたりするので,求められる英語力は高めです。
FlyersはCEFRレベルで言うところのA2に相当し,その後は通常のケンブリッジ英検に進む他,TEAPや英検との親和性も高いように思います。
公式HPからはたくさんの教材がダウンロードできて親切です。
TOEFL Primary Step1

TOEFL Primary Step1の概要
特徴:英語学習を始めた人向けのテストで三択形式
級と目標:Pre A1~A2レベル
形態:PBT以外にCBT受験も可能
試験時間:リーディング約30分,リスニングも約30分の計60分
料金:4000円
PrimaryはTOEFLの初級レベルにあたり,小学生にはStep1が適しています。
それでも,難易度は前章で紹介したYLEの3レベル全てを含んだものとなり,リーディングでは2~4行の簡単な文章が出される他,75語から成るパラグラフも理解しなければなりません。
リスニングにおいては250語ほどから構成される物語が出題される他,アカデミックな話題のものも登場します。
公式HPにあるサンプル問題を解いて,実際のレベルを確かめてから申し込むようにしましょう。
この他,TOEFL PrimaryではSpeakingとWritingのテストがそれぞれ単独で実施されているので,英語4技能のうち必要なものを自由に組み合わせて受験することも可能です。
PBTの場合,日程はもちろん,テスト会場が「首都圏・札幌・名古屋・大阪・福岡」などと限られることに注意してください。
ジュニア・イングリッシュ・テスト(JET)

JETの概要
特徴:出題はリスニング形式。英語以外の知識量が正解率に影響しにくい作りになっていて,中3レベルの能力への到達度や,自分の得意・不得意がわかる
級と目標:Starter(9~10級),Starter Plus(7~8級),Basic(5~6級),Intermediate(3~4級),Advanced(1~2級)
形態:PBTとCBT形式での受験が可能。ただし,どちらであるかは会場による
試験時間:10分強の準備時間を除き,30分(Starter)~50分(Advanced)
料金:2900円(Starter)~3900円(Advanced)
アメリカのIMETが開発したテストですが,責任者であるSteven Stupak氏は,かつてETSにおいてTOEICやTOEFLの開発に関わったことのある人物です。
そのときに培われたノウハウはJETの開発にも生かされているようで,PBTのマークシートや出題方法から,その雰囲気を感じ取ることができました(CBT形式では,コンピュータの画面上に表われた番号をクリックして回答します)。
将来的にTOEIC Bridge(中学以上レベル)やTOEIC(大学生・社会人向け)を受けたいと考えている小学生は,JETでのパフォーマンスを根拠に,他のテストよりもスムーズにステップアップすることが可能です。
同時に合否判定も行われますが,1つの試験を受けると自動的に2つの級で判定されるため,不合格の憂き目に遭いづらいのも特徴の1つと言えます。
受験対策ですが,過去問を詳しく解説した教材が利用できる他,公式のHPで形式別に一部を体験することも可能でした。
ただし,実施会場が少ないため,予め詳細をHP上で確認しておきましょう。
TECS検定

TECS検定の概要
特徴:リーディングやライティングは少々の,リスニングメインの検定試験で,歌やクイズ中心の出題。ただし,文字を書かずに回答が可能で,成績表で全国平均と自分の現状を比較でき,過去の結果も表示される
級と目標:5級(小1~2レベル),4級(小2~3レベル),3級(小3~4レベル),2級(小4~5レベル),1級(小5以上レベル)
形態:個人はCBT形式のみ
試験時間:約35分(5級)~約55分(1級)
料金:2530円(5級)~3300円(1級)
TECS検定とは「テックス英語コミュニケーション技能検定試験」の略となり,こちらも小学生の英語力を測れるテストの1つです。
年間延べ9万人以上が受験しているようですが,5級は英語を習ってわずか半年であっても受験でき,1級も小学英語の範囲内となっていて受けやすいと言えるでしょう。
4級以降の試験範囲にはライティングが入ってきますが,英文整序の形での出題となるので,マークシート方式で回答することが可能です。
なので,アルファベットを書けない小学生であっても気兼ねなく受けることができます。
小学生の学年に合わせて,細かくステップアップできるところも特徴的です。
なお,運営元であるイッティージャパンは「ペッピーキッズクラブ」という英会話教室を開いており,会員の方は優待料金での申し込みや教室受験ができるなどと差別化されています。
詳細は公式HPで確認するようにしてください。
国連英検ジュニアテスト

国連英検ジュニアテストの概要
特徴:イラスト多めの英語で,楽しんで英語を学ぶことができる。合否判定がないので挫折を感じにくい
級と目標:Eコース(半年~1年の学習歴),Dコース(1年以上の学習歴),Cコース(小学校の低~中学年レベル),Bコース(小学校の中~高学年レベル),Pre Aコース(4年程度の学習歴),Aコース(5年程度の学習歴)
形態:会場受験(A~Pre Aコース)または自宅受験(B~Eコース)
試験時間:30分(Eコース)~45分(A~Bコース)
料金:3300円
国連英検ジュニアテストは団体受験での申し込みが原則となりますが,個人で受けることもできます。
どの級から受けても構いませんが,小学生の場合,CまたはBコースが目安です。
もっとも,Dコースを受ける半数以上は小1生または小2生ですし,Pre AやAコースを受ける小2生の割合も6%を超えていました(2025年10月7日取得)。
解答は全てがマーク方式で,過去問は公式HPから購入できます。
自宅受験の場合,保護者が試験監督になりますが,上級のAレベルなどは関東会場に足を運ばなければいけません。
各コースごとに1~3級のいずれかで評価され,後で認定証と評価シートが送られてきます。
その後の展開
これまでに見てきたように,中学生や高校生が受験することで有名な英語検定・資格試験のいくつかが小学生用に調整した特別なテストを作っては裾野を広げてくれています。
なので,それらの試験を攻略した後は,上位である本来の試験に進むのが自然な流れでしょう。
例えば,英検Jr.であればBRONZE→SILVER→GOLDと合格してから英検5級に挑むようにしますし,JETであれば当然,TOEIC Bridgeに進む感じです。
前者で言うと,4級までは小学生でも十分に目指せる級だと感じます。
3級ともなれば,面接試験が入ってくるだけでなく小学生が理解しにくいテーマが増えてもくるため,親がかなりの時間と労力を子どもに割かない限り,合格は難しそうです。
後者のTOEIC Bridgeはビジネスシーンでなく日常英会話が中心ですが,今は社会人向けのTOEICも小学生に人気があるようで,運営から
12歳以下であっても受けられます。
との回答がみられた他,小学生のうちに600点取得を目指すような塾までもが登場してきています。
いずれにしても,将来の進路を見据えつつ,子ども本人の興味に従ってやりたいものをやらせる方針でいるのが良さそうです。
なお,小学生が数年という短期間で一気に英語力を高めても,その後別のものに興味が移ったり,他にやることが多くなって満足に英語学習の時間が取れなくなったりすると,すぐに成績は悪くなってしまうでしょう。
しかし,一度学んだことは,たとえ後ですっかり忘れることになっても記憶のどこかに残っているもので,何かのきっかけがあればすぐに呼び起こすことができるはずです。
そういった意味で,小学生のような早い段階から英語を学んでおけば,中学や高校で学び直したとき,多くの記憶が呼び起こされてはその身を助けてくれることになるので,かけた努力は決して無駄にはなりません。
こちらも,学生が青春時代に何かに打ち込むことに似ているのですが,いずれにしても本気で頑張ったものが将来の自分の根幹部分を支えてくれます。
よって,未来ある子どもには,
自分の気持ちに従って,やりたいと思ったことを頑張るように。
と伝えるようにしてください。
最後までお読みいただき,ありがとうございました。