今回は中学生の語学教材として有名な「基礎英語」を取り上げ,その内容についてレビューするとともに,基礎英語を用いて学習することのメリットや注意点についても考えてみようと思います。
私自身,中学生のときに聴いていましたし,塾講師になってからも,自分の生徒に聴くように指導していたものです。

なお,2018年度からは小学生向けの基礎英語が,2021年度からは高校生も対象に含めた講座が初登場し,今ではより幅広い学年に開かれた番組となりました(もっとも後者は2024年度に終了となりました)。
それではまず,基礎英語の概要から確認していきましょう!
現在の基礎英語講座
遡ると1926年からラジオ放送されている基礎英語ですが,戦後,中学校の英語教育の補助を目的に再出発し,その後いくつかのリニューアルを経て,現在では小学生から大人まで使える有用な英語教材の1つになっています。
私が中学生だった数十年前を振り返ってみると,
基礎英語を毎日聴くように
と学校側から指示があり,実際,定期テストで本番組からの出題も見られました。
番組を聴いていないと正解できない問題だったため,ラジオの放送時間に合わせて早起きするようにしては,眠い目をこすりながら聴いていたのは良い思い出です。

語学教材が豊富な現在においても同様の指導をする教員が絶えないのは,きっと私と似た学生時代を過ごした方が多いからでしょう。
たしかに,当時もカセットテープやCDを利用することはできましたが,今では「らじる★らじる」や「NHKゴガク」でアーカイブ放送を聞くこともできるため,放送開始時刻に合わせて家で待機する必要はないですし,部活や習い事の時間帯と被って聞き逃すリスクもありません。
もっとも,2000年を超えた頃から,放送された内容を録音して一生残しておけるツールが登場しており,今ではネットラジオ録音X2が知られています。
さて,2025年度(2025年3月31日スタート)においてシリーズ化されている基礎英語の講座は,
- 小学生の基礎英語
- 中学生の基礎英語 レベル1
- 中学生の基礎英語 レベル2
の3つです。
詳しい内容紹介を次章から行いますが,ここで簡単に述べておくと,一番上に挙げた「小学生の基礎英語」は2018年度に新しく始まった「基礎英語0」の流れを引く番組で,新学習指導要領に対応したカリキュラムがウリです。
一方,「中学生の基礎英語」は中学1~2年生向けのレベル1と,中学2~3年生向けのレベル2があり,レベル分けの目安としてCEFRと呼ばれる国際基準を採用しています。
ちなみに,先に挙げた小学生の基礎英語が「A0」で,中学生の基礎英語レベル1は「A1」,レベル2は「A1~A2」です(厳密に言うと「A0」はCEFRには存在しません)。
参考までに,他の語学番組についても言及しておくと,社会人向けの英会話タイムトライアルが「A2」,ラジオ英会話は「B1」,そして最高峰とされるラジオビジネス英語が「B2~C1」に設定されています。
以降では,先に挙げた3つの番組のレッスン内容をみていきますが,テキストの構成は年度や号数によって多少変わることがあるため,あくまで参考程度に捉え,詳しくは店頭で確認するようにしてください。
小学生の基礎英語
NHKが独自に定めたA0レベルは,英検で言うところの5級以下,TOEICでは120点未満のことを意味していると考えられます。
なので,小学生の基礎英語はアルファベットや英語の音そのものに馴染みたい方や簡単な英会話に挑戦してみたい方におすすめです。
年間約144回のレッスンは初心者が楽しく英語を学べるように配慮されており,「話す」に適した英語表現が特に多くピックアップされているように感じました。
月曜日と水曜日にはチャンク(いくつかの英語からなる英語のフレーズのこと)を学びますが,例えば以下のレッスンでは,4コママンガの中に挨拶にまつわるチャンクが出てきています(画像左下)↓
単純な挨拶ではありますが,文末に相手の名前を付け加えているところが1つポイントで,それがマンガのオチにも繋がっているあたりは流石のNHKラジオです。
英語圏では相手の名前を呼ぶことによって親しみが生じるとされているわけで,単に「Good morning」としか言えない人とは結構な差が生じることになるでしょう。
この後,本文の理解度を問う問題や声出し練習,そしてまとめの時間もあるため,忘れにくさや飽きにくさについても配慮されていることが伝わってきます。
ちなみにオチは公式HPの方から随時募集しており,視聴者参加型の試みは大変興味深いです。
金曜日には英語の疑問や悩みに答える電話相談が行われたり,世界で活躍する日本人へのインタビューが聞けたりするなど,番組内容にメリハリをつけるための工夫が多く見受けられます。
毎週3回(月水金)の10分番組で,講師は居村啓子氏(拓殖大学教授),パートナーがカイル・カード氏と花音氏,そしてMCにサンシャイン池崎氏を迎え,2025年の4月号からは以下のような表現を学ぶことが可能でした↓
登場する主な英語表現
My name is Odoroki Wao./ I like octopus sausages./ It's hot in Tokyo./ Have a nice trip to space./ I'm sick./ I'm good at bungee jumping./ Can you sleep alone?/ I can sing the school song well.
中学生の基礎英語
中学生の基礎英語はレベル1とレベル2から成り,2年間かけて中学英語をマスターすることができます。
土日を除いた毎週5回,15分の長さの番組で,小学生のときよりも多くのことを学べることが明らかです。
各月ごとにテーマが設定されているのが特徴で,例えば上に示したのはレベル1のものになりますが,4月号は始まりの月に相応しく「自分のことを話す」となっていました。
8月は夏休みということで,例外的にそれまでの月の復習号となるのが恒例ですが,1年かけて計22個のテーマを学ぶことができます。
昔から
英会話の7割は中学英語の知識で成り立つ
と言われており,高校生や大人が学び直す際の最初の教材としてもおすすめです。
月曜日から木曜日にかけて以下のようなスキットを用いて英語で表現できることを増やしていきますが,学べる内容には発音や文法も含まれ,文章の種類は日記だったり雑誌の記事だったりと多岐にわたります↓
平日最後の金曜日だけは別扱いで,その週のストーリーや重要表現を復習するための回です。
巻末には付録が付いていて,キーセンテンスがカードになっているのですが,これは学校の勉強や模試にも役立つでしょう。
私のときもこんな付録がついていれば良かったのですが,代わりに自作の単語カードを作っていたものです。
大人になってから今の基礎英語のテキスト内容を久しぶりに見た方は,きっと時代の変化に驚かされることになるでしょう。
内容的にも「This is a pen.」などの使用頻度が低い表現をテキスト内で目にすることはありません。
本講座のレベルはA1~A2の間に収まるものの,具体例を交えて言うと,英検の5級~準2級,TOEICだと120点~500点程度と広範囲に及ぶため,2年間やり通すことができればかなりの実力アップを見込むことができます。
8月は4~7月の復習回なので,夏から基礎英語を始めたり,夏の間だけ利用してみたりするでも良いでしょう。
学ぶ文法項目を挙げると以下の通りです↓
中学生の基礎英語で学べる文法項目
レベル1:be動詞,一般動詞,助動詞,過去形,疑問文,命令文,三単現のs,人称代名詞,未来表現,不定詞,動名詞,現在進行形,There is/areの文,前置詞,接続詞,SVC,SVOO,SVOC,感嘆文,後置修飾など
レベル2:比較の文,現在完了,受動態,冠詞,条件,間接疑問文,分詞,関係代名詞,仮定法など

担当講師はレベル1が本田敏幸氏(都留文科大学非常勤講師),レベル2が工藤洋路氏(玉川大学文学部英語教育学科教授)となっていて,パートナーは前者がChris Nelson氏とDiana Garnet氏,後者がNari氏になります。
放送時間は15分,全220回です。
基礎英語講座の利用料金
基礎英語を受講するにあたって必要となる料金は,
- テキスト代
のみとなります。
テキスト無しでも学べないわけではありませんが,復習のことを考えるとテキストは必須と言えるでしょう。
1回聴いたら終わりではありませんし,スペルの確認だったり,番組中に「テキストのどこどこを見て」という指示があったりもします。
それを踏まえて基礎英語の利用料金をまとめますと,カラー印刷が多い「小学生の基礎英語」こそ820円しますが,「中学生の基礎英語」は660円で,夏休みなどに値段が多少上下する可能性がありますが,1年間継続したときの料金は8000~10000円ほどです。
毎月5時間聴いたと仮定すると年間60時間のコンテンツとなり,コスパは悪くありません。
なお,後者は音声だけを別に購入することもでき,毎月770円となっています。
1年だと9000円強です。
基礎英語で学ぶメリットとデメリット
ここで,基礎英語を使って学ぶメリットとデメリットについて整理しておきましょう!
先述した通り,安く学べるところが大きな魅力です。
音声はラジオで毎回聞くとして,最低限テキストは購入する必要があるものの,逆に言えばそれだけしかかからないわけで,平均すると1回あたりのレッスン料は数十円となります。
そして,教材の質は間違いなく,現状の日本での最高峰です。
スマホでストリーミング放送を聴けて時間や場所の制約を受けないところも魅力ではありますが,あくまで1週間分しか残らないので,先に紹介した特殊なソフトを使うなどしない限りは,一定期間経過後は聴けなくなってしまうことに注意してください。
また,NHKのラジオ英語は形としてほぼ完成してしまっている節があり,安心して聴くことができる反面,真新しさには欠けます。
簡単に言ってしまえば,英語とその解説を聴き,最後に声に出しては英文を読み,英作文を行って終わるというのがお決まりのパターンであり,形式的には学校の授業に近いでしょう。
総合力が高まることは確実ですが,生徒の立場からすると「普段の授業とあまり変わらない」という感想を抱くかもしれません。
さらには,学校で確認テストが行われるなどがない限り,自分の取り組みの姿勢までは評価してもらえないところが難点で,どこまでしっかり取り組めるかは本人の頑張りにかかってきます。
そして何より,短期間で集中的に学びたい方にとってみれば,2年間も悠長に聞いていられないというところが本音でしょう。
このような場合,次に紹介する「ポケット語学」の方が,無制限にトレーニングが行えてしまう分,優れているように思われます。
ポケット語学について
NHKは「ポケット語学」と呼ばれるアプリも開発しています。
小学生のものや中高生の基礎英語はないものの,2022年度からそのラインナップに「中学生の基礎英語」が追加されたのは大きなニュースでした。
オンライン教材のメリットの1つは速く学べるところですから,扱う範囲の広い基礎英語は適しています。
以下に2025年3月24日時点の収録内容をまとめましたが,レッスンは随時追加される傾向にあることに注意してください↓
ポケット語学の中学生の基礎英語
レベル1:講師はすべて本多敏幸氏。中学範囲の前半部分を扱う。シーズン1(2021年度)が204レッスン,シーズン2(2022年度)は219レッスン,そしてシーズン3(2023年度)の219レッスンを収録しています。
レベル2:講師はシーズン1(2021年度)を高田智子氏,シーズン2(2022年度)を中野達也氏,シーズン3(2023年度)を松元茂氏がそれぞれ担当しています。中2後半の内容から中学を卒業するまでの英語表現を扱い,レッスン数はシーズン1から順に,204レッスン,219レッスン,219レッスンです。
さすがに現在放送中のものまでは収録されていませんが,最も古いシーズン1のものでも4年前の内容で,現在の学習指導要領に対応しています。
ポケット語学のおかげで基礎英語を短期集中で学習できるようになったということはつまり,長期休暇を使って一気に中学英語を学び直せることが可能になったということです。
中3生や高校生の方は,ポケット語学を使えば一気に中学英語を完成させることができるでしょう。
内容的にラジオ番組とまったく同一というわけではありませんが,アプリで簡単に学べるため,音声を再生したり問題を解いたりすることが容易です↓
通学中に音読練習はできないように思われるかもしれませんが,マスクをした状態で声を出さずに口を動かすだけでも効果がありますし,最近も帰宅時間に道で英語を呟きながら歩くビジネスマンを見かけたものです。
「出先でできることは自宅では行わない」というのが勉強の基本ですので,家の中ではディクテーションしたり自分が音読したものを録音してはお手本と聞き比べたりしましょう!
ポケット語学は以下のサイトから無料体験することが可能で,料金は月額899~1078円です↓
まとめ
以上,NHKの基礎英語のレッスン内容を中心に,料金やメリット,最後にポケット語学についても紹介してきましたがいかがだったでしょうか。
基礎英語のラインナップとしては小学生や中学生が使える講座が全部で3つ存在し,それぞれに異なるCEFRレベルが設定されていては新学習指導要領に沿った内容を学ぶことができます。
長い歴史のある基礎英語ですが,時代の変化にも敏感で,英語4技能を明確に意識した現代的な学習コンテンツに仕上がっているように感じました。
魅力の中では教材の質とコスパの良さが目立ちますが,周りを見渡してみると意外と続かない子が少なくないため,長期間継続できるかどうかは学習者のやる気次第です。
とはいえ,テキストは月ごとに購入できるわけですから,まずは様子見で1ヶ月やってみて,もしもスケジュールに余裕がないようであれば,長期休暇にポケット語学や夏の復習号を利用してまとめて聴いてみるのが良いように思います。
それがきっかけとなり,平日に毎日聞く習慣が身に付けば最高ですし,たとえ続かなかったとしても大した痛手にはならないでしょう。
中学英語をマスターすれば,英会話のほとんどが不自由なくできるようになるので,特に「中学生の基礎英語」を頑張るメリットは大きいように思われます。
最後までお読みいただいた方,誠にありがとうございました。