今回は中学生の語学教材として有名かつ歴史のある「基礎英語」を取り上げ,その内容についてレビューするとともに,基礎英語で学習するメリットや注意点についても考えてみたいと思います。
私自身,中学生のときに聴いていましたし,塾講師になってからも自分の生徒に聴くよう指導することがあるほどです。
なお,2018年度からは小学生の基礎英語が初登場し,より早い段階から楽しく学習できるようになっています。
それではまず基礎英語の概要から確認していきましょう!
現在の基礎英語講座
古くは1926年からラジオ放送されている基礎英語ですが,戦後,中学校の英語教育の補助を目的に再出発し,現在は小学生から大人まで幅広く使える教材となっています。
私が中学生だった数十年前にも「基礎英語を毎日聴くように」と学校側から指示があり,実際定期テストにおいて本番組からの出題も見られました。
語学教材が豊富な今になってもそのような指導をする教員がいるのは,きっと私と同世代だからでしょう。
もっとも当時はテープやCDの時代だったわけですが,現代においてはらじる★らじる(ストリーミング)が利用できるので,ラジオの放送開始時刻に合わせて必ずしも早起きする必要はなく,部活や塾の時間帯と被って聞き逃すリスクもありません↓
2024年度においてシリーズ化されている基礎英語の講座は,
- 小学生の基礎英語
- 中学生の基礎英語レベル1
- 中学生の基礎英語レベル2
- 中高生の基礎英語 in English
の4つが知られています(テレビの方にも似た名前の番組がありますが,レベルは小学生の基礎英語と同等でテキストはありません)。
詳しくは次章からみていきますが,一番上にある小学生の基礎英語は,2018年度に新しく始まった小学生向けの「基礎英語0」の流れを引く番組で,新学習指導要領に対応したカリキュラムがウリです。
中学生の基礎英語は中学1~2年生向けのレベル1と,中学2~3年生向けのレベル2がありますが,レベル分けの目安として最近ではCEFRと呼ばれる国際基準も採用されています(ただし以下に出てくる「A0」はCEFRには存在しません)。
ちなみに,先に挙げた小学生の基礎英語が「A0」,中学生の基礎英語レベル1は「A1」,レベル2は「A1~A2」中高生向けの基礎英語は「A2~B1」レベルです。
参考までに,主に社会人向けの英会話タイムトライアルは「A2」,ラジオ英会話は「B1」,ラジオビジネス英語は「B2~C1」となります。
小学生の基礎英語
CEFRではA1レベルが最低なので,NHKが独自に定めたA0レベルは英検では5級以下,TOEICでは120点未満のことを意味することになるでしょうか。
そのため,小学生の基礎英語がおすすめなのはアルファベットや英語の音そのものに馴染みたい方や簡単な英会話をしてみたい小学生と言えるはずです。
年間約144回のレッスンは初心者が楽しく英語を学べるように配慮され,「話す」に適した英語表現が特にピックアップされています。
月曜日と水曜日にはチャンク(いくつかの英語からなる英語のフレーズ)を学び,例えばレッスン1では,4コママンガの中で挨拶にまつわる表現が出てきました↓
単純な挨拶ですが,文末に相手の名前を付けているところがポイントで,それがマンガのオチにも繋がっているのは流石です。
この後,理解度を問う問題や声出し練習やまとめの時間もあります。
ちなみにオチはHPから随時募集中なのですが,視聴者参加型の試みは大変興味深いです。
金曜日には英語の疑問や悩みに答える電話相談が行われたり,世界で活躍する日本人へのインタビューなど,番組内容にメリハリをつける工夫が数多く見受けられます。
ネットでは学習者からの投稿も募集しているので,積極的に挑戦してみてください。
毎週3回(月水金)の10分番組で,講師は居村啓子氏となり,4月分だけでも以下のような表現が学べます↓
登場する英語表現例
Good morning./ It's rainy today./ My motto is "Never give up."/ I'm from Shinjuku./ I love high-protein, low fat food./ Do you like strawberry-banana-chocolate crepes?/ When is the sixth graders' ball-rolling race?/ Where do you go?
中学生の基礎英語
中学生の基礎英語はレベル1とレベル2からなり,2年間かけて中学英語をマスターすることができます。
土日を除いた毎週5回,15分の長さの番組で,各月ごとにテーマが設定されていて,例えば上に示したのはレベル1のものになりますが,4月号は「自分のことを話す」がそれです。
なお,8月は夏休みということで,例外的にそれまでの月の復習になるのですが,それ以外の月において計22個のテーマを学ぶことができます。
英会話の7割以上は中学英語の知識から成っていると言われるように,大人がNHKのラジオ番組を使って網羅的に学ぶこともおすすめです。
月曜日から木曜日にかけて,以下のようなスキットを使って英語で表現できることを増やしていきますが,文章の種類は日記から雑誌の記事まで多岐にわたります↓
ちなみに金曜日はその週のストーリーや重要表現を復習する回です。
巻末には付録が付いていて,暗記カードを作成することができますが,これは学校の勉強に応用してみても有効でしょう。
大人の方はテキストの英文内容を見て,時代の変化に驚かされるであろうと思います。
「This is a pen.」などといった使用頻度の低い表現をテキストの中で目にすることはもはやないわけです。
本講座のレベルはA1~A2の間に収まるものの,英検で言えば5級~準2級,TOEICだと120点~500点程度と幅があるため,かなりの実力アップを目指すことができます。
学ぶ文法事項に関しては以下の通りです↓
中学生の基礎英語で学べる文法項目
レベル1:be動詞,一般動詞,助動詞,過去形,疑問文,命令文,三単現のs,人称代名詞,未来表現,不定詞,動名詞,現在進行形,There is/areの文,前置詞,SVC,SVOO,SVOC,感嘆文など
レベル2:比較の文,現在完了,使役,間接疑問文,受け身の文,関係代名詞,後置修飾,接続詞,接触節,仮定法など
担当講師はレベル1が本田敏幸氏,レベル2が松元茂氏となっています。
中高生の基礎英語 in English
テキストにおけるダイアログや解説はすべて英語で書かれているため,多くの英語に触れられて大変実践的なのが「中高生の基礎英語 in English」です。
大きな目標は英語で自分の意見が言えるようになることですが,スピーキング以外にリスニング力も当然ながら鍛えられます。
オールイングリッシュと聞くと敷居が高く感じられるかもしれませんが,使われている単語は中学英語ですし,問題文には日本語も見られることもあって,決して難解というわけではありません。
以下のようなスクリプトも収録されているので,予復習に使うことも可能です↓
以上は月曜日の放送内容ですが,火曜日と水曜日には内容の理解を深めるとともに自分が意見を言う時に役立つ表現について学び,木曜日には世界中からゲストを招いて意見を聞きます。
そして金曜日に総まとめをしたら,いよいよ自分の考えを英語で述べる練習をして終了です。
講師はGary Scott Fine氏で,英語を英語のまま理解するというインプット力に加え,英語で自分の考えを伝えられるアウトプット力の両面を鍛えることができることがわかっていただけたのではないでしょうか。
こちらも,中学生のものと同様,月~金の時間帯で15分番組となります。
基礎英語の受講料金
基礎英語を受講するにあたって必要となる料金は,
- テキスト代
のみです。
テキスト無しでも学べますが,復習のことを考えるとテキストは必須と言えるでしょう。
それを踏まえて月額料金をまとめますと,カラー印刷が多い「小学生の基礎英語」こそ820円しますが「中学生の基礎英語」や「中高生の基礎英語」は660円で,夏休みなどで値段が上下することもあるものの,上の料金で1年間続けたとすると8000円~10000円ほどになります。
毎月5時間聴いたとすれば年間60時間のコンテンツなので,コスパとしても悪くありません。
なお,月ごとにCDを1700円で購入することもできますが,先述した通りストリーミングでも聴けるので魅力はそれほど感じません。
個人的にはその分,別のリスニング教材を利用する方が良いように感じます。
基礎英語で学ぶメリットとデメリット
最後に基礎英語で学ぶメリットとデメリットについて考えてみましょう!
先述した通り,安く学べるところは大きな魅力です。
最低限テキストは購入する必要がありますが,それだけしかかからないので,平均して1回のレッスンを数十円で受けられることになります。
何より,教材の質は現状最高レベルですので何の問題ありません。
スマホでもストリーミングが聴けるので時間や場所の制約を受けないところも魅力ですが,あくまで1週間分しか掲載されないので,その期間を過ぎてしまうとそれ以降は聴けなくなってしまうことに注意が必要です。
NHKのラジオ英語は形としてほぼ完成している節があり,内容についても安心して聴くことができますが,その一方で真新しさに欠ける部分もあります。
英語とその解説を聴き,最後に声に出して文を読み,英作文を行って終わることがお決まりなので,形態としては学校の授業に近いでしょうか。
総合力が身に付くことは確かですが,生徒の立場からすると「普段の授業とあまり変わらない」という感想を抱くかもしれません。
また,学校でテストを行うなどをしてもらえない限りは自分の取り組みの姿勢を評価してもらえないので,どこまでしっかり取り組めるかは本人次第なところもあります。
加えて,短期間で集中的に学びたい方にとってみれば,2年間も悠長に聞いていられないというのが本音でしょう。
このような場合,次に紹介するポケット語学の方が無制限にトレーニングが行える分,使いやすくておすすめです。
ポケット語学について
NHKは「ポケット語学」と呼ばれるアプリも開発しています。
そして2022年度から,そのラインナップに「中学生の基礎英語」が収録されることになり,私が塾で自分の生徒に指導する上でも喜ばしい限りです。
以下に収録内容についてまとめておきます(シーズン3は今後追加されます)↓
ポケット語学の中学生の基礎英語
レベル1:講師は本多敏幸氏。中学範囲の前半部分を扱う。シーズン1が全204レッスン,シーズン2が全179レッスン,シーズン3は19レッスン。
レベル2:講師はシーズン1が高田智子氏,シーズン2は中野達也氏,以降は松元茂氏が担当。中2の後半内容から中学卒業までの英語表現を扱う。シーズン1が全204レッスン,シーズン2が169レッスン,シーズン3は14レッスン。
さすがに現在放送中のものではありませんが,最も古いシーズン1のものでも2021年度分の内容ですので,新学習指導要領に対応しています。
ポケット語学のおかげで基礎英語を短期集中で学習できるようになったことは,長期休暇を使って一気に中学英語を学び直せるということを意味するので,特に中3生や高校生の方はポケット語学を使って一気に中学英語を完成させてしまいましょう!
内容的にラジオ番組とまったく同一というわけではありませんが,アプリであるだけに音声を再生したり問題を解いたりする作業が容易になります↓
通学中に音読練習はできないように思うかもしれませんが,マスクしながら口を動かすことはできるでしょうし,最近では帰宅時間に道で英語を呟きながら歩くビジネスマンを見かけることも多くなりました。
出先でできることは自宅で行わないのが勉強の基本ですので,家の中ではディクテーションをしたり自分が音読した物を録音するなどしてお手本と聞き比べてみましょう!
以下のサイトから,無料体験が可能です↓
まとめ
以上,NHKの基礎英語のレッスン内容を中心に,料金やメリット,最後にポケット語学についても触れてきましたがいかがだったでしょうか。
基礎英語のラインナップとしては小学生や中学生以上が使える4講座があり,それぞれ異なるCEFRレベルに設定されていて,新学習指導要領の内容に沿った基礎英語だけに,英語4技能を明確に意識した現代的な学習コンテンツに仕上がっていると感じました。
魅力としては教材の質とコスパの良さが目立ちますが,周りを見渡すと意外と続かない子がいるので長期間継続できるかどうかはあなた次第です。
とはいえ,月ごとに購入できるわけですから,まずは様子見で1ヶ月,スケジュールに余裕がなければ,長期休暇にポケット語学や復習号を利用してまとめて聴いてみるのが良いように思います。
それがきっかけで平日毎日聞く習慣が身に付けば結構ですし,たとえ続かなかったとしても大した痛手にはならないでしょう。
中学英語をマスターすれば,英会話のほとんどが不自由なくできるようになると言われているので,特に中学生の基礎英語を頑張るメリットは大きいと思います。
勉強に集中できる学生時代に是非学んでみてください!
最後までお読みいただいた方,誠にありがとうございました。