大学入試センター試験に代わる新しいテストですが,2017年にはその正式名称が決定し,以降は「大学入学共通テスト」と呼ばれることとなりました。
その後,数回の試行調査が行われ,難易度以外は順調かと思われていましたが,2019年になると同じく入試改革の目玉であった「大学入試英語提供システム」の実施が見送りとなり,その翌月には共通テストの記述式問題の導入を見送ることまでもが決定されてしまったわけです。
もっとも,共通テスト自体は当初の予定通りに実施され,新しい形式の出題に対しても試行調査の記事で語ったような内容がそのまま判断材料として使えるように思われます。
本記事では,そんな共通テストと従来のセンター試験との違いや,文科省のHPで公表された内容のうち,受験生の役に立つと思われる情報を中心にまとめてみました。
ただしその内容は随時更新中ですので,たまに当ページを見返していただき,変更がないか確認していただけたらと思います。
大学入学共通テストとセンター試験の類似点
大学入学共通テストは2021年1月に第1回が実施された,これまでのセンター試験に代わる新しいテストです。
とはいえ,センター試験と全く別の物に生まれ変わってしまったわけではありません。
ここではまず両試験の類似点について見ていきましょう!
要点を簡単にまとめると以下のようになります↓
- 日時にほぼ変更なし
- 科目にほぼ変更なし
- マーク式主体に変わりなし
- 英語の試験も読むと聞くが中心
入試「改革」と聞くと,劇的に変わった印象を受けるかもしれませんが,そこまでではありませんでしたので安心してください。
上の内容にもう少し説明を加えていきましょう!
実施日時に変更はなく,これまでと同じ1月中旬(正確には13日以降の最初の土日)に行われます。
コロナの影響で初年度は追試験の日程が余分に設けられましたが,2022年以降の実施分においてはこれまで通りの1回のみです。
なお,科目については「学習指導要領が新しくなるたびに改革が進む」との国からのお達しの通り,2025年1月(令和7年度)の試験からガラリと変わります。
最新の内容は以下の記事にまとめているので参考にしてください↓
試験料もこれまでと変わらず,3教科以上は18000円,2教科以下だと12000円です。
次にテスト形式ですが,数学Iと現代文(国語総合)には記述式が導入される予定だったものが見送りとなってしまい,完全にマーク式のままとなっています(そもそもの話では2021年実施分から国数,2024年実施分から地歴公民や理科において導入されることになっていました)。
とはいえ中止とは言われていないので,いつかまたこの話題を耳にすることがあるかもしれません。
さて,気になる英語の試験方式についてですが,4技能のうち「書く」と「話す」については評価されません。
前者は記述式でなければ難しいですし,後者に関しては「話す」能力を測定したいがために民間の検定試験が導入される予定だったわけで,それに伴い共通テストの英語試験はいずれ廃止となる見込みだったわけです。
しかし2025年1月に実施された共通テストにおいても英語試験は実施されています。
共通テストとセンター試験の相違点
次に,従来のセンター試験からの変更点についてまとめます↓
- 試験時間が増えた
- 英語の出題内容にあった「筆記」が「リーディング」になった
- 英語の配点が変わった
- リスニング重視となり,1回しか読まれない問題も登場した
- 思考力,判断力,表現力を問う問題が全教科で加わった
問題が難しくなったことで数学①(IとIA)についてのみ試験時間が全部で70分に変更となり,これまでのセンター試験より10分だけ長くなりました。
なお,2025年の共通テストからは数学②(IIBC)も70分となり,国語も10分延びて90分となる他,「情報」という教科が追加になる予定です(60分)。
ちなみに2021年の共通テストの英語試験から,その出題内容が従来の「筆記・リスニング」から「リーディング・リスニング」という表記に変わった上,リスニングが50点→100点満点,リーディングは200点→100点満点に変更となり,結果的に聞く能力に対する配点の割合が高まりました。
リスニング試験では1回しか読みあげられない問題が混ざるようにもなって,6つある大問のうち第3問以降の4つがそれで難易度が高くなっています。
細かいところだと,理科系の科目(物理,化学,生物,地学)で選択問題は出題されません。
そして問題の質についても変化が見られ,センター試験では知識や技能のみが問われていましたが,共通テストではその2つに加えて,思考力・判断力・表現力までもが問われることになっています。
これを発想力・論理力・要約力などと呼んでも構わないでしょうが,問題をなんとなくで解くことがないよう日ごろから注意しておきたいものです。
本章の最後に,2021年と2025年実施の共通テストにおいて大きく変更となる科目をまとめておきましょう↓
2021年 | 2025年 | |
地理歴史 | 世界史A,世界史B,日本史A,日本史B,地理A,地理B | 地理総合+地理探究,歴史総合+日本史探究,歴史総合+世界史探究,地理総合+歴史総合+公共 |
公民 | 現代社会,倫理,政治経済,倫理+政治経済 | 公共+倫理,公共+政治経済,地理総合+歴史総合+公共 |
数学② | 数学II,数学II+B,簿記会計,情報関係基礎 | 数学II+B+C |
情報 | なし | 情報I |
6教科30科目から7教科21科目となっている他,名称が変わっていなくても学習内容に多少の変化が出ていることもあります。
実際の共通テストについては,以下で解き方を分析しているので参考にしてください↓
今年度の共通テストについて
これまでの内容と被るところもありますが,本章では直近に行われた【2024年1月実施分(令和6年度試験)】の共通テストについて,実施要項の内容をまとめておきましょう↓
- 受験案内:2023年9月1日頃より入手可能
- 検定料の払込期間:2023年9月1日~10月7日頃
- 出願期間:2023年9月27日~10月7日頃
- 料金:18000円(3教科以上),12000円(それ以外)
- 試験日:2024年1月13日~14日,1月27日~28日(追試)
補足としまして,2023年10月末に確認ハガキが,12月中旬までに受験票や成績請求票などが届きます。
また成績開示を希望する場合には追加で800円を支払うと4月1日以降に届くとのことです。
試験科目は,
1日目:地歴公民(2科目受験は9時30分~11時40分,1科目受験が10時40分~11時40分),国語(13時~14時20分),外国語(筆記15時10分~16時30分,英語リスニングは17時10分~18時10分)
2日目:理科①(9時30分~10時30分),数学①(11時20分~12時30分),数学②(13時50分~14時50分),理科②(2科目受験は15時40分~17時50分,1科目受験は16時50分~17時50分)
で変わりありません。
例年,試験時間を勘違いする受験生が一定数いるので注意しましょう。
ちなみに初年度の共通テストの志願者が53万367人だったのに対し,2024年の志願者数は49万1913人でした。
少子化が進んでいるのでこれからはもっと減ることでしょう。
なお,本章の内容については文部科学省と大学入試センターの情報を中心にまとめました↓
まとめ
高大接続改革の目玉であったセンター試験の廃止と共通テストの導入ですが,これまで以上に論理力や思考力などが求められる内容になったことは明らかです。
こうした出題を苦手に感じる受験生も多いように思われますが,初見の問題において問題文を正確に読む力は今後さらに求められることになるでしょうし,国立の2次試験や私大入試においても同タイプの問題は増えているので,これもまた時代の流れであると腹を括りましょう。
全体的に受験者の負担は増えていますが,最近の生徒を教えていると,知識は丸暗記できているけれど,それをどのように現実社会に応用すればよいかわからないことが多いように感じることが多々あります。
そんな中でこのような思考中心のテストが出てきたわけですから,否が応でも頭を使う必要性が生じ,真の意味での賢い子が評価されるようになったことは世の中的にみても決して悪いことではありません。
今やインターネット上に知識は転がっていて自由にアクセスできます。
ならば今を生きる現代人は多くの知識を持っていることよりも,どこにアクセスすればその知識が素早く得られるのか知っていたり,その知識をどうやって使うかを理解しているといった「知識を使うための知識」があることの方が重要でしょう。
読む力を高めて論理的に順を追って理解できるようになれば,丸暗記した知識も忘れにくくなるというものです。
もちろん,この共通テストがそうした能力を正しく評価できるのかについては不安材料が残っており,実際それが露呈してしまったのが記述式の導入見送りにつながってしまったわけですから,今後もしっかり整備されていくことを望みます。
最後までお読みいただきありがとうございました。