「英語を話せるようになりたい」と思っている人は多いはずです。
ただ,実際に英語で会話できるようになるまでには,単語や文法を覚えるだけでは足りません。
自分の言いたいことを英語に直す力に加えて,相手の質問に対して中身のある返答をするための知識も必要です。
その両方を強く求められる試験の1つが,全国通訳案内士の口述試験です。
当記事では,全国通訳案内士の口述試験の勉強法を通して,英語で話すために必要な力と,それを身に付けるための具体的な対策を整理します。
英語を話せるとは,どのような状態か
「英語を話せる」と言っても,その意味するところは人によって異なります。
たとえば,海外旅行で注文や簡単な受け答えができれば十分という場合なら,スマホの翻訳アプリも大きな助けになります。
実際,今は日本語をその場で英語に変換し,相手の発話もすぐ日本語で確認できる時代です。
しかし,ここで考えたいのは,そうした補助なしで相手と英語でやり取りする力です。
そのためには,少なくとも次の2つが必要になります↓
- 自分の言いたいことを英語にできること
- 相手の質問に答えるだけの知識や内容を持っていること
どちらか一方だけでは,英語で十分に話せる状態とは言えません。
英語の語彙や文法を知っていても,話すべき内容がなければ会話は続きません。
逆に,日本文化や地理,歴史について詳しくても,それを英語に変えられなければ相手には伝わりません。
特に外国人に日本のことを説明する場面では,英語力と,日本に関する基礎知識の両方が必要になります。
全国通訳案内士の口述試験は,まさにその両方を問う試験です。
全国通訳案内士の口述試験の内容

口述試験の構成
試験時間:10分前後
試験委員:外国語話者1名と日本語話者1名の2名体制
プレゼンテーション問題:提示される3つのテーマから1つを選び,30秒で準備した後,2分間程度で説明する。その後,関連する質疑応答がある。
通訳問題・シチュエーション問題:日本語で読み上げられた内容を外国語に訳し,さらに全国通訳案内士としてどう対応するかを問う質問に答える。
メモ:試験中はA4用紙とボールペンを使ってメモを取ってよい。
プレゼンテーション問題の準備時間は30秒しかありません。
テーマは地理・歴史・一般常識から幅広く出され,他の受験者と問題が重ならないよう,複数の問題セットが用意されています。
評価項目は何が重視されるのか
口述試験の評価項目としては,おおむね次の5つが意識されます↓
- プレゼンテーション
- コミュニケーション
- 文法及び語彙
- 発音及び発声
- ホスピタリティ
このうち,特に土台になりやすいのは「プレゼンテーション」と「コミュニケーション」です。
知識が十分にあっても,相手の質問を聞き取れなければ会話は成立しませんし,文法が多少整っていても,説明すべき内容が乏しければ得点は伸びにくいでしょう。
合格基準は一般に7割程度とされることがありますが,受験者側からは細かな採点の実感を持ちにくいため,こちらとしては各設問で全力を出し切るほかありません。
全国通訳案内士の口述試験に合格するための考え方

まず大前提として,一次試験の英語が余裕な人でも,二次試験用の勉強を毎日続けることが重要です。
近年の口述試験では,以前は一次試験で強く問われていた知識や処理力の一部が,二次試験側により濃く現れているように感じます。
せっかく筆記試験に通っても,口述試験で不合格になれば翌年また同じ壁を越えなければなりません。
英検の面接と似て,二次試験の突破率だけを見ると高く見える年もありますが,母集団はすでに一次試験を突破した受験者です。
その中で半数近くが落ちる可能性があると考えれば,決して楽な試験ではないでしょう。
実際の口述試験は,大きくは「プレゼンテーション問題」と「通訳問題・シチュエーション問題」から成りますが,細かく見ると,
- 第1問:プレゼンテーション
- 第2問:プレゼン後の質疑応答
- 第3問:通訳問題
- 第4問:シチュエーション問題
という4つの要素に分けて考えることができます。
このうち,対策の軸になるのは特に第1問と第2問です。
第4問は,ある程度その場で切り抜けやすい問題です。
もちろん英会話力や状況判断力は必要ですが,知識がゼロでも対応の方向性を示しやすく,得点差が極端につきにくい印象があります。
一方,第3問は出題文の聞き取りやすさや試験官との相性に左右される面があり,対策していても本番の手応えが安定しないことがあります。
そのため,合否を左右しやすいのは,やはり第1問のプレゼンと,第2問の質疑応答で何を話せるかです。
昨年(2025年度)に私が受けた際のテーマは「天橋立・アイヌ民族・イマーシブ体験」でした。
地理・歴史系の定番テーマに加えて,近年の一般常識からも新しい題材が出ます。
この傾向を見ると,〇選タイプの参考書だけを丸暗記しても万全にはなりません。
実際,収録語数が多い本ほど的中率は上がりやすい一方で,覚える負担も大きくなります。
逆に,収録語数が少ない本は回しやすいものの,本番でそのまま使えるテーマに当たる確率は下がります。
つまり,参考書は「そのまま出ることを祈るためのもの」ではなく,話し方の型と語彙を身に付けるための教材として使う方が現実的です。
なお,地理や歴史の一次試験を免除している人は要注意です。
しばらく日本地理・日本史から離れていると,口述試験で問われる内容がごっそり抜け落ちていることがあります。
全国通訳案内士試験の一次試験も含めた全体像については,以下の記事で詳しく扱っています↓
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全国通訳案内士試験に合格する勉強法!気長に正答率を上げ続けよう
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英語を話すために必要な勉強法
1.言いたいことを英語にできるようにする
まず必要なのは,日本語で思ったことを,できるだけ短時間で英語に直せる力です。
その土台になるのは,語彙力と文法力です。
festival,sports day,do one’s best,cloth headbandのような表現が自然に浮かばなければ,会話のスタート地点に立ちにくくなります。
さらに,英文として組み立てる力に加えて,相手に伝わる発音や抑揚も必要です。
発音面は英検やTOEFLなど他試験の学習が役立つこともありますが,口述試験では「知っている」だけでなく,「時間内に口から出る」ことが大切です。
この段階で特に重要なのは,中学英語の運用力です。
複雑な内容ほど高度な単語が必要と思われがちですが,実際には,中学レベルの文法を素早く正確に使えるかどうかで差がつきます。
たとえば,簡単な内容を英訳するのに時間がかかる人が,歴史や文化の説明を本番で流れるように話すのは難しいでしょう。
そこでおすすめなのが,瞬間英作文です。
使う順番としては,次の流れが取り組みやすいです↓
- どんどん話すための瞬間英作文トレーニング
- スラスラ話すための瞬間英作文シャッフル
- バンバン話すための瞬間英作文「基本動詞」トレーニング
以下の教材がその代表例となります↓
なお,英語を口から出す力を高めるには,音声を使った練習も欠かせません。
リスニング教材は,日本事情や時事問題を扱うものだと一石二鳥です。
シチュエーション問題の対応練習にもつながりますし,英検1級の学習と並行している人は,そのリスニング対策を活用してもよいでしょう↓
2.相手の質問に答えるだけの内容を持つ
英語学習では,英語そのものばかりに目が向きがちですが,口述試験では「そもそも何を話すか」も同じくらい重要です。
たとえば,侘び寂び,人形浄瑠璃,落語,日本三景,あるいは最近の観光トピックについて,日本語で数分話せるでしょうか。
日本語で説明できない内容は,英語でも説明できません。
そのため,口述試験対策では次の3分野を押さえる必要があります↓
- 日本地理
- 日本史
- 一般常識・時事
目安としては,まず義務教育レベルの基礎事項をしっかり理解することです。
全国通訳案内士試験の一次試験で問われる内容は,そのまま口述試験の土台にもなります。
つまり,次のような勉強は,口述試験対策としても非常に有効です↓
- 中学教科書レベルの日本地理を復習する
- 中学教科書レベルの日本史を復習する
- 近年の時事問題や観光関連トピックを把握する
また,盲点になりやすいのがリスニング力です。
どれだけ知識を蓄えていても,相手の質問が聞き取れなければ,会話そのものが始まりません。
プレゼンでは自分が話す力が目立ちますが,実際には「何を聞かれているのか」を正確に捉える力が同じくらい重要です。
そのため,英語を話す練習だけでなく,英語を日常的に聴くことも疎かにしないようにしてください。
英語を話せるようになるために使える参考書
以上を踏まえると,口述試験対策に使う教材は大きく次の4種類に分けて考えられます↓
- リスニング教材
- 口述試験の形式に沿った問題集
- 語れる知識を増やすための本
- 日常的な会話や対応表現を学べる本
勉強の軸になるのは3番で,そこに1番と4番で基礎力を補い,最後に2番で本番形式に合わせて仕上げるイメージです。
問題集では模範解答を覚える勉強が中心になりやすいですが,それだけでは「未知のテーマに対応する力」が育ちにくい面もあります。
ここでは,口述試験対策に使いやすい教材を3段階に分けて整理します。
初期に使う参考書
初期段階では,英語を組み立てる基礎力を高める教材を優先します。
この段階の目的は,難しいテーマを覚えることではなく,中学英語を素早く使える状態にし,基本的なリスニングとスピーキングの土台を作ることです。
すでに紹介した瞬間英作文と,日本事情系のリスニング教材は特に相性がよく,口述試験の入口としておすすめです。
メインに使う参考書
メイン教材としては,日本関連の用語を英語で説明した参考書を使います。
いわゆる「日本的事象英文説明○選」といった本がこれに当たります。
ただし,これらの本は万能ではありません。
過去問ベースで作られているため,収録されていないテーマが本番で出ることは普通にあります。
未知の一般常識テーマが出る年もあります。
ですから,ここで大切なのは「丸暗記すれば受かる」と考えないことです。
これらの参考書は,
- 日本関連語彙を増やす
- 説明の組み立て方を学ぶ
- 他テーマにも流用できる表現を蓄える
ために使うのが現実的です。
代表的な教材の1つが以下です↓
また,これらの参考書で学ぶ際は,わからない表現を生成AIに随時確認すると理解が深まります↓

語法やニュアンスの違いをその場で確認できるため,参考書を読むだけよりも定着しやすくなります。瞬間英作文の文法確認にも使えます。
仕上げに使う参考書
仕上げの段階では,未知のテーマに対して,その場で英語を組み立てる練習が重要になります。
近年の一般常識テーマは特に予想しにくく,既存の〇選本だけでは対応しきれません。そこで有効なのが,生成AIを使って過去問に近いテーマを作らせたり,日本語の説明文を英語に言い換えたりする練習です。
たとえば,過去の出題テーマをAIに読み込ませ,未出題の近いテーマを出させて,1分から2分で説明する練習を繰り返す方法があります。
AIを用いたスピーキング練習については以下の記事を参考にしてください↓
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【2026最新】AI英語スピーキング対策マニュアル!「話す内容がない」を突破する実践練習
「英語を話せるようになりたい」と願いながら,多くの人が「対面」の壁に跳ね返されます。 相手が何を言っているか聴き取れない(リスニングの壁) 質問の意図をはき違えてしまう(文脈の読み違え) 正しい発音ができず,簡単な単語( ...
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また,次のような仕上げ方も有効です。
- 日本語の説明を見て,自分で英語に直す練習をする
- 一次試験用の日本語参考書を使い,内容を英語で説明する練習をする
後者の方法だと,日本語で知識を確認しながら,それを英語に変える訓練まで同時にできます。免除科目が多い人でも,基礎知識の補強と英語対策を並行しやすいのが利点です。
たとえば,ユーキャンのような総合参考書を,単なる知識確認本としてではなく,「日本語で理解した内容を英語に変える素材」として使うことができます。
本番での的中だけに頼らず,知らないテーマでも自力で形にできる状態を目指すことが,最終的には最も安定した対策になります。
加えて,普段の勉強の中で面白い記事を見かけたら,その内容を短時間で説明する練習も有効です。
こうした練習を重ねると,既存の問題集に載っていないテーマにも少しずつ強くなっていきます。
まとめ
全国通訳案内士の口述試験は,英語力だけを問う試験ではありません。
プレゼンでは「自分の言葉で説明すること」が大切だとよく言われますが,その前提として,説明できる知識が自分の中にあること,相手の英語を理解できること,そして自分の思うことをすぐ英語にできることが欠かせません。
そのための学習としては,まず瞬間英作文などで英語化の速度を高め,次に日本地理・日本史・一般常識を素材にして,英語で説明する練習へ進むのが効果的です。
〇選タイプの参考書は有力ですが,丸暗記用ではなく,語彙と説明の型を学ぶ教材として使うのが現実的です。
さらに今は,生成AIを使って未知テーマの練習や表現の確認がしやすくなりました。
従来の参考書学習にAIを組み合わせることで,口述試験対策はかなり進めやすくなっています。
こうした対策を続けても,口述試験は本番の緊張に強く左右される試験です。
なお,1回で受からなかったとしても,そこで終わりではありません。
私自身,一昨年と昨年に二次試験で不合格を経験していますが,初回に大きく崩れたことで,翌年以降は「本番ではこういう緊張が起こる」と前提を置いて準備できるようになりました。
一度痛い失敗を経験すると,本番で口の中が乾くことも,頭が真っ白になることも,ある程度は想定内になります。
その結果,平常時の勉強を続けやすくなり,試験翌日からも学習習慣を切らさずに済むようになります。
不合格はもちろん悔しいものですが,口述試験のような実戦型の試験では,失敗経験そのものが次年度の重要な教材にもなります。
失敗を通じて見えてくる課題もとても具体的です。
口述試験の勉強を続けると,英語力だけでなく,日本について自分の言葉で説明する力も確実に鍛えられます。
英語を話せるようになりたい人にとって,全国通訳案内士の口述試験は非常に良い目標になります。
本気で力を伸ばしたい方は,ぜひ試験対策そのものにも挑戦してみてください。
今回の記事が,少しでも学習の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

