勉強しているのに,テストが終わるとすぐ忘れてしまう。
同じ問題を何度も解き直しているのに,少し形を変えられると解けなくなる。
こうした悩みの原因は,本人の努力不足ではなく,知識を「意味のある形」で覚えられていないことにあるかもしれません。
学校の教育方針が「詰め込み」寄りになっても,「ゆとり」寄りになっても,家庭学習で大切なことは大きく変わりません。
丸暗記で終わらせず,背景や理由と結びつけて学ぶことです。
この記事では,西林克彦氏の『間違いだらけの学習論』を参考にしながら,丸暗記を防ぎ,記憶に残りやすくする勉強法について整理します。
詰め込み教育と丸暗記は同じではない
「詰め込み教育」という言葉には,どうしても悪い印象がつきまといます。
一方で,「ゆとり教育」は,知識を詰め込むだけの受け身の学習から離れ,子どもが自分で考えたり,体験を通して学んだりすることを重視した教育方針でした。
その方向性自体は決して間違っていません。
PISAのような国際調査では,単に知識を覚えているかだけでなく,身につけた知識や技能を実生活の場面でどう活用できるかが問われます。
その意味では,知識を使って考える力を育てようとする教育改革には大きな意味があります。
ただし,ここで注意したいのは,「知識を減らせば考える力が育つ」という単純な話にはならないことです。
知識がなければ,そもそも考える材料が足りません。
反対に,多くの知識を得たとしても,意味を理解せずに用語だけをただ丸暗記しているようでは,応用問題や実生活の課題には対応しにくくなります。
つまり問題なのは,詰め込み教育そのものではなく,知識同士を結びつけず,背景や理由を考えないまま覚えてしまうことです。
丸暗記だけでは知識が残りにくい

用語だけ覚えるとテスト後に忘れやすい
定期テストの直前になって,教科書の太字や単語帳の用語だけをひたすらノートに書き写して覚えようとした経験はないでしょうか。
しかし,用語の字面だけを覚える「丸暗記」は,脳にとって意味のない情報の羅列にすぎません。
短期的な記憶としては残っても,テストが終わって少し時間が経つと,あっという間に頭から抜け落ちてしまいます。
これでは,実力テストや受験の前にまたゼロから覚え直すことになり,大変非効率です。
背景知識があると記憶に残りやすい
一方,用語の意味や「なぜそうなったのか」という背景知識と一緒に学ぶと,知識は長く記憶に留まります。
すでに知っている知識やストーリーと結びつけることで,新しい情報を思い出しやすくなるからです。
一見すると,背景知識まで含めて学ぶことは,覚える量が増えて大変に思えるかもしれません。
しかし,関連づけによって「思い出すためのフック」がたくさんできるため,結果的には丸暗記よりも忘れにくく,学習効率が高まります。
学ぶ量は少ないほどよいとは限らない
自分が学生だった時のことを思い出してみると,宿題の量やテスト範囲が少なければ少ないほど喜んでいたものです。
しかし,学習において実は「情報量が少ない(=背景知識がない)からこそ,かえって記憶に留めておけなくなる」という事実をご存知でしょうか。
歴史は流れで覚えると忘れにくい

例えば,先ほど紹介した本からの引用ですが,以下の問題を解いてみてください↓
班田収授の法・荘園の成立・三世一身の法・墾田永年私財法を年代順に並べなさい。
もしあなたが「年号や用語だけを丸暗記する勉強法」を採用しているのであれば,試験が終わって歴史の勉強をしなくなった途端に忘れてしまい,後から自信を持って正解することは難しいはずです。
逆に,公地公民を「古代の土地制度の規制が徐々に緩くなり,しまいには崩壊して荘園制が成立した過程」であると理解し,これら4つの出来事を歴史の流れの中で捉えることができていれば,簡単に,
- 班田収授の法
- 三世一身の法
- 墾田永年私財法
- 荘園の成立
と正しく並び替えられるでしょう。
正解できる生徒の勉強法は,上の4つの言葉を語呂合わせなどで無理やり丸暗記したわけではありません。
それぞれの出来事の内容について知っているだけでなく,古代の土地制度の衰退から荘園制の成り立ちまでの「歴史の流れ」も一緒に学んでいるのです。
このことは,周辺情報を含めて「学ぶ量」が多い方が,実は記憶に留めておきやすいということを伝えてくれています。
要点だけを書き並べた1枚のまとめ用紙(当サイトでは「A4まとめマップ」と呼んでいます)は,すでに学んだ内容を整理し,記憶を呼び戻すためには有効です。
ただし,A4まとめマップが力を発揮するのは,頭の中に周辺情報や因果関係が入っている場合です。
背景を理解しないまま,短い言葉だけを1枚に並べても,それは結局,丸暗記用のメモになってしまいます。
普段の学習では,マンガ形式の教材や,予備校の授業のように語り口調で背景まで学べる参考書を使い,その後でA4まとめマップに要点を整理すると,知識が記憶に残りやすくなります。
興味がある方は,日本の歴史マンガの学び方を読んでみてください。
無意味な情報は最小限に絞る
誤解しないでいただきたいのですが,「情報量が少ない方が覚えやすい」ケースもあります。
例えば,「2桁の数字を暗記しろ」という課題に対しては,20個覚えるよりも5個覚える方が簡単なのは明らかです。
電話番号も,人が記憶に留めておきやすい量になっています。
ですが,これらの例が先の歴史の話と違うのは,それが「無意味な情報の羅列」であるという点です。
数字の暗記のようにそれ自体に規則性がなく意味のないものは,覚える量が少ない方が良いことになります。
そのため,数学における定義や英語の不規則変化のようなものは「最低限だけを丸暗記しておく」方が望ましいです。
しかし実際には,学校で学ぶ知識のほとんどは「意味があるもの」です。
だからこそ,勉強法を工夫することで忘れにくくする必要が出てきます。
数学の公式も丸暗記してしまえば無意味な文字列の羅列に過ぎませんが,公式を自分で証明する練習を通すことで,「意味のある事柄」へと変わるのです。
復習では意味づけを加える
さて,学校の勉強において一番多く行うことになるのは「復習」でしょう。
最近では反転学習の授業形態を取ることもあるため,予習が宿題に課されることも増えてきていますが,すべての授業に予習が必須でないのに対して,復習はほぼ毎回行うことになります。
だからこそ,同じ問題を数回解き直すときの「正しい勉強方法」を知っておくことは重要です。
このとき,ただの作業的な繰り返しにしないようにしてください。
頭をしっかりと使って,学ぶ事柄に「意味を持たせる(意味づけをする)」ことができたときに初めて,解き直しが効果を発揮するようになります。
ただ解き直すだけでは作業になる
簡単な例を通して,意味を持たせることの重要性について理解を深めましょう。
まず,1度目の学習において「女の人が氷を持っている」という状況を理解したとします。
これを2度目に学習(復習)する際,ただ同じ文章を読むのではなく,
熱を出してしまった子どもの母親が氷を持っている。
などと背景を補って学び直すことができると,「女性」と「氷」の結びつきがより強くなるわけです。
下線を引いた部分が学習者の「工夫」であり,女性と氷の間に新しい情報(熱が出ている子ども)が加わっています。
前章の内容からお分かりの通り,これは決して余計な情報ではなく,なぜ女性が氷を持っているかという「理由付け」を行ったわけです。
もしも上の状況を,頭を使わずにただ「女性と氷」という言葉だけで丸暗記する勉強法では,覚えていられる期間が短くなり,せっかくの復習も効果が薄くなってしまいます。
英単語を覚えるときも同じです。
単語だけを何度も眺めるより,例文の中で使い方を確認したり,似た意味の語や反対語と一緒に覚えたりした方が記憶に残りやすくなります。
というわけで,復習して理解を深める際は,自分がこれまでに気づかなかった周辺情報を付け加えて,学習内容に「意味を持たせる」ことが重要です。
そして,そのやり方を身につけるまでの学習の初期段階においては,周りの大人が積極的に働きかけていく必要があります。
関連知識が増えるほど暗記のペースは加速する
知識量が増えていくことについて補足すると,たくさん覚えたからといって,脳の容量がいっぱいになり新しい知識の吸収を妨げるようなことはありません。
むしろ現実は真逆であることの方が多く,知識が増えれば増えるほど「意味づけによる繋がり」が見えやすくなるため,新しい知識を吸収するペースが加速していくことが知られています。
教科別に見る意味づけのコツ
これまでの内容を踏まえて,各教科で具体的にどのような「意味づけ」をすればよいのかを見ていきましょう。
英語は接頭辞・接尾辞・品詞に注目する
英語の学習において,単語をアルファベットの羅列として丸暗記するのは非常に非効率です。
代わりに,接頭辞や接尾辞といった「応用のきく知識(パーツ)」に注目しましょう。
例えば,「un-」が付くと否定の意味になる(unableなど)ことや,「re-(再び)」という接頭辞を知っていれば,「rebuild(再建する)」や「restart(再出発する)」といったように,初めて見る単語でも意味を推測できるようになります。
また,「-lyが付くと副詞」「-tionとなっていれば名詞」といった品詞の目印を知っておくことも有効です。
このように法則を意識することで,暗記の負担を大きく減らしつつ,忘れにくい知識に変えることができます。
数学は公式の成り立ちを確認する
先ほど「公式を自分で証明する練習を通すことで意味のある事柄に変わる」とお伝えしましたが,数学を苦手とする生徒にありがちなのが,公式を「無意味な呪文」としてそのまま暗記してしまうことです。
丸暗記した公式は,少しでも問題の形が変わると「どの公式を使えばいいか分からない」という事態に陥りやすくなります。
「なぜその公式が成り立つのか」を教科書で確認し,自分で手を動かして導出の過程を追ってみましょう。
成り立ちを知っていれば,もしテスト本番で公式をド忘れしてしまっても,その場で自力で作り出すことができ,応用問題にも対応できる力が育ちます。
社会は出来事の順番と因果関係を押さえる
社会科は暗記科目だと思われがちですが,用語や年号だけを単発で覚える勉強法はすぐに限界が来ます。
前半の公地公民の話題で「歴史は流れで覚える」と解説したように,「因果関係(原因と結果)」を意識することが最も強力な意味づけになります。
「誰が不満を持っていたから(原因),この反乱が起きた(出来事)」「その結果,世の中の仕組みはどう変わったのか(結果)」というように,歴史をひとつのストーリーとして繋げてみてください。
地理や公民も同様に,「気候がこうだから,この作物が育つ」と理由をセットにするだけで,記憶に残りやすくなります。
体験するだけでは学んだことにならない
教育改革に関する話題では,「知識を覚えるより体験が大切だ」といった意見が強調されることがあります。
ですが,そんなときにこそ,次の事実を思い出すようにしてください↓
私たちはこれまでにかなりの回数,夜に浮かぶ月を見てきたにもかかわらず,「東の空から満月が出てくるのは,必ず夕方である」という命題が正しいか間違っているのかについて,100%自信をもって答えられる人は少ない。
この答えは「正しい」ですが,ここから学べることは,目に入って(体験して)いても,注意を向けなければ見えない(学べない)ことがあるということです。
これまで幾度となく体験しているはずのこと(毎晩見ている月)であっても,考えようとしなければ本質は見えません(覚えられません)。
体験型の学習にも意味はありますが,ただ体験するだけでは知識は定着しません。
何に注目し,どう考え,どの知識と結びつけるかが大切です。
学校の授業についていけない場合の対策
ところで,学校の授業ではやることが多く,確保できる時間に限りがあることには注意が必要です。
集団授業では,全員の理解度に合わせて一つひとつ戻ることが難しいため,要点を聞いた後に自分で補える生徒ほど有利になりやすい面があります。
逆に,いったん授業についていけなくなった生徒が,自力で追いつくのは簡単ではありません。
個別最適化学習が広がっても,自分に必要な内容を選び,復習までつなげられるかどうかで差が出ます。
結果として,勉強で遅れを取ってしまった子が,いざ一念発起して学校の授業をまじめに受けたところでさっぱりわからず,「自分は頭が悪いんだ」とか「どうせ頑張っても無駄なんだ」と自己肯定感が失われてしまうことになります。
私も塾の現場でそういった子にたくさん出くわしてきました。
しかし,そのような生徒であっても,わからないところ(応用のきく知識や意味づけのコツ)を適材適所で丁寧に教えてあげれば,驚くほどすぐにできるようになるという事実をどうか忘れないでください。
そういった働きかけについては,本来ならば,個別指導の塾で1対1でしっかりと教えてもらうのが理想的ですが,費用を抑えながら苦手単元に戻れる点では,オンライン教育サービスも有力な選択肢になります。
オンライン教育の使い方については,以下の記事で詳しくまとめています↓
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おわりに

知識を学ぶときは,できるだけ意味づけを行い,機械的な丸暗記で終わらせないことが大切です。
歴史であれば出来事の流れ,英語であれば接頭辞や接尾辞,数学であれば公式の成り立ちを意識することで,知識は単なる文字列ではなく,思い出しやすく使いやすいものに変わります。
復習するときも,ただ同じ問題を解き直すだけでは不十分です。
なぜそうなるのか,どの知識とつながっているのか,次に似た問題が出たら何に注目すればよいのかを考えるようにしてください。
学校での指導方法が変わっても,家庭学習で大切なことは大きく変わりません。
丸暗記で乗り切る勉強から一歩進み,知識に意味を持たせながら学ぶことが,テスト後にも残る本当の学力につながります。
最後までお読みいただきありがとうございました。

