「ケンブリッジ英検(Cambridge English)」は英検やTEAPといった民間試験の中で,受験者の英語力を最高レベルまで判定することができるものの1つですが,周りに受けている人があまりいないマイナーな試験でもあります。
対策の難しさもありますが,他の試験で事足りてしまうところが一番の原因でしょう。
とはいえ,本試験が今後脚光を浴びることがないわけではありませんし,ケンブリッジ英検に向けて勉強することは英語4技能をバランス良く育成することに繋がるわけですから,全く無駄にはなりません。
実際に受けるかどうかはさておき,大学入試に利用できる試験である以上,どういったテストなのかくらいは事前に知っておくべきでしょう。
今回の記事では,その試験内容や入試利用,さらには対策方法について簡単にまとめてみました。
是非参考にしてみてください。
ケンブリッジ英検とは
ケンブリッジ英検は,英国にあるケンブリッジ大学(ロンドン北部に位置する)の一部門である「ケンブリッジ大学英語検定機構」が開発し,提供しているテストです。
その歴史は1913年にまで遡り,世界130ヶ国で25000以上の機関が認定に利用しており,スタンフォード大やマイクロソフトのような名だたる大学や企業もその中に含まれています。
ところでこの機構,実はすでに記事にしたIELTSの問題作成も担当していことはご存知でしたでしょうか。
両者の違いについて示すと,ケンブリッジ英検は学生や社会人の英語力を測定しつつ,能力を向上させる道のりを示すためのものであるのに対し,IELTSは海外に移住したり留学するために必要な英語力を診断することを目的としたテストです。
なので,ケンブリッジが測定できる英語能力は幅広く,IELTSは高い位置に偏っています。
日本だとTEAPが上智大学の手によるものでしたが,こちらは「ケンブリッジ大学」という世界に名だたる教育機関が組織する試験であり,問題の質が世界トップレベルであることに疑いはありません。
もちろん世界レベルで見れば,権威も有名度もトップレベルになります。
しかし日本の大学生の間ではTOEFLやTOEICと並んで人気がなく,実用英語技能検定(いわゆる普通の英検)と混同している人すら見られるのが現状です。
とはいえ,ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)に注目が集まっている昨今,その本家本元がケンブリッジ英検であり,本検定にある「KET」という試験は日本の高校生の英語4技能を測るために作られた試験ということで,スピーキング能力の測定にいち早く対応した事実を忘れてはいけません。
試験の種類についてですが,このケンブリッジ英検は複数の試験からなっており,Pre A1~C2レベルまで8つの試験が用意されています↓
これらのうちどの試験を受けるかは各自の目的次第ですが,例えば高校3年生でしたらB1のPETが,中学3年生でしたらA2のKETを受けるのが妥当です。

なお,結果は「Cambridge Englishスケール(80~230)」という数値で表され,CEFRやIELTSとの比較も簡単にできます。
試験会場は試験センターの他,河合塾も行っていて,1年のスパンで見ればどこかしらで受検が可能です。
ケンブリッジ検定が使える大学入試
ここでは,ケンブリッジ英検を大学入試に利用する場合について解説していきたいと思いますが,試験の難易度的に,KET・PET・FCEのいずれかを受けることになるでしょう。
CEFRと日本の英検との対応関係ですが,
- KET=A2レベル・準2級
- PET=B1レベル・2級
- FCE=B2レベル・準1級
となっています。
先述の通り,標準的な高校3年生であればPETで良さそうですが,英語が得意であることをアピールするのであればFCEを受けるべきでしょう。
実際の例として,早稲田大学の文化構想学部の2025年度の基準スコアとして
- 総点160点(4技能150点)
が提示されていました。
ここまでのレベルの大学(偏差値65~70)ともなるとPET以下のテストは利用できないので注意が必要です。
上級レベル以上となるCAEやCPEを利用することもできますが,これらは海外の大学を受ける人が受検するのが普通で,日本の大学のみを受ける人には必要ないでしょう。
ちなみに,FCEの試験で測定できるスケールは以下の表(黄緑部分)のように140~190となっており,合格すれば最低160のスケールが保証されます↓
通常GradeAは出ないので,B2レベルの証明に使われることがほとんどです。

B2 First(FCE)の試験内容と対策
それでは最後に,B2 First(FCE)の試験内容と対策方法を簡単にみていきましょう!
問題の種類は技能ごとに4種類で,試験形式自体は長い間変化しておらず,ずっと前から完成されていたテストです。
リーディング&文法・語彙
読解と文法語彙の試験時間は1時間15分で,7つのパートからなります↓
- 空所補充問題8問
- 穴埋め問題8問
- 空所補充8問(語幹を変化させる)
- 空所補充6問(同じ意味に書き換える)
- 読解問題6問(4択問題)
- 読解問題6問(文を元の位置に戻す)
- 多重マッチング問題10問
配点は例外的に全体の40%を占め,重視されていることがわかりますが,文法知識は高校レベルのものを,そして語彙は実際に文中で使える状態になっていなければなりません(ただ日本語訳を暗記しているだけでは不十分)。
加えて,論理構成や要旨の把握が必要ですが,速読力も測定されるので時間の余裕は少ないです。
パート6では文中から抽出された6文を本来の位置に戻すのですが,1文フェイクが含まれているため難しくなっています。
ライティング
ライティングの制限時間は1時間20分で,パートの数は2つです↓
- 与えられたアイデアと自分のアイデアを用いてエッセイを書く
- 記事・手紙・エッセイ・書評・物語などから1つ選んで書く
全体に対する配点の割合は20%で,後者では毎回4つの選択肢が与えられ,その中から選ぶことになります(前者は選択の余地がありません)。
どちらも140~190語で書きますが,採点はおおむね通常のライティングで行われる方法に従うので,英作文の得点を上げるためのポイントを参考に対策してください。
リスニング
リスニングは40分程度で,4パートから構成されます↓
- 会話文8問
- モノローグを聞き10文を完成させる
- 5つのモノローグを聞き,正しい内容を選ぶ(5題)
- インタビューや会話を聞き,正しい内容を選ぶ(7題)
ライティング同様,配点は20%で,実生活で使える「英語を聞く力」が幅広く問われますが,逆に考えれば,特別な訓練が必要になるわけではありません。
聴き取れてさえしまえばあとは読解問題を解くのと変わりないですので,普段から英語を聞く量を増やしましょう。
ケンブリッジ英検は問題の質が良いため,実力通りの結果が出るはずです。
スピーキング
スピーキングを行う時間として全部で14分が設けられています。
もっとも,受検者が2名ずつのペアになって受ける対面式テストなので,相手との話し合いが設けられたり待ち時間があるなどとやや特殊です。
全4パートからなり,発音や文法・語彙が評価される以外に,自分の意見をまとめたり,議論にうまく参加できているかが問われます↓
- 試験官や受検者間での自己紹介など
- 2枚の写真内容を1人が1分間で描写しもう1人が質問に答える
- 紙に書かれた内容について受検者同士が意見をすり合わせる
- 3に関連したトピックについて再度2人で議論する
ある意味,社会人のグループ面接のようです。
以上について深く理解するためにも実際の問題を解いてみるのが一番ですが,例えば公式サイトではサンプル問題が利用できます↓
Exam essentialsのところにあるSample testsではスピーキング以外の問題サンプルが利用でき,Speaking test video with examiner commentsのところから,とある回のスピーキングテストの様子を視聴することが可能です。
なお,FCEの対策本で日本語で販売されているものはほぼ見当たらないので(PETやKETはあるのですが),洋書のペーパーバックを利用してください。
調べる際は「Cambridge B2 First」などと入力して検索しましょう。
まとめ
以上,ケンブリッジ英検についての基礎知識と大学入試での利用例,そして試験の中からFCEをピックアップして,その試験内容を簡単にまとめてきました。
Cambridge EnglishスケールやCEFRとの関係,実際に受けるべきテストや問題に関する理解が少しでも深まったようでしたら幸いです。
ケンブリッジ英検は他の英語試験と比べると気軽に受けづらい試験ですが,扱いに関しては2020年以降改善されているので,海外の大学受験も含めて選択肢の1つと考えておくことをおすすめします。
最初にも言いましたが,問題自体は良質なもので,試験に向けて勉強することは学習者の英語4技能を総合的に伸ばしてくれるテストです。
面白いところとして,公式サイトでレベルチェックテストを受けることができ,現在のみなさんの英語力がどの程度のものなのかを知ることができます。
すべて選択問題で,読んで答えるだけの簡単なものですがなかなかに精度は高く,結果的にケンブリッジ英検のどの試験を受けるのが適当かわかるので,是非やってみてください。
例えば,25問中21問正解できた場合であれば,先ほどのFCEが実力的にピッタリとなります↓
以上,最後までお読みいただきありがとうございました。