ネイティブでない限り,普段英語を使っていて「これって本当に正しい?」とか「今でも本当に使われてる?」などと疑問に思うことがあるはずです。
そこで今回は,そんなときの確認に使える「Web辞書とコーパス」についてまとめてみたいと思います。
前者は簡単に単語の意味や使い方が調べられますし,後者は英語を仕事にする人がよく使うツールであるため,まずはそれらの特徴を理解してから自分なりの使い方を見つけていってください。
英語の疑問はオンラインで解決しよう
英語を使っている際に出くわす疑問というのは
「この日本語は英語だと何と言うのだろう?」
といった簡単なものから,
「日本語を英語に訳したまでは良いが,果たして正しい英語なのだろうか?」
という解決が難しいものまで幅広く存在します。
そのようなとき,紙の辞書を本棚から引っ張り出してきてはいちいちめくるのが基本姿勢にはなりますが,外出先にまで重たい辞書を持ち歩くことはないですし,そもそも最新の辞書が手元に何冊も揃っている人の方が稀でしょう。
大体,そのような方であれば周りに英語ネイティブがいることも多いでしょうから,彼らに質問すればほとんどの疑問は解決できてしまうはずです。
なので,今回対象とするのは「ネット環境を駆使して独力で正確な英語にたどり着く方法を探している方」となります。
仕事として英語に関わっていない社会人であってもアウトプットを含めた4技能が問われる時代です。
円安状況では輸出が有利になるため,積極的に海外に自社のサービスを売り出していかなければなりません。
学生においても受験でアウトプット能力を問う出題が増加している昨今ですし,都立高校は数年前からスピーキングテストを課すようになりました。
そのようなときに役立つのが,「Web辞書」と「コーパス」というオンラインサービスです。
LINE・Google翻訳は使ったことがあっても,これらについては存在すら知らない方の方が多いと予想しますが,両者とも仕事で英語を使っている人の間で実際に使われている本格派なので,今後英語と長い付き合いになる可能性がある方は,早い段階から慣れておいて損はありません。
それでは次章で,まずはWeb辞書について説明しましょう!
Web辞書とは
「Web辞書」とはインターネット上にある辞書のことを指し,無料でも使うことができます。
初心者でも使いやすいのはアルクの「英辞郎」で,こちらは日本語も交えながら調べられることができますが,より正確な用例について知るためにはやはり英英辞典の助けが必要です。
私自身,添削業務を経験してきましたが,そのときの研修で勧められたものは以下の通りです↓
ここでは,最初の英辞郎を例に説明することにします。
利用方法は非常に簡単で,ページ上部にある検索窓(四角い枠内)に単語を入力するだけです。
日本語を打ち込めばそれに対応する英語の候補が複数個表示されてきますし,逆に日本語を入れれば対応する英語が出てくることになります↓
上記画像はsuch asについて調べたものですが,意味以外にもいくつかのコロケーション(連語)が表示されてきているのがわかるでしょうか。
無料版であってもPro Liteまでは登録して最低限使えるようにしておきたいものですが,使う頻度が多いようであれば有料版を使う方が学びは多いと言っておきます。
月々数百円で用いることができ,検索でヒットする例文の数などが大きく増えるのが特徴です↓
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such asの場合,実に582件がヒットしましたが,英辞郎の検索結果には連語や例文が複数個出てくることが多く,実際の英文における使い方のヒントが得られるところが気に入っています。
「such as=例えば~など」を覚えて終わりにするだけでは他の翻訳を使うのと同じですが,下段にある「alcohol such as beer」といったフレーズまで目を通すだけでも,
『「総称名詞+such as 具体例」といった形で使うのだな』
といったところにまで理解が及ぶことになるわけです。
他にも例文をみていけば,「for exampleとは異なり,such asの後にコンマは不要かつ名詞が来る」ことにも気が付けるかもしれません。
単語によっては,意味以外に品詞や発音記号の読み方,さらには難易度(レベル)が表示されることもあります↓
ここで言う「レベル」ですが,アルク独自の重要単語リスト(標準語彙水準SVL12000)を1000語ずつ12段階に分けたもののことです↓
自分が英語を書く相手に合わせて,例えば中高生の英作文を添削するのであれば,CEFRを基準にした評価になるため,It became a good dayと書けるところであっても,私ならIt became a memorable dayと書くように指導します。
というのも,memorableはCEFRだとB1レベルの単語とされ,英辞郎だと「レベル8」に相当する単語となり,語彙力の項目で加点の対象になる可能性が高いからです。
ただし実際のCEFRと英辞郎のレベルの難易度が完璧に対応しているわけではないことには注意が必要で,例えば名詞の「lid(ふた)」はCEFRではB2レベルであるにもかかわらず,英辞郎だと「レベル3」と低く分類されています。
逆に受験生が普段から英辞郎を使い,難度の高いとされる単語に日頃から慣れるようにしておけば,入試の英作文など恐るるに足らずでしょう。
英検でも良い級に合格できるでしょうから,調査書の評価や有利な受験方式を選択できるなど良いこと尽くめです。
コーパスとは
続いて紹介するのは「コーパス」と呼ばれる英文のデータベースについてです。
この中には,英語圏の新聞・雑誌・テレビなどで使われている英文が集められてきているので,今まさに使われている「生きた」英語を調べることができます。
先ほどの例に関連させて言えば,such asとfor exampleのどちらが英語圏で多く使われているのかがわかったり,memorableの後ろに来る名詞にはどんな単語が多いかまでもが調べられるわけで,Web辞書だけ使っていては到底不可能なものでしょう。
その分使い方は複雑になりますが,ここで知り得た情報はほとんどの辞書より実際の英語を正確に反映しているわけですし,英作文の添削者や翻訳家が使うツールでもあるため大変信頼できます。
コーパスの有名どころとしては,以下のようなものが挙げられるでしょうか↓
- Corpus of Contemporary American English(COCA)
- British National Corpus
- ウィズダム用例コーパス
上から,アメリカ英語中心,イギリス英語中心,日本語で利用可能なところが特徴となりますが,次章ではCOCAを例に解説することにします。
実際に同じ動作をしてみるとわかりやすいかと思うので,まずは総合的にコーパスを扱ったこちらのサイトを訪れ,同名のコーパスを選択するようにしてください。
COCAの詳しい使い方
上段にあるタブのうち,「SEARCH(検索語を入力する),FREQUENCY(調べた語の使用頻度をみる),CONTEXT(実際に使われる英文を確認する)」を使用することが多いです。
あとは左下にある青文字で示されたモードのうち「List」と「Collocates」の2つを私はよく使っています(後者は+マークを押すと出現します)。
これらを使った調べ方として2つを紹介しましょう!
検索語の品詞を指定して調べる方法
まずはListのモードにしてsuchについて調べることとしますが,品詞を指定する場合はウインドウの右にある [pos] という部分をクリックし,出てきた品詞リストから別途指定します↓
使われている頭文字はnoun(名詞),verb(動詞),adj(形容詞),adverb(副詞),art(冠詞),det(決定詞),pron(代名詞),prep(前置詞),conj(接続詞),neg(否定形),poss(所有格)です。
今回は「代名詞のsuch」について調べたいので,pron.ALLを選択し,Find matching stringsを押すようにします。
するとタブがFREQUENCYに切り替わり,結果が表示されてきますが,FREQが「2」として出てきました(時期によってはNo Matchのときもあります)。
この数値が大きいほどよく使われていることを意味し,試しに「形容詞のsuch」で調べてみたときのFREQは「72万」です。
ここで,青文字になっているSUCHをクリックしてみてください。
すると今度はCONTEXTタブが開き,実際に使われている英文をチェックできるはずです↓
この結果の見方ですが,2012と書いてある列は「年代」を,その右にあるBLOGは「ジャンル」を示しており,後者の例としては他にWEB(ウェブサイト),FIC(本),SPOK(話し言葉),NEWS(ニュース),MAG(雑誌)などがあります。
実際に使用された英文が右に出ていますが,緑色で検索語がハイライトされているのが見て取れるでしょう。
検索語の前後にくる単語を品詞指定して検索する方法
2つ目の使い方ですが,今度は「memorableの直後に来やすい名詞」について調べてみたいと思います。
SEARCHタブでCollocatesを選択してください。
Word/phraseの左にmemorableと入力し,下のCollocatesという文字の右側にある[pos]をチェックし,noun.ALLを選択してみましょう↓
下にある数字は,その単語の前後何個分まで含めるかを意味します。
上の状態では前後4つまでの連語が選択されていますが,memorableの直後に来る名詞だけを知りたいので,右にある「1」のみを選択するのが正解です。
ゼロをクリックすると消すことができます。
最後にFind collocatesをクリックすると以下のように頻度順に名詞が並ぶことになり,「memorable moments」という使われ方が一番多いことがわかりました↓
MOMENTSの青文字をクリックすれば,実際の英文が確認できます↓
New York Timesのニュースで使われた英文が一番上に表示されていました。
このコーパスは基本的に登録なしで使えますが,登録することで1日に検索できる回数が10から50に増えるのでおすすめです。
今はどうかわかりませんが,当初は登録前の方がエラーになることが多かった記憶があります。
まとめ
以上,英語4技能が問われる令和時代の勉強に役立つWeb辞書とコーパスについて,英辞郎とCOCAを例にその使い方を解説してきました。
前者は簡単に日本語⇔英語を調べられますし,後者も慣れれば,実際の使用頻度や生きた例文を簡単にチェックすることができます。
今回紹介しませんでしたが,最も簡単な方法としてGoogleの検索欄に"memorable moments"と入力して(ダブルクオテーションを忘れずに)ヒットした件数を調べたり,「もっと見る」の中に隠れた書籍検索を利用することで,本に登場する表現(より確からしい)を表示させたりも可能です↓
コーパスの操作が難しすぎると感じる方は,こちらの方法で簡単にチェックしてみるのも良いでしょう。
昔の話になってしまいますが,私が大学に入学した際のキャンパスガイドで初めて教えてもらったのが英辞郎で,これほど簡単に単語を調べられることに当時は感嘆したものですが,同時に「中学や高校でどうして誰もWeb辞書の存在を教えてくれなかったのだろう」と疑問にも思ったものです。
先述した通り,単にこういったサイトの存在を知っているか知らないかだけで毎日の過ごし方が大きく変わってきますし知識量にも差がついてくるわけですから,今回の内容を是非多くの方に知ってもらい,個人ひいては日本人全体の英語力に磨きがかかることを祈って結びの言葉といたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。