2022年の3月に出版された「プランブロック式戦略的学習計画法」という書籍は,理系で難関大学を志望するあらゆる受験生におすすめできる1冊です。
その理由について説明するのは簡単で,例えば受験勉強中に「過去問を解いてみよう!」という気持ちになった際,みなさんがどの程度までその後の学習法について想像できるかについて考えてみてください。
赤本を買ってきて解けばいい。
確かにこの答えで正解なのですが,最新版のもの(約5年分収録)だけで足りるのかといった問題だったり,いつどのタイミングでどのくらいの年数分を解けばよいかであったり,共通テストであれば赤本以外にも緑・青・黒本という選択肢があったりもします。
こうした,受験生が近い将来抱くであろう疑問に対し,正しい答えを提示してくれているのが本書なのです。
当記事では,まず最初にプランブロック式勉強法の特徴をまとめ,その後,本書を使って学ぶメリットや注意しておきたい点について考えてみることにしましょう!
プランブロック式勉強法とは
書名:プランブロック式ゼロから理系難関大学に合格できる戦略的学習計画法
著者:草下靖也(著・イラスト)・山本咲希(監修)
出版:KADOKAWA
ボリューム:303ページ(別冊あり)
価格:1650円
プランブロック式学習法の概要
プランブロック式戦略的学習計画法を読むことで,本来であれば一部の塾に通わなければ得られなかったはずの勉強法について広く学ぶことができます。
「勉強法」と一口に言いましたが,細かくは計画(戦略)と学習法(戦術)に分けることができ,前者では大学受験までのロードマップとなる学習計画の立て方を知り,後者においては成果を出している予備校で実践されている学習法から,具体的かつ実践的なかなりの知見を得ることが可能です。
本書は全部で6つの章から構成されますが,戦略の部分は主に「1・3・4・5章」で,そして戦術は「2・3・5・6章」において語られ,量的にはどちらも充実しているように感じます↓
以下に,各章の内容について簡単にまとめておきましょう↓
本書における各章の内容と分量
第1章:プランブロックについての理解を深める(11ページ)
第2章:プランブロックで頻繁に登場する学習法について知る(16ページ)
第3章:科目別のプランブロックと学習法の紹介(163ページ)
第4章:実践にあたり,毎日の時間割と年間計画の作り方を学ぶ(16ページ)
第5章:学習法を修正し改善するための方法について理解する(15ページ)
第6章:受験全般に役立つ学習法のヒント集(51ページ)
分量的に多くなっている第3章を筆頭に,個人的には第6章も必見です。
次章以降で,一部を実際のテキスト画像とともに紹介するので,詳しくはそちらを参照してください。
ところで,私の周りの仲間を見渡してみると,塾に行くことなく難関大学に合格した人というのが一定数存在し,本書のレベルとまでは言わないまでも,自分なりの勉強法を編み出している人がほとんどです。
こうした能力は,その人が育った環境によって培われたものなのですが,本書に書かれた指示に丁寧に従っていきさえすれば,そのような貴重な勉強法を難なく実行できてしまうことになります。
「情弱」などというワードが随所で聞かれる昨今ですが,そうならないためにも,これから独学しようと思っている受験生にとって,本書は必読すべき一冊です。
もちろん,今後どこかの塾に通う予定がある人にとっても,受験に必要な全科目を塾で習うことは基本ありませんから,一部は独学することになるはずですし,塾に行く前の準備段階として,本書の内容に従って勉強しておくことも賢い選択の1つとなります。
プランブロックのルール
さて,プランブロック式勉強法において,受験までの戦略を立てる際に重宝するのが「プランブロック」というものです。
その例を上記画像に示しましたが,見た目は積み木でできた山のような形をしていて,複数のルールがが設定されています↓
プランブロックの6つのルール
- 同じ段に位置する課題は同一のタイミングで行う
- 習得できたかはセルフテストの結果で判断する
- 時間は目安にすぎない。できるようになることが重要
- 1~3ヶ月ごとに既習ブロックを復習すること
- ★が書かれたブロックは,終えない限り先に進めない
- 同じ段の課題が一部終了した際は進め方を考える
例えば,「初級単語・文法・構文」のブロックは同じ最下段に置かれていますから,この3つは同時進行で行うというのが1のルールです。
2のセルフテストというのは,本書において以下のように定義されています↓
「セルフテスト」とは,制限時間を設けた演習のこと。テストしたい内容に合わせて「暗記チェックテスト」と「演習テスト」の2つのテストを使い分けよう!
要するに,確認テストを自分で作成して解けばOKです。
復習については4のルールで語られていますが,早さよりも,できるようになることを重視しましょう。
5と6に関しては,それほど頻繁に出てきませんが,いわゆる勉強の積み重ねが必要な内容を学ぶ際,前提となる方のプランブロックに取り組む際,考えることとなります。
ところで,プランブロック式勉強法が興味深いのは,大学合格という頂上にたどり着くための一本道を示す代わりに,山全体を作ることにしてしまったところです。
もちろん,理科や社会などにおいては1方向しか道が示されていない科目も見られますが,とある段においてどの参考書や問題集を使うかについては,読者が複数ある候補の中から比較的自由に選べるようになっています。
しかもそれは,本書内で名前を挙げられている参考書だけにとどまらず,その役割を明確化することで,プランブロック式勉強法の計画の一部に含めることができてしまうわけです。
これはなかなかに画期的なアイディアだと思うわけですが,次章において,本書で学ぶメリットについて具体的に見ていくことにしましょう!
プランブロックで学ぶメリット
プランブロックを使って学ぶメリットですが,私が思うに,以下の3つが挙げられます↓
- 難関大受験に臨む際の常識を学べる
- 難関大攻略に必要な参考書がわかる
- 受験勉強中の不安や迷いがなくなる
以下で1つずつ説明を加えましょう。
難関大を受験するにあたっての常識が学べる
いわゆる名門校と呼ばれる学校では,遅くても高校3年生になるまでには高校範囲がすべて終わっていて,最後の1年間は過去問を使った演習に多くの時間を充てています。
名門校の多くは中高一貫校の私立であるため,公立と比べて独自の教育方針を採用しやすいという強みを持っているわけですが,周りから見れば圧倒的に早いカリキュラムであっても,毎年多くの難関大合格者を輩出する学校に通う生徒にとっては,それが常識です。
逆に,一般的な学習進度の学校に通う生徒は上のような学校が存在することをいち早く知り,独自で遅れを補っていく必要があります。
勉強時間についても,本書の序章(p.12)に書かれている難関大学に合格する学力をつけるための総学習時間は4000時間と言われている
といった事実を1つ知るだけでも,これまでの自分の学習態度について反省する材料となるはずです。
もちろん,より具体的な内容のヒントも第6章を中心に数多く収録され,例えば土日に2時間ずつ勉強すると仮定したときに,
- 土曜は2時間ずっと数学で,日曜の2時間は全て理科
- 1時間数学で1時間理科という時間配分で2日間行う
のどちらにすべきかを自ら判断できるようになります。
ちなみに,本書の答えは「土曜日に1時間数学で1時間理科を行った場合,日曜日は1時間理科を先に勉強し,数学の1時間を後に行う」ということであり,難関校に在籍している高校生であっても,簡単には思いつかないであろう方法が紹介されているのが魅力です。
以下に示したのは第6章で紹介される学習法の一部になりますが,本書を読んでこれらのうち1つでもモノにできれば,以前の自分とは明らかに違う視点から,受験勉強を捉えられるようになります↓
受験生は気になるものがあれば読むでも構いません。
それにしても,競争が激しい都内で成果を出している予備校の実力の片りんをうかがわせる内容で,指導する側にとっても参考にできる部分が多いでしょう。
プランブロックごとに必要な参考書を知ることが可能
先のルールのところで見てきたように,プランブロックはいくつかのブロックから成るわけですが,第3章を読めば,各ブロックでどのような参考書を使えばよいかが具体的にわかるようになっています↓
上の画像は,英語の「中級単語」のブロックの例になりますが,王道を行く速読英単語の必修編を始め,利用者の多いターゲットの他,シス単やDuo,さらには難関大御用達の鉄壁までをも確認することができるあたり,知っている人が書いていることは明らかです。
それぞれの単語帳に対して,予備校講師目線からの特徴説明がある他,代用教材についても言及されていることで,その他の教材を選ぶ際の判断基準としても利用できます。
そして,それらの参考書を実際に使うにあたっての学習法についてもブロックごとに丁寧に記述され,学習のペースや復習のためのテストの作り方から,さらには著者の塾で実際に採用されているコツやテクニックまで惜しみなく披露されていました↓
この指摘に関しては,先の常識の内容と被ってしまうかもしれませんが,「この参考書も結構進めてきたから,ここでまとめのテストをやってみよう」と考えられるようになりますし,上で紹介されているテクニックについては今後資格・検定試験の勉強をする際にも役立つテクニックだと思います。
プランブロックにある1ブロックごとにこうしたページが用意されているわけで,本書の半分以上が科目別プランブロックの説明で占められていることからも,第3章が本書のメインであることは明らかです。
ところで,良い参考書というのは世の中に数多く出版されてきています。
ですが,その本に書かれているのは,あくまでその本の使い方のみでしょう。
複数の本をどのようなタイミングでどのように使っていくのかを知ることができるのが本書ですから,購入するに値するメリットは十分にあると言えるわけです。
受験に対する不安や迷いがなくなる
相手の姿が見えなければ人は不安になるもので,大学受験というものの本質がわからなければ,迷いや焦りが生まれてくることになります。
しかし,このプランブロック式戦略的学習計画法を用いて早い段階から計画的に勉強していれば,いよいよ精神的に追い込まれてきたときにおいても,自分の立ち位置がわからなくなる心配はありません。
やることを何か1つ増やせば,逆に何かを犠牲にしなければならないのが受験生の日々の過ごし方の基本ですが,先の過去問の話を思い出していただければ,自分の中で採用できる選択肢の数が増えていることで,受験勉強に粘り強さが生じてきます。
どうしてもやっておきたい参考書があったとしても,それが王道を行くものなのか,それともあえて我が道を試験的に行っているかだけでもわかっていれば,その未来は明るいものになるでしょう。
特に浪人生や独学で勉強する時間が多い人にとっては,不安や迷いは生じやすいものです。
時間があるときに(それこそ高1や高2生のうちに)本書で受験の全貌を把握しておき,第5章の内容を元に,適宜カリキュラムの修正や改善を行い,自分ならではの型を作ってしまいましょう!
プランブロック式学習法の弱点
前章ではプランブロック式学習法のメリットについて語ってきましたが,本書に弱点が存在しないわけではありません。
ここでは,プランブロック式戦略的学習計画法を使う上で注意したい点を,いくつか指摘してみようと思います。
ある程度の理解力や行動力を要する
本書は,普通の人からすると明らかにレベルが高い「難関大学」に入るための学習法を授けるためのものです。
そのため,著者が言わんとしていることを正しく学び取る理解力や,実際に行動に移せる力が必要で,例えば,試験直前期に,本番と同じ環境下で過去問を解くことが当然のように求められます。
もちろん,このことにはちゃんとした理由があるわけですが(本書でもそれについて言及されていますが),素直に従って実行できるかについては,やはり読者の忍耐力にかかってしまっていることを忘れないでください。
共通テスト1つとってみても,例えば2日目だと,11時20分~12時30分まで数学IAを解き,13時50分~14時50分まで数学IIB,15時40分から17時50分まで理科を2科目解くことになるわけです。
これをその時間通りに行う(時間より早く終わっても,終了時間が来るまでは見直しを行う)ためには,かなりの精神力が必要になることを覚悟しておきましょう。
セルフテストをしっかり行う必要がある
過去問を解くなどの実戦期を除いては,基本的にセルフテストを行います↓
しかし,セルフテストは自作する必要があり,それまでに学んだ問題の中から復習すべき内容を自らの判断で選び出しては,正しいタイミングで行わなければなりません。
これを省略してしまえば,途端に学力の土台は不安定なものと化しますし,制限時間にも気を払いながらきちんと取り組む必要があるため,意思が弱い人の場合,ついつい楽をしようとしてしまい,最悪の場合,挫折してしまう恐れがあることに注意してください。
第3者の助けが必要になる場面がある
いくら独学に向いているとは言え,自分1人で参考書や問題集を買っているだけで本書の学習法が完成することはありません。
本書にも記載があるように,記述問題の添削や採点については信頼できる第3者に最初のうちだけでもお手本を示してもらうことが必要です↓
周りに質問できる友人や先生がいる現役生であれば大丈夫でしょうが,自宅にこもって独学する浪人生のような場合であれば,一定期間は家庭教師のお世話になるなど,別に何か対策しなければならないように感じます。
それこそ,上のセルフテストの作成においても,わかっている他人に作ってもらうことができれば,より効果的なものになるでしょう。
塾に通うと,こうした厄介ごとは講師の方でやってくれるので,本人は勉強だけに専念できるので楽です(もっとも,それがその生徒本人の為になることはなく,自分の頭で考えながら勉強していくことの重要性については言うまでもありません)。
学習意欲を保つための工夫が必要
独学する場合の弱点として,勉強がつまらなくなりがちだという点が挙げられます。
勉強自体を楽しむことができればよいですが,わからない問題が次から次に出てくると精神的に参ってしまいますし,学習意欲を高いレベルで保つためには,自分の成長を感じ取れるだけの成功体験が必要です。
そのためには模試を受けてみたり,学校のテストでも構いませんが良い成績を取ることの他,本書の別冊に付属している「書き込みゴールマップ」を積極的に活用するなど,楽しむための工夫をするようにしましょう↓
別冊にはこの他,書き込み用のプランブロックや時間割や年間計画表が収録されていました。
アプリが主流の時代ですが,個人的にはこうしたアナログならではの良さが残ってほしいと願う今日この頃です。
まとめ
以上,KADOKAWAから発売されたプランブロック式戦略的学習計画法の特徴と,そのメリットや使用上の注意点についてまとめてきましたがいかがだったでしょうか。
これまでにない新しいアイディアを世に生み出した本書の著者である草下靖也氏は,理系ベースではあるものの,1人で全教科を教えることができ,かつ本書のイラストも自分で書き上げてしまうほどの万能人タイプの人間と分析できます。
最近の動画サイトでは,胡散臭いとまでは言いませんが,到底その本人でなければ実現できない,再現性に乏しい方法論などがそこかしこに散見される状態ですが,本書で紹介されている学習法は,実際に彼の塾で行われているものであり,怪しさは微塵も感じられません。
それどころか,本来ならば門外不出とするような内容を公表している点について,本書の根底に,環境に恵まれない受験生への救済の念があることを感じ取ることができます。
著者が教える塾に通えば難なく学べてしまう内容であったとしても,立地や時間,金銭的な制限から通塾できない人がいることは事実です。
そういった教育格差の問題も踏まえて,充実した知見に富む本書が1650円で購入できてしまうことは,他の予備校から見れば脅威的に映るであろう試みであり,ここで得られる内容は予備校の授業1回分(数千円はします)の内容をはるかに超えています。
ゆえに,当サイトの結論としては,理系で難関大学を受験しようとしている高校生にとって本書はマストバイだということです。
本書の勉強法を実践するにあたっては,著者についてより深く知ることもプラスに働くように思われます。
まずは1つ,著者が教える「生徒派」という塾のHPを訪れてみてください↓
公式サイト
最後までお読みいただき,ありがとうございました。