いきなりですが,
子どもが一番勉強する場所はどこでしょう?
と尋ねれば,多くの方は「学校」と答えるように思います。
ですが,上の質問をしたのが長期休暇中であれば,その答えは「塾」であるかもしれませんし,1日中外出しているわけではないですから,実のところ「家」が最終的な答えになるかもしれません。
少なくとも,周りの目を気にすることなく安心して学べることは確かだと思います。
とはいえ,他人の目が届かない場所であるがために,自宅で怠惰に振る舞うことは簡単です。
これについては,コロナ禍で身をもって実感した方は少なくないでしょう。
そこで今回は「自宅学習におけるやる気を高めるための秘訣」をいくつか紹介したいと思います。
自宅学習を成功させる要因
自宅学習に限りませんが,何かを学ぶ際の結果に影響を与える要因は
- 才能
- 勉強法
- やる気
の3つです。
ただし,1つ目に挙げた「才能」は生まれ持った能力であって,後から変えることができないのでここでは触れません。
もっとも,過去の研究から子どものうちは才能の差が出にくいことが知られており,例えば外国語を習得しようと考えた際,大人であれば「音認識・分析(文法)力・記憶力」という3つの才能が影響してくるのに対して,子どもは記憶力ただ1つです。
なので,才能がないと諦めてしまうのは,少なくとも高校生になるまでは控えましょう。
続いて2つ目に挙げた「勉強法」ですが,これは結果に影響する要因で,幼いことから色々と試行錯誤しては自分に合うものを探すことが大切です。
小学生のときに教わった方法を,高校生や社会人になってからも使い続けることは珍しくありません。
私は今やノートをマインドマップ(マインドツリー)の形でしか取らなくなりましたが,ノート術に加えて問題集の使い方(書き込みをしない,その日の最後にやったことを振り返る)など,どういった勉強法を身に付けられるかは教師となる人の責任が大きいと思っています。
これまでに何らかの方法を習った記憶がない方は,以下の記事で学んでみてください↓
このとき1つ注意点があり,他の誰かにとって上手く行った方法が自分にも合うとは限らないということです。
多くの人に受け入れられる方法はあるにはありますが,ニュースやSNSで注目を集めるような奇抜な方法はその人だからこそできた(すごい才能や環境が整っていたからこそできた)場合であることがほとんどのように思われます。
身に付けられなかったからといって,決して自分を卑下してはいけません。
なお,上に挙げた3つのうちの最後が,当記事のテーマである「やる気」となっています。
わずかな時間であれば「頑張るぞ!」という気合でなんとかなっても,長時間または長期間に及ぶとなると,やる気を維持するための工夫は必須です。
ただでさえ小中高生の時期は,成功体験を積み重ねては自己肯定感を高めることが必要なわけで,数年もの間,やる気が出せない状態で過ごすのは大変もったいないように感じています。
それでは次章から,具体的なやる気の出し方について考えていきましょう!
無理にでもやる気を引き出す方法
やる気が出るのは何となく気分がそうさせているからなのですが,その状態になるのをただじっと待っているわけにはいきません。
もしこれが夕飯の準備であるならば,やる気がなくて放置していても,いずれお腹は減ってきて,仕方なく買い物に出かけることになるでしょう。
この場合,「食欲」が自然とやる気を引き出してくれたことになります。
食べないままでいればいずれは死んでしまうわけですから,こういった生存に関する欲求が生じると,自然とやる気を出すことが可能です。
しかしその点,勉強はどうでしょう。
しないからといって,命が直接関係してくることはないわけです。
そこで,無理にでもやる気を引き出す方法を知っておく必要があります。
危機感を募らせる
勉強でも危機感をあおり,「受からなければものすごい損害を自分が被ってしまう!」といった意識が芽生えるようであれば,勉強できるようになるでしょう。
例えば「勉強で良い点を取れないと医者になれない」ということを悟った生徒なら,仕方なくでも勉強するようになるわけで,その子の医者になりたいという気持ちが強ければ強いほどにやる気は高まることになります。
逆に,勉強することに意味を見出せなければやる気は出ません。
将棋の藤井聡太さんが中学生だったとき,
どうして宿題をする必要があるのですか
と教師に食って掛かったという話がありましたが,件の教師から納得のいく答えを得られてからはちゃんと宿題をやってくるようになったところまでがセットです。
なお,ここで私がみなさんに「このように子どもに言えばOKです」的な回答リストを挙げてみたところで,その実用性は皆無でしょう。
というのも,子どもは親をよく観察しており,親本人が思ってもいないことを伝えても,その嘘はすぐさま見透かされてしまうものだからです。
ゆえにこの場合は,医者になるのに勉強が必要だと思っている大人に話をしてもらって,結果として危機感を募らせてもらうのが正解です。
罰則を設ける
若干上記の方法と似ていますが,家庭内で罰則を設けることによって勉強へのやる気を高めることができます。
私自身,「やる気」と聞くと,ポジティブな過程を経て高まるイメージがあるのですが,塾に来ている生徒たちの様子をみていると,どうやらそれだけではなさそうです。
「現役で入らなかったら学費は自分で稼いでください」と親に言われ続けた子が難関大に合格した例では,当人は落ちて浪人することを心底恐れていた(実際には就職することすらをも覚悟して臨んでいた)ようで,罰則は子どもの心にかなりの影響を及ぼす可能性があります。
ただし限度はあり,それが虐待レベルになってしまえばやりすぎでしょう(親と子の信頼関係が破綻してしまうと,想像もしていなかった結末を迎えることになります)。
ですが,テストの成績が悪かったときにスマホを金庫に隠すくらいのことは結構している家庭が多いようです。
罰則を設けることの対極に「ご褒美をあげる」がありますが,これについては後述します。
勉強以外の選択肢をなくす
これもまた無理矢理感が満載された方法の1つになりますが,勉強以外の選択肢をなくしてしまうことも有効です。
例えば,刑務所に入っていた中卒の子が
漢字検定の本しか獄内になかったので,それを読んで1級に合格しました
と語るのはその極端な例でしょう。
自宅でもっと簡単に実践できることとしては,勉強する部屋を変えてしまうことが1つです。
「リビング学習」という言葉があるように,自室のような遊ぶものがあるところに身を置かず,家族による監視の目が行き交う場所で勉強をすることはやる気を引き出すための有効な方法となり得ます。
もっとも,誰かがリビングで勉強している間は,周りもテレビを見たりスマホをいじったりする姿をみせないことが大切で,例えば一日のどこかのタイミングで家族みんなが真面目に勉強する時間を設けてみるのはいかがでしょう。
実際,休日にそういった協力を呼び掛けることでうまくいった家庭がありました。
ちなみに,誰かの目を意識するというのは,場合によっては命を投げ出す理由にもなるほどの行動力に繋がります。
その典型的な例は宗教ですが,海外から来た留学生の様子から判断するに,信仰心が強い人ほど「神様がいつも見ているから悪いことはできない。善い行いをしなければ」と考えているのが明らかです。
本章では無理にでもやる気を引き出す方法について考えてきましたが,こういった方法はできるだけ避け,あくまでも最終手段として取っておいてほしいわけではありません。
勉強する意味について納得できていない子が,テストまであと2週間を切っている状況においては,もはやリビング学習を採用してもらう以外に術はないのです。
自然とやる気を出させる方法
本章では打って変わって,自然とやる気になる方法を考えてみますが,こちらは良いイメージのものが中心です。
報酬を与える
一般的に「報酬と罰」と聞くとラットを使った実験のようですが,私の後輩の1人は模試で結果を出すたびに報酬方式で親から小遣いをもらっており,大学入学時にはすでに100万円を超える預貯金がありました。
この方式で彼が手にした称号は,水泳や将棋の県代表,成績学年トップを数回,そして東大合格といった大変輝かしいものでした。
ちなみに,これくらいにまで能力を高めてしまうとその先の勉強も簡単に感じられることが多く,2週間くらい実験室にこもって勉強しただけで,公務員試験を軽々と突破していました(わざわざ高い授業料を支払っては資格学校に1年通っても落ちてしまう人がいるわけで,なんというかそれまでの生き方は大事だなと思います)。
彼は結局,地元に戻って就職し,親孝行していると聞くので「良い子に育ったなぁ」と周りのみんなが思っていることでしょう。
もっと簡単な例としては「1つの参考書を終えたら見たい映画を鑑賞する」や「1問解いたら飴を1つ食べる」などが挙げられます。
報酬制については一度良いものが見つかればずっとそれでやっていけるので,大変おすすめの方法です。
もちろん報酬内容と難易度が比例するように設定してください。
なりたい目標を見つけさせる
将来なりたい人物像が決まっているならば,身近でその夢を叶えた人を見つけてしまうことでやる気アップが期待できます。
尊敬できる恩師に出会うことで,その人の考え方や高確率で喋り方や思想までもに影響されてしまうことは子ども時代によくある話です。
その道のトップと呼べる人でも構いませんが,それ以上におすすめなのは,「この人くらいにならなれそう」と感じさせる身近な目標を探すことでしょう。
なんだか自分と境遇が似ていて,その人のことをちょっぴり下に見ているところがポイントです。
例えば,自分の志望している学校に入った先輩がいるなら,その人を超えるように努力することで,モチベーションを維持した状態で長く頑張れるはずです。
逆に,あまりに完璧すぎて超えるのが到底無理だと思える人を目標に選んでしまうと,逆に打ちのめされる結果になってしまってやる気の低下に繋がりかねません。
仲間と勉強させる
「自分1人では勉強できないけれど,仲間がいれば勉強できる」という意見は,やる気を高めたい際に覚えておきたい秘訣です。
先述した「家族や他人の目」に近いところもありますが,あくまで1人だと勉強のやる気が上がらない者同士が,積極的に相手を求めているところが明確な違いでしょう。
部活動や,コーチに付いてもらえるオンライン教育が結果を残せているのはサポーターの影響が大きいからであり,逆に個人で学ぶには限界があることをも示唆しています。
もちろん,1人でできる人はわざわざ群れをなす必要はありませんので,誘いに乗らないことがむしろ正解ですが,学校の授業が始まる前に友達と集まって勉強したり,試験に出そうな予想問題を自ら作って友達と出し合ったりする生徒は私の周りにも確かに存在し,実際楽しんで勉強できているようです。
まとめ
以上,自宅学習において実践できるやる気アップの方法についてみてきましたがいかがだったでしょうか。
今回紹介した方法のうち,すぐさま実践できそうな方法を箇条書きにしてみたのが以下の結果です↓
- 勉強をする必然性について話し合ってみる
- 「できなかったら○○」といった罰を設ける
- 自分の部屋以外で勉強させる
- 遊び道具を撤去させる
- 頑張ったら褒美を与える
- 頑張ったら超えられそうな人を身近で探させる
- 似た状況の友達を巻き込んで一緒に勉強させる
今回紹介した考え方自体は,子どもに限らず大人であっても応用することが可能です。
例えば,カフェや自習室で勉強するのも立派な勉強法になりますし,プチ贅沢をするのはご褒美作戦の1つに含められるでしょう。
今回で挙げたものはあくまで一例に過ぎませんが,みなさまの気づきのヒントになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。