子どもの教育をどうすべきかですが,親が自分なりに真剣に考えて色々きっかけを与えてみても,果たしてそれが正解かどうかは,ある程度の期間やらせてみないことにはわかりませんし,他の家庭で上手くいっているからといって自分の子どもに当てはまるとも限りません。
水泳や音楽教室といった習い事は今でも根強い人気を誇っているようですが,「英語教育」についても早期の頃からやらせている家庭も多いようです(参考)。
ですが,そこで「早くから英語の音に慣れておくと良いとは聞くけれど,英語教室に通わせようにも他の習い事で手一杯だし,そもそも自分は英語ができないし…」などと考えてしまえば,途端に思考は停止してしまい,それ以上考えられなくなってしまうでしょう。
そこで今回は「小学生の英語教育で心に留めておきたい事柄」について整理するとともに,「親ができる学外でのサポート」について一体どんなことをすべきなのかをまとめてみることにしました。
1つでも参考になればと,気楽な気持ちで読んでいただけたら幸いです。
小学校の英語教育の目標は
小学校における英語教育の目標は,学習指導要領が新しくなるたびに文面が変わっていくものの,実は数十年前と根本的なところに変わりはなく,
- 社会に適応する
- 自分らしさを発見する
という2つの体験を,英語を使って実現していくこととされています。
この目標は英語という教科に限らず,多くの時代において目標に掲げられてきましたが,小学生は自分の属するコミュニティー(家族や地域など)でうまく意思疎通を図り,他人と比較しながら自己実現していくことを求められているわけです。
ところで,学ぶ対象が読み書きそろばん(最近はこれに情報モラルが加わる)といった根本的な学力を構成するものの場合,具体的な技術だったり知識だったりを確実に身に付ける必要があるとされます。
しかし,こと英語においては文法や読解力を問うテストを受けさせられたり,無理矢理に音読させられたりすることはありません。
中学英語としてこれまで行っていたことを前倒しで行うのが小学英語ではない
という主張が1つ大事な視点なので覚えておきましょう。
実際,中学に入ってからの勉強と小学生の英語では教育方針に大きな違いがあり,例えば教師が英語を聞かせて何らかの動作(反応)を求めるのは小学生のときだけです。
例えば,中学生を相手に授業中,ツイスターゲームをさせたり洋楽を歌わせたりすることはそれほど行われていません。
少なくとも,小学校で英語教育が必修レベルで行われるようになったことで,中学校でこういった時間が設けられる機会は減少したことは確かです。
ところで,これまでこうした英語教育は学校という教育機関が行ってきましたが,令和時代の教育改革においては(実はこれまでもそうだったのですが),親や地域といった周りの大人たちも子どもの教育に積極的に関わることが強く求められています。
デジタルコンテンツを使うことでも授業外の学びは可能ですが,大人が学ぶ手順を丁寧に解説してやったり,子どもが頭を使って長時間考えたりすることは学校ではできないことです。
しかし,具体的にはどういったことをすれば良いのでしょうか。
ここで
親が学校の先生の代わりになれれば良いのだけれど,自分は英語が得意ではないから,英語教室に通わせないといけない
などと考える必要はありません。
もちろん,それも有力な候補の1つではありますが,まずは親自らができることに目を向けてみましょう!
次章から,親が実行できる小学生の英語教育の案をいくつか出していきますが,最初に外に出かけて行うものを紹介し,続いて家の中でできる対策についてみていくことにします。
外に出かけて行う小学生の英語教育の例
小学生の子を親が外に連れ出して行う英語教育では,
- 異文化を体験させること
- 国際理解を深めさせること
を意識するのがポイントです。
日本とは異なる海外の文化に触れることで,英語を話す楽しさや気持ちが通じ合う喜びを見出すことができると,多くの子どもはコミュニケーション能力を育みたいと思うようになります。
外国人に何か話しかけてみたいがなんと言ったらよいのかわからず,
英語を勉強しよう
という気持ちになるのは何も小学生だけに限らないでしょう。
国際理解と聞くと「○○という国は人口がこれくらいで,地球上ではこの場所に位置し,こういった文化や習慣があります」といった,社会の授業で習うような解釈を思い浮かべるかもしれませんがそうではありません。
それは,外国語を使った交流を通して,異文化の人たちと協力し合って何かを達成したときに初めて理解できるものなのです。
「コミュニケーションを介した学び体験」とでも言うとわかりやすいでしょうか。
そして,国際理解の大切さに気が付いた小学生は,自身を高めようとする向上心や相手文化を尊重する心を育むことができるようになります。
その先に広がる可能性としては,言語や世代に関係なく周りの人と積極的にコミュニケーションを取れるようになったり,ボランティアに率先して参加したりすることが挙げられるでしょう。
ところで,触れさせる対象となる異文化を,何もアメリカやイギリスのようなガチガチの英語圏に限定する必要はありません。
世界の共通言語は英語であるわけですから,異文化を自国文化と比較できる体験さえ設けられればOKで,より具体的な英語教育(座学的なものも含む)は学校の授業に任せてしまいましょう。
また,親が子どもに何かを教えようと躍起になる必要もなく,一緒になって楽しむだけで構いません。
異文化体験ができる場所としては,専門の施設やバスツアー,さらには米軍基地などがありますので,ここでいくつかみてみましょう!
ハウステンボスを訪れる
「ハウステンボス」は長崎県の佐世保にあるテーマパークで,敷地面積としては日本最大を誇ります。
その面積(152万㎡)はディズニーリゾート(パーク部分は100万㎡)の1.5倍ほどで,オランダの文化に触れられるのがウリです(正確に言うと,町並みがオランダでテーマはヨーロッパ全土です)。
2010年4月からHISが経営に携わっていましたが,2022年9月に香港のPAGという投資ファンドに全株式を売却しているので,今後どのようになるのか見守りましょう。
ところで,オランダは非英語圏なのですが(母語はオランダ語),ノンネイティブの中で一番英語が上手いとされているのが実はオランダ人で,スウェーデンの北欧諸国やドイツがそれに続きます。
ハウステンボスはオランダ語で「HUIS TEN BOSCH」と綴りますが,日本語で訳すと「森の家」という意味です。
風車やチューリップを特徴とする田園風景を思い浮かべてみてください。
コロナの影響で多くの店が閉まっているようなときに訪れてみると,行われているイベントの数がとにかく少なく,活気こそがハウステンボスの魅力を引き出していたことに強く気づかされましたが,それ以前に訪れた際はバラやアジサイ,ユリにヒマワリ,そして胡蝶蘭などが出迎えてくれたものです。
植物だけでなく,鮮やかな旗がはためくヨーロッパらしい町並みを楽しめる他,40種類を超えるアトラクションの中でも,800トンの水を使用した「ホライゾンアドベンチャー」ではオランダ干拓の歴史を学ぶことが可能です。

余談ですが,2020年頃に大きな注目を集めたのが「変なホテル」で,多言語対応のロボットたちがチェックインから部屋案内までこなすホテルにおいて,先進のAI技術を感じ取ることができるでしょう↓
今では東京に8ヶ所,全国20ヶ所以上,そして九州では福岡と鹿児島にあり,ハウステンボスに訪れるついでに利用する方も周りにいましたので,機会があれば宿泊してみてください。
より英語教育に重きを置いた施設として,以前記事にした東京のTGGも有名です。
はとバスツアーに申し込む
外国人と会話すると,日本にいるのに知らないことが沢山あることに気づかされます。
そこで,70年以上の歴史を持つ「はとバスツアー」に参加して日本の伝統文化を体験したり富士山方面に出向いてみたりするのはいかがでしょう。
英語教育の視点では,日本人があえて外国語のバスツアーに参加するのがおすすめです。
これは本来,外国人観光客向けのものですが,実は日本人でも利用できます。
中でもおすすめは,日本文化を8時間以上かけて堪能できるコースでしょう。
全国通訳案内士の方に,英語で日本文化や歴史を説明してもらうことができます。
私たちは長く日本に住んでいて背景知識があるため,使われている英単語の意味はかなり推測できますし,乗客の多くは外国人の方です。
全体の雰囲気として異文化を強く感じられるでしょう。
バスから降りて東京タワーや八芳園,皇居前広場や浅草観音を観光する際は,周りの外国人に話しかけてみるのも良い方法です。
片言であっても臆せず挑戦してもらえたらと思いますが,それ以前に相手側から話しかけられるかもしれません。
というのも,利用客の多くは日本が好きで家族旅行で来ていたり,ビジネスで来日し日本に興味を持っている方が多いからです。
このような理由から,昔から外国人向けのツアーに参加する日本人は意外と多かったりします。
横須賀米軍基地のイベントに参加する
日本の米軍基地は定期的に一般公開されています。
例えば,今回紹介する神奈川県の横須賀市にある米軍基地でも,以下のようなイベントが行われてきました↓
- スプリングフェスタ
- フレンドシップデー
- 各種見学ツアー
- 日米交流事業のボランティア
コロナ禍の影響はありましたが,2023年以降はスプリングフェスタが無事に開催されています。
基地設置の目的は別にあるため,年に数回の頻度ですが,開催時には通常入れない基地内でアメリカンな屋台やステージイベントが楽しめる他,4時間以上かけて歴史スポットを巡るツアーや海軍兵が日頃行なっているボランティア(基地周辺の清掃+昼食交流)に参加でき,貴重な体験になるでしょう。
買い物や注文のやり取りは英語で行われますし,米軍基地内の通貨はドルになります(円も使えますが)。
横須賀市全体が異文化交流に積極的なところも良いですね。
子どもたちが英語で魅力を案内するYouTubeも是非見てください↓
自宅でできる小学生の英語教育の例
ここでは打って変わって家庭学習について見ていきますが,子どもにとって,家にいる時間は小学校にいる時間よりも圧倒的に長いでしょう。
そういった意味で,自宅で英語教育のサポートをすることは重要です。
しかし,学校と同じことをさせたり,書く動作を伴った座学めいたものを行わせたりするようではあまり良い結果に繋がりません。
それだと,家がまるで学校のようになってしまい,子どもの息は詰まってしまうはずです。
そこで自宅ではコミュニケーション能力を高めることを第一に考えましょう!
まずは日本語で構わないので,話を聞いてあげてください。
コミュニケーション能力は国際社会で生きていくための土台になりますが,どんな言語を介してであっても,子どもが周りの大人たちと当たり前に意思疎通ができる環境で育つことが重要です。
それを前提に,英語教育のサポートとして英語が自然と耳に入る状況を作ってください。
英語の遊びや歌,ゲームや演劇が定番ですが,ディズニーが好きな小学生でしたら「Disney+」というサービスに契約してみるのもおすすめです↓
一番のウリはディズニー公式動画(アニメや映画)で,日本語や英語の音声と字幕の計4通りから自由に組み合わせて観ることができるので,まずは日本語で内容をわからせてから英語で再度聞かせてその違いを楽しませてみるのが良いです。
流れを切ってしまうことになりますが,何と言っているのかは一時停止して設定を変えることで,すぐさま確認することもできます。
ちなみに,子ども向けの英語番組は使われている英語の質がちゃんとしているところが特徴で,実際,英語圏の子どもはアニメ(有名どころはセサミストリート)で語彙を増やしますし,日本で英語を得意にした人で,幼少期に英語のアニメばかり観ていたと言う方は少なくありません。
もちろん,アニメに限らず,虫や動物の英語番組を使うこともできます。
なお,自宅で英語教育を行う際は,
- 子どもが知りたい単語は難しいものでも教える
- 点数をつけて評価しない
- 「下手」や「日本人的な英語」などと貶さない
- 音読を強要しない
ことに注意しましょう。
あくまで,小学生の子どもに「英語って楽しいな!」と思わせることが大切です。
まとめ
以上,小学生の英語教育をどうすべきかについて,いくつかの具体例と共にみてきましたがいかがだったでしょうか。
今回の内容をまとめると,将来社会に出た時にしっかりとコミュニケーションを取ることができ,外国人を含む他人を尊重できる人物になるための土台を作ることが小学校の英語教育の目的でした。
そのサポートとして,親は異文化体験をさせたり自宅でコミュニケーションを積極的に取ってみたり,英語が聞ける環境を作ってやったりすることが大切です。
その結果,以下のようなプラスのフィードバック(正の連鎖)が生まれることで,その子の未来は明るいものになります↓
- 英語の楽しさに気づく
- もっと話したいなと思う
- 色々な人と交流したりボランティアに積極的に参加する
- 自分の意見を持ちこれからの社会を生き抜く力が生まれる
今回紹介しませんでしたが,海外に短期留学や旅行をしたり,自宅に留学生を受け入れたりするのも世良い方法でしょう。
なお,参考データとして,タイでは3歳から英語教育が行われ,欧米留学をする子どもも多いと聞きます。
また,日本の私立において英語教育が盛んな小学校では,週に2コマ,小学1年生の段階から英語教育を開始しています。
先述したように,小学生の教育において親は教師になる必要はありませんので,難しく考えずに子どもと同じ目線になり,時には自身の幼少期の反省も踏まえつつ,リーダー的な役割を担って率先しては,一緒になってコミュニケーションを楽しんでみてください。
最後までお読みいただき感謝します。