中学卒業時に英検3級,高校卒業時には英検準2級を取得しているのが,日本の英語教育における1つの目安となっていますが,それはあくまで学生側の話です。
それでは一体,中学や高校の教員の英語力の現実と理想はいかほどのものなのでしょうか。
社会では「権利を主張するなら義務を果たせ」などと言われたりもしますが,実際生徒に対し「もっと英語を勉強しろ!」と言う資格がある教師がほとんどなのでしょうか。
今回の記事では,現時点で最新の調査結果をみながら,中学や高校の英語教師の英語力として,どのくらいの点数を取っていたら,英語力の証明になると言えるかについて少し考えてみたいと思います。
英語教員の英語力の現実と理想
中学や高校の教員を対象とした英語力の調査は毎年実施されていて,文部科学省による「英語教育実施状況調査」と呼ばれる調査がそれにあたります。
調査の文面によれば「各都道府県・市区町村教育委員会及びすべての公立小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校が対象」となっており,令和元年度の調査で対象となった学校は以下の通り↓↓
- 小学校:19,187校
- 中学校:9,340校
- 高等学校:3,343校
この調査により,すべての教員の英語力が計測されたとみなしますが,早速その結果を見てみると,英語担当教員のうちCEFR B2レベル以上(これは英検だと準1級,TOEICだと730点以上に相当します)を取得している教員の割合は,
- 中学校:38.1%
- 高等学校:72.0%
となり,この結果が現実となります(非常勤や臨時的任用の教員は含みません)。
ちなみに英語教員に求められている目標は,第2期教育振興基本計画に書かれており,
- 中学:50%
- 高校:75%
という数値が理想で,この数値が多いか少ないかはさておき,一つの基準として覚えておきたいものです。
まだどちらも理想には達していませんが,この数年で少しずつ教員の英語力(というか証明できる資格を実際に取得した方の割合)は上昇してきており,中学教員のうち現在は2.6人に1人がB2レベル,また高校の教員については1.4人に1人がB2レベル以上と理想に迫ってきています↓↓
ところで,「B2レベルに達していない教員」というのは最大で英検2級レベル程度の英語力しか証明できないことを意味するわけで,それはもはや教える生徒と同じレベルかそれ以下ということになります。
これだけ自身の英語力を証明するよう迫られている状況下において,いまだB2レベルを達成できていない教員が一定数存在する点は覚えておきましょう。
高等学校の方はまもなく目標を達成するでしょうが,それでも4人に1人は英語ができない教員です(共通テストでも160点くらいしか取れないはずです)。
さすがにそういう教員を最高学年の担当にすることはないのでしょうが,例え1年生を任されていたとしても,生徒側としてはそういう先生には習いたくないでしょう。
なお,中学教員の方はさらに意識が低いようで,ここ6年で10.2%しか上昇していません。
こちらは理想にはまだまだ遠いですね。
中高生の英語力の現実と理想
ついでに,中学生と高校生の英語力についてもデータがありましたので見てみましょう!
- 中学生でA1レベル以上の生徒は44.0%
- 高校生でA2レベル以上の生徒は43.6%
第3期教育振興基本計画によれば,中学卒業段階でA1(英検3級),高校ではA2(英検準2級)以上を達成した生徒の割合を50%にすることが目標となっています。
地域差はあるのが問題視されているものの,高校生は過去最大の伸びを記録するなど,この数年で上昇してきているのは良い傾向です↓↓
ちなみにこの上のB1レベル(英検2級)は一般的には「高校卒業程度のレベル」と公表されているにもかかわらず,取得できている生徒の割合は実際のところ20%程度だと予想されます。
先の調査における高校生のデータでB1取得者の割合が見つからないあたり,都合良く隠されてしまっている感があるのですが,中高生はこの結果に満足せず,ますます英語力を上げていく必要があることは覚えておきましょう。
英語教員として評価されるためには
そんな現状の中で,外国語指導助手(ALT)を活用する学校が増えてきています↓↓
やはり日本人の英語教員だけではどうにもならないということなのでしょう。
特に最近では静岡県の教育委員会が,2019年度の公立の高校教員採用試験において,「英語のネイティブスピーカーを採用する」と発表したのがニュースになりました。
実はこのとき,採用試験における英語の専門試験における,ノンネイティブの高校教員の場合の優遇条件として知らされたのが,以下のようなものでした↓↓
- 英検1級かTOEIC950点以上あれば試験免除
- 英検準1級かTOEIC800点以上あれば5点加算
高校の英語教員としてやっていくためには,理想は1,最低でも2のレベルの英語力を備えておく必要があると言えるでしょう。
「英語はみんなが得意になりたいけれど,できるようになった大人は少ない。」という事実は,実際ある程度長く人生を生きてみると「しょうがない。」と納得できるようになります。
というのも,大学に行っても国内で普通に生活していれば英語を使う機会はほぼないですし,社会に出てもネイティブスピーカーと英語で話す機会なんて多くはありませんから。
「高3のときの英語力が,ある意味,人生で最高に英語ができた時期だった。」などと笑いながら話している声を聞きますが,大学に入った学生の様子を見ていると,「冗談ではなく本当なんだな。」と思うようになりました。
とはいえ,そのレベルは多くの大学や社会が求める英語力に達していないことは知っておくべきです。
「高いレベルを求めすぎだ」と思うところもありますが,実際にそのレベルに達している生徒も年々増えており,そういう子は比較的良い大学や就職先にありついているのも,ある程度確かなことのように感じています。
現に中学生で英検2級以上を取得する子もちらほら出てきており,長期休暇は海外に短期留学などして過ごさせる家庭も私立の生徒を中心に多く見られ,英語力の格差はますます広がっているようです。
さて,本記事の目的であった「中学や高校教員の英語力」についてですが,実際に高校では,資格検定試験を受けるよう働きかけるよう指導したり,研修講座を実施してできない教員には英語授業の特訓を行ったり検定料を助成するなどして,B2レベルに達する教員を増やしています。
ですがそれでも,5年も経ってB2に達した教員が1.5割増えただけというのは,まだまだ本気度が足りないような気がします。
自分が高校生だったときのことを思い返してみれば,英検2級を受けさせられる裏で,教わる教師が英検3級しか持っていないことを不思議と生徒はみんな知っていて,「なんか理不尽じゃないか」と疑問に思ったものです(そして多くの場合,中高生の直感は的を得ています)。
やはり,教える側には前章で提示したような,説得力を持つ英語力の証明が必要なのではないでしょうか。
まとめ
最後に本記事の要点をまとめると,
- 英語教員でB2レベルの取得者は高校が72%で中学が38%
- 英語教員は最低B2,理想はC1レベルを取得すべき
- 中学生はA1,高校生はA2に達してようやく平均レベル
- 世の半数は優良企業でないので学生時代にB1以上を目指す
のように結論づけられました(参考までにA1は英検3級,A2は準2級,B1は2級,B2は準1級相当です)。
今回の記事を読んで,自身の英語力に危機感を覚えた教員の方は,スタディサプリENGLISHのようなあアプリを使って,毎日のちょっとした時間に勉強することをおすすめします。