中学卒業時に英検3級,高校卒業時には英検準2級(CEFR A2)の実力を有することが,日本の英語教育における1つの目安となっていますが,それはあくまで学生側の話です。
それでは一体,中学や高校教員の英語力の理想と現実はいかほどのものなのでしょうか。
社会では「権利を主張するなら義務を果たせ」などと言われることがあります。
実際,生徒に対して「もっと英語を勉強しろ!」と言える資格がある教師が大半なのでしょうか。
今回の記事では最新の調査結果をみながら,中学や高校の英語教師の英語力として,どのくらいのレベルに達していたら英語力の証明になり得るかについて考察してみたいと思います。
英語教員の英語力の現実と理想
中学や高校の教員を対象とした英語力の調査は毎年実施されていて,文部科学省による「英語教育実施状況調査」と呼ばれる調査がそれにあたります↓
調査の文面によれば「各都道府県・市区町村教育委員会及びすべての公立小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校が対象」となっており,令和5年度に調査された学校数は以下の通りです↓
- 小学校:18560校
- 中学校:9165校
- 高等学校:3256校
この調査により,すべての教員の英語力が計測されたとみなすことにしますが,早速その結果を見てみると,英語担当教員のうちCEFR B2レベル以上(これは英検だと準1級,TOEICだと785点以上に相当します)を取得している教員の割合は,
- 中学校:44.8%
- 高等学校:80.7%
となり,この結果が現実となります(非常勤や臨時的任用の教員は含みません)。
ちなみに,英語教員に求められている目標は第2期教育振興基本計画などに書かれており,
- 中学:50%
- 高校:75%
となりますが,この数値が多いか少ないかはさておき,一つの基準として捉えておきたいものです。
ここ数年で高校教師の英語力は目標を突破し,中学教員においても年々その割合が上昇してきています。
もっとも,「B2レベルに達していない教員」というのは最大で英検2級レベル程度の英語力しか証明できないわけで,生徒の英語力の方も年々増加してきていることを考えると,教える生徒と教員が同レベルかそれ以下の可能性もあるわけです。
これだけ自身の英語力を証明するよう迫られている状況下において,いまだにB2レベルを達成できていない教員が一定数存在する点は良くない状況でしょう。
高等学校においても,まだ5人に1人は英語力を証明できていない教員です(共通テストでたとえれば,160点くらいしか取れない実力相当です)。
さすがにそういう教員を最高学年の担当にすることはないでしょうが,例え1年生を任されたとしても,生徒側からすればそういう先生に習いたいとは思わないでしょう。
もちろん,名選手名監督とは限りませんが,学ぶ意義や喜びを生徒に伝える職に就いているわけですから,学び続ける姿勢は示していただきたいと思います。

中高生の英語力の理想と現実
中学生と高校生の英語力についてのデータもあるので,ここでまとめておきましょう!
- 中学3年生でA1レベル以上の生徒は50.0%
- 高校3年生でA2レベル以上の生徒は50.6%
第4期教育振興基本計画(令和5~9年)によれば,中学卒業段階でA1(英検3級),高校ではA2(英検準2級)以上を達成した生徒の割合を60%以上にすることが目標とされています。

地域差があるのが問題視されてはいるものの,左の中学生と右側の高校生のグラフとも,過去最大の伸びを記録するなど,着実に上昇してきているのは良い傾向です↓
ちなみに,A2の上のB1レベル(英検2級)は,一般的には「高校卒業程度」と公表されているにもかかわらず,取得できている生徒の割合は実際のところ20%程度となっています。
令和5年度は令和4年度より1.4%減少して19.8%となってしまったので,中高生は現状に満足せず,ますます英語力を上げていく必要があることを心に留めておきましょう。
もちろん,入試選抜は資格があると有利に進められるので,頑張りに見合うだけの見返りはあります。
英語教員として評価されるためには
外国語指導助手(ALT)が授業に参画する割合は増加してきています↓
やはり日本人の英語教員だけではどうにもならないということなのでしょう。
印象に残っているものだと,静岡県の教育委員会が,2019年度の公立の高校教員採用試験において,「英語のネイティブスピーカーを採用する」と発表したことをよく覚えています。
実はこのとき,採用試験における英語の専門試験における,ノンネイティブの高校教員の場合の優遇条件として知らされたのが,以下の内容でした↓
- 英検1級かTOEIC950点以上あれば試験免除
- 英検準1級かTOEIC800点以上あれば5点加算
高校の英語教員としてやっていくためには,理想は1,最低でも2のレベルの英語力を備えておく必要があると考えられるでしょう。
「英語はみんなが得意になりたいけれど,できるようになった大人は少ない」という事実は,実際ある程度長く人生を生きてみると「しょうがない」と納得できるようになります。
というのも,大学に行っても国内で普通に生活していれば英語を使う機会はほぼないですし,社会に出てネイティブスピーカーと英語で話す機会もそう多くないからです。
「高3のときの英語力が,ある意味,人生で最高に英語ができた時期だった」という話は笑い話と思っていましたが,大学に入った学生の様子を見ていると,「冗談ではなく本当なんだな」と考えを改めました。
しかし,そのレベルは多くの大学や社会が求める英語力には達していません。
「高いレベルを求めすぎだ」と思うところもありますが,塾では実際にそのレベルに達している生徒も確認できるわけで,そういう子は比較的良い大学や就職先にありついているのも確からしいことのように思います。
現に中学生で英検2級以上を取得する子もちらほら出てきており,長期休暇は海外に短期留学などして過ごさせる家庭も私立の生徒を中心に多く見られ,英語力の格差はますます広がっているようです。
さて,当記事の目的であった「中学や高校教員の英語力」についてですが,実際に高校では,資格検定試験を受けるよう働きかけるよう指導したり,研修講座を実施してできない教員には英語授業の特訓を行ったり検定料を助成するなどして,B2レベルに達する教員を増やしています。

ですがそれでも中学では半数以上が,高校でも2割弱が資格を保有していないわけで,C1レベルの教員が少ないこともあり,まだまだ十分とは言えないでしょう。
自分が高校生だったときのことを思い返してみれば,英検2級を受けさせられる裏で,教わる教師が英検3級しか持っていないことを不思議と生徒はみんな知っていて,「なんだか理不尽じゃないか」と疑問に思ったものです(多くの場合,中高生の直感は的を得ています)。
やはり,教える側には前章で提示したような,説得力を持つ英語力の証明が必要なのではないでしょうか。
まとめ
最後に当記事の要点をまとめると,
- 英語教員でB2レベルの取得者は高校が80.7%で中学が44.8%
- 英語教員は最低でもB2,最終的にはC1レベルに到達すべき
- 中学生はA1,高校生はA2に達してようやく平均レベル
- 入試や就職を考えても学生時代にB1以上を目指すべき
と結論づけられました(確認ですが,A1は英検3級,A2は準2級,B1は2級,B2は準1級相当です)。
今回の記事を読んで自身の英語力に危機感を覚えた方は,スタディサプリENGLISHのようなアプリを使って,毎日のちょっとした時間に勉強することをおすすめします↓
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最後までお読みいただきありがとうございました。