運動会や大事な試験の前日など,緊張で眠れない夜がありましたが,それでも「とりあえず目を瞑って横になっていなさい。それだけでも身体の疲れは回復するから。」などと周りに聞かされて育ちました。
ですが,精神(脳)に限ってはこの方法だと回復できなさそうですし,学校に通って知的活動を行うことが予定されている中高生においては,特にしっかりとした睡眠を取りたいものです。
「早寝早起き」という当たり前のことが答えになるのは明らかですが,ここではもう少し詳しく,正しい睡眠を取るためのコツについてみていきましょう。
もちろん,社会人になってからも役立つ内容です。
中高生に必要な睡眠時間
頭がしっかり働くために必要な睡眠時間ですが,実は決まっていません。
というか,「人によって異なる」と言ってしまう方がより正確な答え方になるでしょうか。
遺伝などの影響で体質の個人差は大きくなりすぎてしまうため,例えばAさんに適当とされる睡眠時間がBくんにそのまま適用できるという話にはならないのです。
平均的には7~8時間だと言われていますが,9時間以上眠らないと不調な子もいます。
聞いたことがあるのは,分析的思考を持ち機知に富むタイプの子には長時間の睡眠が必要で,その一方,社交的で活動的なビジネスマンに将来なるような子は睡眠時間が短めになる傾向があるそうです。
なお,ナポレオンのように4~5時間しか眠らないというのは,「あまりに短時間の睡眠時間」と考えられていることは覚えておきましょう。
この短さでの睡眠生活が続いてしまうと問題です。
余談ですが,昔バイト先でであった宝石鑑定士兼外国人の対応担当の方は高齢だったのですが,「寝る時間がもったいないから,僕は寝ないんだ。」と言っていました。
実際夜勤の間の仮眠1時間30分が彼の一日の睡眠時間のすべてでしたが,その調子で80歳を過ぎても地元のボランティアに参加しては英語を学生に教えるなどして貢献しています。
芸能人の中にも同じように睡眠をほとんど取らずに生活できている方もいるようですが,その反面,週に3日連続徹夜でその後2日間眠るような漫画アシスタントや激務か不安からか眠れない新入社員が身体を壊していたのを見ると,短い睡眠が良いとは言えません。
ゆえにここで言えることとしては,少なくとも中高生のうちはしっかり睡眠を取るべきだということです。
時間は先ほど平均と言った7時間を基準に,授業中のパフォーマンスをみながら調節しましょう。
なお,どんなに睡眠を十分に取っていたとしても昼食後は眠くなるものだそうです。
これは最近解いた入試問題の英文に書かれていたことですが,その眠気を睡眠不足によるものだと勘違いしないようにしてください。
早寝早起きを成功させるコツ
「早寝が先か,それとも早起きが先か」という議論は,「ニワトリが先かタマゴが先か」的な難問のように思えるかもしれませんが,早起きしたからこそ早く眠れるのは確かですから,早く起きることを優先し習慣化したいところです。
この際ですが,人間が本来持つ「起きてから眠るまでの周期」が25時間であることに注意しなければなりません。
1日は24時間ですから,これより長くなってしまっているところが厄介です。
つまり,何もしないでいる限り,起きる時間は1時間ずつ後にずれてきてしまうのが自然の摂理だということになります。
食欲もそうですが,本能に訴えかけてくる「人の性(さが)」というのはそれだけ強力なもので,朝に無理矢理起こされた時に眠いのは至極当然です。
ですが,人には面白い機能が備わっていて,朝に日の光を浴びることでその刺激がスイッチとなって働き,脳を覚醒させて起こしてくれます。
逆に,夜,光を遮断して活動を休止することで,強制的に眠りに陥ることができるわけです。
夏休みに「規則正しい生活を送れるように。」と,朝のラジオ体操に生徒を参加させていた時代もあるようですが,勉強をしていて眠くなった時にはノートを必死に取ってはとにかく手を動かすようにしたり,「立って勉強しろ!」と言われるのも,実は理に適った行動なのでしょう。
私も生徒がどうしても眠そうにしているときは,一緒に立って授業をしたり,生徒に授業を代わってもらうことにしています。
なお,それでも効果が出ず,眠ることしか頭に浮かばなくなってしまう状態のときは昼寝が有効です。
ただしこのときは「昼寝をする長さ」に気を付けるようにしてください。
時間にして20分間を超えてしまうと脳は深い睡眠に入ってしまうため,起きた際,頭の中がぼんやりとしてしまうはずです。
また,回数としては複数回取ってよいとされていますが,夕方以降の昼寝は夜に眠ることを妨げてしまうので避けましょう。
また,眠い状態で昼寝しているので,20分以内に目覚めた場合も多少改善されていてもまだ眠いはずです。
そこで2度寝してしまう危険性もあります。
ゆえに昼寝は第3者にしっかり起こしてもらうよう頼むのが理想です。
体内リズムと光の関係
現代はICT技術が溢れています。
もちろんそのおかげで便利に生活できているのですが,パソコンやスマホでブルーライトを浴びてしまう機会は確実に増えていますし,それ以外のTVやコンビニ店の光であっても体内リズムを崩すのに十分です。
特に,室内の灯りを消して真っ暗にした状態でスマホをいじってしまうのは最悪だとされています。
というのも,暗闇にしたことで瞳孔が開いた状態(暗順応した状態)になるわけですが,こうして目に光が入りやすい状態になっている中,ディスプレイからの光がより強烈なものに変わってしまうからです。
そういえば,スマホには明るさ調節モードがあり,暗闇だとほぼゼロの明るさになりますし,中には寝る時間に合わせて自動で光を弱めてくれるものもあります。
これも,上のような事例を理解しているからこその施策でしょう。
とはいえ,中高生は普段学校に通っているので,生活リズムが崩れたとしてもそれは週末だけであったり,長期休暇の期間中だけで済むのがまだしもの救いかもしれません。
というのも,大学生ともなってしまうと強制されることが少なくなり各自の自主性に任されることが多くなるからです。
いったん崩れてしまうと簡単には元には戻りませんから,そうなれば朝寝坊はもちろん,欠席や遅刻が増えてきてしまうのも当然だと思うのですがいかがでしょうか。
知り合いの大学生たちをみていて,「身体本来のリズムに従って気ままに生きてしまうと,こうも社会に対応できなくなるのか。」としみじみ実感しています。
そうならないためにも,強い意志を持って規則正しい生活を送ることを心がけてください。
これまでの内容と重複するところもありますが,一度ここで人間の睡眠リズムの特徴についてまとめておきましょう↓↓
- 起床,就寝時間を早くするのは難しい(遅くするのは簡単)
- 朝に光を浴びなかったり夜に強い光を浴びるのはダメ
- 昼間休んで夜に活動するのもNG
- 一度崩れたリズムを立て直すのは難しい
夏休みの過ごし方
以上のことを踏まえると,夏休みを筆頭とする長期休暇というのは,中高生が夜更かしをして朝寝坊してしまうには格好の時期です。
一生続くわけでないにしろ休みは長期間に及ぶわけですし,夏というのは季節的に朝早くから明るくなる上,部屋に遮光カーテンや雨戸がなければ,本来寝ていなければいけない時間に目を覚ましてしまうこともあるでしょう。
塾で夏期講習をしていると,学校があるときに比べてやたらと元気な生徒が目につきます。
「久しぶりの長期休暇を楽しんでいるからかな。」などと最初はのんきに考えていましたが,実のところ,彼らは朝の強烈な光で無理矢理覚醒させられた状態であり,その無理がたたって,秋から冬にかけて一気に疲れやすくなってしまうことがわかってきました。
学校によっては,「夏休みの諸注意」などのプリントを配るところもありますが,以下のようなルールを決めている学校の生徒は比較的うまく過ごせているように思います↓↓
- 朝寝坊や夜更かしをしない
- 冷房の利いた部屋にいない
- 外に出て運動する(家事手伝いも可)
夏休みに,6時起床の勉強合宿を執り行う中学校もありました(私立ですが)。
なお,こういったルールの対象者が勉強ができない子限定かというとそうではなく,偏差値が高い学校ほどこういったルール決めを厳密にしているように思います。
また,光にだけ注目するのではなく,朝ごはんも心と身体の目覚めに必要なことは忘れないでおきましょう。
まとめ
それでは最後に,良質な睡眠をとるために有効な工夫というのを箇条書きにし,今回の記事のまとめをしようと思いますが,これまでに述べたものをまとめると以下のようになります↓↓
- 最適な睡眠時間は人によってさまざま
- ただし平均は7~8時間で,4~5時間は短い
- 土日に朝寝坊すると翌週の夜更かしにつながる
- 朝は日光を浴び,暗闇の中でのスマホの光は危険
- 昼寝は午後3時までに行い,長さはMAXでも20分
- 光と並んで,食事や運動も目覚めに有効
この他にも,普段同じ時刻に起きるようにしたり,はたまた眠る4時間前のカフェイン摂取を控えるといった施策が考えられますが,こういったことを実践できれば,社会人が羨ましいと憧れる理想的な生活が送れるはずです。
逆に,学生時代しか理想的な睡眠を取れる機会はないと言えるかもしれません。
日中眠くなる理由としては圧倒的に睡眠不足が多いそうで,平日に睡眠が不足しがちだからと週末にその分多く寝だめするようにしても,その程度の努力で劇的に改善されるようなものでもないのです。
大人になってみないとわからないのですが,物事にはベストなタイミングというものが存在します。
学生時代というのは勉強するのに最適なタイミングです(将来どんな職種に就くにしても,各教科から獲得できる独自の視点を備えた考え方は重要です)。
しかし授業ですぐに眠たくなったり,頭に内容が入ってこないようでは,わざわざ学校まで来て机に座っている努力が無駄になってしまいます。
そういったわけで,今回の記事で睡眠について理解を深め,規則正しいリズムで学生生活を送れるようになれば,それはもう立派な勉強法の1つだと思うわけです。
是非周りと助け合って,自分にとっての理想の睡眠パターンを実践していきましょう!