2020年度に小学校でプログラミングが必修化され,ソフトウェアを中心に基板やロボットに触れることが増えましたが,「アンプラグド」と呼ばれる教材を用いることで,実際の授業にスッと入っていけるようになります。
正確にはアンプラグドプログラミングと言い,電子機器を使わずにプログラミングの考え方や仕組みを学ぶ教育方法です。
もちろん,コードを自ら入力する体験こそが重要視されてはいるものの,コンピュータを用いずに済むアンプラグドは低学年にプログラミング教育を施す際によく使われます。
今回は,読むだけでプログラミングの世界に触れられる「ルビィのぼうけん」という絵本を例に,アンプラグドの効果について学んでいきましょう!
プログラミングとアンプラグド
まずは「アンプラグド」という手法について説明しますが,これは英語で書くと「Unplugged」となり,プラグが抜かれた状態,すなわち電気を使わない状態を意味します。
例えば,ギタリストのコンサートでアンプラグドと言えば,アコースティックギターでライブをすることを指すわけです。
さて,この用語をプログラミングの世界で用いると,それはパソコンを使わないことになるわけですが,もはや「ビジュアル言語・ロボット・アンプラグド」などと並べて語られる,立派な教材の1つとして認知されています。
ちなみに,プログラミングを生活の中で身近にあるものに置き換えてさえあればアンプラグドに分類され,スマホアプリを使ってお菓子の写真を撮るGLICODEもそうです↓
アンプラグドを教材に用いるメリットですが,ICT環境が整っていない場所でも学べるところで,冒頭で述べたように,プログラミング教育の導入段階で特に有効とされています。
その一方でデメリットもあり,自分たちが想定した動作を厳密に確認できないところが1つです。
そのため,プログラミングを学ぶ際は,いずれはソフトウェアやロボット(体験型学習)を使う必要があります。
プログラミング的思考とルビィのぼうけん
これから「ルビィのぼうけん」という絵本のレビューをしながらプログラミング的思考について学んでいきますが,まずは定義について確認しておきましょう↓
プログラミング的思考は,「自分が意図する一連の活動を実現するために,どのような動きの組み合わせが必要であり,一つ一つの動きに対応した記号を,どのように組み合わせたらいいのか,記号の組み合わせをどのように改善していけば,より意図した活動に近づくのか,といったことを論理的に考えていく力」である(小学校プログラミング教育の手引きより引用)
文科省の手による大変固い文章で,何回読んでもイメージしづらいものですが,ルビィのぼうけんを読み終えてみると,不思議とその意味がわかってくるものです。
その意味で,これから紹介する2冊はアンプラグド教材の価値を確認する場合や,プログラミング教育の導入時に真っ先に勧められる本であると言えるでしょう。
実際,教師向けに配られたプログラミング教育に関するまとめ冊子の中にも記載されていますし,小学校のプログラミング教育で使われる教材を紹介しますで述べた文科省のサイトの教材例としても登場してきています。
ルビィのぼうけんは教育大国であるフィンランド出身のプログラマー,リンダ・リウカス氏が,プログラミングに初めて接する子どもに向けて2013年に完成させた絵本です。

先の画像で示した登場人物においても,性格にプログラミング関連の内容が混じりこんでいたり,パイソンという名前のヘビを飼っている友達が出てきたりもします。
詳しくは公式サイトに記載があるので,そこで確認してみてください。
日本では4冊が発売されており,今回はそのうち最初の2冊を詳しくみていくことにします↓
- こんにちは!プログラミング(2016年)
- コンピューターの国のルビィ(2017年)
- インターネットたんけん隊(2018年)
- AIロボット、学校へいく(2020年)
ちなみに,製作プロジェクトの費用は流行りのクラウドファンディングで4000万円近くを集めたということで,なんとも現代らしいエピソードです。
こんにちは!プログラミングのレビュー
それでは第1弾にあたる「こんにちは!プログラミング」についてレビューしていきましょう!
この絵本は大きく分けて2つのパートからなり,前半でプログラミングの基本知識を学び,後半部分で,得た知識を遊びながら深められるのが特徴です。
保護者と子どもが一緒になって読み進めることを想定して作られているので,小学校でプログラミングの授業を受けることが決まっている小学生には是非とも読ませておきたい一冊になるでしょう。
なお,内容は「命令コードについて学ぶ」といった小難しいものではありません。
子どもたちがこの本を通して学ぶものは,大きな問題を小さな問題に切り分けるやり方です。
想像力を働かせながら共通のパターンを探し,計画を段階的に立てていくと,枠にとらわれない物の考え方が自然と身に付きます。
114ページあるうち,最初の68ページは物語部分になっていて,好奇心旺盛なルビィという女の子がパパからの手紙を見つけることから話が始まり,宝石探しに出かける彼女でした↓
1章分のボリュームが6ページ前後で計10章からなる構成ですが,あくまで子ども向けの絵本ということでサクサク読めてワクワクする内容です。
後半には,プログラミング的思考を学ぶための練習問題が全部で22問収録されています。
指導者目線で言えば,各章に「おどうぐ箱」という項目が用意され,その章で学びたい目標が書かれているので,保護者はまずこの部分を読むようにしましょう↓
大人向けの文章も,先に紹介したお堅い定義よりもずっとわかりやすいです。
なお,練習問題は「4つの矢印を繋げて地図を作ろう」といった簡単なものから始まります↓
それが後半ともなると,プログラミングでよく使われるブロックなどが登場し,かなり深いところまで学習できました↓
なお,教材の補助教材が先の公式サイトからダウンロードできます。
コンピューターの国のルビィ
ルビィのぼうけん第2弾のタイトルは「コンピューターの国のルビィ」です。
ページ数は全部で88ページと第1弾より少し減り,前半41ページと後半47ページから構成されます。
まずは前半からみていきましょう!
第1弾の絵本でルビィのぼうけんの舞台となっていたのは「自分の住んでいる世界」でしたが,第2弾は「コンピューターの中」です。
身近なところから始めて,コンピューター,インターネット,AIロボットの世界へと冒険していくわけですが,第2弾の物語は長編で一気に読み通せるようになっているところが第1弾と異なります。
つまるところ,章に分かれていません。
物語内容はよりプログラミングらしいものとなり,かなり深いところまで言及されます↓
特に,後半の練習問題は実用的な知識ばかりなので,保護者の方は学ぶところが多いと感じるでしょう↓
これまでに紹介した2冊から学べることを箇条書きにしてみると,以下のようになります↓
- 計画の立て方
- 疑問点を具体的にする重要性
- 問題を解決するための手段
- 複雑なものは単純にして考える
- 誰かと協力することの大切さ
- コミュニケーションの難しさ
- 指示を出すときの頼み方
最初の4つはまだしも,最後3つのような話まで書いてあったことに驚きました。
お気づきかもしれませんが,こういった能力は,社会に出て雇い主に使われるのではなく,自分が誰かを使う側になった場合に役立つものです。
受け身で指示待ち人間になるのではなく,自分の頭を使って物を考えられる人材というのは社会では重宝されます。
繰り返しになりますが,5歳以上の子を持つ保護者に是非読んでいただき,子どもが授業で学ぶことになるものの理解を,早期段階からさせていただければと思います。
親が一緒になって読み聞かせてやれば,子ども以外に自分にとっても得があるはずです。
特に,自分の子どもが大人でも思いつかないような面白い考えを述べてくれようものなら,秘められた子どもの可能性に驚かされることになるでしょうし,自分自身の日常に役立てられるヒントも見つかるでしょう。
まとめ
以上,プログラミングにおけるアンプラグドの解説と,その代表例であるリンダ・リウカス氏によるルビィのぼうけんのレビューでした。
対象年齢は5歳以上から読めるので,絵本を通して一生使えるプログラミング的思考,つまりは上に立つものの資質・能力と言いますか,搾取される側にならないための姿勢を我が子にいち早く身に付けさせましょう。
ちなみに,ルビィのぼうけんの特設サイト以外に,絵本の翻訳者である鳥井雪氏(優秀なプログラマーの方です)が監修するプログラミング教室もあります↓
2020年度の教育改革にみられる国の方針としては,なにも理系の生徒の数を増やしたいわけではありません。
今後,より複雑化することが予想される社会において,一人で生き抜ける力を身に付けて欲しいがためのプログラミング必修化です。
ルビィのぼうけんを読むと,すぐにそれがわかるでしょう↓
最後までお読みいただきありがとうございました。