今後,英語4技能がますます重視されるにつれて,目にすることが増えていくであろう出題形式と言えば,やはり「自由英作文」です。
というのも,純粋な英語力に加え,書かせる内容によっては「課題解決能力・コミュニケーション能力・創造力」といった能力までをも問うことができるからなのですが,これらは学習指導要領において「生きる力」として今後の社会に役立つものだとされています。
さて,そんな自由英作文ですが,名前にある通り「自由」に英文を書いても点数は取れません。
実際には,昔から暗黙の了解とされてきた解き方が存在しており,その中で自分らしさを加えて書くことこそが重要なのです。
英語を使って説明すれば,freedomではなくlibertyの方の「自由」だと言えるでしょう。
なお,10年ほど前にすでに体系化されている枠組みと,現在塾業界に流通しているものを比べてみましたが,ほとんど違いはありません。
長く変わらないものというのは,それだけ真実に近いということです。
高校生の方は今回紹介する解き方を身に付け,自由英作文の得点力を高めてほしいと思います。
もくじ
自由英作文の分類について
自由英作文と一括りにして言うものの,よくよくその問題をみてみると,タイプの違うものがいくつか存在していることに気が付くでしょう。
例えば,1枚の写真を見せられて「自由にストーリーを作りなさい」と問うものと,「9月入学について賛成か反対か」と意見を聞かれるようなものはどちらも自由英作文ではありますが,書き方のアプローチが異なります。
いくつか考え方はありますが,私がこれまでに学んできた中で最もわかりやすいと感じたものは,以下のように5つのタイプに分類するものです↓
- とあるテーマが与えられるもの
- 賛成か反対の立場を明らかにするもの
- 説明や描写を求められるもの
- 創作するもの
- 英文の空欄を埋めるもの
次章からは,この分け方に基づき,1つ1つ解き方のコツをまとめていきます。
なお,一般的に英作文力を高める勉強法については以下の記事を参考にしてください↓
普通,自由英作文について説明するときは,実際の入試問題をいくつか提示して,英語での解答例を示すのでしょうが,ここではなるべく日本語だけで説明してみたいと思います(とはいえ,覚えるべき英語表現はしっかり紹介します)。
なお,実際の問題を手元に用意して当記事をお読みいただくと,これまで漠然とみていた解答例が,一定のルールに従って書かれていることにもきっと気づけるはずです。
テーマが与えられている自由英作文の解き方
まずは書くべきテーマが与えられている自由英作文からみていきましょう。
こちらはまさに「課題解決型の能力」が問われる形式であり,普段から時事問題や社会問題に興味を持っている人が明らかに有利です。
そうでなければ,馴染みのないテーマを突然挙げられて,さらに「自分の意見を述べよ」などと言われても書きようがありません。
さて,ここで
- 科学技術は生活を変えたが,最大の変化は何だったと思うか
という質問をされたとしましょう。
このとき,問題の解き方としては,まず思いつく限りのキーワードを書き出してみてください。
日本語でOKですが,私の場合,「交通手段」であったり,「インターネット」や「医療技術」といった単語が浮かびましたが,この中から書きやすそうなものを1つ選びます。
次に採点官がわかりやすいよう(イメージしやすいよう)に説明を加えていくわけですが,歴史的な事実を列挙していくよりも,具体的な体験談や願望を書く方がその人らしさが伝わるのでベターです。
無論,相手が一回読んで理解できる内容になるよう,わかりやすく書きましょう。
なお,書くときの論理展開についてですが,まずは結論を書き,そのあとに理由や例などの詳細を書くようにしてください。
役立つ表現例
書き出しの候補:I have the opinion that・In my opinion・I think
詳細前のシグナル:This is because・The reason is that・Firstly
上の表現を使って,先ほどの問いに答えると,
It is my opinion that(医療技術が最も大きなものです). The reason is that(多くの人が死なずに済み,より幸せに暮らせるようになったからです).
と書けるでしょうか(ちょうど最近「Jin-仁-」というドラマを観た関係上,当記事ではその影響を受けた解答が続きますが,どうぞご了承ください)。
賛成か反対かを明らかにする自由英作文の解き方
自由英作文の2つ目のタイプですが,賛成か反対かの立場を問われる出題があります。
例えば「日本が開国するのに賛成するか否か」というものがそれです。
なお,このタイプの問題には,二項対立する意見のどちらを支持するかといった問いも含まれます。
「薩長軍に加わるか幕府軍に加わるか」という質問も,どちらか1つしか選択できないので,二項対立です。
このタイプの問題の解き方の解説ですが,まずは質問にしっかり答えられているかどうかを確認しましょう。
ところで,みなさんはA>Bの反対が何であるかを正確に答えられるでしょうか。
B>Aとは限りませんよ。
正解はB≧Aです。
同じという答えも含まれることに気を付けてください。
それではここで,
- 南方仁先生の方が緒方洪庵先生より優れている
という意見に対して,反対してみることにしましょう。
上の理屈に従い,ここで「お二方とも同じくらい優秀な医師だ」という意見も書けることに注意してください。
さて,その上で解き方についてみていきますが,序論→本論→結論の3部構成でいきましょう。
立場を最初に明確にするのが英語圏の発想ですので,まずは主張を1文目に書くようにしてください。
ちなみに,質問内容を省略して,"I agree with this opinion."などと書いてはいけません。
質問文を読んだことがない方でもわかるように,すべてを書く必要があります。
続けて本論では,理由や例などを詳細に記述するわけですが,論理展開を明確にすることと,同じ内容を繰り返さないことに注意してください。
100語くらいの自由英作文であれば,本論は2文くらい書けるでしょう。
相手に譲歩した内容にできれば上級者の仲間入りです。
また,結論は字数オーバーになってしまう場合を除いて,できるだけ含めるようにしてください。
役立つ表現例
賛成の表現:agree with・support・be for
譲歩の表現:It is true that~, but・Certainly,
結論の書き出し:Consequently・Therefore・This is why
以上を踏まえて答案を作ると,以下のようなものになります↓
I am against the idea that(南方先生が緒方先生より優れている). Of course,(南方先生の持つ医療技術には素晴らしいものがある), but(それは彼がタイムスリップしたからであり,江戸時代において緒方先生ほどの努力家はいない). It follows that(両者とも素晴らしい医者です).
主張は明確で正確な英語を使えているか,理由や具体例は納得できるものであるか,論理展開は正しいかに気を配りましょう。
説明や描写を求められる自由英作文の解き方
自由英作文の中で,真の意味で一番自由に書けるのがこのタイプに属する問題でしょう。
イラストや図表などのビジュアルを見て必要な情報を取り出し,相手に伝える能力が問われます。
学習指導要領で言うところの「コミュニケーション能力」です。
他に,ストーリーの説明をしたり,面白さや人物の気持ちについて説明するものもあります。
4コマ漫画であれば,展開を理解することが最も大切であることは言うまでもありません。
このときの時制は現在形でも過去形でもよいですが,回想シーンの時制についてはくれぐれも気を付けるようにしてください。
このとき,風刺しているものがあれば,必ず指摘するようにしましょう。
単なる感想は書かないというのが解き方のコツで,あくまで客観的に,何を気づかせる漫画なのかを記述します。
First→Next→Then→At lastという,流れを示すディスコースマーカーを使用するのは定番です。
グラフの読み取りを行う場合は,目立つ特徴をピックアップし,書く順番を工夫して論理的に記述しましょう。
その際は,倍数表現や比較に関わる表現も使えるようになってください。
役立つ表現例
指摘する表現:This story points out~・The point of this story is~
グラフ特有の表現:The graph shows~・We see from the graph that~
数量の表現:a half・three fourths・four times・twenty percentage of the people
その他,On the other handやWhile(一方)といった表現もよく使います。
創作する自由英作文の解き方
このタイプの自由英作文はまさに「創造力」に基づく表現力が問われるもので,語句だけが指定されていて後は自由にストーリーを作るものであったり,書き出しや終わり部分が決められていてそれに繋がる文を書くもの,絵などが与えられていて自由に書くものなどと多岐にわたります。
例えば,「次の3つの語句を使って80語で自分の考えを述べよ」というのは1つ目にあたるものですし,絵の問題であれば自由度が高くなるので,オチや笑いを取れなくても構いません(取れた方が好印象ではありますが)。
基本的には,条件を満たして場面に即した誰にでもわかるストーリーが求められています。
ここでは,やや無茶ぶりをして
- 先に示した写真を見てストーリーを作りなさい
といった問題を解いてみることにしましょう。
このとき,There was a girl. She came to an open field. It was an evening. などと単調な文を書き連ねてしまうのはNGです。
解答のコツは「起承転結を心がけること」であり,
- 起=話題
- 承=起の内容を受ける
- 転=転換
- 結=オチ
をそれぞれ意味しますが,それに即して上の問題に答えると,
彼女は野原に来て,美しい夕日をしばらくの間眺めていた。Then(南方先生が気持ちを打ち明けてくれた). However,(彼女はそれに応えなかった。というのも,彼がいつか元の時代に戻ってしまうことを知っていたからだ). As a result,(彼女は未来に向けて手紙を残すことにした).
と書けることになります。
英検の教材でもこういったタイプの問題が出てくることがあるので,そちらの解答例なども参考に練習を積んでみてください。
英文の空欄を埋める自由英作文の解き方
最後は英文の間に空欄がいくつか存在し,それを埋めるように指示されるタイプの自由英作文についてです。
一番自由度が少ないのですが,その分簡単に解けるわけではありません。
高校入試でもこういうタイプの問題はありますが,大学入試のものはそれよりもずっと難しいです。
他のタイプの問題と同様,ここでもまずは指示をしっかり読んで話題や場面について正確に理解しましょう。
その上で,つながりを示す語句があればそれに従いますが,なければ自分で補う必要があります。
英文にするときは,主語を考え,時制や周りに書かれた単語表現をどのように利用するかに注意を払ってください。
そして,最後に必ず見直しをしましょう。
これは他のテーマでも共通ですが,語数と文法を特に意識して見直します。
「内容よりも英語がしっかり書けているのかを評価する」というのは,東大の自由英作文においてもわざわざ書かれていた注意であり,文法ミスはあると必ず減点されると思っていて構いません。
1つのミスを見つけることは1問正解したことに等しい価値があるわけですから,時間がないときもパッとは見直すようにしましょう。
まとめ
以上,自由英作文のコツを5つのタイプ別にみてきましたがいかがだったでしょうか。
「自由」という言葉とは裏腹に,実は厳密な解き方が存在することがわかっていただけたかと思います。
今回の要点をまとめると,以下の通りです↓
- テーマ型:結論→理由・例
- 賛成反対型:序論→本論→結論
- 説明・描写型:見る→情報を取捨選択→伝える
- 創作型:起承転結を意識する
- 穴埋め型:論理展開と文法ミスに注意
英作文を解くときは,上のどのタイプなのかを明らかにしてから解答を作ってみてください。
模範解答も上記の解き方を基に書かれているものが多いので,応用が利きそうで使えそうな表現はその都度ストックするようにしましょう。
最後になりますが,どの問題にも共通していたのは「問題文をよく理解する」ということでした。
聞かれている内容に答えていなければ得点できません。
また,試験官は大量の答案を読むことになるため,1回読んで意味不明の英作文はバツにしてしまうことも十分に考えられます。
そういった意味で,答えをわかりやすく書くことも重要です。
繰り返しになりますが,自由英作文がユニークなのは,純粋な英語力を問うだけではなく,「読む力」に代表されるような数々の能力を問えるところでしょう。
英字新聞などを日頃から読み,自分の考えを持つことは社会に関心を持つことと同意です。
是非とも,色々なものに好奇の目を向けながら,日々の学生生活を送るようにしてください。
最後までお読みいただき,ありがとうございました。