教育改革により英語4技能が重視されるようになった昨今ですが,今回はそのうち「書く」にあたる「英作文の得点を上げるコツ」について学んでいきたいと思います。
そのためには相手についてよく知ること,つまり,そもそも英作文がどのように採点されるのかについて知ることが大切です。
当記事の最初のところでは,英作文の採点項目に挙がりやすい4つについて紹介します。
その他,英作文のおすすめの勉強法についても簡単にまとめているので,これからの学習に役立ててみてください。
英作文がスピーチと違うところ
いわゆる書き言葉と話し言葉の違いに注目することで,英作文で何をしてはいけないかがわかってきます。
基本的に英会話は動詞が中心で,人称代名詞の使用は制限されません。
しかし,英作文では名詞が中心で,客観的かつ非個人的な雰囲気が好まれます。
以下の例で確認してみてください↓
話し言葉:I'm submitting my homework late because I got sick and I missed the bus.
書き言葉:The late submission of my homework is due to illness and transportation problems.
高校入試で日記のような内容を英語で書かされたことがあったかもしれませんが,大学入試の英語はアカデミックなものになります。
会話するのと異なり,相手がその場にいないので,自分の言ったことが相手に伝わっていないリアクションも確認できないので,背景知識は十分に説明すべきです。
とはいえ,大学で書く論文のように,3~4回書き直してはようやく完成となる大作を求められることもありません。
なので,基本的には以下の事柄にだけ注意して書くようにすれば大丈夫です↓
今すぐにできる改善案
疑問文を多用しない:"Why does it happen? It is because..."などと書かずに,「~が原因でそのようなことが起こる」と明確に書いてください。
because, but, and, so, while, then, though, by the wayで文章を始めない:2つの節が含まれている場合に許されることもあるのですが,例えば最初の2つならThis is becauseやHoweverなどと書けるので,避けると考えておく方が無難です。
不可算名詞に-sを付けない:代表的なものはwater, advice, faculty, staff, equipment, information, work, vocabularyです(ただしstaffが人以外の意味で複数形になったり,「作品」の意味でworksと書いたりはできます)。
日本語をローマ字で書く際は下線を引き,英語訳を付け足す:It is sento, or public bath.が例です。
短縮形は避ける:didn'tはdid not,they'reはthey areと書きます。wannaやgonnaなどの使用も認められません。
I thinkやyouの使用を避ける:あなたが書いた文章なので,あなたの意見であることはすでに明確です(「自身の経験を基に」などの指示があるものは除く)。
短く単純かつ曖昧な意味の単語を連続で使用しない:日本語の「すごい」ではありませんが,bigやfamousのような英単語を繰り返し使用すると無教養な人のように思われます。同義語や似た表現を使って言い換えてください。
性差別的な誤解を生む単語を避ける:policeman→police officerと書きますし,"If a student wants to buy the book, he will..."は"If students want to buy the book, they will..."または"If one wants to buy the book, it is necessary..."などとします。
以上のことを踏まえた上で,次章では大学の英作文の採点方法についてみていきましょう!
英作文の採点方法
英作文の採点方法は大学ごとに多少異なりますが,多くで共通している評価項目は「内容・構成・文法・語彙」の4つであると言われています。
この中では特に内容が重要なのですが,文法を適当に書いたり架空の単語を登場させたりするようでは,高得点の答案は期待できません。
ちなみに,絶対的な答えが1つあるマークシート方式と異なり,英作文は人の手によって採点されることになるため,点数は大まかな評価(例えばABCDなどの評価)で決まります。
それでも,採点者によって結果にバラつきが出ないよう,判定基準は細かく定められていることを覚えておきましょう。
それでは上の4項目ごとに,注意すべきポイントを解説していきます。
内容
「内容」は,英作文において最も重要な採点項目です。
問題の指示にずばり答えられているかどうかで評価が決まりますが,例えば100点満点の問題だとしたら本項目での配点は40点で,時に50点以上の配点を占めることがあってもおかしな話ではありません。
というのも,もしも質問の内容を勘違いしてしまって的外れな英語を書いてしまえば,たとえ文法や単語がどんなに正確で完璧なものであっても,それらの評価も低くなりがちだからです。
極端な話,過去問の解答を1つ丸暗記してそれを本番の答案に書いた場合,内容以外は完璧なわけですが,それで合格点が取れることはないでしょう。
つまり,内容が最低評価であるにもかかわらず,論理構成や文法が最高評価などという答案は存在しないわけです。
そこでまず,自分の書いた英作文が以下のポイントをしっかり押さえているか確認してください↓
- 質問内容に答え,問題指示を守っている
- 説得力がある内容である
- 内容が乏しいものでなく,話が脱線していない
細かい文法や語彙はともかく,採点官が通しで一回読んでみたときに,書かれた内容に納得できたかどうかで評価が決まると言っても過言ではありません。
たとえ8割の受験生が思いつくようなありきたりな内容であっても,論理が一貫して書かれていればB以上の評価が取れるはずです(場合によってはCが普通とみなされる場合もあるので,この限りではありませんが)。
また,英語の入試問題は英作文だけではないはずです。
試験時間が限られている以上,まずはこのレベルの答案が素早く書けることを目指すようにしてください。
構成
英作文の2つ目の採点項目は「構成」で,内容のときとは異なり,どちらかと言えば技術でどうにかなるものです。
その最たるものが字数であり,メールに返答するようにと指示があれば,それにふさわしい書式で書けているかどうかも採点されます。
「~語程度で」とあれば,その±1割に収まる語数にしてください。
なお,数字は100,000と書いても1語としてカウントします(one hundred thousandだと3語です)。
指定語数に対して実際の文字数が少なすぎる(例えば5割以下の)場合は大きく減点されますのでご注意ください。
また,字数を増やすために無意味な繰り返しを行なえば,こちらもまた減点対象です(項目が「内容」になってしまうことも少なくありません)。
文法の面だと,ずっと同じ主語と動詞で始まるような英文は書かないでください。
例えば,The author said that…で始まる文ばかりだったり,"He went to... Then He went to..."などと続く単調な文では,文法が正確であったとしても減点されます(前者はthat節の中身が複雑であれば免れるかもしれませんが)。
形式ですが,Eメールということであれば,冒頭に相手の名前を書いたり,結びの挨拶などにも注意しましょう。
「Dear…」や「Sincerely,」などがこれにあたります。
次に注意すべきものが「論理展開を示す語句(ディスコースマーカー)」で,内容はありきたりであっても論理の流れが適切だと判断されれば,「構成」の項目では簡単に高得点が取れるはずです。
簡単なところではandやorやsoなどがありますが,ついつい忘れがちになってしまうディスコースマーカーだけに,しっかりと意識して含めるようにしましょう。
構成についてまとめると,
- 字数は足りているか
- 論理の流れはしっかりしているか
- 論理展開を示す語句は正しく使えているか
- 不要な繰り返しはないか
が,構成面での主な注意事項です。
ちなみに「内容」以外の項目(構成と文法と語彙)の配点は,100点満点で考えるとそれぞれ20点ほど(内容点の半分くらい)のウエイトを占めることになります。
文法
3つ目の評価項目は「文法」です。
英作文でよく聞くのが,自分の知っている文法や語彙だけ使って書くことですが,それだけでは簡単な中学英語レベルの英文しか書けません。
もちろん,文法を間違えてしまえば確実に減点されてしまいますが,先述したように英作文は1点刻みの採点ではない場合がほとんどですし,多少の冒険は必要です。
少なくとも普段の模試や参考書をやる際は,様々な文法事項に挑戦することを心がけてください。
例えば,"I recommend that you should go there."とこれまでならば書いていたところを,"Why don't you go there?"と書くだけでも変化が出せます。
とはいえ,複雑すぎる文章を書いてしまって逆に伝わりにくくなってしまえば最悪ですので,接続詞のthatは省略せずに書いたり,目的を表す不定詞のtoをin order toの形にしたりなど,採点者に誤解されない書き方をするのがおすすめです。
まとめると,英作文の文法では,
- 単純な文法ミスをしていないか
- 使用されている文法にバリエーションはあるか
- 難しい文法に挑戦しているか
- 採点者の側から見て複雑すぎる文を書いていないか
といったことに注意してみてください。
語彙
英作文で意識すべき最後のポイントは「語彙」です。
ここではボキャブラリーの豊富さが評価されますが,CEFRレベルの高い語彙を意識的に答案に含めることで評価を高くすることができます(高校入試ではA2レベル,大学入試ではB2レベル以上が目安です)。
もちろん,文意を妨げてしまう間違い方をしてしまえば本末転倒ですが,ちょっと意識するだけでも語彙の点数を上げることができるので,「文法」に引き続き本項目においても,普段から積極的に難しい語句を含めて文章を書く練習を積んでおきましょう。
難しいといっても,例えばパフェ(parfait)とか菓子類(confectionery)といった単語を使うだけでも語彙力をアピールすることができます。
それこそ,日常的に英語で日記を書くようにしていると(twitterでの呟きや翻訳アプリの利用など),上記のような単語が覚えられるので役立つはずです↓
まとめると,語彙の項目で高評価を得るために,
- スペルミスをしない
- 文意に合わない語彙を使わない
- 難易度の高い語彙を含める
ことを意識してみてください。
ここまで,英作文の採点基準になりうる4つの項目について語ってきましたが,次章からは,英作文の得点を上げるためのポイントや具体的な勉強方法をみていくことにしましょう!
英作文の得点を上げるためのコツ
前章の繰り返しになってしまうところもありますが,ここでは,評価の高い英作文を書くためのポイントについて改めて考えてみたいと思います。
まず「内容」の項目についてですが,ここでは国語力や発想力といった総合的な対策が必要になるため即効性があるものは少なくなりますが,主張をまず書いた上で,そのサポート(理由や例)を続けるという王道パターンを意識してください。
1つの主張に対して,2文ほどサポートを繋げられればバランス的にはOKです。
書くべき英文の長さが300語近くなると3文ほどサポートを続けることになりますが,そうすると英作文だけでも30分はかかることになるため,あまり現実的ではありません。
それならば,サポートの後にまとめの段落を設けて,主張を別の言葉に言い換えて再度述べるのが良いでしょう。
次に「論理」の項目ですが,高い評価を得るためにも,接続詞を意識的に使うようにしてください。
定番のhoweverやbecause以外に,「一方で」というニュアンスを出せるwhileやon the other handを使用したり,firstly(第1に)やsecondly(第2に)といった順番を示すつなぎ言葉は簡単に含められます。
結論部分ではIn summary(要約すると)やIn conclusion(結論として)を,上級者であればAlthoughを含めた譲歩の文にも挑戦してみてください。
3つ目である「文法」の項目においては,難しい文法をあえて使うことをすでにアドバイスしました。
関係副詞や非制限用法,分詞構文や仮定法の使用はなかなかに難しいものですが,付加疑問文やBe動詞で始める命令文,so…that~構文や比較表現などは比較的容易に使えるのではないでしょうか。
最後の「語彙」においても繰り返しになってしまいますが,CEFRレベルが高いと思われる語句を含めるようにしてください。
CEFR-Jのサイトでは以下のような形でレベル別に単語が見られたり(CEFR-J Wordlist),書いた英文のレベルを判定してくれたり(English Level Checker)します↓
最初のうちは熟語ではなく,単語にだけ意識を向けるようにしてください。
要約問題の解き方
英作文の問題で要約が出されることもありますが,これは大学に入って論文を書く際,他人の意見を要約する際にも同じことをします。
また,自分の論文の概要や結論部分においても似たようなことを行うため,英語でアカデミックな文章を書く上では避けられないことです。
なので,それが英作文として出題されても何らおかしなことではありません。
実際,中高生が受ける人気の民間試験である英検においても,2024年度から要約問題が課されるようになりました(2級以上)。
要約問題の解き方はすでに確立されていて,以下の手順に従うだけです↓
- 各段落に言いたいことは1つしかないと思って読む
- 最初の段落に全体を通して言いたいことが含まれる
- あとは論理展開に従って繋げるだけ
具体例や詳細にわたる説明は字数に余裕があれば含めますが,通常ならば必要ありません。
あくまでも筆者が述べていることだけをまとめるべきで,自分の主観を入れないことに注意してください。
例えば,
Bad luck always seems to strike at the worst possible moment. A man about to interview for his dream job gets stuck in traffic. A law student taking her final exam wakes up with a blinding headache. A runner twist his ankle minutes before a big race. Perfect examples of cruel fate.(東大1994年過去問第1問)
という段落を例に解説してみましょう。
実際は全部で4段落からなる文章の1段落目のみの抜粋です。
読んでいくと,1つ目の文は「不幸は最悪の時に訪れるようだ」と述べており,seemsが使われているあたりに筆者の何らかの思惑が感じられます。
実際この文が全体を通してのトピックなのですが,続く3つの文はすべてその具体例(ある男性の不幸・法学部学生の不幸・陸上選手の不幸)となっていて,最後に「これらは過酷な運命のお決まりである」とまとめられていました(These areを文頭に補って読んでみてください)。
本文はこの後,以下のように続くわけですが,このように書き出せてしまえば要約するのは容易でしょう↓
- 1段落目:不幸は運命のいたずらのようだ
- 2段落目:「それら不幸は潜在意識によるものだ」という心理学者の見解
- 3段落目:2段落目の具体例
- 4段落目:言い訳作りをして面目を保っても,そのような人は結局最後に負けてしまい,自分を批判することしかできなくなる
この問題の模範解答はもっと凝ったものになるでしょうが,合格点を取るだけならば,ただそのまま繋げるで構いません。
ただし,論理展開がわかるように,2段落目の内容の前に「しかし」を補うことが重要です。
3段落目は具体例なので答えには含めませんが,このように内容を解答に含めるかどうかの取捨選択を行う場合もあることを覚えておきましょう。
要約問題をより得意にしたい方は,字数制限を「短・中・長」の3つに分けて別々に書く練習を重ねてみるのが効果的です(この場合,添削者の助けが必要になります)。
この文章は4段落目が最も重要な内容だったので,ここの内容さえ含められれば結構な点数が取れるのですが,いきなり最終段落を読んでみたところで,それまでの内容がわかっていないと文意を理解できないところが憎たらしい(東大らしい)問題でした。
英作文のおすすめ勉強法
最後に英作文の勉強法についてまとめましょう!
中学生のうちは,教科書で文法を学ぶ際に出てきたような基本例文を丸暗記して,それをただ繋げていくだけでもなんとかなったでしょうが,大学入試の英作文対策では以下の2つが有効です↓
- 練習問題を解いて書き方を学ぶ
- 他人またはAIに添削してもらう
1つ目についてですが,問題集を選ぶ際は字数的に,普段の練習では最初は50語程度,続いて100語程度を目安にしてください。
最終的な目標としてはもちろん,文章の要約を英語で書けたり,自分の意見を論理的に述べられたりするレベルにまで達したいものですが,最初はまず自己紹介やとあるワンシーンの記述(写真を見てそれについて説明する),メールで用件を伝えるあたりの問題から始めていきましょう。
あとは,和訳英作文で頻出となる文法表現を学ぶのも良い方法で,「英作文は英借文」とは上手く言ったものです。
スタディサプリの英作文講座だと短期間で基礎的な知識が学べるので,無料体験してみると良いでしょう。
一方で,2つ目に挙げたような,他人に添削してもらえる環境を整えるのは難しいと思いますが,英作文の上級レベルを目指す場合は是非とも取り入れたいものです。
中学や高校で仲の良い先生や周りに英語ができる大人がいれば頼むのが良いですが,見当たらない場合はAIも使ってみるとよいかもしれません。
平成時代まではWeb辞書で言いたい日本語に対応する言葉を調べるくらいでしたが,今ではDeepLで言いたい日本語を文章で入力してはそのまま英語にしてくれますし,書きあがった英文のスペルや文法はかなり高い精度で正しいものを返してくれます↓
英作文学習に使えるAI
これらを使用するにあたっては,中高生が生成AIを使う際のデメリットの記事を読んでおいてください。
英作文の実力を試す場としては,偏差値の高い大学を受ける生徒が集まる模試を受けることの他に,GTECや英検といった資格検定の勉強をするのも,受験方式の幅が広がるのでおすすめです。
ところで,共通テストにおける英語の出題範囲をみてみると,「実際にコミュニケーションが行われる状況」を題材とした英作文が今後多く出題されるように思われます。
自分の好きなテーマに関して難しい英単語を学んでおくのは思わぬ形で役立つので,先述したAIなどを用いて英語で日記をつけてみてはいかがでしょうか。
毎日眠る前に3行ほど(数分以内)で,その日にあった良かったことを書いてみると,ポジティブな気持ちになって眠れるのでおすすめです。
Neighbors greeted me in the morning
や
I took a morning walk on my day off and was impressed by the beautiful flowers along the river
など,毎日続けて習慣化してみてください。
まとめ
以上,英作文での評価基準となる4つの項目と,英作文の得点を上げるためのポイントや勉強法についてまとめてきましたがいかがだったでしょうか。
内容面はともかく,それ以外の項目で最高評価を得るためにも,難しいことに挑戦する姿勢が重要であることを忘れないでください。
逆に,上で述べたポイントをちょっと意識するだけでも,良い英作文を書くことができるようになるわけです。
今回の記事の要点を以下にまとめたので,英作文を書いた後にでも是非チェックしてみてください↓
英文を書いた後のチェックポイント
- 質問にしっかり答えていて,論理の流れは適切か
- 問題の指示(字数や指定された形式など)を守っているか
- 論理展開を示す語句を正しく使用できているか
- 単純な繰り返しをせずに高度な文法が使えているか
- 語彙はCEFRレベルが高いものを意識的に含めているか
前章で述べたように,英作文を勉強する際は,練習問題を解くだけでなく添削してもらえる環境が重要である他,そもそもの文法力や語彙力を増やすために,根本的な英語力を底上げする必要があります。
ゆえに,文法が苦手という人は,英作文の勉強の前にまずは高校の英文法を学ぶところから始めるようにしてください。
なお,よりレベルが高いとされる自由英作文の解き方については以下の記事をどうぞ↓
-
自由英作文の解き方!問題はタイプ別に対応しよう
今後,英語4技能がますます重視されるにつれて,目にすることが増えていくであろう出題形式と言えば,やはり「自由英作文」です。 というのも,純粋な英語力に加え,書かせる内容によっては「課題解決能力・コミュニケーション能力・創 ...
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