今回は「全国通訳案内士試験に合格するための方法」について考えてみたいと思います。
2018年からは業務独占規制が撤廃されてしまい,資格の価値がずいぶんと下げられてしまったように感じる通訳案内士ですが,試験の難易度はそれほどではなく「確実に合格できる勉強法はいまだ無し」と言っても過言ではありません。
それについて知るには,例えば近くにいる資格所有者を探し出して,過去5年分の一般常識問題を抜き打ちで解いてもらえばすぐにわかるでしょう。
一方で,試験会場では多くの年配の方に出会うことから,何歳からでも目指せる資格の1つとして捉えてしまって構いません。
受験にかかる料金や問題の質に関する議論はさておき,それに向けて勉強して身に付く内容は確実に自分の身になります。
一次試験では最低でも6時間くらいは拘束され,大変体に堪えるものですが,それでも熱心に受けに来ている方が大勢いるということは,全国通訳案内士の資格をそれだけ魅力に感じているからでしょう。
実際,試験科目となっている英語・地理・歴史・一般常識は万人が興味を抱きやすい分野で,大の大人が多くの時間を費やすだけの価値はあるように感じます。
とはいえ,学生時代と同じような感覚で受けるわけにもいきませんから,全国通訳案内士試験に合格するまでに数年はかかるものと考え,高いモチベーションを維持しながら合格可能性を高めていく勉強法を採用するのが良さそうです。
全国通訳案内士試験の難易度について
全国通訳案内士試験とはJNTO(日本政府観光局)が年に1度だけ実施するもので,合格すると「全国通訳案内士」を名乗れるようになります↓
同じ国家試験であっても受験者数が多いものは実施回数が多くなりますが(例:運転免許試験),こちらは毎年1万人弱と少なめです。
大体の合格率は15%前後とされていますから,よく有名人が合格してニュースになる宅建(ただし受験者数は20万人くらい)と近い難易度と言えます。
試験科目は以下の5つですが,iでは2次試験(口述試験)が後日行われることを覚えておきましょう↓
- 外国語
- 日本地理
- 日本歴史
- 一般常識
- 通訳案内の実務
上で紹介した科目の中では,本人の普段の生き方が試験結果に大きく影響してしまう「一般常識」が実に厄介で,「これだけ完璧にやれば余裕で合格点が取れる」的な手段が存在しません。
英語・地理・歴史と異なり,別試験を受けて本試験を免除にしてしまえる術もないわけです。
もちろん,対策をすることで合格率を高めることはできるのですが,8割以上を余裕で取れる状態にはならないでしょう。
その他の地理や歴史であっても年度によっては難易度が上がりますし,英語においても一般常識を問う問題が出てくる関係で,全教科において合格点を余裕で取れる状態で試験に挑む人はいないと考えておく方が無難かもしれません。
とはいえ,前年度に合格した科目は翌年度に免除となり,上のi~iiiでは別試験の結果を利用することもできます(後述)。
そもそも,試験内容に納得できるのは大学受験までであり,社会人になってからは理不尽なものが多くなるのは世の常です。
なのでここでは,
とだけ言っておきましょう。
例えば一般常識の試験で,施行要領には以下のような記載があります↓
例えば,試験実施年度の前年度に発行された「観光白書」のうち,外国人観光旅客の誘客に効果的な主要施策及び旅行者の安全・安心確保に必要となる知識,並びに新聞の1面などで大きく取り上げられた時事問題等を問うものとする(参考)
しかし私が見た現実は,本年度の観光白書までをも緻密に読み込んでおく必要があり,Yahoo!ニュースを毎日読んでいた程度では合格点に届かないという試験問題でした。
確かに上の文章では「例えば」や「等」などと含みを持たせた書き方がされている他,先述したように社会人向けのテストなので文句は言いませんが,余裕で合格を目指すためには一層多くの時間を費やさなければないことを思い知りました。
2023年の問題では「LGBTの各国の取り組み」や「有楽町線や南北線の延伸」,2024年は「1月に月面着陸に成功した無人探査機の名前」が出題されましたが,当時これらのニュースを目にして興味を持って詳しく調べた受験生ははたしてどれだけの数いたのでしょう。
一般常識は過去問を解いている分だと何だかいけそうに思えてくるものですが,市場に出回っている対策本というのは過去問を基に作成してあることがほとんどなので,何か別の教材を使っているのであれば合格点が取れるのは当然で,年数が経つほどに無駄に量が多くなっていく傾向にあります。
これはつまり的中率がどんどん下がることを意味しますが,どういった箇所に注目すべきかのヒントにはなるので,全くもって無用なものとまでは思いません。
たとえば地理だと,「上総大地」や「下総台地」,「おかげ横丁」や「おはらい町通り」の違いをはっきり認識しておくことが合否を分ける場合があり,選択肢を見てどこのことか多くが分かる状態にしてなんとか合格点に届くイメージです。
英語の1次試験は英検1級やTOEIC900点以上の実力があれば難しく感じませんが,実は英語力だけでは正解できない問題(地理や歴史など,他教科の知識が必要な問題)が最低でも2割くらいは出てくるので,年度によっては80点の状態から70点を目指すことが必要になります。
色々と語ってきましたが,どの教科も決して油断はできないというわけです。
全国通訳案内士に合格するための勉強計画
イベント | 目安時期 |
官報公示 | 4~5月 |
施行要領公開 | 5~6月 |
願書受付 | 6~7月 |
筆記試験 | 8月 |
筆記試験合格発表 | 9月 |
口述試験 | 12月 |
最終合格発表 | 2月 |
前章の内容を踏まえ,全国通訳案内士に合格する勉強計画を考えていきましょう!
上に挙げたのは毎年のスケジュール目安ですが,
- 願書を期日内に出す
- 8月と12月の試験に合わせて勉強する
2つに注意しておけば大丈夫です。
口述試験も見据えて英語学習と時事ニュースのチェックは毎日のように行う必要がありますが,それ以外の地理や歴史,そして観光白書や旅行業法は詰め込み学習が基本となるため,早めの段階で一度通読した後は試験直前で一気に記憶を呼び起こすという勉強法を採用します。
また,一度の受験で合格できないことを考慮すると,より合格可能性を高める立ち振る舞いが望ましく,免除申請に使える他試験だったり包括的な知識を増やしたりすることも積極的に採用すべきでしょう。
これらは普段の勉強のやる気を高めてくれますし,新たな知識を獲得できることもあります。
それに2次試験では結局,総合的な能力が問われることになるわけです。
加えて,年齢を重ねてからも何かの試験に合格できることは嬉しい経験で,長く健康に生きていくためには必要なことでもあります。
以上をまとめて,当サイトの考える勉強計画は以下の通りです↓
全国通訳案内士合格プラン
8月:全国通訳案内士試験(筆記)を受ける
9月:国内旅行業務取扱管理者試験を受ける
10月:総合旅行業務取扱管理者試験を受ける
11月:歴史能力検定日本史2級を受ける
12月:全国通訳案内士試験(口述)を受ける
6~7月:実用英語技能検定1級を受ける
これを満足の行く結果になるまで続けていくことになります。
標準期間は2年だと厳しかったので3年にしましょう。
なお,基礎知識があまりに無い場合からのスタートとなると,別の勉強内容を計画の前部分に加える必要があります。
これについては合格可能性を高める発展学習と併せて,後述する科目別勉強法の章の内容を参考にしてください。
大人になると満足に勉強時間が取れないので,時期によっては無謀な挑戦になることもあると思いますが,「ダメで元元,できたら儲けもの」と考えられるようになると気持ち的に楽になります。
もしも合格できたものが1つでもあれば免除申請に使えますし,短いスパンで異なる試験に挑むことでマンネリ化を防止できて一石二鳥です。
次章では,通訳案内士以外の試験の概要についてまとめましょう!
全国通訳案内士試験では免除科目を生かそう
通訳案内士試験の最終関門となる口述テストではあらゆる知識が問われるため,その年にまったく地理や歴史の勉強をしないようなことがあってはなりませんが,免除科目を作ることで得ができることは確かです。
一般的に,外部試験を受けて合格することには以下のような利点と欠点があります↓
- メリット:通訳案内士の筆記試験で相性が悪い問題が出たために不合格になるリスクを回避できる。筆記試験のために生じる時間や体力のロスを考えずに済む。試験慣れができる。自信が高まる。資格が得られる。
- デメリット:全国通訳案内士試験の直接役に立たない知識までを学ぶことになる。それに付随する時間や体力そして金銭面におけるマイナス。
メリットについて補足しますが,受験科目が減ったからといって全国通訳案内士の受験料が安くなることはないものの,例えば英語の筆記試験を受けずに済む場合,最低でも2時間45分を節約することができます。
勉強時間つながりで言えば,最低限の英語力があることを前提として,筆記試験は200時間から合格してもおかしくない学力に達し,500時間をかけられると上々です。
是非,外部試験も検討してみてください。
なお,筆記試験の免除申請に使える外部試験と免除される科目の関係は以下の通りとなっています↓
外部試験と免除科目
募集要項を見ると,旅行業務取扱主任者(2005年から旅行業務取扱管理者となる)やセンター試験(共通テストは対象外)なども免除条件に挙げられていましたが,今では受けることができないテストです。
なお,TOEICに限っては全国通訳案内士試験を受ける前年の4月以降の結果しか使えないこと,そして英検1級を免除申請に利用するには1次試験の願書を出す時までに結果が判明していなければならないため,先の勉強計画に従う場合は間に合わないことに注意してください。
次章からは,地理・歴史・一般常識・通訳案内の実務・英語の勉強方法について個別にみていきますが,上記外部試験の勉強も組み込んだ内容になっています。
日本地理の勉強方法
日本地理について
- 外国人観光旅客が多く訪れている又は外国人観光旅客の評価が高い観光資源に関連する地理を範囲とする
- 内容は地図や写真を使った問題も含まれる
- 本試験は30分で30問程度の多肢選択式
- 合格ラインは7割
全国通訳案内士試験地理
通訳案内士の地理対策ですが,都道府県の位置や県庁所在地,主要な川に山脈,さらには平野名や県ごとの特徴など,小中学校で習う知識が入っていなければなりません。
いきなり全国通訳案内士試験用の参考書で勉強を始めることも可能ですが,基礎知識があるのとないのとでは理解力に大きな差が出てきます。
私は小学・中学内容をスタディサプリを使って短期間で学び直しましたが,本番において有名な川や半島は正解とはならずとも,文中だったり誤答の選択肢だったりに用意されていることも少なくありませんでした↓
むしろ,特産品の情報のようにスタサプからしか得られなかった知識まであります。
とはいえ,逆に小中学校の知識だけでは案内士試験に太刀打ちできないことも忘れてはいけません。
なので続けて,都道府県ごとの主な観光資源について学んでいきましょう!
このとき学んだものは,どんどん白地図に書き込んでいくことをおすすめします↓
書き込みが増えていくほど完璧な参考書へと近づいていくわけですが,この時記入するのは文ではなく,あくまで単語にす留めておくところがポイントです。
例えば「磊々峡」に対して「覗橋」とだけ書き込んだ場合,後でこれら2つの単語を見たときにその繋がりについて説明できるかどうかで理解度を確認することができます。
白地図のサイズはできるだけ大きいものを使い,細めのシャープペンを使うと書き込みやすいでしょう。
もちろん,自分の地図帳を他人が読むことはないのですが,雑に書いてしまい,自分が後から読んだときにわからないことがありました。
また,読み方については必ず確認してルビを振っておきましょう。
読み方を調べる際は「固有名詞 読み方」で検索してみる以外に,公式サイトのURLに注目すると楽です↓
固有名詞を覚えられないのは記憶力の問題ではなく当然のことなので,問題を解いて間違えるか初めてその名を耳にした観光資源は,インターネットで検索してみては関連知識まで調べてください。
「三大○○」が紹介されるたび,似たような名前のものを聞くたび,復習していて疑問が生じるたびに面倒くさがらずにその都度調べることが重要です。
知識が増えた後で復習してみると,似たような地名が頻繁に頭に浮かんでくるようになります。
例えば「大塚国際美術館」を学んでいる最中に「大原美術館」が浮かんできたのであれば,相互のページにそれぞれ「大原美術館(岡山)」,「大塚国際美術館(徳島)」などと追記しておきます。
ところでこのように学んでいくと,県をまたがって広がる山地や地域など,他県との繋がりを意識することが減ってしまうことになるため,特に最初のうちは白地図の他に全国地図を1枚用意しておき,全国的にどの位置の話をしているのかを強く意識することが重要です。
画像で印象付けるのも有効で,例えば「浮御堂」と「堅田の落雁」の繋がりが最初はわからなかった私ですが,実際に調べてみることで浮いているイメージを掴むことができたわけです。
白地図に書き込む勉強法を採用すると,Google mapの使用頻度は極めて高くなるでしょう。
よって,パソコンを使った学習をおすすめします。
ここまでで50時間くらい学習することになり,合格最低点くらいの実力は付くように思いますが,目をつむった状態で自分の書いた白地図が頭に浮かぶ状態になっていればOKです。
とはいえ,合格ギリギリの得点率では不安なので,さらにプラス10点を目指しましょう!
発展学習としては複数の候補が考えられますが,「地図帳を読む・旅動画を観る・旅行雑誌を購読する」がおすすめです。
白地図ではない市販の地図帳(例:旅に出たくなる地図)を別に買って眺めるようにすれば,隣の県との繋がりも見えやすくなりますし,ガイド試験で習われそうな知識はページを独立させての記載があります(祭りとか鉄道とか)。
動画はたとえアイドルが出てくるような旅動画であっても,観ていたおかげで助けられたことは少なくありません。
近年,芸能人を使って地元を盛り上げる試みが顕著です。
旅行業務取扱管理者
旅行業唯一の国家資格となりますが,旅行業務取扱管理者のテストは試験範囲が明確なので,それ用の対策本を一通りやることで合格できます。
具体的には参考書(解説が多いもの)と問題集(過去問でも構いませんが改訂に対応していないことに注意)を用意しますが,ユーキャンの本だと観光資源だけを別に学べる参考書も売っていて,日本エリアのものであれば通訳案内士試験対策にも使用可能です↓
参考書だけ読んでも問題を解かなければ本番で対応できないのですが,問題集を解き終えてから参考書を読み直すとものすごく理解が助けられたように思います。
本試験には国内と総合の2つがあり,前者の方が学ぶ量的に少ないために簡単ですが,総合は難易度が高い分,重宝されるわけで,海外の観光資源について学んでおけば実際の通訳案内業務にも役立つでしょう。
そもそも,国内と総合とで重複する部分は多いので,先に示した計画に従うのであれば,1ヶ月で海外旅行業務対策するだけでも解ける問題が出てきますし,英語の試験(全国通訳案内士を受ける人からすれば簡単です)も含まれます。
国内旅行業務の勉強記録
1日2時間の学習で参考書が32ページ進む。2週間で1周できた。ガイド試験後から始めて全部で3周した。運賃計算を通して電車に馴染めたり,ドラマの話や温泉に踊りの解説が多めで良い。日本地理の問題集は量的に不満。本番の様子だが,時間切れの心配がなく実力通りの結果となった。試験センターで受けられるのは環境的に最高で,一斉に始めるわけではなく,40分は時間が余り,後で見直したい問題にだけ印を付けることで見直しも簡単だった。
総合旅行業務の日記
海外実務の英語は余裕だが,国名の略号や海外の史跡などは初めて学ぶことになるので辛い。初回受験では諦めることにした。試験がCBTではないので,申し込みも実際に受けにいくのも大変。途中で国内の試験の合格発表があり,成績が悪かった分野を重視して学ぶように工夫した。
なお,旅行業務取扱管理者の勉強は本試験の地理の免除に使えますが,役立つ範囲は地理だけとは限りません。
旅行業法や団券の扱いは通訳案内士試験の実務科目で問われる内容と同一ですし,観光資源の勉強を通して連続テレビ小説の話や世界遺産などについて学んでおくと,一般常識にも出題される可能性も無きにしも非ずです。
日本歴史の勉強方法
日本歴史について
- 日本の観光地等に関連する日本歴史についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む)のうち,外国人観光旅客の関心の強いものについての基礎的な知識を問うものとする
- 内容は地図や写真を使った問題も含まれる
- 30分で30問程度の多肢選択式
- 合格ラインは7割
通訳案内士試験日本史
通訳案内士試験の日本歴史ですが,前提知識のない方がいきなり高校の教科書から始めると失敗します。
高校で日本史を選択していたなどの理由がなければ,予備校で配られる教材はもちろん,通訳案内士用の市販本すら難しく感じられるでしょう。
そのため,まずは簡単なものから徐々にレベルを上げていく勉強法を採用し,徐々に難しい教材で学び直すようにしては充実させていくようにしてください。
私自身は理系だったので最初は小学校の歴史教科書から学びましたが,これは地理の時と同様,スタディサプリを使い,スピード重視で歴史の流れを押さえていきます。
次に中学歴史の勉強です。
これは結構な回数を読み直すことになるので,1冊買ってしまって構いません↓
読み終えたら,通訳案内士用の問題集を買って繰り返しやりましょう!
ここまでやると,通訳案内士の過去問がある程度(最低でも5割くらいは)解けるようになっているはずですが,間違えたものはネットで検索するか学んだことをどこかに書き残しておくと忘れにくくなります。
高校で使うような日本史図録も用意し,文化ごとの建造物くらいは写真で確認しておくと効果的かもしれませんが,Wikipediaを使う際には,読んでもわからないことばかりで結構な時間が消費されてしまうため,何か1つでも新しくわかったことがあればそれ以上深追いしないようにしましょう。
問題がある程度解けるようになったら,再度中学の教科書を読み直すようにしてください。
すると,最初に読んだときよりもずっと理解が深まっていることに気付くはずです。
この時点で試験に合格できる力は付いたと言っても構いませんが,「余裕で」合格するためには以下の発展学習をやる必要があります↓
- 歴史マンガを購入して読む
- 高校の教科書を読む
私のおすすめは前者で,子ども向けだと感じる方がいらっしゃるかもしれませんが,今の歴史マンガは注釈が充実しており,大学入試にまで対応できると宣伝されているくらいです↓
1冊読むのに大体1時間かかります。
なお,大人の私が読んでいて1つ惜しいと感じるのは,近代の内容に近づけば近づくほど,出版社によって創作されたストーリーが自分の信じる歴史観とぶつかってしまったところでしょうか。
それでも,全体としてみれば有用であることは確かです↓
上に挙げた2つ目の高校の日本史については,次で紹介する歴史検定を攻略する際にも使うことができます。
歴史検定2級
通訳案内士の歴史試験が免除になるのは2級以上です。
純粋に中学生の指導で使う場合,3級の併願も考えられます。
運営元によると難易度は高校で学ぶ程度で,比較的高度な歴史知識が要求されることになるので,高校の教科書を使いましょう。
中学のものと異なり,高校の教科書は入手しやすいですし,各種参考書も充実しているわけで,大学受験で使われる参考書(1問1答など)も1冊別に購入して何度か解き,最終的に歴史能力検定の過去問を解いてみて合格点が取れたのを確認して終了です。
ちなみに,中学教科書と歴史マンガだけ読み終えた直後に過去問を解いてみたときの結果ですが以下のようになりました↓
- 5級=96点
- 4級=84点
- 準3級=80点
- 3級=56点
- 2級=58点
3級と2級の得点が逆転しているのは高校範囲の部分で歴史マンガで触れられていないものの割合が同じくらいになるからでしょう。
とはいえ,合格点が60点なので,回によってはギリギリ合格が目指せてしまうかもしれません。
歴史検定2級の日記
最上の紅花の知識は,実際に本試験の地理で出題があった。歴検は歴史の流れを知ることが重要で,具体的な年数を知らなくても答えられる場合がある(3つのイベントを並び替える問題がある)。本番前に歴史マンガを読んでいる方がいたのが印象的。試験会場にいた8割が年配者で,時間には余裕があり,退出者はいない。1問1答はやややり過ぎか。
歴検の過去問は毎年新しいものが発売され,1冊に3級以下の問題も収録されているので,ステップアップ目的で使うこともできます。
ちなみに,2級の合格率は37.7%で,30歳以上の受験者が50%以上を占めているとのことです。
一部記述問題(答えを漢字で書くだけの問題ですが結構難しいです)が出題される点にも注意しておきましょう。
一般常識の勉強方法
一般常識について
- 現代の日本の産業・経済・政治及び文化についての主要な事柄(日本と世界との関りを含む)のうち,外国人観光旅客の関心の強いものについての基礎的な知識を問うものとする
- 内容は観光白書や新聞(一般紙)に掲載された時事問題をベースに出題する
- 20分で20問程度の多肢選択式
- 合格ラインは6割
通訳案内士試験で最大の壁となりやすい一般常識ですが,これだけやればOKという参考書が出ていないところが厄介です。
さらに悪いことには,免除申請ができるような試験が存在しないために本試験で合格しなければなりません。
ここ1~2年の知識が出される他,未来の内容も出てきますし,たまに50年前の話題が出題されることもあるので,これらを網羅することはクイズ王でもない限りは不可能でしょう。
出題内容に沿った試験が他に存在しないわけですから,公民や倫理を勉強したところでダメですし,かつてセンター試験の現代社会で高得点を取ると免除になりましたが,今は当時とは出題内容が大幅に異なるので,現代社会の勉強をしてみたところで合格点は取れません。
就活生向けの一般常識問題集も対策にならないのは同じ理由からです。
私は初年度,就活で使うような時事問題集を買って対策してみましたが,そこからは全く出題されず,費やした十時間以上は無に帰しました。
その経験から,一般常識の学習の基本は観光白書に設定すべきと結論付けることにしましたが,最新のものは6月頃にならないと利用できない(公表されない)ことに注意しましょう。
とはいえ,近年2年分の観光白書を5回読んだ状態で試験に挑んだところで合格点には届きません。
白書以外からの出題が勘で当たる確率を高める必要があります。
例えば50点中20点分が白書の知識だけで正解できるとして,残り30点を25%の正答率で解くのであれば期待値は7.5点です。
しかし,知識を増やすことで50%の正答率にまで高められれば15点が期待できます。
その結果,合計得点は35点(20点+15点)となり,このような合格パターンを目指すというのが現時点における当サイトの結論です。
知識増強のための理想手段は新聞を購読して読むことでしょう。
ですが,昨今は夕刊の配達を止める地域も出ていますし,多くの方に勧められる方法ではないように思います。
ちなみに私自身は,Yahoo!ニュースのトップページに出てきたもので試験範囲に含まれるものはある程度深くまで学んでおくというルールを設定することにしました。
後になって,通訳ガイドのためのスクールの1つがYouTubeで攻略方法などを公開してくれていることに気が付きました。
動画では数十ページにもわたる資料を無料で公開してくれているあたり,「時代が変わったなぁ」と思わざるを得ませんが,ここに書かれていることを学んで試験に挑んでみたところで合格点に届かないあたりに通訳案内士試験の闇を感じます。
参考書もそうですが,大胆にも予想問題を公開しているところがどれだけ当たっているのかを調べてみてください。
白書以外の内容を的中できているところなど万に一つでしょう(なんと無責任なことでしょう)。
とはいえ,40年以上も第一線で通訳案内士試験の授業を行ってきた方の分析結果がこういった具合であるわけですから,これから初めて試験を受ける方がそれ以下の分析力しか持っていないことは明白です。
社会人向けの試験の予備校がしていることは結局のところ,過去に出題された内容を基にどのような問題が出るかを予想し,同じタイプの問題を出たときにどう解けばよいかをまとめてくれているだけにすぎません。
ゆえに,そうした過去問の分析結果を公開してくれているのであれば喜んで利用させてもらいつつ,プラスアルファで自分なりに学ぶことを忘れない姿勢が重要です。
あくまで他人の分析は他人のものであって,自分の受験での勝利は自分の力で掴み取ることを忘れないでください。
以上のことから,通訳案内士対策と銘打った一般常識関連の教材は,過去のデータから予想される関連情報を網羅したものとなり,量が膨大となるために時間はかかるものの,結局テストにはほとんど出題されないという結末を迎えがちです。
ゆえに,当サイトの結論は以下のようにしておきます↓
- 最近の観光白書2年分を5回以上通読する
- 覚えるべき数字は試験前に確認しておく
- 理想は新聞の定期購読をすること
- 試験に出そうなネットニュースに注意する
- 気になった内容はより詳細まで調べる
試験に「出そうな」という部分が曖昧ですが,これは過去問を解くことで得られる勘のようなものです。
組織名でアルファベット表記になっているものだとか,近くに開催されるイベントの情報を詳しく調べるとかがその例にあたります。
なお,直前になって発表されたニュースは試験問題には反映されないのでご注意ください(問題がすでに作られてしまっているため)。
そのため,前々から時間をかけて情報収集しておくべきで,このこともまた,通訳ガイド試験は数年越しで攻略すべきと主張する根拠となっています。
通訳案内の実務の勉強方法
通訳案内の実務について
- 通訳案内の現場において求められる基礎的な知識を問うものとする
- 内容は観光庁研修のテキストを試験範囲とする
- 20分で20問程度の多肢選択式
- 合格ラインは6割
通訳案内の実務ですが,打って変わってこちらの対策は簡単です。
全国通訳案内士試験のガイドラインに書かれているように,観光庁研修のテキストが試験範囲のメインとなっていることは確かで,数年前に発売された参考書であっても現在のものと内容がほとんど変わりなく,最新データに目を光らせる必要もないのは助かります。
一度読み終えてしまえば数時間で記憶を呼び覚ますことができるようになるので,早めに1度通読しておき,後は記憶が薄れ出すタイミング(1ヶ月おきが多い)で読み直すようにすれば問題ありません。
時間がない方は,市販の参考書が上手くまとめられているのでおすすめで,それだと通読するのに数時間もかからず1時間で読み終えられてしまうものもあります。
ただし,その場合は余裕を持って合格点とはならないので,過去問を解いて間違えたところの関連知識くらいは,観光庁のテキストでピンポイントで学んでおくようにしましょう。
英語の勉強方法
外国語について
- 1次試験は読解問題(40点),和訳問題(20点),英訳問題(20点),あるテーマや用語を英語で説明する問題(20点)からなる
- 2次試験は口述問題で,3つのテーマから1つを選びプレゼンし質問に答える,試験委員が読み上げる内容を英訳し質問に答える
- 1次試験は90分で,2次試験は10分
- 合格ラインは7割
1次試験
通訳案内士の1次試験の英語について勉強することは,2次試験の役に立つことはもちろん,日本の地理や歴史の知識も深まるのでまったく無駄はありません。
おまけに試験時間にも余裕があり,場慣れにも役立つので積極的に免除を狙う必要はないでしょう。
とはいえ,英文法が苦手な方や大学受験英語の知識(特にパラグラフリーディング)が抜けている人は難しさを感じるかもしれません。
構成は以下の通りで20年くらい前の問題と比べるとずっと簡単になっています↓
筆記試験の構成
大問1:読解問題。単語や文法力,論理力や内容理解などが総合的に問われる。40点満点。目標点は8割で35分以内に解くこと。
大問2:和訳問題。正しく和訳されているものを選ぶが,見比べて訳し抜けや文構造が違うものを消していく。20点満点。1問ミスまでに抑え,目安時間は20分。
大問3:英訳問題。会話における日本語を正しく英訳したものを選ぶ。文法知識の他,違う意味の単語を使っていないかで見分ける。20点満点。1問ミスまでに抑え,15分が目安。
大問4:用語説明。日本語の用語を英語で正しく説明したものを選ぶ。知識がないと解けない。20点満点。1問ミスまでに抑え,15分が目安。
TOEICや大学受験英語と比べて,出てくる英単語が難しいのは確かですが,特に大問の1ではヒントが必ずと言ってよいほど文中に存在しているので,意味を推測するのは簡単です。
むしろ難しいのは大問の4つ目で,一般常識や地理歴史の知識がないとどれだけ英語力があっても正解できないことを覚えておきましょう。
一応上で目安の時間を示しましたが,外国語の免除申請ができる人であれば大問1を25分,大問2~4までをそれぞれ10分以内に終えられるため,全体を2周することも容易です。
時間に余裕があるのは重要で,実力通りの結果になりますし,試験会場の雰囲気に慣れることにも役立ちます。
唯一途中退出が許される外国語の試験ですが,時間内に退出する人は皆無でした。
それだけみなさん本気になっているのでしょう。
私自身,TOEICは900点以上ありますが,ガイドの過去問を5年分解いてみてもすべてが80点以上でした。
ゆえに考えられる対策は現実力次第で大きく変わります。
とりあえず過去問を1つ解いてみた結果で決めてください↓
- 時間内に終わり合格点が取れる→過去問または模試を1冊やれば十分。
- 合格点が取れない→高校英語からやり直す。
文構造を把握したり,英文法の知識が問われるあたり,大学受験のための英語が役立ちます。
これはTOEICでは求められる知識ではないので,これまたスタサプの講座などで学び直してください↓
この他,問題集を購入する時は紙のものを買うようにしましょう。
英文に意味や文構造など書き込んで音読するからこそ英語の実力は高まりますが,電子書籍だとそういう使い方はできないです。
2次試験
外国語に関しては口述試験の勉強をする方が重要ですので,1次試験の英語は余裕である人も日本について英語で説明できるよう,たえず勉強しておきましょう。
折角,筆記試験に通っても口述試験で不合格になってしまえばまたやり直しになってしまいます。
英検の面接宜しく,2次試験のみでの合格率は50%近くありますが,英語力が高い1次試験突破者の半分ということで,個人的には結構低い印象です。
メインとして使う参考書は2次試験対策のネタが増えそうなものであればなんでも構いませんが,同じものが出ることはないでしょう。
私の時は選択肢に「2024年問題」が含まれていましたが,正直私はこの言葉について何の知識もありませんでした。
プレゼンでは自分の言葉で説明することが大切とされますが,それ以前に説明できる知識が自分の中にあること,そして相手の会話を理解できること,自分の思うことがすぐに英語で言えることの方が重要です。
評価項目は以下の通りですが,最初の2つが重要であることに疑いはありません↓
- プレゼンテーション
- コミュニケーション
- 文法及び語彙
- 発音及び発声
- ホスピタリティ
合格基準が7割と言われたところで想像もつきませんし,こちらとしては全力で受け答えをしていくだけです。
出題内容は2つで,プレゼンテーションで答えやすい問題を選べるのは受験者側に有利となっています↓
口述試験の構成
プレゼンテーション問題:提示される3つのテーマから1つを選んで説明する。その後試験委員と質疑応答を行う。メモを取って良い。
通訳案内の現場で必要となる知識などに関する外国語訳及び全国通訳案内士として求められる対応に関する質疑:日本語を外国語に訳し,関連する質問に答える。メモを取って良い。
模範解答を丸暗記する以外に,気になる記事を読んだときは,その内容を5分程度の時間で説明する練習を積んでおきましょう!
以下,当日の様子です↓
2次試験の日記
当日人身事故があったので,別ルートで早めに到着するも開場時間になるまでは入れず。というのも,私の集合時間の前にもいくつか別の集合時間が設けられていて,早いものだと4時間前からすでに面接が行われ続けていたからである。広い教室で身分確認をされてしばし待機。その後,小集団で別の教室に移動後に再び待機する(どちらも15分くらい)が,その間,参考書を読むことができた。
「Come in.」と呼ばれて教室に入ってみると日本人女性と男性の外国人が待ち受けている。私自身,実は15年ぶりに生身の人間と英語で会話することになったわけだが,試験開始前の挨拶的な英語すら理解できず(どうやら名前と生年月日などを述べるようにとの指示だったようだが),その後も予想通り,散々な内容で終わる。口から出る文法は意味を為すものにならず,口はカラカラになり,異常事態を伝えていた。さらに,プレゼンした内容は相手が答えて欲しかった内容と異なるようで,追加質問にて別の答えを言うように要求された。英訳する問題では私が話し終えてもなお静寂が続き,採点官は「まだ続きがあるのでしょう?」と催促してくれていたように感じたが,それに「That's all.」と答えてしまうあたり未来の私に希望はない。どれだけ参考書を真面目に暗記してみたところで(実は試験前の2週間だけで200時間勉強した),普段外国人と絡むことがない私には2次試験の突破は無理であると痛感した。ちなみに,一番試験官のウケが良かったのは,当日その場で思いついた単語(1語)を答えた時というオチ。
選べるテーマの中に自分が準備してきたものがある幸運が発揮されること,または,自分の思ったことをすぐさま英語に変えてスラスラ言える人が受かりやすいように感じます(これは当たり前にできることではありません)。
いずれにせよ,私のように,英会話の適性がない人間にとっては厳しい結果になるでしょう。
試験を終えての私と言えば,学校教育で英語をやり,その後も講師や添削者として英語に触れても,普通に相手と会話をすることができないのかと絶望してしまい,自分の存在意義が揺らいでいる現状です。
期間ごとの注意点
ここでは全国通訳案内士試験の勉強中に気を付けたい事柄をまとめてみたいと思います。
試験前
まず1つ目ですが,先に示した勉強計画では複数の資格・検定試験を受けることになるので,願書受付が想像以上に早く締め切ってしまうことに注意してください。
私自身,国内旅行業務取扱管理者試験の申し込み期限が過ぎていることに気付かず,総合の方だけを受ける羽目になってしまいました。
全国通訳案内士試験が開催されるのは,お盆休み明けの暑くて台風が来るような時期で,帰郷も絡むと意外と忙しくなる時期ですが,勉強はポモドーロテクニックを用いて短時間の集中を回数こなすなどして乗り切りましょう。
勉強中はわからないことだらけでうんざりすることも少ないないように思われます。
ですが,わからないということはそれを学べば確実に賢くなれることをも意味していますから,その事実を純粋に喜ぶようにしてください。
また,試験の受験表ですが,スマホで表示する以外に印刷もできるので両方用意しておきましょう。
私は筆記試験の当日,スマホを家に忘れてしまったのですが,あらかじめ印刷しておいたおかげで取りに戻らずに済みました。
本人確認書類を忘れた場合も,「後日アップロードすれば良い」との話なので,遅刻するくらいならこちらも取りに戻らず試験会場に向かってしまいましょう。
試験日
試験中は誰かのスマホの通知音が鳴ったり,大声でため息をつくような人がいたりと,教室によっては気が散りやすい環境になりますが,自分の力でどうにもならないものは諦めて頑張るようにしてください。
後者の方は試験官の方に再三注意されてはいましたが,退出を促されることはありませんでした。
外国であればこんなことは許されないでしょう。
ペットボトルは外の紙をはがした状態であれば,中身を問わずに机上に置くことが許されましたが,水筒を置いていた方は注意されていましたし,タオルや時計を個別にチェックされている人もいました。
本番中に知らない用語に出会った際は,それもまた1つの情報になります。
これまでの多く勉強してきたこそ,質問内容がこれまた自分の知らないことであればそれが答えになる可能性は高いわけです。
なんとなくで答えがちなものが誤答に用意されていることが多いように思うので,確信が持てない場合は特に注意してください。
「この答えなら自分は納得できる」と思えるかどうかが唯一の判断基準です 。
なお,マークについては問題番号と解答番号が異なることが,後半になるほど多くなっていくことにも気を付けましょう。
特に時間ギリギリになって重複してマークしていることに気が付くとパニックになってしまうはずです。
試験ごとの間の時間の過ごし方ですが,免除科目がある時間帯にも会場内に座るスペースが用意されていた他,外国語の後の昼ご飯の時間には教室内での飲食が可能でした。
2次試験については上で語った通りです。
まとめ
以上,通訳案内士の受かり方についてまとめてきましたがいかがだったでしょうか。
試験後に帰宅してみると足の痛みがひどいなどの多大なダメージを受けていることがわかり,免除申請の重要性を感じました。
1次試験は時間切れの心配はないので実力通りの結果になりやすいとは言えますが,そもそもの時間が短い一般常識や通訳案内の実務は見直しの時間まで十分に取ることはできないので,上の注意点を念頭に置いてあらかじめシミュレーションしておきましょう。
読み間違いや読み抜けがあると,正解を導くための重要なヒントを見落としてしまうことに繋がりかねないため,変に焦らず,時間をほどよく使って解くことを心掛けてください。
勉強法のところでは色々多くのことを要求しましたが,全国通訳案内士になったときのことを考えると,地理・歴史・常識・実務のすべてで,可能な限り多くの知識を持っておくに越したことはありません。
外国語の運用能力ももちろんですが,すべてが高いレベルにあればあるほど優秀なガイドができるはずです。
問題内容についてはなんとも言えませんが,こうなっている以上,それを今更簡単に変えて,誰もが受かるテストにしてほしくはないですし,受からないことには全国通訳案内士を名乗れないわけですから,何としても合格しなければなりません。
そのとき,今回述べたような攻略・勉強法が役に立ったら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。