自己肯定感の高め方について学ぶ際,本を読んでみるのはもちろんですが,より体系化された知識が得られる資格検定講座を受けてみるという選択肢もあります。
独学する場合と比べて,ただなんとなく学んで終わりにならず,一定レベルの知識が身に付いたことを客観的に判断してもらえる点も大きいでしょう。
生涯学習以外であれば,なるべく期限を設定して勉強することが大切です。
さて今回は,稲葉真由美氏が提唱する性格統計学を取り上げ,彼女が代表を務めるジェイ・バン社が提供する「伝え方検定講座」の内容を中心にまとめていきたいと思っています。
そこで学んだことは,子どもの自己肯定感を高める際に実践できるだけでなく,家族や会社内での人間関係を改善する上でも役立つ内容です。
円滑なコミュニケーション全般に興味がある方は,是非お読みください。
性格統計学とは
性格統計学とは,人間関係研究家である稲葉真由美氏が考案・開発した新しいコミュニケーションメソッドです。
同氏が職場での人間関係のトラブルに頭を悩ませていたことが誕生のきっかけとなり,16年間にわたって集めた延べ12万人の統計データがその基となっています。
そもそも統計学とは,母集団の性質を推測するために用いられる方法の1つです。
母集団や標本などと言われれば,学校の数学の授業を思い出す方もいるかもしれませんね。
偏差値から受験の合格判定を推定する際にも用いられていますし,年収と学歴の間に関係があるかないかを明らかにする際にも使われている手法です↓
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もっと身近なところだと,手相や血液型占いも統計学的な手法を用いていると考えられます。
見た目もそうですが,「あ,この人,あの人に似てる」と思う場面が結構あるわけです。
今回紹介する性格統計学では,人の価値観(本人が大切にするもの)を2~4つのタイプに分け,それぞれの集団に属する人たちにどのような特徴やタブーがあるのかを明らかにしようとしています。
そこに年齢差や性差はさほど影響せず,量よりも質を重視したアプローチなので,短時間で多くの人と接する人ほど利用価値の高いものだと言えるでしょう。
人間関係の悩みのほとんどはコミュニケーションの不具合が原因であるということから話は進み,最終的には,「この人はこういうタイプなのだからこのように振る舞うのだ」と分析しては納得できるようになります。
性格統計学を学んだ結果として,すべての人間関係が良好になるとまでは言えませんが,悪化させたり自分がストレスを抱えこんだりといった未来は十分に回避可能です。
実際,多くの子どもを相手にする教員や保育士の方や,看護師やビジネスパーソンをはじめ,より良い家庭づくりを目指す親世代にも人気がある学問だと言います。
自分や相手がどのタイプかは,生年月日を入力したりいくつかの質問に答えたりと,比較的簡単な手順でわかってしまうのですが,異なるタイプの人同士がどのようにコミュニケーションすべきかを学び,かつそれを自分が実践できるようになるためにはある程度の時間が必要です。
もっとも,知識がないことには実践もできませんので,まずは性格統計学について学ぶところから始めましょう!
関連書籍も出ていますが,せっかく学ぶのであればやはりここは,稲葉氏が教える「伝え方検定講座(初級・中級)」を受講するのが一番です。
資格として認定される他,過去には文部科学省の事業に採用されたこともあります。
難易度としては上級レベルも存在するのですが,受講後にステップアップすることは可能なので,初級か中級のどちらかを選ぶのが良いでしょう。
なお,初級レベルでは人を思考別に2つのタイプに分けて分析できるようになりますが,中級だと価値観別に3つのタイプから相手を判断できるようになります。
講座内容の実際の様子について詳しくは,次章から個別にみていきますが,中級に申し込むことで初級内容も学べるので,しっかり学びたい方は中級がおすすめです。
伝え方初級検定での学び
伝え方初級検定は,受講生役の5人の先輩と講師のやり取りを視聴することで理解を深めていきます。
人を「希望型」と「慎重型」に分けて話が進んでいきますが,自分とは違うタイプの人に伝わる表現の仕方を,5つの心理法則とともに学んでいきましょう。
個人的には,「自己肯定感の高さと人間関係の質が比例する」という指摘にハッとさせられました。
自分の長所も短所も含めて大切なものだと考えられる人ほど,周りと良好な関係が築けるということです。
なお,本講座で学べるものは,自分の思想を曲げて別人格を演じるような方法ではありません。
あくまでも,相手への声掛けをちょっとだけ変えるというところがミソで,自分に嘘をついては相手を偽るようなこともないです。
一例を挙げると,子どもに手洗いを勧める際,「ピッカピカになるから洗おうね」と言うのか「ばい菌ばっかりにならないように洗おうね」と言うのか程度の違いとなります。
とはいえ,受講をしない限りはこのような考えは思いもつかないはずです。
そういった意味で,性格統計学を学ぶメリットは大きいと言えるでしょう。
動画内では「好意の互恵性」や「PREP法」など,心理学やプレゼンテーションの講座で耳にするような用語も出てきます。
興味を持てば,別に独学して広げていくこともできるでしょう。
なお,動画以外の教材として,ワークブック的なテキストがダウンロードできるので,あらかじめ印刷しておいてください↓
受講中の気づきは全てテキストに書き込んで残しておくのがおすすめです。
また,講師からの問いかけについては,動画内で解答を提示される前にしっかりと自分で答えを書き出すようにしましょう。
というのも,一度誰か他の人の答えや正解について聞いてしまうと,どうしてもその内容に引っ張られて自分の答えを変えてしまいがちだからです。
もちろん,これといった唯一の正解があるわけではないのですが,どうも学校教育の弊害で,期待される答えを探してしまう癖がついてしまっているように感じます。
本講座の学び方は簡単で,難しくありません。
5つの動画(各20~30分)を順番に視聴していき,最後にWeb試験を受検してください。
出題内容はテキストで学んだものがほとんどで,問題形式は選択式な上,再受検も1度であれば可能ですので,読み間違いにだけ気をつけて取り組めば,受講後すぐに受けても大丈夫です。
公式サイトには,合格率は90%と書かれていました。
履歴書に書ける資格が手っ取り早く手に入るわけですが,書くべきところに書けば,円滑なコミュニケーションに関心があることのアピールになります(合格証の発送には16~46日ほどかかります)。
伝え方中級検定での学び
続いて,伝え方中級検定の内容についてですが,まずは自分の性格を知ることから始めましょう。
最初にサイトを訪れると,10個程度の質問に答えることとなります(このとき,学ぶ機器はパソコンでもスマートフォンのどちらを使ってもOKです)。
結果は,ビジョン,ピース(フレキシブルとプランニングに細分化可能),ロジカルのいずれかで出てきます。
また,生年月日を基に判断される「価値観分析レポート」というものも別に請求でき,そちらでは性格(全12タイプ)まで判定されました。
私の場合,どちらの判定結果もロジカルタイプでした↓
後者の場合,自分を含めて3人までは無料で請求できるので,身近にいる人のタイプを分析してもらうようにしましょう。
それ以外には「相手を新規入力」というメニューから簡易版の分析が利用でき,こちらは対象人数に制限がありません。
私の場合,まったく自分とは性格が違うと思っていた親の価値観はピースタイプでしたし,同じロジカルタイプの2人であっても,性格の点で「独創系」や「理想系」などの細かな違いがあることがわかりました。
学び方は初級の時と同様,動画を視聴してWeb検定試験を受けるだけなのですが,こちらの方にテキストはありません。
4ページの資料はついてくるのですが,特に講義の前半部分はノートを取るようにしましょう。
動画の数は全部で17個あり,初級のものと比べると内容はずっと充実しているように思います。
基本的に稲葉氏の講義となりますが,最後の方では受講者と事例を共有する時間も増えました。
Webテストの問題数は,初級のときの倍の全20問となります。
難しかったらどうしようなどと不安になりましたが,講義をしっかり聞いて臨めば迷いなく解けるので心配要りません。
1つアドバイスとして,3つの価値観タイプは,説明されたときの色で記憶しておくと覚えやすいように思います(ビジョンが赤,ピースが黄,ロジカルが青)。
書籍「やる気になる伝え方」との違い
講座の方を推してはいましたが,稲葉氏の著書からも,性格統計学を用いたコミュニケーションについての知見を得ることが可能です。
例えば,「やる気になる伝え方」という本は中級講座に近い内容となっており,検定講座を受講する前に読んでおくと,事前知識があるおかげで,理解のスピードが速くなるかもしれません。
逆に受講後に読むことで,さらに理解を確かなものに変えることもできるでしょう。
中級講座で紹介された自己肯定感を下げる言葉も,このように登場してきます(ただし,講座の方では育む言葉の例も紹介されています)↓
私もこういった言い方を生徒にしてしまうときがあるので,今後はより配慮しようと心の中で誓いました。
3つのタイプに属する子どもの事例紹介が特に充実しているので,中級の講義内容を忘れないためのテキスト代わりとしても利用可能です。
ところで,中級検定講座ではロジカルタイプに分類された私ですが,本書においてはピースタイプに分類されてしまいました。
そうなると,一体どちらの判断結果が確からしいのかという話になりますが,本書での質問がわずか1問であったのに対し,検定講座では10問のアンケートと生年月日による診断結果の2つから分析がなされていることから考えると,答えは自ずから明らかでしょう。
複数の角度から分析してもらえる分,精度は検定講座のものの方が圧倒的に高いです。
性格統計学では自分のタイプを知ることが大前提となるわけですから,一番最初で躓いた形で入ってしまうようでは今後の分析内容に大きな差が出てしまいます。
本書にも書かれていますが,大人になるほど性格や価値観は周りの影響を受けて変化するので,生まれ持った本来の性格が見えにくくなるのがその一因なのかもしれません。
生物学的には獲得形質は遺伝しないと言われています。
性格統計学を学んだ後にできること
私自身,口が悪い方なので,何気なく発した一言で相手を不快にしてしまったことがこれまでに何度もありました。
ロジカルタイプなので,自分が思いつくままに言葉を発してしまうとすぐに,「なんでそんな偉そうなんだ」と受け取られてしまいます。
しかし,稲葉氏の伝え方検定講座を受講したことがきっかけで,言葉選びにより注意が向くようになりました。
生徒に対しても,「論外」とか「こんな問題ができないの」などと言って相手を傷つけることはなくなりました。
相手が喜ぶ褒め方についても,これまでとは違った軸でもって模索できるようになりましたし,カレーの食べ方からでも相手の価値観をうかがい知ることができるようになりました(笑)
なお,ジェイバン社のHPから,ZOOMを使った個別面談を申し込むことも可能です。
伝え方検定講座を受けておくことで,講師の人となりがわかることはもちろん,性格統計学の知識があるため,それを前提とした相談が可能になり,より有意義な時間が過ごせるでしょう。
自分の周りにいる人をどんどん分析していき,自分以外の4タイプを見つけては,各自に見合った対応を学ぶようにしてください。
例えば,私はロジカルタイプなので,それを軸に以下の4つの対応を学ぶことにしました↓
- ロジカルとビジョン
- ロジカルとピースプラニング
- ロジカルとピースフレキシブル
- ロジカルとロジカル
このときには,講座ページにある「伝え方アドバイス」の内容が参考になるでしょう↓
上はロジカルとロジカルの関係表ですが,これ以外にも伝える側や聞く側のアドバイス褒め方,各タイプの特徴などが確認可能です。
初級だとこれほどの分析はできないので,わざわざ中級まで学んだ甲斐があるというものでしょう。
自分を取り囲む人間関係を分析することは思った以上に面白く,普段コミュニケーションがうまくいかない人のタイプを調べてみると,意外な発見があるかもしれませんよ。
まとめ
今回は稲葉真由美氏による性格統計学を取り上げ,その概要と体系的に学ぶための検定講座の内容を中心に紹介してきました。
初級講座では人が2つのタイプに,中級講座では3つのタイプに分けられることを学びましたが,今後はそれぞれのタイプに見合ったコミュニケーション方法を気にかけられるようになります。
もちろん,あらゆる人の情報(どのタイプなのか)を事前に知ることはできませんし,その場での自分の判断が間違えてしまうこともあるでしょう。
ですが,それはむしろ当たり前のことです。
そもそも,統計学に用いられる場合の検定方法には数多くの種類があり,変な話,ひたすら試していけば1つくらいは有意であると判定される上,例外が存在する可能性がゼロになることもないので,完璧な分析というのは存在しません。
それよりも,人の性格が複数あることを知り,自分と違うタイプの人には別の伝え方をする方が響くことを理解したことで,相手への接し方の選択肢が増えていることを喜ぶようにしましょう。
相手を許容できる幅にゆとりもでてきます。
初級講座でも2つの軸でもって対応していけるので,コミュニケーションの質や成功率は改善されますし,普段自分の子どもに何度も同じ声掛けをしては,「口を酸っぱくして言ってみても,全然聞いてくれない!」とストレスを感じているような方は救われるでしょう。
受講中の気づきがきっかけで,普段のコミュニケーションについて見つめ直す良い機会になる場面は多いと思いますので,考えついたことは,その都度ノートに書き残しておくように是非してくださいね。
私は,難関校に通う子とそうでない子の価値観タイプに差があるのかが気になりました。
あとでデータを取ってみたいと思います。
社会において,人である以上,自分1人の力だけで生きていくことはできません。
その場合,最も大切なことは「周りとうまくやっていくこと」,この一言に尽きるでしょう。
そのためにも,日ごろからコミュニケーション力を高めておくことは最重要課題の1つです。
みなさんが性格統計学での学びを活かして,より良い人生を歩まれることを心より願っております。
最後までお読みいただきありがとうございました。