2020年以降の教育改革では,センター試験に代わる「大学入学共通テスト」において,各種英語の資格・検定試験の活用が始まります。
現在,その実施については不透明なところが多く,詳しい情報は以下のまとめ記事の方でご確認ください↓↓
今回は過去に公表されたことがある7つの実施団体による英語系の試験の中から「GTEC」という試験に焦点を当て,「そもそもどういった試験なのか」から始まり,問題内容とその対策,さらには実際の活用事例について見ていくことにしましょう。
入試改革におけるGTECとは
GTECとは「Global Test of English Communication」の略で,ベネッセとアメリカのテスト会社が共同開発したテストです。
公式サイト
その始まりは1997年まで遡ることができ,2017年には102万人が,2018年には126万が受検しています(コロナの影響で2019年以降は減少に転じるでしょうが)。
「使える英語力を測る」という標語を掲げ,英語4技能の運用能力をすべて測定できる試験です(スピーキングを除く3技能での受検もできますが,ここでは省略します)。
入試改革に関連する中高生向けのGTECとしては,難易度別に「Core・Basic・Advanced・CBT」の4種類があり,学年を問わずどの試験でも受けることが可能です。
とはいえ,対象学年の目安はありますし,各試験ごとに上限のスコアが決まっていることにも気を付ける必要があります↓↓
- Core:210点,中2~中3レベル,A2まで,102分
- Basic:270点,中3~高2レベル,B1まで,120分
- Advanced:320点,高1~高3レベル,B2まで,120分
- CBT:350点,高2後半~高3レベル,C1まで,175分
上の数字の見方ですが,一番左の点数は,各技能ごとの上限値を示したものです。
例えばCoreで説明すると「リーディング210点・リスニング210点・ライティング210点・スピーキング210点」の計840点満点となり,CEFRでいうところのA1~A2に当たるスコアが出てくることを意味します。
中学2年~3年生におすすめのレベルであり,一番右は実施時間です。
学校で受ける場合は日時をあらかじめ伝えてもらえるでしょうから,ここでは全国の公開会場で受検することになるCBTの受験日について記載しておきますが,2020年度の場合は以下の通りとなっております↓↓
- 第1回2020年7月12日(5月20日~6月5日申し込み)
- 第2回2020年11月15日(9月26日~10月9日申し込み)
- 第3回2021年3月21日(1月30日~2月12日申し込み)
と基本的に年3回の実施ですが,年間2回までしか受検できません。
最近はコロナの影響を受けて座席数が減少し,申し込みが行いにくくなっています。
その関係で,申し込み日時が変更されたことも過去にありましたので,最新のお知らせにご注意ください。
CBTの問題内容
ここでは高校2年~高校3年生レベルとされる,CBTの問題構成についてみていくことにしましょう。
Listening
場面設定は大学で経験することになる教室での講義や学生生活となり,出題数は約40問,時間は約35分となっています。
1回しか流れない英文を聞き,質問で問われていること(要点や概要,論点や情報,話し手の意図など)を答えるのですが,まさに実際の場面と同じです。
例としては以下のような英文が流れます(1つの質問を答えるのに必要な放送内容のみ抜粋しています)↓↓
この英文に対し,答えるべき質問として以下のようなものがあるわけです↓↓
実際には問題もこの後に数問続きますし,読まれる英文も上の4倍程度の長さになりますかね。
内容は完全に大学の講義ですが,話の論点を意識して聞き取る必要がある問題でした。
後で紹介する体験版で,実際の読み上げ速度なども確認してもらいたいのですが,丁寧に普通のスピードで話してくれている様子が伝わってきます。
Reading
リーディングもリスニングと同じ場面設定です。
特に海外の大学に入ると,分厚い本を読むように指示されては,その概要や要点に加え,筆者の言いたいことを素早く理解しないといけません。
読む量が多すぎるので,辞書をゆっくり引いて読み進めるわけにはいかないです。
まさにそういった場面を想定しての出題になっています。
とはいえ,講義での配布物から必要な情報を取り出す問題(A2レベル)もあるので,今回は以下の文章で確認してみましょう↓↓
これに対して,質問はどうかというと,以下のようなものです↓↓
書き上げたものを出す日と,書く前の面談について読み取れれば正解できます。
締切日や提出のルールをしっかり確認しないと,評価が大幅に下がって大変な目にあってしまいますから,こちらも大学でよくある試験前の状況そのままです。
Writing
これまでの聴くと読むの2技能と打って変わって,ライティングでは出題内容は詳細化され,明確に提示されています。
アンケートからエッセイまで,書く内容素材は多岐にわたりますが,パートが進むごとに問題が難しいものになっていくのは明らかですね。
とはいえ,書くべき内容が指示されているので,ポイントを押さえればあとは文法力・語彙力の勝負になりそうです↓↓
「グラフの要点を述べること」と「自分の経験と比較すること」の2つが指示されているので,指定された文字数の平均を求めて(150語),その半分の75語程度で述べていきましょう。
要点をそんなに書けないと思われるかもしれませんが,グラフを見てただ「増えている」と書くのではなく,「1960年には800億kgだったものが,2010年で約3倍の2270憶kgになっている」などと詳しく書いていけばいいので,字数的にはさほど困らないはずです。
Speaking
スピーキングも細かくパートごとに詳細がわかっていますので対策は立てやすいのではないでしょうか。
最初は簡単な質問に返答するだけですが,相手に説明したり,最終的にはスピーチ的なものを行うまで難易度は上がっていきます。
以下の問題は,Part3の意見展開問題の出題例です↓↓
「発音至上主義か否か」ですが,どちらの立場か告げ,その理由を2つ言えればOKとなります。
その際に自分の知っていることや経験を交えることとありますので,ライティング同様,ここでも話すべきことは明確です。
「発音が大事だ」という立場に立つのであれば,
- 正しく発音しなければ相手に伝わらない
- 辞書で発音記号をみるだけで,聴いたことのない単語でも読める
などと理由を言えばよいでしょう。
そして,それぞれに,
- 外人と話していてwaterという単語すら聞き取れず恥ずかしい思いをした
- 無限にも思える発音記号も全部で50弱しかなかったので,ぜひ覚えたい
と一言付け体験めいたものを加えてサポートすればいいわけです。
以上,CBTについて1問ずつ取り上げてみてきましたが,「論より証拠」ですので,ぜひ一度体験してみてください↓↓
参考
CBT以外のテストについてもサンプルがあります。
GTECの現時点での活用状況
現在のGTECスコアの活用状況について見てみましょう。
その役立て方として,
- 出願できる
- 試験科目が減る
- 加点または得点にしてもらえる
といったメリットがあります。
具体的な文言としては,
- ○点以上を出願基準とする
- ○点以上は個別試験(英語)の代替とする
- ○点以上はセンターや個別試験の英語を満点にする
などとなり,点数としては880点以上であったり1190点以上などが,各大学・学部別に設定されていました。
まとめ
以上,GTECの試験概要とCBTの問題内容を具体的に紹介し,現時点での活用事例についても簡単に触れてきました。
対策対策と焦らず,普通にこなすべきことを一つ一つやっていけば,恐れる内容ではないことがわかっていただけたでしょうか。
英語のどの試験を受ける時もそうですが,ただスコアの取得だけを目標とせず,こういった問題が解けて良いスコアを取得できた先に何があるのかをあらかじめ想像しておくことが大切です。
GTECであれば,テストの性質上,例えば次のようにイメージできるのではないでしょうか↓↓
- 留学したときに現地の授業を聞くときに役立つ
- 将来英語関係の仕事をしたい
- 海外との取引の際に役立つ
「このような目標のためにGTECを勉強するんだ」と思えるだけで,だいぶやる気も結果も変わってくるはずです。
あとは偏った学習にならないよう,求められている能力を身につけるべき時期にしっかりとモノにして,特にリスニングやスピーキングは日ごろからアプリなどを使って学習の習慣づけをしておきましょう。