2020年度の入試改革の一環で,センター試験に代わる大学入学共通テストが始まり,英語においては,民間団体による資格・検定試験の参入が検討されました。
というのも,マークシートで採点ができないスピーキングやライティングの能力は大学入試センターの方で測ることが難しく,かといってこれまで通り英語2技能だけで良しともならないため,いずれ共通テストの英語試験は民間の資格・検定試験に取って代わられることが予想されています。
確かに当初の計画は頓挫することになってしまったわけですが,今後高校生が英語4技能を勉強することが無駄骨に終わることはありません。
私立入試や国公立の2次試験などで共通テストで測れない能力を問うことも増えており,現に文科省にもそのような出題をするように推奨されている他,民間資格・検定で一定以上の結果を残すことができれば,より有利な条件で入試に望むことができます。
そんな民間試験としては7つの実施団体によるものが有名ですが,当記事ではその中の「GTEC」に焦点を当て,大学入試との関係や出題内容を中心にみていくことにしましょう。
GTECの特徴と大学入試
GTECとは「Global Test of English Communication」の略で,日本のベネッセとアメリカのテスト会社が共同開発したテストです↓
公式サイト
その歴史は1997年にまで遡ることができ,1999年のリリース以降,2017年には102万人,2018年には126万が受検するテストにまで成長しました。
大学入試の英語がリーディング1技能だけだった時代に「英語コミュニケーション能力テスト」という名前でリスニングやライティング能力まで測ることをしていたため,「不必要なことをするな」と言われることもあったそうです。
それでも「使える英語力を測る」という標語を掲げ続け,今では時代の後押しも受けて,英語4技能すべてを測定できるテストになっています。
さて,GTECには学齢に応じた3種類のテストがありますが,今回取り上げるのは「中高生向けのGTEC」です。
こちらはさらに難易度別に「Core・Basic・Advanced・CBT」の4つのタイプに分けられますが,学年を理由に選択できないことはありません。
加えて,例えば現状GTECで1000点取れる実力の人が,Basicを選んでもCBTを受検しても同じ結果が出ます。
ただし,対象学年の目安として以下のような内容が知られており,各タイプごとに上限のスコアが異なることに注意してください↓
レベル | 英語力目安 | 試験時間 | 上限スコア |
CBT | 高2~高3 | 約150分 | 1400点 |
Advanced | 高1~高3 | 約110分 | 1280点 |
Basic | 中3~高2 | 約110分 | 1080点 |
Core | 中2~中3 | 約92分 | 840点 |
上記表の補足ですが,右列にある上限スコアは技能ごとの上限値を合わせたものです。
例えばCoreを例に説明すると「リーディング210点・リスニング210点・ライティング210点・スピーキング210点」の計840点満点となります。
他のテストとの難易度比較はCEFRとは?英語試験や大学入試との関係についてで行ないましたが,最大到達地点はCBTでC1,AdvancedでB2,BasicでB1,そしてCoreでA2レベルです。
学校や自宅で検定版やアセスメント版を受検する場合,あらかじめ学校の先生から日時が伝えられるので気にする必要はありませんが,全国の公開会場でCBTタイプを受検する場合の日程は7月または11月のいずれかです。
以下は2024年度の例になりますが,47都道府県で受検ができます↓
- 第1回2024年7月14日(6月7日17時申込締切)
- 第2回2024年11月17日(10月11日17時申込締切)
結果は5週間後に発送となる他,受検料が9900円です。
大学入試におけるGTECの活用状況
中高生向けGTECのトップページのところから,大学入試における活用校を検索することができます。
ここでも実際のページを使って,GTECスコアの活用状況についていくつかみてみましょう!
一般選抜から学校推薦型選抜まで幅広く使えますが,主に以下のような使い方ができます↓
- 出願するのにそもそも必要
- 試験科目を減らせる
- 加点される
具体的な文言を述べると,
- ○点以上を出願基準とする
- ○点以上は個別試験(英語)の代替とする
- ○点以上は共通テストや個別試験の英語を満点にする
などとなり,点数としては960点以上(Basicでも到達可)であったり1300点以上(CBTの受検が必須)だったりと各大学・学部によって幅があるので,自分の実力に合わせて,適切な入試種別を選ぶようにしてください。
GTECスコアを入れて条件を狭めて検索をかけたら,「スコアが伸びれば利用可能になる大学」をみれば,上位の大学について知ることもできます↓
例えばGTEC1200点で検索をかけてみたところ,
- 立教大(法学部・総合型選抜・国際コースグロー方式)は1247点以上
- 立命館アジア太平洋大(アジア太平洋学部・総合型選抜・総合型活動英語方式)が1215点以上
- 国際基督教大学(教養学部・一般選抜・B方式)が1300点以上
を出願基準としていることがわかりました(2024年6月28日取得)。
GTEC CBTタイプの問題内容
ここではGTECのCBTタイプの問題構成についてみていくことにしましょう!
Listening
場面設定は,大学で経験することになるであろう教室での講義や学生生活となり,出題数は約35 問,時間は約25~35分となっています。
1回しか流れない英文を聞き,質問されたこと(要点や概要,論点や情報,話し手の意図など)に正しく答えますが,よく考えてみればこれは実際の場面でも同じことです。
具体的には以下のような英文が流れます(1つの質問を答えるのに必要な放送内容のみ抜粋しています)↓
この英文に対し,以下のような出題がされるわけです↓
実際はこの後も数問続きますし,読まれる英文も上の4倍程度の長さになるでしょうか。
内容は完全に大学の講義ですが,話の論点を意識して聞き取る必要がありました。
後で紹介するサンプルで,実際の読み上げ速度を確認してもらうとわかりますが,ナチュラルスピードの英語でありながらも丁寧に話してくれている様子が伝わってくるかと思います。
Reading
リーディングもリスニングと同じ場面設定です。
出題数は約32問で,それを最大で40分ほどかけて解くことになります。
海外の大学に入ると,分厚い本を読むように指示されては,その概要や要点に加え,筆者の言いたいことを素早く理解しなければなりません。
読むべき課題の量が多すぎるので,辞書をゆっくり引いて読み進めるようでは時間が足りなくなることが大半です。
そして,GTECではまさにそういった場面を想定しての出題になっています。
とはいえ,講義での配布物から必要な情報を取り出すような問題(A2レベル)もあるので,今回は以下の文章で確認してみましょう↓
これに対して,質問はどうかというと,以下のようなものです↓
上の問題では,書き上げたものを出す日と,書く前の面談についての内容を正確に読み取ることができれば正解できます。
大学の講義において締切日や提出のルールについてしっかり確認できなければ,評価は大幅に下がってしまい大変な目にあってしまうわけですから,こちらも大学の試験前の状況そのままだと言えるでしょう。
Writing
これまでの聴くと読むの2技能と打って変わって,ライティングでは出題内容は細分化され,出題内容がより明確に示されています。
全部で問題は9問,それを計65分で解きましょう。
アンケートからエッセイまで,書く内容素材は多岐にわたりますが,後ろの方に出てくる問題ほど難しいものになっていくことは明らかです。
とはいえ,書くべき内容が指示されているので,ポイントを押さえればあとは文法力・語彙力の勝負となります↓
「グラフの要点を述べること」と「自分の経験と比較すること」の2つが指示されているので,指定された文字数の平均を求めて(150語),その半分の75語程度で述べていきましょう。
要点だけをそんなに多く書けないと思われるかもしれませんが,グラフを見てただ「増えている」と書くようではいけません。
より具体的なデータを用いるようにして,「1960年には800億kgだったものが,2010年で約3倍の2270憶kgになっている」などと詳しく述べることができるため,実際やってみると,字数的にはさほど困らないと感じるはずです。
Speaking
スピーキングもライティング同様,細かくパートごとに詳細がわかっているので,意外と対策は立てやすいのではないでしょうか。
最初は簡単な質問に返答するだけですが,相手に説明したり,最終的にはスピーチ的なものを行ったりと難易度はどんどん上がっていきます。
以下の問題は,パート3に出てくる意見展開問題の例です↓
この場合,「発音至上主義か否か」について自分の意見を述べることになるわけですが,最初にどちらの立場であるかを告げ,その理由を2つ言えればOKとなります。
このとき,「自分の知っていることや経験を交えること」という指示がありますので,話すべきことは明確です。
もしも「発音が大事だ」という立場に立つのであれば,
- 正しく発音しなければ相手に伝わらない
- 辞書で発音記号を確認するだけで,聴いたことがない単語でも読める
などと理由を話せばよいでしょう。
そして,それぞれに,
- 外国の方と話をしていてwaterという単語すら聞き取れずに恥ずかしい思いをした
- 無限にも思える発音記号も全部で50弱しかなかったので,ぜひ覚えたい
などと,自身の体験を交えた内容を1つ加えて,内容を膨らませれば良いわけです。
以上,GTECのCBTタイプについて1問ずつ取り上げてみてきましたが,「論より証拠」ですので,ぜひサンプル問題を解いてみてください↓
まとめ
以上,GTECの特徴やCBTタイプの問題内容を中心にみてきました。
攻略としてはやるべきことは明確なので,焦らず落ち着いて,こなすべきことを1つ1つやっていけば,それほど恐れるべき内容ではないことがわかっていただけたかと思います。
英語の民間試験のどれを受ける時もそうなのですが,ただ高いスコアを取得することだけを目標とせず,こういった問題が解けて良い結果が出た先に何があるのかを想像してみることが大切です。
GTECであれば,テストの性質上,例えば次のようにイメージできるでしょう↓
- 留学して現地の授業を聞くときに役立つ
- 将来,英語関係の仕事に就く際に役立つ
- 海外との取引の際に役立つ
「このような目標のためにGTECを勉強しているのだ」と考えられるだけで,やる気も結果も大きく変わってくるものです。
あとは偏った学習にならないよう,英語4技能をバランスよく鍛えるように注意しましょう。
特に,リスニングやスピーキングは日ごろからアプリなどを使って習慣づけをしておくことが重要です。
わずか数分でも,それを毎日続けると,後で大きな差となって表れてきます。
頑張ってください!