これからの大学入試では,英語の4技能をバランスよく伸ばすことができた受験生ほど,他人より有利な条件で本番に臨むことができるようになります。
そして,自分の4技能の実力を知り,さらにそれを大学側に証明するために,今後は英検やTOEICなどの細かい資格検定の枠組みを超えた指標が用いられることになりました。
教育改革で英語4技能の評価に使われるのは,ずばり「CEFR」という指標になりますが,今回の記事は,既存の英語資格検定と比較しながら,理解を深めることを目的としています。
また実際の大学入試において,この指標がどのように用いられることになるかについて,いくつかの大学の例を元に考えてみることにしましょう!
英語の4技能とCEFRについて
2020年に向けた教育改革の目玉の一つである大学入学共通テストですが,英語の4技能(読む・聴く・書く・話す)が評価の対象とされることが決定しているものの,その際に用いられる予定の民間試験については,英検であったり,TEAPまたはTOEFLであったりと多岐に渡っています↓↓
そのため,そういった試験すべてに通じる共通の物差しとして「CEFR(セファール)」が用いられるようになったというわけです。
CEFRとは「Common European Framework of Reference」の頭文字の略で,内容についてまとめると「言語能力を評価する国際指標」なります。
なお,単語の中に「ヨーロッパ」と入っていますが,もはや全世界に通じる指標とされているので問題ありません。
このCEFRを用いることで,各種英語試験のスコアを,CEFRの定める6つのレベルのいずれかに置き換えることが可能になったというわけです。
例えば,以下の比較表を見ると,「英検準1級」や「TOEIC(R)L&Rの800点」というのは,CEFRで言うところの「B2レベル」にどちらも相当することがわかります↓↓
新学習指導要領では,英語4技能の1つ1つにおいて「Can-do」と呼ばれる到達目標が設定されていますが,総じて到達したい学年別の目標をCEFRのレベルでまとめると,以下のようになるでしょう↓↓
- 中学2年生までにA1レベル
- 高校2年生までにA2レベル
- 高校生までにB1レベル
最後のところについては厳密には,英語を専門としない大学2年生までにB1レベルとなるのですが,入試英語で求められるレベルは年々高くなっているので,上のように考えていてよいくらいです。
「中学生は英検3級を取得せよ。高校生は準2級~2級に合格せよ。」というのを昔聞かされた保護者の方もいらっしゃるでしょうが,今ではそれをCEFRのレベルに置き換えて「中学生でA2,高校生でB1に達せよ」というのが,新しい目標となっています。
なお,センター試験に代わる共通テスト(正確には,その前段階におけるプレテスト)のリスニング問題では,実際にA1~B1レベルの問題が出題されました↓↓
もちろん,B1レベルの問題に全員が答えられることはないのですが,CEFRを意識して問題が作られるということは覚えておきましょう。
また,悲しい現状に目を向けると,国公立高校に通う高校3年生の7割以上が,CEFR基準でいうところのA1レベルに相当するという結果も出ています(2014年度に実施された調査)↓↓
読み方としては,青い色が最も濃くなっているところに大部分の高3生が集中していると理解してください。
英語の授業に結構な時間数をかけても,到達レベルとしては国の教育目標の最低基準だとすると,抜本的な改革が必要になるのは当たり前なのかもしれません(ちなみに80%の日本人はA1~A2レベルに入るとされます)。
もちろん「英語なんて今後の人生に必要ない」と予想する方も多くいらっしゃるかと思いますが,教育改革の流れ的には,「来たる世界のグローバル化に備え,ツールとして英語を扱える人材を増やしたい」という国家レベルの戦略があるわけです。
そういった人材の養成所でもある大学ですから,そこで生きる以上,英語の習得は避けて通れません。
なお,CEFRのC2レベルともなると,もはやそれは,英検やTOEICでは測れないレベルになるわけで,それもまたリアルに感じられますよね。
大学入試とCEFR
2020年の教育改革により,これからの受験生は大学入学共通テストを受けることになりますが,英語の運用能力で高いレベルに到達することは,自身の大学合格のチャンスを高めることに役立ちます。
とはいえ,最初の共通テストが実施される前から,4技能が測定可能な試験会場には,高校生と思しき子の姿がありました。
というのも,個別入試では,とっくの昔に英語の4技能の入試への活用が始まっているからです。
文科省が公表した,2020年度の国公立大学入学者選抜の概要によれば,総合型選抜(かつてのAO入試)を実施する大学の数が過去最高になりました↓↓
参考
全国公立に対して総合型選抜を実施している学校の割合は54.9%と相変わらず半数を超えており,学校推薦型選抜においては95.4%と,軒並み高水準を維持しています。
そしてこれらの書類審査の中に,英語の4技能を評価に入れる大学も年々増えてきているわけです。
最近は入試制度も多様化してきており,CEFRでB2レベル以上に達している高校生であれば,推薦型選抜に限らず一般入試においても有利に受験を進めることができます。
例えば,以前私が受け持っていた立教大学志望の高3生で,英語が得意でないけれど,国語と数学が得意な子がいたのですが,彼女は英検2級を持っていたために,「グローバル方式による2教科受験(英語以外の国数で勝負できる試験方式)」を視野に入れた勉強計画が選択可能となりました。
他にも早稲田大学においては,英語4技能テストを利用する方が一般で受けるよりも有利な倍率で受験することも可能でした↓↓
他にも,英語力がある一定のレベルに達していることが証明できれば,入試での英語が満点扱いになるなど,良いこと尽くしです。
詳細については,受験予定の大学のHPで調べていただければと思いますが,「もっと自分に合った受験方法はないか」という目線で眺めてみることで,より注意が向くようになると思います。
まとめ
以上,CEFRの説明と各種英語試験とのレベル比較に加え,英語の4技能をバランスよく伸ばした結果での教育改革におけるメリットについてまとめてきましたが,いかがだったでしょうか。
繰り返しにはなりますが,大学共通テストでは,CEFRで言うところのB2レベルに達していると,受験を有利に進めることができそうです。
また,もちろんその先の就職や昇進を見据えた場合においても,英語ができるとかなり有利に事を運べるようになることは間違いありません。
これまでの大学受験制度を見直してみると,「入試で問われるものしか勉強しない」というのが受験生の基本となる態度であり,学校の英語授業において,例えば外国人教師による英会話の授業や発音の授業は,悲しくも無駄な時間の一つとみなされていました。
質が悪いことに,実際に受験で勝利してしまう子というのは,そういう無駄な勉強を極力排斥し,自分の受験に関係ない教科はすべて内職にあて,学校に頼らず塾の勉強に徹した受験生であることが多かったように思います。
その結果,英語4技能のうち文法や和訳の能力だけが異様に高く,「聞く」と「話す」能力が低い大学生が生まれてしまいました。
これが「受験英語は使えない」などと言われる理由に繋がってくるわけですが,教育改革が宣言され,その実施が現実味を帯びるにつれて,従来のCan-Doリストが見直されたりと,ようやく4技能が評価される時代になってきたのは喜ばしいことです。
なお,英語教育は小学校から導入されるようになり,高校での到達レベルもより上がることが予測されています↓↓
特にグローバル化の対応に力を入れている大学であれば,入学前だけでなく入学後においても,英語の資格検定試験は評価対象になりますし,将来英語力が問われる仕事に就きたい人にとってみれば,この時代の流れは大いに歓迎されるものではないでしょうか。
最後に,英語はコミュニケーションのツールでもあるわけですから,やはり実際に英語で他人と意思疎通を図ることも重要なわけです。
そのコミュニケーション能力が受験で問われるというならば,より一層,「聞く」や「話す」能力はその必要性を増すわけで,学校の会話の授業も意味のあるものとされ,授業に耳を傾ける生徒が増えることにつながるのではないでしょうか。
もちろんアウトプットは面白いものですから,相乗効果で読み書きの力も上がりやすくなるかもしれません。
もっとも,「従来の日本の詰め込み教育の良い部分が失われてしまう」という意見もありますので,その問題も考慮に入れて,しっかり話し合って意見を出していかなければいけない問題でもあります。
いずれにせよ,切り替わり時期というのは色々と後手後手に回るものですので,世の中の流れに動揺せず,普段から4技能すべての能力を高める勉強をしておきましょう!