実用英語技能検定(英検)の準1級というのは,中高生が保有できる勉強系資格の中で最も有力なものの1つです。
私の塾に通ってくる生徒を見ても,高校3年生で英語を武器にする受験生は取得できていますし,昨今は中学生の英語力も高まっており,中学3年生の子が準2級を取得してすごいと感心していた日が遠い昔のことのようです。
今では中3で英検2級はおろか,2016年には準1級を取得する子まで現れました。
とはいえその子は元来,英語含む学問全般に並々ならぬ興味を持っていたこともありますし,今回の記事の目的は中学生が英検準1級に受かる方法を伝授することではありません。
ここでは,英検準1級についての理解を深め,この方法でやれば誰もが合格に近づける王道とも呼べる英検準1級の受かり方について,現時点で最新の情報をまとめてみたいと思います。
もくじ
英検準1級の試験概要
まずは英検準1級試験の概要について確認しましょう。
運営元である日本英語検定協会のHPによると準1級が取得できる学力は,「社会生活で求められる英語を十分理解し,また使用することができる程度」とされています。
参考までに2級の目安を読んでみると,上の文の最初が「社会生活に必要な英語を理解し~」となっていて,「十分」の文字がなくなっただけで後は同じです。
とはいえ,文章は似ていても問題レベルに差があることは歴然で,例えば大問1の語彙問題を見比べただけでも,難度が上昇していることがわかります。
ちなみに準1級のレベルを一言で言うと,ずばり大学中級レベルです。
いきなり「大学中級」と言われて面食らうかもしれませんが,英文科でもない学生が数年大学に通ったところで,受験生の時ほど急激な英語力の上昇をみせることはありません(もちろん平均的な意味です)。
さらには,大学で習うべきとされる英語のうち,英検準1級に役立つところだけを高校生が特訓することだってでもちろん可能なわけですから,「大学」の文字に臆せず頑張りましょう!
さて,これから各出題内容について具体的な理解を深めるとともに,どのような対策が考えらえるかまとめていきますが,まずは大まかな分け方について把握してください。
準1級のテストは1次試験と2次試験に分かれますが,そのうち前者は90分の筆記試験でリーディングとライティングを,そして30分のリスニングからなります↓↓
そして,2次試験に分類されるのが8分のスピーキングテストで,時間として少し空き時間があった後に行われるのが特徴です↓↓
従来型の英検を受ける場合,スピーキングテスト(2次試験)に進めるのは1次試験の合格者のみですが,入試改革において高校生が受けるであろう新方式では,1次の合否に関係なくスピーキングテストは全受験生必須となるので注意しましょう↓↓
リーディングの出題内容と対策
準1級含め,英検では過去問が公式HPからダウンロードできます(3年分)。
解説がなかったり,対策についての言及がないという弱点は確かにありますが,実力を確認するには十分ですので是非利用してみてください。
リーディングは全41問からなり,1次試験の筆記のうち大問1~3に該当します。
大問1
短い文のカッコに適当な語句を入れる大問1ですが,とにかくここが一番の難しさを感じるところかもしれません。
すべて語彙問題なので,正解するためには文脈まで理解する必要があります。
とはいえ,単語の意味さえ知っておけばそこまで深く文脈を読み取らなくても解けるでしょう。
例えば上の(1)にある選択肢は,左から「行為・段階・静脈・金切り声」の意味になりますが,このことを知っていたら答えはすぐ出せますよね。
とはいえ,単語の意味をすべて覚えることが至難の業なのですが,すべてを知っていなくても3つだけ完璧に知っていたらどうでしょう。
それでもほとんど正解できてしまいます。
2つですと確率としては2分の1であたるギャンブルになりますが,ここで大切なことは,1つでも多くの単語がわかるほど正答率は確実に高まるということです。
また,語彙問題の対策をする際,暗記を助ける方法としてよく言われるのが,
- 派生語を意識する(absence←absentの名詞)
- 語源についての理解を深める(pro「前に」ceed「進む」)
- なんとなくのイメージ(悪い意味?良い意味?)
- 特定のジャンルや文脈で使われる(commute,invest,negotiate←ビジネス)
ことです。
単語や句動詞は,文脈の中で覚えるのが最も効率的ですし,学んだ効果は第1問に限らず準1級のあらゆる範囲に良い影響を及ぼすので,単語の学習は毎日行うようにしましょう!
大問2
大問2は250語程度の2つの長文があり,そのカッコに入る語句を選択肢の中から選びます。
大体3段落くらいで,それぞれ1つのカッコを含む問題が多いですね。
大問1では文脈を2~3個の文の中で把握するだけで済みましたが,こちらでは段落ごとの要点(基本的に各段落で言いたいことは1つ)を掴む能力が問われています。
このときの判断の基準となるのが,各種ディスコースマーカー(論理展開を示す語句)です。
これを理解できていると正解率が大きく高まりますが,それ以前の問題として,そもそも1つの文の意味が正確に把握できる(精読できる)レベルに達していなければ,より上級な読み方(スキミング・スキャニングなど)ができるはずもありません。
さらに言えば,ある程度の国語力も必要になってきますので,今の自分の身の丈に合ったところから学習をスタートすることが大切です。
大問3
大問3も長文ですが,大体300語・400語・650語の長さのものが3つほど用意されています。
設問数は段落数に合わせたのか,3問・3問・4問となっているので,各段落を読み終えるごとに1問ずつ解いていく態度で臨んで構いません。
塾で教えている技としては,
- 先に設問を読んでから本文を読む
- わからない語句に出会ったときは言い換え表現を探す
- Howeverやbutに注目(英語は否定語のあとに要点が来る)
などがありますが,ある程度の語彙力と文構造を把握できる力があった上で,さらに文脈の流れを追う読み方が求められている点は大問2のときと変わりません。
ただし,より難度が高まっているので,「いよいよ本番だ」とさらに気合を入れて取り掛かりましょう!
ライティングの出題内容と対策
筆記試験の最後にあたる大問4はライティング(英作文)問題です。
大学で習う,いわゆるアカデミックライティングの書き方ですが,語数が120~150語程度とそこまでではないので,型を覚えてしまえば構成自体は簡単ですのでご安心を。
大問4の注意点についてまとめると,
- 決まった構成通りに書く
- スペルミスや文法ミスをしない(確実に減点される)
- そもそもの質問の意図を把握する
- 同じ語彙や文法表現を使わない
のようになります。
構成については,「イントロ・メイン・まとめ」の3構成にするのが基本で,まずは自分の意見をイントロで述べた後,その理由について2つ(2段落)に分けて,最後の4段落目でまとめるというのが基本の形です。
しかし,それ以上に大事なのが,そもそも質問に答えているかということで,意外と論点がズレてしまう生徒が多いので気を付けてください。
採点をしていると,最初は良いのですが,文章の最後になるとまったく関係のない結論で締めている場合が多々あります。
上の英作文では,「動物園にいる動物は受け入れられるか否か」が聞かれており,その理由の候補として,「動物の人権・教育的価値・絶滅動物の保護・生活環境」の点から賛成や反対をサポートしていくことになるでしょう。
このとき,賛成か反対かの立場を明らかにしてから書き始めますが(中立の立場は書きにくいのでおすすめしません),このとき,元々の文章を下手に言い換えて書いてしまうと,元々の意味とは変わってきてしまうことがあります。
余裕がない人は無理せず,文中の語を使うことから始めましょう。
先の質問に対し,「私は動物が好きです」だの「癒し的な役割として介護施設においても動物は使われています」などと書いては0点になります。
字数の水増しはすぐにわかりますので止めましょう。
大問4は,「内容・構成・語彙・文法」の4つの観点から主に採点されますが,凝った内容でなくても質問に答えられていればOKです。
それよりも残りの3つのポイントをしっかり意識して解くようにしてください。
リスニングの出題内容と対策
それでは1次試験のリスニングについてみていきます。
全部で3つのパートからなり,パートごとに文章が異なるのが特徴です。
Part1
男女の会話を聞き,その質問に最も適切なものを4択から選ぶ問題が全部で12問。
ただ黙って音声が流れてくるのを待つのではなく,先に選択肢に目を通して場面を推測しておくことでより正解率が高まります。
会話独特の表現を覚えたり,場面をイメージで記憶するクセを日常の学習の中で身に付けておくことが高得点の鍵です。
選択肢に使われている言葉が,会話の中で使われた表現そのままであることはめったになく,言い換え表現が使われていますので注意しましょう。
Part2
6つの各パッセージにつき,問題は2問ずつの計12問です。
問題数はPart1と同じですが,あるテーマの文章について150語程度の英文を聞くところが異なります。
ですが文章の構成は明確で,以下のようなものです↓↓
- 主題(メインとなるテーマ)
- サポート(論理展開を意識した説明)
- 結論
Part2でも先読みは効果がありますし,大問2で扱った長文を何度も音読して,前から意味を取れるように訓練しておくことで,リーディングの点数も伸びるようになります(その逆も同じ)。
Part3
Part3は5問から成り,いわゆる「実生活(Real-life)形式」と呼ばれる問題です。
シチュエーションと質問がすでに印刷されているのは,何を聴き取るべきかという目的意識をあらかじめ持って,リスニングしてほしいという出題者の意志の表れでしょう。
以下のような場面が1次試験では主に出題されますので,こういう内容がふんだんに出てくる教材でトレーニングを積むことが大切です↓↓
スピーキングの出題内容と対策
スピーキング試験は2次試験にあたりますが,試験官と1対1(新形式のS-CBTだと録音)の面接になり,流れとしては以下の通りです↓↓
- 入室する
- 面接カードを渡す
- 座る
- 名前などの確認や簡単な質問タイム
- 問題カードを受け取る
- 1分間のフリータイム
- ナレーション(2分間)
- Q&A(No.1の後問題カードは裏返す)
- 問題カードを返却して退室
5の問題カードに書かれた場面設定としては,以下のような場面や題材になることがすでに公表されています↓↓
スピーキングを勉強する際も,先ほどの精読と速読の話じゃないですが,英語の音をそもそも聴き取れなければ話になりません。
まずは,正しい発音やアクセントを身に付けましょう。
そして何よりも重要なのが,準1級に狙われやすい場面を舞台に,英語で実際に話す練習をすることです。
練習相手を見つけた練習は学校でやるとして,自宅ではとにかく英語で話す練習をし,そのとき自分の声を録音して聞くと一層効果的が出ます。
まとめ
以上,英検準1級の問題内容と対策するときのポイントについて解説してきました。
今回の内容をまとめると,英検準1級に合格するためには,リーディング・ライティング・リスニング・スピーキング能力をすべてバランスよく高めることが大切だということがわかります。
さらには,リスニングやリーディング,ライティングとスピーキングのように,相補的にどちらかの能力を上げることがもう片方の実力アップにも影響する場合もありますので,伸び悩んだら弱点範囲に目を向けるようにしましょう。
その上で,準1級によく使われる場面設定をもとに,語彙力を深め,日常的に英語を話す練習を行うのが,私の考える最も現実的な対策になるように思います。
現時点で最もその用途に使いやすいのが,以下のスタディサプリです。
月額が安いので私としても勧めやすいですし,本人の頑張り次第でどこまでも英語力を伸ばせるところが大きな魅力となっています。
特に日常英会話コースは場面設定が英検で問われる内容に近く,リスニング以外にスピーキングの練習まで自宅で行えてしまうところが魅力です↓↓。
一方で,大問2や3の英文自体が読めない方は,スタディサプリ大学受験講座にある英文法や読解といった受験英語を学ぶことが効果的でしょう。
時間はかかりますが,やらないことにはできるようにはなりません↓↓
英検準1級は,試験の性質を理解した上で,十分で適切な対策を講じれば高校生でも十分に合格可能です。
ちなみに英検準1級に合格しようものなら,受験(推薦入試)だけでなく就職でも多少有利になりますし,純粋に合格を目指して頑張るだけでも総合的な英語力が高まり偏差値が上がりますので,英語力重視の昨今の入試ではその努力が生きます。
今回の記事を参考に,是非とも挑戦してみてください!!