2020年に行われた教育改革では,実用英語技能検定(英検)のテストが大学入試英語成績提供システムというものに組み込まれ,今後の受験生は「新方式」と呼ばれるものを受験しなければならないとされました。
しかし,この案は見送りとなり,どの受験生も今しばらくは,従来通りに入試で英検を利用できる状態です。
とはいうものの,英検自体は改革に合わせるために新方式となり,こちらに関しては見送りとはせず,当初の予定通り,2020年4月から開始となりました。
そして,その結果は,現在の入試において英語力を証明するために用いることができます。
今回の記事内容ですが,まずは従来型と新方式の英検の間にどのような違いが生じたかについてまとめていきましょう。
加えて,どのような対策が有効であるのかについても,最新の教育改革の観点から考えてみたいと思います。
新方式の英検の変更点
新方式の英検ですが,これまでのものと試験内容自体に違いはありません。
さらに言えば,従来型の試験が廃止となって新方式に取って代わったわけでもないことに注意してください。
前者に関しては,これまで通りの英検対策が十分に通用するテストであることに変わりはなく,従来の勉強法を変える必要は全くないということについて,ひとまず安心しておきたいところです。
それでは,一体何が変更されたのかと言えば,ずばり「試験の実施方法」となります。
マイナーな違いまでを含めると説明が煩雑になってしまうので省略しますが,馴染みある従来型との大きな違いとしては,日程とスピーキングテスト(これまで2次で行っていた面接試験のようなもの)の2点に注意しておけばひとまずOKです。
受験生が受けることになる新方式の名称は「英検S-CBT(障がいのある方は英検S-Interview)」となります。
この方式の特徴としては,
- 合否に関係なく,受験者は4技能すべてを1日で測定してもらえる
ことが挙げられ,特にスピーキングテストについては,これまでの従来型であれば,2次試験の面接で行われてきたわけです。
つまるところ,1次試験の合格者のみに面接(スピーキング)の受験資格が与えられていたことになります。
それが,新方式の試験においては「1次試験の合否に関係なく全員参加」と変わったわけで,それにより英検は「受験者全員の4技能を測る」という選抜試験の条件を満たしたわけです。
当初,この新方式の対象者は「受験生」,つまり高3生か浪人生のみとなっていたのですが,先の提供システムの見送りに伴って,受け入れ人数に余裕が出たのでしょう。
今では年代問わず,誰もが受けられることになっています。
それでも,受験できる級の中に1級や4~5級がないのは,選抜試験に使うという目的があるからです。
S-CBTに存在しない級を希望する方は,従来型の英検を受けましょう。
その場合,1級のスピーキング能力は2次試験の面接で評価されることになります(4~5級は面接がそもそもありませんが,パソコンやスマホでスピーキングテストを受けることができます)。
なお,「英検CBT」という,これまた新方式のテストがこれらのテストよりも一足先に開始され,そちらはそもそも対象学年に制限はありませんでしたが,2021年の4月から,英検CBTは「英検S-CBT」に統合されました。
以上,テスト方式の違いについて簡単にまとめてきましたが,先述の通り,詳細に関してはまだまだ違いがあります。
次章以降では,これら新方式の試験内容や日程,さらには勉強法について触れていくことにしましょう!
新方式の英検の詳細
現在行われている新方式のテストを今一度書き並べてみると,
- 英検S-CBT
- 英検S-Interview
となります。
ここではこれら2つの試験の詳細についてまとめましょう。
「S-」の名を冠していることからもわかるように,スピーキングテストに全員が参加する点は共通です。
英検S-CBT
まずは英検S-CBTの試験日程についてですが,毎月どこかしらで試験が実施されています(会場はS-CBTはテストセンターで,従来型は学校や公開会場となります)。
以下は,関東地方における実施例となりますが,◎のところで準1級~3級,○は2級~3級の試験が受験可能です↓
毎月,このような感じですので,従来型の英検が年3回しか実施されていないことを考えると大きな違いに感じられると思います。
とはいえ,実施頻度については会場によって差があるので,そこまで自由に選べるわけではないことは覚えておきましょう。
週末(特に日曜)は実施頻度が高く,「9時・12時20分・15時40分」のいずれかが集合時間となります。
一方,平日の試験に関しては,学校があるときとないときで実施時間が変わり,普段は午後(15時)以外に夜(18時30分)集合のものがあるため,部活がある方は助かるでしょう。
長期休暇に入ると,週末と同じ時間帯での開催になります。
とはいえ,準1級は他の旧都は別の時間帯で行われるので,各自,よく確認してください。
2020年当初は,受験期間にかからないよう4~11月の間に試験日が限定されていたこともありますが,今では12~3月(第3回)の試験もあります。
また,試験を毎回受けることはできません。
英検は実施月によって大きく3つの回に分けられるのですが,それぞれの回に2回まで受験できます↓
実施月と回の関係
第1回:4~7月,第2回:8~11月,第3回:12~3月
ちなみに,新方式以外に従来型の試験を併せて受けることはOKで,1つの期間中,3回までは理論上,受験することが可能です。
試験の解答方式については以下で確認してください(S=スピーキング,L=リスニング,R=リーディング,W=ライティング)↓
4技能 | S | L | R | W |
解答 | 録音 | PC | PC | 筆記 or PC |
スピーキングは自分の声がPCに録音され,リーディングとリスニングの解答はマウスを使って選択肢を選ぶ方式です(マークシートではないのでご注意ください)。
また,ライティングに関しては,キーボードを操作してタイピング入力するか,解答用紙に手書きするかが選択できるようになりました(個人的にはタイピング型を選択するのがおすすめです)。
なお,検定料は以下の通りとなり,個人で受ける場合は,従来型より手間がかかる分,高くなっています↓
料金 | |
準1級 | 9900円 |
2級 | 9000円 |
準2級 | 8500円 |
3級 | 7200円 |
英検S-Interview
英検S-Interviewは「Speakingだけを人が行う対面式」です。
ただし,吃音があったり点字や補聴器が必要などの合理的な配慮が必要な方のみを対象としているので,受験するに当たっては審査があることにご注意ください。
こちらの日程については第1回~第3回の日程の間にそれぞれ1回のみ受験可能で,2日に分けて試験が行われる点が英検S-CBTと異なります。
なお,従来型同様,スピーキング試験のみが他の試験の約1ヶ月後に行われますが,1次試験の合否によらず全員が受験可能です。
検定料は,上のS-CBTのものと同様となります。
ここまでの内容については,英検の公式HPから確認可能です↓
新方式の英検対策
英検の新方式について違いを理解したところで,最後に有効な対策について考えてみることにしましょう。
CEFRについてまとめた記事で述べたように,中学3年生の時点で準2級,大学生で2級を取得するのが英語力の到達目安ですので,大学受験で事を有利に運ぶためには,2級以上の取得がカギとなります。
もちろん,従来型の英検と試験内容は変わらないので,それに応じた対策をすればいいわけですが,全受験者がスピーキングテストを必ず受けることになるため,話す練習については特に念入りに準備しておきたいところです。
なお,基本的にスピーキングの力を伸ばすには,まずはリスニング力を伸ばすことから始めるのが王道です。
その理由としては,
- 何を聞かれたかわからなければ答えようがない
- 自分が聞き取れない英語は発音できない(逆も同じ)
の2つが挙げられます。
また,英語がある程度できる大人の我々であっても,不意を突かれて外国人に話しかけられるような状況では,英語が自然と口をついて出てこないことがあることも経験済みでしょう。
2020年の教育改革では,教室内でのコミュニケーションが評価されることが多くなると書かれていますので,普段から英語で話す練習をしておくことは重要です。
もっとも,英語を話す相手がいなければスピーキングの練習もしづらいのが悩みの種ではありますが,オンラインの教育サービスを利用すれば,忙しくても対策は可能でしょう。
例えば,スタディサプリENGLISHであれば,トレーニングの中にスピーキング能力を高めるトレーニングが含まれ,機械相手に気楽に練習することができます。
加えて,オプションでオンライン英会話も選択できるため,ある程度慣れてきたタイミングで切り替えてみても良いでしょう↓
オンライン英会話は,特に英語が得意な生徒におすすめです。
この方法が上手くハマると,帰国子女でなくても中3で2級~準1級,高3で英検1級の1次まで突破することができます(実際の生徒の例となります)。
英語で話せることが思いもよらぬ結果を生むことはよくあることで,例えば慶應大学の総合型選抜において,突然,英語で答えるようにと指示された際にも,英語が得意な生徒であれば簡単に返答でき,結果は見事合格でした。
また,入試におけるリスニングというのは多くの受験生が対策を怠りがちなので,毎日数分でも学んでおくことで差を付けることができます。
なお,スピーキング対策としては弱いですが,学校での予復習もあわせて行う場合にはスタディサプリの英検対策講座もおすすめです。
詳しくは以下の記事を読んでみてください↓
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もう1つ,NHKのラジオ英語も勧められますが,御三家と呼ばれる名門中学に通う子であっても時間通りに続けるのは難しいようでしたので,導入する場合は長期休暇中に発売される特別号のみの利用にとどめるのが良いように思います。
とはいえ,こちらにもアプリが存在し,数年前の内容であればいつでも聴くことができるので,是非試してみてください(テキスト不要で学べます)↓
なお,英検の級ごとの対策については,以下の記事もどうぞ↓
まとめ
ここまで,実用英語検定試験において2020年から実施されている新方式についてまとめてきました。
S-Interviewも比較しましたが,多くの方は英検S-CBTを受けることになるでしょう。
その場合,4技能が1日で行われるためやや過密スケジュールにはなりますが,受験者に対してできる限りの配慮がなされており,それこそ,試験環境から検定料の改定まで好意的に受け取ることができる内容です。
受験のチャンスは以前より多くなっていますので,十分に対策して受けるようにしてください。
具体的な対策としては,スピーキングテストを必ず受けなければならないことに注意し,日ごろから英語を聞く練習を,これまで以上に念入りに行うことが大切だと述べました。
そもそも英検にはリスニング自体の試験もあるわけですし,一般的に読解やライティングよりも短期間で成績が上がりやすいのもリスニングです。
最後の章で述べたリスニングを中心とした英検戦略は,今後も長きにわたって機能するでしょう。
当記事を読んでいただいたみなさんの成功を祈っています。
頑張ってください!