ここ数年で実用英語技能検定(英検)は2回ほど大きな変更を行っています。
1回目は2020年の教育改革のときであり,大学入試英語成績提供システムに組み込まれる案こそ見送られたものの,英検自体は改革に合わせるために同年の4月から新方式のものが誕生しました(ただし従来型のテストがなくなったわけではありません)。
そして2回目の変更が行われたのが2024年で,3級以上の級で出題形式が新たにされています。
これまでの内容を簡単に言ってしまえば,2020年に新方式が追加され,2024年に一部の問題形式が変わっただけになりますが,2025年には新しい級が導入されることが決まっていますし,英検は現在の大学入試で大変利用価値が高いテストなだけに,情報はたえず新しいものに更新しておきたいものです。
ちなみに当記事では,2020年から現在に至るまでにどのような変更が行われたかが理解できる他,有効な対策方法について知りたい場合にリンクを辿って別記事から学ぶこともできます。
それでは始めていきましょう!
最近の英検の主な変更点
1回目の変更は2020年度
まずは1回目の変更ですが,これは2020年度から適用となりました。
ただし,新方式の英検は従来型のものと試験内容自体に違いはありません。
従来通りの勉強法を変える必要がないことについては,ひとまずのところ安心しておきたいものです。
それでは一体何が変更されたのかと言えば,ずばり「試験の実施方法」が挙げられます。
詳しくは次章で解説しますが,多くの人に馴染みのある従来型との大きな違いとして,ここでは
- 日程
- スピーキングテスト
の2つに注目してみましょう。
新方式の英検は「合否に関係なく,受験者は4技能すべてを1日で測定してもらえる」ところが特徴で,従来型のスピーキングテストが2次試験の面接(別日)で行われていたことを考えると大きく異なります。
つまり,1次試験で不合格になってしまうと面接(スピーキング)試験に進めなかったはずのところが,「1次試験の合否に関係なく全員参加」に変わり,それによって英検S-CBTは「受験者全員の4技能を測る」という先述の成績提供システムの要件を満たすことになったわけです。
当初この新方式の対象者は「受験生」,つまり高3生か浪人生のみに制限していたのですが,先のシステムの見送りに伴い受け入れ人数に余裕が出たのでしょう,今では年代を問わず,誰もが受けられることになっています。
それでも,受験できる級に1級や4~5級が見当たらないのは「選抜試験に使う」という当初の目的があるわけで,正確に言えば上記システムも廃案になったわけではないわけです。
なので,新方式の英検に存在しない級を希望する方は従来型を受けるようにしてください。
2回目の変更は2024年度
続いて2回目の大きな変更は2024年度のものです(S-CBTは5月実施分からです)。
こちらは方式ではなく形式が新しくなり,具体的には1~3級の出題形式が変わりました。
新学習指導要領が目指す能力を測定できるようにすることが主な目的ということで,以下のような問題が追加されたわけです↓
- 英作文での要約問題(2級以上)
- スピーキングで意見を問う問題(準1級)
- 英作文のEメール問題(準2~3級)
それと帳尻を合わせるために読解問題の数が減ったり,試験時間が長くなったりもしています。
問題内容について詳しくは,以下の攻略法の記事をお読みください↓
新しい級の導入
2025年度から準2級と2級の間に準2級プラスが追加されることが決まりました。
英検では級が上がるほど,その差が広がる傾向にあるわけですが,受験を控えた高校生にとっては英検準2級と英検2級の差がありすぎることが問題視されていたわけです。
なので準2級プラスが新設されたことで,準2級取得後から2級取得までの道のりが緩やかになったと言えるでしょう。
英検3~5級が中学生向けとされるように,高校生は以下のような目標でもって学年別に学んでいくことができます↓
高校以降の英検の目標級
高校1年生:英検準2級(A2レベル)
高校2年生:英検準2級プラス(A2レベル)
高校3年生:英検2級取得(B1レベル)
A2やB1とはCEFRのことですが,詳しく知りたい方はCEFRとは?英語試験や大学入試との関係についてをお読みください。
以上,従来型との変更点を中心に簡単にまとめてきましたが,詳細に関してはまだまだ語り切れていません。
なので次章以降では,新方式の試験内容や日程,そして新形式の勉強法についてみていきたいと思います。
新方式の英検の詳細
現在行われている新方式のテストを今一度書き並べてみると,
- 英検S-CBT
- 英検S-Interview
となりますが,ここではこれら2つの試験の詳細についてまとめましょう。
英検S-CBT
まずは英検S-CBTの試験日程についてですが,毎月どこかしらの土日(一部エリアでは平日もあり)に試験が実施されています。
会場は各種テストセンターとなり(2024年2月時点で47都道府県79エリア),コンピュータで受験をする関係上,大学などは会場になりません。
また,すべてのテストセンターがたえず利用できるかと言われればそのようなことはなく,以下は関東地方における過去の実施例を示したものになりますが,◎のところで準1級~3級,○は2級~3級の試験が受験可能でした↓
従来型の英検が年3回しか受けられないことと比べると大きな違いがあるように感じられます。
とはいえ,県によって実施頻度に差があるのは明確ですし,曜日に関してもそこまで自由に選べるわけではないことを覚えておきましょう。
日曜の実施頻度は高く,2~3級の場合,「9時(午前)・12時20分(昼)・15時40分(午後)」のいずれかが集合時間となります。
一方,平日の試験に関しては,学校がない長期休暇中は実施時間が変わります(午前・昼・午後)し,通常期は午後以外に夜(18時30分集合)が選べるため,学校の用事で帰宅が遅くなっても受験できるはずです。
2020年当初は受験時期にかからないよう4~11月に試験日が限定されていたものですが,今では12~3月(第3回)の試験もあります。
さて,そんな利用しやすいS-CBTですが,試験を毎回のように受けることはできません。
従来型の英検は実施月によって大きく3つの回に分けられますが,S-CBTもそれに似て,各回(4ヶ月の間)に2回までの制限付きです↓
実施月と回の関係
第1回=4~7月
第2回=8~11月
第3回=12~3月
とはいえ,新方式以外に従来型の試験を併せて受けることはOKなので,上の1つの期間中,全部で3回までは受験することが可能なので十分でしょう(短期間で英語力が劇的に伸びることは考えにくいです)。
試験の解答方式については以下のようになっています↓
- スピーキング=録音
- リスニング=パソコン入力
- リーディング=パソコン入力
- ライティング=パソコン入力または筆記
スピーキングはマイクで自分の声をPCに録音し,リーディングとリスニングの解答はマウスを使って選択肢を選ぶ方式です。
なお,ライティングのみ特殊で,キーボードを操作してタイピング入力するか,解答用紙に手書きするかを選択できます。
なお,検定料は以下の通りとなります(参考として,従来型を個人で申し込んだ料金をカッコ内に示しました)↓
料金 | |
準1級 | 10600円(10500円) |
2級 | 9700円(9100円) |
準2級 | 9100円(8500円) |
3級 | 7800円(6900円) |
英検S-Interview
英検S-Interviewは「Speakingだけを人間が行う対面式」の特別版です。
ただしその対象となるのは吃音があったり点字や補聴器が必要などの合理的な配慮が必要だったりする方のみなので,受験するにあたって審査があることにご注意ください。
S-Intervciewは上で示した第1回~3回のそれぞれで1回だけ受験でき,2日間に分けて試験が行われる点がS-CBTと異なります。
スピーキング試験のみが他の試験の約1ヶ月後に行われることになるわけですが,1次試験の合否によらずに全員が受験可能です。
検定料はS-CBTのものと同様になります。
ここまでの内容については英検の公式サイトからも確認可能です。
新形式の英検対策
英検の新方式や新形式について違いを理解したところで,最後は有効な対策について考えてみましょう!
中学3年生の時点で準2級,高校を卒業するまでに2級を取得するのが国の決めた英語力の到達目標ということで,大学受験で有利に事を運ぶためには2級以上の取得がカギとなります。
先述したように,従来型の英検と試験内容は変わらないのでそれに応じた対策をすれば良いわけですが,S-CBTは全受験者がスピーキングテストを必ず受けることになるため,話す練習は念入りに準備しておきたいところです。
なお,スピーキング力を伸ばすためには,まずリスニング力を伸ばすところから始めるのが王道です。
その理由としては以下の2つが知られています↓
- 何を聞かれたかわからなければ答えようがない
- 自分が聞き取れない英語は発音できない(逆も同じ)
また,英語がある程度できる人であっても,不意を突かれて外国人に話しかけられればすぐに英語が出てこないでしょう。
なので,日常的に英語を話すことに慣れておく必要があります。
実際,学習指導要領上でもコミュニケーションの大切さが何回も述べられているので,もはや英語で話す練習から逃れることはできません(都立高校の入試でもスピーキングテストが必須となっています)。
英語を話す相手がいなければスピーキングの練習はしづらいのではと思いますが,今やオンライン英会話を取り入れている中学や高校も少なくないです(比較的自由にカリキュラムを組める私立が中心にはなりますが)。
逆に,そうした環境がない場合,スタディサプリENGLISHのようなオンラインサービスを利用して,スピーキング能力を高めるトレーニングを自主的に行う必要があるとも言えるでしょう。
機械相手なので,恥ずかしさを覚えることなく練習に没頭できます↓
オプションでオンライン英会話も選択できるため,ある程度慣れてきたタイミングで切り替えてみるのもおすすめです。
この方法が上手くはまると,帰国子女でなくても中3で2級~準1級を目指せますし,高3で英検1級というのも夢ではありません(あいにく,私の生徒は1次試験合格どまりになってしまっていますが)。
また,現行の共通テストは英語のリーディングとリスニングの配点が同じ100点満点です。
まだまだ多くの塾ではリスニング対策を軽視している傾向にあるため,毎日数分間でも英語を聞く習慣を早いうちに身に付けておくことができると,後で大きな差となって表れてきます。
なお,スピーキング対策としてみれば弱いですが,学校での予復習も併せて行うような場合には通常のスタディサプリの英検対策講座もおすすめです。
こちらは2級~5級までの攻略法を動画とテキストまたはドリル形式で学ぶことができます。
他にはNHKラジオの基礎英語も勧められますが,「御三家」と呼ばれる名門中学に通う子であっても時間通りに続けるのは難しい様子だったので,導入する場合は長期休暇中に発売される特別号のみの利用に留めておくのが無難かもしれません。
とはいえこちらにもアプリが存在し,数年前の内容にはなりますがいつでもどこでも聴けるということで,是非一度試してみてください(テキスト不要で学ぶことができます)↓
まとめ
ここまで,実用英語検定試験において2020年以降に行われたリニューアルの変更点を中心にまとめてきました。
従来型の試験も根強い人気がありますが,日程などの理由から英検S-CBTを受ける方も少なくないでしょう。
その場合,4技能が1日で行われるためにやや過密なスケジュールになってしまいまうものの,別日にスピーキング試験だけを受けにいくというのは時間が多くかかってしまいますし,受験のチャンスは以前より多くなっているので,普段から十分に対策しつつも定期的に受けるようにしてください。
具体的な対策としては,スピーキングテストを必ず受けなければならない点と新学習指導要領に書かれた21世紀型能力を意識し,オンライン英会話の利用の他,日ごろから英語を聞く習慣を身に付けることの大切さについても述べました。
そもそも英検にはリスニングの試験もあるわけで,リーディングやライティングよりも短期間で成績が上がりやすいとも言われています。
最後の章で述べたようなリスニング学習を中心とした英検攻略法は,今後も長きにわたって機能し続けるでしょう。
当サイトにお越しいただいたすべての方の成功を祈って,終わりの言葉とさせていただきます。
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