スタディサプリは「小学校から高校までに習う授業内容について学べるもの」と,英会話やTOEIC対策に特化した「スタディサプリENGLISH」と呼ばれる2つのサービスに大きく分けられます。
ここでいきなり質問ですが,もし身近に実用英語技能検定試験(英検)の対策をしたい人がいたとして,一体どちらのサービスをおすすめするのが良いでしょうか。
理想としては「小中高生向けのものとENGLISHの両方」と答えたいところですが,強いて言うならば前者の方です。
「英語」の検定なのに意外だと思われたかもしれませんが,前者に英検のための対策講座がしっかりと用意されていることについては,知らない方も多いのではないでしょうか。
なお,後者において有力な「(旧)日常英会話コース」は数年前から単独利用ができなくなったために魅力は半減していますが,それに代わるサービスは,他社製のものを含めても未だに見つけられていません。
本記事では,スタディサプリを使った英検対策をメインに,多くの方が検討するであろう市販の対策本との比較もしてみました。
是非,参考にしてください!
もくじ
英検対策と基礎学力の関係
世に出ている英検対策本をみてみると,そのほとんどは「20日だけで」とか,もっと短いものだと「たった7日で対策できる」などといった夢のようなタイトルが付いていることがわかります↓
ですが,私はここで,「これらは誇張されたキャッチコピーです。みなさん騙されてはいけません!」などと訴えたいわけではありません。
むしろ事実はその逆であり,英検に合格する人というのは,対策自体にせいぜい1~2週間程度しか時間をかけないことが普通です。
肝心なのは対策期間の長さではなく「普段からどれだけ勉強しているのか」,つまり「学校の授業をどれだけ真面目に聞いてきたか」ということであり,これは意外と見落とされがちな盲点のように思われます。
根幹となる学力さえ高めておけば,少し対策しただけでもあらゆる試験に対応できてしまうという考え方は,英検勉強においても大いに当てはまるものです。
ところで,英語における基礎学力とは何を指すのでしょうか?
具体的には以下のような力となります↓
- 文法力
- 読解力
- 語彙力
- リスニング力
これらの力をバランス良く伸ばすことが,英検に合格するための近道です。
あえてここにライティング力やスピーキング力は含めていないのですが,文法力が高まってくると英作文が自然とできるようになってきますし,相手の言っていることが聴き取れなければそもそも英語で話すことなどできるはずもありません。
そのため,英検対策においても,まずは上記4つの力に絞って学習していくのが良い結果に繋がります。
管理人より一言
実際,英検はTEAPと並び,日本の授業で英語をどのくらい上手に使えるかを測るために生まれた試験です。ゆえに,学習指導要領の内容を大いに反映しているのは当たり前だったりします。文法・読解・語彙・リスニング力は共通テスト対策でも役立ちますし,試験会場の雰囲気に慣れるためにも英検を積極的に利用しましょう!
スタディサプリを使った英検対策
ここからは小中高生向けのスタディサプリを例に説明していくので,以下で確認しておいてください(大学生や社会人であっても利用可能です)↓
文法・読解・語彙対策
具体的な勉強方法ですが,英検では各級ごとに到達すべき学力の目安が明示されています。
そしてそれを参考にすれば,スタディサプリのどの講座を受講すればよいのかも自然にわかってくるわけです↓
級 | 到達目標 | 対象講座 |
5 | 中学初級 | 中1英語(共通版) |
4 | 中学中級 | 中2英語(共通版) |
3 | 中学卒業 | 中3英語(共通版) |
準2 | 高校中級 | 高1高2ベーシック |
2 | 高校卒業 | 高1高2ハイ |
準1 | 大学中級 | 高3トップ |
なお,中学講座は無難に「共通版」と付けましたが,生徒が普段使う教科書に対応した講座があれば,そちらで学ぶだけでよく,さらに共通版までやる必要はありません(逆に,フレッシュな気持ちでやり直すというのであれば,未習である共通版の方が良いでしょう)。
スタディサプリを選ぶ魅力の1つは,無学年学習が可能だということです。
講座一覧から学年と科目を指定するだけで,どの学年のどんな講座であっても視聴することが可能なので,例えば中学生が準2級を狙う場合,高校1~2年生向けの「ベーシックレベル英語」という講座を選んで観ればよいことになります(下から2つ目にある肘井学先生の講座です)↓
普段は中学講座を使っているという方は,小学講座・高校講座のページに切り替える必要があることに注意してください。
内容としては英文法を網羅的に扱うもので,語彙や読解のトレーニングを直接行うことにはならないのですが,文法ができれば文構造が見抜きやすくなり,後述する英検対策講座(読解や語彙のトレーニングが可能)に繋げやすくなります。
なお,英語は積み重ねが必要な教科ですので,判断に迷った場合は下のレベルから受講すべきですが,高校生の方は中学総復習講座を利用してみてください(上記画像の1つ目)。
リスニング対策
なお,英検1次試験のリスニング対策としては,以下で紹介する講座が役に立ちます。
まず1つ目は,中学講座の高校受験対策講座に含まれるリスニング講座です↓
レベルに差はありますが,中1用から中3用まで,全66講義が利用できます。
以下は中3の講義の例になりますが,音を聴いて解答を選ぶだけの問題で,音源を使ってディクテーションしたりシャドーイングするような使い方はできないことに注意してください↓
通常講義で扱った文法範囲をもとに例文を並べたもので,内容を理解しないと解けないところなどは確かに新課程らしい出題なのですが,あくまで補助教材としての位置づけです。
英検の4~5級ですとこれだけでもなんとかなると思いますが,さすがに3級ともなると厳しいように感じます。
準2級以上を受ける場合は,大学受験講座にある共通テスト対策講座を利用してください。
なお,リスニングの基盤を作るにあたって,2週間程度で学び終えられる中学準備講座の英語の利用もおすすめです。
こちらは英語の発音について学ぶことができ,新中1生向けの講座ではありますが高校生も是非視聴してみてください!
ところで,ここまでに紹介した両講座とも,そもそもの目的は英検対策として作られたものではありません。
よって,理想としては,後述するスタディサプリENGLISHで多聴の練習を積むことこそが,1次・2次試験両方のリスニング対策ができる最適解であると結論付けておくことにします。
なお,小中高生向けのスタディサプリには,次章で紹介する「英検対策講座」も用意されていますが,どちらかと言えばそれは最終調整的な位置付けの講座であり,英検学習のメインは圧倒的な時間数を誇る通常講座の方だと言えるでしょう。
とはいえ,対策講座を視聴せずに本番に臨むというのもおかしな話です。
私が生徒に指導する場合,まず最初に「英検対策講座」の方を視聴させて「どこどこの勉強が足りないな」と意識させるようにしてから通常講座へと移り,重点的に弱点分野を学び直す使い方をしています。
いずれにせよ,ここで確かなことは「スタディサプリの使い勝手は良好で,十分な対策をして英検に挑むことができる」ということです。
スタディサプリの英検対策講座とは
前章の最後で触れた英検対策講座ですが,学年別の動画ではなく「資格対策講座」という大きな枠組みの中に含まれる講座の1つであり,「3級・準2級・2級」の3つのレベルが用意されています↓
4級や5級であれば通常講座のみで対応が可能なので問題ありませんが,準1級の対策講座がないのだけは残念ですね。
とはいえ,合格を目指して頑張っている方は,英語の共通テストで9割超えが当たり前になる実力に達すれば受かる見込みが高いと考えて構いませんが,準1級の合格法について考察した記事も参考にしてください(英検2級は7割越えあたりが目安です)。
話を戻して,スタディサプリの英検対策講座の構成についてみていきますが,筆記対策が5講義と2~3個のリスニング対策講義からなります。
1つの講義は大体1時間程度で学習できるので,7~8時間程度の動画が用意されているわけです。
2級の講座を例に取って説明すると,以下のような講義内容となっています↓
ちなみに,以下が英検2級の試験範囲となりますが,上の講座と内容を比較してみてください↓
いかがでしょうか。
対応した講義が漏れなく利用可能であることがわかっていただけたのではないかと思います。
ここで学んだ内容に,前章で解説した通常講義で学んだ分が積み重なってくるわけですから,これらを全部視聴した際の講義時間は,最低でも数十時間に及ぶわけです。
もちろん,0からのスタートではないでしょうから「通常講座の全講義を視聴しろ」とまでは言いません。
ですが,やった分だけ合格に近づけることは確かなので,まずはこれまでに紹介した通常講座と英検対策講座に絞って勉強し,英検の過去問をダウンロードして解いてみて合格点が取れるかどうか確かめてください。
もっとも,ここまでやってもまだ1次試験の対策だけですから,面接でのスピーキング練習が(場合によっては1次試験のリスニング量も)足りないと感じる方も出てくるかと思います。
塾でみていると,そのような危機感を持っている生徒ほど実際は合格していくところが興味深いのですが,その不足分を補うために,次章で紹介する「スタディサプリENGLISH」が満を持しての登場となるわけです。
スタサプENGLISHを使った英検対策
これまでに紹介した小中高生向けのスタディサプリだけでは,スピーキングやリスニングの対策が不十分でした。
そこで,スタサプENGLISHから「(旧)日常英会話コース」をおすすめしたいと思います。
このコースは英検の級ごとに288もの講義が用意されており,ゲーム会社が作成した楽しいストーリーを題材に「聴く」と「話す」の練習ができてしまう優れもので,スマホで学べてしまうこともあって,ちょっとしたスキマ時間を利用して学習できるところが現代的です。
リスニングに効果大とされるディクテーションと呼ばれるトレーニングも,ノートや鉛筆を使うことなくサッとできますし↓
最もやりにくいとされるスピーキング練習でさえ,自分の声を録音すると,その内容をAIが文字に自動変換し,解答との一致率を判定してくれるわけですから,時代は凄いところまで来ています↓
7つもあるレベルの講座から,一体どれを選べばよいかについては,迷ったら下のものを選択することを基本とし,本番までに受験級の1つ下くらいのレベルには達しておきたいものです。
仕上げに日本英語検定協会のHPにある過去問を使っては出来をチェックし,2次試験の対策は無事終了となります。
1次試験のときと比べると,2次試験の対策はずいぶんと説明がざっくりしてやしないかと心配になったかもしれませんが,英検の合格率をみると1次試験こそが最も高い壁であり,それさえ突破してしまえば,2次の合格率は80%以上あるのが普通です↓
級 | 1次試験 | 2次試験 |
2 | 27.0~34.0% | 80.4~83.9% |
準1 | 15.0~18.0% | 89.1~89.8% |
※2015年と2016年のデータになりますが,現在も大差ありません。
万一,面接で落ちてしまった場合でも1年間は1次試験が免除となりますので,スタサプENGLISHを使って再び全力で2次対策に打ち込めばいいだけのことです。
(旧)日常英会話コースのレベルは,さらに上のものに挑戦し,余裕があればサマーレイン先生の基礎リスニング講座で音法まで学んでおきましょう。
実のところ,不合格になる原因というのは当日の試験官との相性であることも多く,私の教えている塾では2回受ければ大体の生徒が合格しています。
といったわけで,「一度落ちてもまた受ければいいや!」と気長に構えておくくらいで十分です。
必要以上に意気込む必要はないと思いますし,子どもが不合格の憂き目にあってしまった時でもあまり叱らないでやってください。
余談ですが,東大にいたときの同僚は,2次試験の合格率が統計的に高いからという理由で,わざわざ田舎の受験地を選択しては英検1級に合格していました。
さすがにここまでやる必要はないなと思いながらも,教え子の高3生が1点差で1級の2次試験に落ちてしまったときには,「違うアドバイスもできたのでは」と自分を責めたこともあります。
ここで1つ残念なお知らせですが,本コースは単独での利用ができません。
有料コースに含まれるコンテンツとしての利用しかできず,(旧)日常英会話コースだけが目的であったとしても,下記のいずれかのコースに申し込まなければ使えないことは知っておいてください↓
スタディサプリENGLISHの有料コース
もちろん,これら3つのどれも教材としては優秀なのですが,メインコースではなくあくまで付属扱いの本コースを見ず知らずのみなさんに勧めるというのは,やや気が引けてしまうというものです。
かといって,代わりになるものがありませんし,今後短期留学やTOEICを受ける予定がある方でしたら,是非使ってみてほしいと思います。
英語の音に耳を慣れさせることは,早い段階であればあるほど有効です。
スタディサプリと英検対策本の比較
それでは最後に,スタディサプリで対策した場合と市販本(ここでは総合対策教本)を使った場合とを比較してみることにしましょう!
まずは学習内容と価格についてですが,用意されている講座や時間数をまとめると以下のようになります(市販本は英検2級のものとして計算)↓
市販本 | スタサプ | ENGLISH | |
料金 | 1760円 | 2178円 | 2178円 |
動画 | × | ◎ | ○ |
リスニング | ○ | △ | ◎ |
テキスト | ◎ | ○ | × |
2次対策 | ○ | × | ◎ |
※「×=なし,△=不足,〇=対策可,◎=十分に対策可」を表す。
教材内容についてですが,スタディサプリの通常版には動画形式で大変わかりやすい学習コンテンツがあるのが大きな魅力でしょう↓
そして以下は総合対策教本の同一範囲の解説ページになりますが,市販本で学習する場合,このような文章をひたすら読んでいくことになります↓
何が学びやすいかは人によって異なりますが,ビジュアルラーナーに分類される私のようなタイプの人間ですと,カラフルでイラストの多い参考書や動画を好む傾向にあるため,このようなレイアウトでは学び辛いです。
もちろん,文字で読む方が頭に入る人もいるのは確かですし,中には耳で覚える方が良い人もいるようですが,本記事において総合対策教本とスタサプのどちらが優れているかを決めたいわけではないので,その点誤解なきようお願いします。
話を戻しますが,テキスト1つとってみても,筆記対策の語彙や表現のまとめ方に違いがあり,スタディサプリの英検対策講座では重要表現の一覧が,講義の最後にちょこちょこまとめられていますし(竹内先生の講座の場合)↓
以下のような語彙リストもあるので,チェックボックスを使って学習できるのが特徴です↓
スタディサプリのテキストは,購入または印刷することができます。
一方,市販の対策本の場合ですと,膨大な量のまとめを赤いシートで隠しては,定期試験の直前期ばりに猛勉強ができる仕様です↓
気軽にできるスタディサプリの方が多くの方にとって楽しく勉強できる教材であるように感じますが,本番までに時間がなく,もう少しで合格点に届きそうな生徒が「短期間に集中して勉強したい」と相談してきた場合には,対策教本のような一覧形式の方をおすすめしています。
こればかりは本人の状況次第で大きく変わりますので,気になった方はコメントをください。
まとめ
最後に今回の内容をまとめますが,通常のスタディサプリで英検対策を行う強みは,それ専用の対策講座があるだけでなく,通常講座によって英語力の基礎を固められるところだということがわかっていただけたかと思います。
個別具体的な対策が不要というわけではないのですが,それよりも英検に合格できる実力が足りていない方が問題なのです。
市販の対策本を使うと,より短期間での対策が可能になりますが,普段からの積み重ねがあまりない中高生であれば,対策本だけでは根本的な英語力(文法力・読解力・語彙力・リスニング力)の育成が十分にできません。
加えて勉強習慣も身に付いていない方の場合,対策本のレイアウトを見た時点でやる気が失せてしまうでしょう。
1次試験におけるリスニングや2次試験のスピーキングに不安が残るようであれば,スタディサプリENGLISHの(旧)日常英会話コースを利用するのがおすすめで,小中高生向けのものと合わせて初めて英検対策として万全の状態に達するというのが今回の結論です。
学習者の性格によっては,スタディサプリの動画やアプリを用いたトレーニング,楽しいストーリー内容が魅力的だと感じるように思われます。
もちろん,小中高生向けの講座に申し込めば,英語に限らず,他教科の勉強をすることも可能です。
2020年の教育改革以降,英語4技能が注目を集めていますが,それを判定できる民間試験の代表例が英検であることもあって,特に当サイトを利用する中高生であれば,英検のための勉強を頑張ることは将来的にみても決して無駄になりません。
希望した級に見事合格し,入試で有利に事を運びたいと願う方は,数多ある教材の中からいち早く自分に合う教材を見つけ,本番まで頑張れるだけ頑張っては,1次試験を突破することに全力を尽くしていただけたらと思います。
今回紹介したスタディサプリについては,キャンペーンが開催されている場合があるので,以下の記事も参考にしてください↓
ここまで長々とお読みいただき,誠にありがとうございました。