2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されましたが,使用される可能性のある教材については,文部科学省の運営するサイトにおいて,いくつかの有名ソフトウェアや基板そしてロボットなどの教材がまとめられています。
本格的に授業が開始される前の段階から,そういったものを使ってある程度の知識を取り入れておけば,直前になって焦らずに済むでしょう。
また,気に入った教材が見つかれば,例えばプログラミング教室に通わせてみようと思った際に「○○(教材名)が習える教室を探そう」などと選びやすくなりますし,同系統の上位教材を与えるきっかけにもなるはずです。
今回は,プログラミング教材を提供している各社サイトを訪問し,どういった教材がどのような意図で提供されているのかについて理解を深めていきましょう!
小学校のプログラミング教育で使われる教材について
小学校のプログラミング教育について調べるには,小学校を中心としたプログラミング教育ポータルにアクセスするのが一番です。
そこでは実際に小学校で行われているプログラミング教育の事例や使用されている教材がまとめられていて,理解を深めることができます。
ただし,「学習活動の分類」のような意図に関する項目を読み解くのは難しく,実際に個人が真似しようと思っても,企業の協力なくしてできないものも含まれるので,家庭で読む分にはあくまで参考程度に留めておくのが良いでしょう↓
実際は,小学校の教員が参考にする内容です。
とはいえ,個人が参考にできる部分は多く,事例の数は76個の教材は29個(2025年3月1日調べ)なので全部に目を通してもそこまで時間はかかりません。
実践されてから約5年が経ってだいぶ出揃った感がありますが,教材タイプとしては以下のように分類することができます↓
プログラミング教材のタイプ
テキスト言語,ビジュアル言語,タンジブル,アンプラグド,ロボット,ゲーム,その他
このうち,イメージが湧きづらいけれど重要なものは「ビジュアル言語」で,図形や命令が書かれたアイコンやブロックを並び替えるなどしてプログラミングを行うものです。
小学生のプログラミング教育!問題点や中高での学びもにおいて,子どもがプログラミングを嫌いにならないことが重要だと述べましたが,ビジュアル言語は小難しいアルファベットの入力を求められるテキスト言語より好まれる傾向にあります。
とはいえ,複数タイプにまたがる教材もありますし,小学校の6年間を通して同じ教材だけをずっと使う必要はありません。
次章から,プログラミングの教材として有名なものを,システム別に紹介していきましょう!
プログラミング用ソフトウェア
プログラミングの必修化で小学生が使うことになるソフトウェアは,直感的に操作しやすいビジュアル型のプログラミング言語を用いることがほとんどです。
種類は豊富ですが,これまでに使用されてきたソフトウェアの中で特に有名なのは,
- Scratch(スクラッチ)
- Viscuit(ビスケット)
- 教育版マインクラフト
- プログル
- Hour of Code
となります。
多くが無料で使えるので是非試していただきたいと思いますが,ここでは最初の2つを例に,どのようなことができるのか確認してみましょう!
Scratch
- 名称:Scratch
- 提供:MITメディアラボ
Scratchは実施事例がとても多い,標準レベルのソフトウェアです。
新しいソフトウェアが続々登場してきている昨今ですが,これと次に紹介するViscuitを中心に,多くの授業が今後も行われていくように感じています。
主に8歳から16歳向けで,世界規模でみると数百万人規模で使われており,作例の自由度も広いです↓
他人が作ったものを覗いてみると,実際に遊んだことがあるTVゲームに似た作品が数多く並んでいることに気が付きますが,中身をみれば,かなり複雑なプログラミングによって動作していることがわかります↓
ゲームクリエイターやアニメーターになる人の初めの一歩は,こういうところから始まるのでしょう。
なお,実際にScratchを使って,創造力を育んだり論理的思考を学んだりできる小学生向けの動画があるので,是非ご視聴ください↓
Viscuit
- 名称:Viscuit
- 提供:合同会社デジタルポケット
Viscuitは文字を介さずに,自分で描いた絵を動かすことができるソフトウェアです。
Scratchと異なり,パソコンやタブレットの他,スマホでも利用することができます。
早速,公式サイトに行ってみましょう。
「あそぶ」から「やってみる」と書かれた魚の絵をクリックして,次に「+」のマークを押せば準備が完了です。
Viscuitでできることに関して,こちらも指導者向けの動画が利用できるので,以下を確認してください↓
今ではインターフェイスが改善されており,上記動画とは異なりますが,新しいもの用の動画が公式サイトから利用できます。
できることも増え,例えば奥行きが設定できるようになりました。
プログラミング用基板
次章で紹介するロボットと比べると実に味気ないように思いますが,避けて通れないものが基板と言えるでしょう。
小型のコンピュータのようなものです。
教材としては,
- micro:bit(マイクロビット)
- Raspberry Pi(ラズベリー・パイ)
が有名で,先に紹介した教材タイプでは「その他」に分類され,パソコンまたはモニタやキーボードと接続して起動し,パーツの一部として機能させます。
パソコンを自作したことがある方であれば馴染みがある基板(マザーボード)ですが,小学生にとってみれば,すべてが新鮮に感じられるでしょう。
以下はmicro:bitのものですが,パソコンの専用アプリで作ったプログラムを転送すると,音や文字などを表示してくれます↓
その他の機能としては,
- LEDで光らせる
- 光や温度センサー
- 動きセンサー
- 無線通信
などがあり,文字を映し出す単純なものに留まらず,次章で紹介するロボットにも基板は使われています。
Raspberry Piのように,ソフトウェアのところで挙げたScratchやマインクラフトと連動しているものもあり,発展学習または繋ぎの教材として利用されることが多いです。
プログラミング用ロボット
プログラミングがきっかけでロボット研究に目覚める生徒は数多くいることでしょう。
今だと自律型の自動車でしょうか,将来性のある魅力的な分野です。
代表的な教材としては,
- 教育版レゴ マインドストームEV3
- ArtecRobo(アーテックロボ)
が有名で,基本的には,ブロック・センサー・モーターなどを組み合わせてはロボットを完成させ,専用のソフトウェアで起動します。
前章までに紹介した教材の集大成的なものなので,総合的な理解を深めることが可能です。
アイコンを並べるだけでもプログラミングすることができますが,教育版レゴを使う場合,JavaやC言語による制御も可能で,私の塾にもマインドストームにハマっている小・中学生はかなりの数がいます↓
楽しいだけでなく,かなり本格的なプログラミングまで学べてしまうため,この先となると,いよいよプロ仕様のpythonに進むくらいでしょう。
マインドストームはかなり昔からある有名どころなので,多くのロボット教室で学べるはずです。
また,コード・A・ピラーのようにソフトウェアを使わずダイヤルを直接操作してプログラミングできる知育玩具も売られています。
小学校におけるプログラミング教育の実施例
ここでは,学術都市であるつくば市の小学校の例をみてみましょう!
2018年度に実施されたカリキュラムは,上の画像にある計画表に沿って行われました。
小学1~2年生では,文部科学省の「プログラミン」というソフトウェアが採用されています(今ではサービスを終了していますが,Scratchを参考に作られていました)。
懐かしの「スイミー」の1場面から,音読に合う背景をアニメーションにする国語の授業の一環として,1年生の段階から早速プログラミング教育が行われたわけです。
その後,小学3年生から5年生まで,より複雑な「Scratch」が採用され,理社のクイズ作成や図形を描く授業が行われました。
小学6年生になるといよいよ「マイクロビット」の基板を利用し,プログラミングで作動するセンサーづくりから外国語活動まで幅広く用いられることになります。
このように,児童の発達段階に合わせてプログラミングの学習計画が組まれることが普通なので,学年ごとに使う教材は変わっていきますが,別教科の理解を深めるための手段としてプログラミングが用いられていることに留意してください。
例えば,上の小5の社会の授業では,Scratchを扱う技術のみならず,食料品の産地についても理解しておくことが必要です。
また,各教材に慣れ親しむために,一度決めた教材は一定期間使うことになりますが,段階的な積み重ねが必要になってきますので,もしも操作や学習内容の面で一度遅れを取ってしまえばすぐに落ちこぼれてしまうでしょう。
加えて,特に子どもの目には魅力的なロボットのような教材は,学校だと予算や指導が難しい関係で,あまり長くは使わせてもらえません。
特に,人より理解に時間がかかるマイペースな子や発展的な学習を意欲的に学びたい小学生は,学校任せにせず,積極的に自宅学習で補完するようにしましょう。
まとめ
今回は,小学校のプログラミング必修化で使われる可能性の高いソフトウェアや基板,ロボットを中心に紹介してきました。
導入時から年数が経って顔ぶれは落ち着いてきましたが,プログラミングを通して論理的な考え方を身に付けるためにも,小学生が楽しんで学べる教材を選ぶことが重要です。
とはいえ,同じ教材を使っていても教え方一つで授業の楽しさが大きく変わってしまうことがあり,特にプログラミングの初印象が悪くならないように注意したいことから,評判の良いロボット教室やプログラミングスクールに通ってみることも有効でしょう。
例えば,ScratchやLEGOのマインドストームについてはZ会のプログラミング講座でも学ぶことができます↓
私も学んでみましたが,こういったものを取っ掛かりにして,さらにスクールに足を運ぶという流れになるはずです。
さて,学校の実際の授業についてですが,教員側は基本的に自分たちで何かを新しく作り出すよりも,上手くいっている授業例を真似して,自分のクラスに合うように改良していくことが多いように思われます。
ゆえに,今回紹介したような頻繁に使われている教材を用いて学んでおくことが,プログラミング教育の予習段階ではおすすめです。
文科省の教員向け研修用教材のページで,先に紹介したScratchとViscuitが代表例として取り上げられてるので,これら2つは授業のどこかで用いられる可能性が特に高いように思います。
保護者の方で興味がある方は,是非チェックしておいてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。