Z会は自分が高校生だったとき,大変お世話になりました。
Z会出版の参考書(速読英単語や漢文道場など)はもちろん,通信教育(東大生物や共通テスト対策講座)から東大進学教室(旧東大マスターコース)まで,大体のサービスは利用してきたように思います。
それから20年近い年月が流れ,映像授業やAsteriaにみられるようなオンライン教育が新しく加わるなどしていますが,基本的には当時と変わらぬ堅実かつ王道を行くサービスを,今でもZ会は提供し続けてくれているようです。
そこで今回は,そんな「Z会の通信・映像・教室のメリットやデメリット」についてまとめてみることにしました。
サービスごとに,1つ1つみていくことにしましょう!
Z会の通信教育
メリット
Z会の通信教育を利用するメリットですが,
- 取り組みやすさ
- 良質な教材
- 続けやすい料金
の3つが挙げられます。
本通信教育が始まったのは1961年のことなので,すでに60年以上の歴史があることになりますが,添削教材の質がとにかく安定しているのが特徴です。
かなりの量のノウハウが蓄積されてきているのでしょう。
まず1つ目ですが,取り組みやすさは良好で,教材には目標時間が細かく設定されており,明快かつ無駄な問題がありません。
Z会の特徴として,年月が経過しても教材内容が変わりにくいところが挙げられますが,Z会が時代の変化に鈍感ということではなく,最近だと公立の高校生がより効率的に勉強できるようにと,レイアウトを大きく変えてきた大胆さが光ります↓
現在の傾向に併せて,効率さを重視していて,多くのコースで手書きを止めてデジタルへのかじ取りを行ったくらいです。
これにより,データの管理と返却速度が上昇しました。
次に教材の質についてですが,これは「通信教育における生命線」とも呼べるものでしょう。
先の話の続きとして,指導内容があまり変化しないということは,逆にいつの時代にも通じる知識を伝えていることの表れでもあります。
実際,私が当時のZ会から学んだ知識で現在の入試問題を解いているわけですが,合格点を下回ることはありません。
塾講師の視点からみれば,多くの参考書で見かけるような問題だけで構成されていないところが大きな魅力です。
これはつまり,市販の参考書では学ぶことのできない知識を付けられるという意味で,もしもその部分が入試で問われることになれば,他の受験生と確実に差をつけることが可能になります。
実際,MARCH以上の大学でそういった出題がいくつか確認できました。
私は当時,Z会の添削の仕事も並行して行っていたのですが,そこで当たり前のように指導している内容を自分の生徒に尋ねてみたところ,「初めて聞いたよ」という返事が返ってきたわけです。
私の時代は当たり前のようにどの参考書にも出てくる知識だったのですが,今はそういったことを教えないところが多いようで,時代の流れに驚くと同時に,ますますZ会が好きになりました(運良く,私の塾の近くにはまだZ会の教室は進出してきていないので,争わずに済んでいます笑)。
また,以前の主力だった高校生向けのコース以外にも,新しい学習指導要領に沿った内容で,幼児や小学生向けのコースも充実してきました。
詳しくは,以下の記事で紹介しているキャンペーンページなどで確認していただきたいのですが,通信教育だけに料金は比較的安く済み,1科目を1年間使っても数万円で利用できます↓
iPadを用いたデジタル添削の登場は,コストカットにも繋がったようです。
デメリット
そんなZ会の通信教育ですが,自分の学力よりもちょっと上のレベル(大半の人は「標準」で十分です)を締め切り日を守って提出することさえできれば,学力が十分高まるように設計されています。
しかし,その反面,背伸びしてレベルの高いコースを受講してしまって消化不良を起こしてしまう会員がいるのも事実です。
目安として,添削課題で2割も正解できないような場合は,速やかにコース変更を検討してください。
また,添削問題を提出するだけで満足してしまい,復習に時間をかけないことが問題視されています。
学習者が幼児や小学生の場合は,保護者が横で一緒になって指導する必要があるでしょう。
時間の目安としては,1科目あたり週2時間前後となっています(一部プログラミングの講座などでは,1ヶ月で2時間の学習が目安になっているものがあります)。
複数科目受講する場合はその時間が倍々になっていくわけですから,あれもこれもと欲張って取りすぎないことも大切です。
まずは自分が得意にしたい科目をしっかりやり通すところから始めてください。
得意科目を1つでも作ることができれば,それが良いモチベーションとなって他教科の成績も引きずられるように伸びてくるものです。
ちなみに,学校の定期テストが近かったり,部活や行事の関係でどうしても添削答案を締め切り日までに提出できないこともあるでしょう。
その場合,休みの日か長期休暇にまとめてやることになりますが,これ以上Z会の通信教育を続けてもダメだと判断できる基準があります。
それはずばり「夏休みにおける提出状況をみる」ことです。
これほどの長期休暇においても溜まった添削課題を提出することができないようであれば,この先ずっと出せないままでしょう。
夏休みに添削課題を出せなければ,通信教育は向いていません。
このことはしっかりと肝に刻んでおきましょう。
本章の最後に,Z会の通信のメリットとデメリットについてまとめると以下のようになります↓
- 添削サービスが受けられる
- 時代の要請に沿った学習カリキュラム
- Z会の教材でしか得られない知識がある
- 難易度が高めなのでコース選びは慎重に
- 答案をためすぎる場合はやめること
Z会の映像
メリット
Z会において,映像授業というのは通信教育(iPadスタイル)や教室においても利活用されているのですが,当記事における「Z会の映像」はオンライン学習をメインとした受講形態のみを指すことにし,添削や教室での学びは除いた話になる点にご注意ください。
それでは早速,映像授業のメリットについてみていきますが,こちらは「速習できる」点に尽きます。
これはどういうことかと言えば,学校で習ったり参考書を使って独学したりするよりも圧倒的に早く学習できるということです。
膨大な範囲であっても,学校で週に数回しかない授業を待つことなくどんどん学んでいけますし,Z会の実力講師が教えてくれるので,下手すると学校の先生よりもずっとわかりやすく授業を受けることができます。
学ぶスタイルは人それぞれですが,私の塾の生徒をみる限り,文字で学ぶよりも人が語ってくれる方が学びやすいと言う生徒は多いです。
画面越しであっても集中さえできれば,通常の対人授業と効果は変わりません。
本番までに時間が残っておらず,逆転を狙う必要があったり自分から学ぶ必要性を感じたりした際には,映像授業をおすすめします。
なお,料金についてですが,高校生の場合,1年分の講座(150時間くらいの内容)が一括で10万~20万円ほどです。
ちなみにですが,支払いを「分割」にしてしまうと教材を一気に手に入れることができないので,1年分を一括で支払って数ヶ月で全範囲を学んでしまう勉強法が良いように思います。
この他,講習期間に数日間集中的に学ぶような取り方もできるので,苦手科目があったり,またはZ会の教室に通う前の小手調べに受講するのもありでしょう。
デメリット
ところで,上で述べた学習形態で恩恵を受けられるのは,自分でスケジュールを管理できる生徒のみです。
たとえ予定があらかじめ組まれていたとしても,いずれ自分の生活リズムに合わせたスケジュールを独力で決めては管理していく必要があります。
料金については個別指導の塾に通うよりも安く済むためメリットの1つに挙げましたが,Z会の映像では通塾するのと同様,1年を通してカリキュラムが組まれることも多いため,途中で脱落してしまうと高くついてしまう結末も起こり得るわけです。
また,例えば病気で学校を休みがちであったり,能力はあるけれど勉強をこれまで全くしてこなかったような子が一念発起して学ぼうと思った場合においても,真新しさに飛びついて始めるようでは,意欲はすぐに低下してしまうでしょう。
映像授業の性質上,どうしても雑談が少なくなる傾向にあるため,勉強することを楽しいと思えない子の場合は向きません。
勉強の遅れを取り戻す強い意志を持っていたり,授業の進度が遅い学校に在籍している子が恒常的に不満を感じるような環境でなければ,モチベーションの維持がしにくいのがデメリットです。
もう1つ,Z会の映像で成績が上がらない例があるとすれば,それは学力が低い生徒がただただ受け身のまま学んでしまう場合でしょう。
当然のことですが,講師は動画の中にいるので,やるべき宿題をやっていなくても叱られることがないわけです。
どうしても怠けてしまいそうな子は,同じZ会の映像を教材として用いながらも,予習内容の理解を第3者がチェックする「ディアロ」を検討してみるとよいかもしれません(後述)。
本章で述べたZ会の映像のメリット・デメリットは以下の通りです↓
- 速く短期間で学ぶことができる
- 通塾するより安く済むことが多い
- 勉強のやる気の維持が難しい
Z会の教室
メリット
最後は「Z会の教室」についてです。
先述の通り,こちらにも映像授業のコース(対人ではなく,通った校舎で映像授業を見るもの)がありますが,さらに「24時間365日のフォロー」や「スマホ家庭教師」などの独自サービスが付いてきます。
通塾して映像授業を受けるという形態であっても,スタッフに質問ができたり自習室を利用することができるのですが,私のおすすめは対人授業を受けることです。
そもそも,料金が映像と対人の授業で同額となるので損した気持ちになりますし,教室でライバルの存在や講師の視線を意識しながら授業を受けることには,デジタルでは得難い魅力があります。
都内だと優秀な学校の生徒も多く,要所要所でその能力に驚かされることも多いでしょう。
ちなみに,授業の進度は学校より早く,かつ扱う内容が深いので,誰でも超難関大学や医学部に合格できるかと言われればそれ相応の才能が必要ですが,少なくとも高校の1~2年生の間であれば,講師に言われたことをただこなしているだけでもトップクラスの学力に到達することが可能です。
たかが1週間に数時間のやり取りであっても,塾講師というのは生徒に大きな影響を与えることができ,これは通塾することの明らかなメリットと言えるでしょう。
小中学生向けになりますが,教室の数も一昔前と比べてずっと増えました↓
首都圏の小学生対象教室
お茶の水,渋谷,自由が丘,新宿,成城,池袋,大泉学園,三鷹,立川,調布,府中,八王子,町田,横浜
種類も個別指導の形態が選べたりもします(講師が東大生などになるので強くおすすめはしませんが)。
なお,信頼できる先生に出会えたら,ものすごい勢いで勉強にのめりこむことも珍しくはありません。
問題はそういった先生に出会えるかどうかなのですが,私のかつての師匠である鈴木正人先生や荒巻豊志先生がまだ現役で教えられているので大丈夫そうですね。
当時は横浜教室や恵比寿教室,そしてお茶の水教室の3ヶ所を行き来し,終電で帰ることも日常茶飯事でした。
デメリット
Z会の教室に通塾するデメリットとしては「時間に余裕がないといけない」ことと「お金がかかる」ことです。
Z会の教室には集団授業の他に個別指導のサービスもありますが,指導レベルや置かれる環境から考えて,集団授業を取ることを前提に話をしていきます。
こういった通塾スタイルにおいては,欠かさず通うことに加えて予復習をしっかり続けられることが絶対条件です。
無駄が生まれないよう,カリキュラムはきつめに組まれているので,一度休むと抜けてしまう分野が出たり,置いていかれてしまったりする可能性があります。
特に,予復習をせずに授業の時だけ頑張ってもできるようにはなりません。
講師が厳しい先生だと,授業中に発言するよう指名されたり,宿題をやったかどうかチェックされたりもするので問題ないのですが,優しい先生も多いため,ついついサボってしまう生徒もいるので注意しましょう。
最後に,勉強ができるようになるコツについて言わせてもらうと,「一度習ったことを絶対に忘れないぞ!」という強い気持ちで授業に臨むことが大切です。
なお,料金は授業料以外に電車賃や参考書代がかかるので,1科目につき年間25~30万円くらいはかかると思っていてください。
他の大手予備校だと,成績が良い生徒の授業料が半額や無料になることがありますが,Z会ではそういう不公平な話は聞きません。
人気講師の場合は常時満席になるでしょうからできないと思いますが,気になる方は一度体験授業を受けてみてください。
最後に本章の要点をまとめましょう↓
- 講師やライバルから学ぶことが多い
- 欠かさずに通って予復習する必要がある
- 料金が割引になったりはしない
Z会と併用したいサービス
これまでみてきたように,Z会で学んだことを身に付ける努力さえ怠らなければ揺るぎない学力が身に付けられるわけですが,より日常的な問題,例えば,学校のテスト対策としてみた場合に個別対応しにくいという弱点があります。
もちろん,個別教室などもありますが,毎回質問するのではなく,特定の時期に限ってすこし聞きたいようなことも多いので,年間を通して個別にするほどではなかったりするわけです。
また,自分でZ会以外の参考書で学んでみた際,わからない問題に出会ってしまったときにはどう対処すればよいのでしょうか。
そういった場合に備えて家庭教師を付けたり,最近では塾のフォロー専用の塾すらあるくらいですから,いざという時のためのライフラインについて検討しておくべきです。
そこで最近注目されているのが,「Snapask」に代表されるようなオンライン家庭教師のサービスです(スマホで無料で試せるので,是非使ってみてください)↓
回数分のチケットを購入し,分からない問題があったらその問題をスマホで撮って送るだけですぐに回答をもらえるところがZ会のサービスと相性が良く,料金も1回あたり数百円で済みます。
私のおすすめの使い方としては,期間を決めて使い放題サービスを利用することです。
続けて,映像授業のところで触れた「ディアロ」ですが,こちらは映像で学んだ内容を講師にプレゼンテーションで説明して,理解度を確認してもらうサービスが加わっています。
人の手が入る分,授業料はかかってしまいますが,映像授業のデメリットを少なくすることに成功しているのは事実です↓
また,映像授業で月額2千円強で利用できる「スタディサプリ」はZ会の映像の対抗馬になり得る存在ですし,メインをZ会にした場合のフォローや,普段習っていない科目を受講するような使い方分けもできます↓
自分の都合に合わせて複数のサービスを組み合わせたり,使いたい時にだけ使うという学習形態が主流になってきた時代です。
従来の学び方にこだわらず,来たるべき時に備えて早い段階から色々と試しておいては,自分なりの答えを出しておくことが大切だと思います。
まとめ
実際は学年の違いごとに利用法は変わってくるとも思うのですが,なるべく学年関係なく言えることを中心に書いてきたつもりです。
いかがだったでしょうか。
今回紹介した3つのZ会のサービスのメリットとデメリットは以下のようになります↓
- 通信:取り組みやすく,教材はオリジナルで値段は安めだが,復習が甘くなったり,教材が溜まったり,レベルが合わないことがあったりする
- 映像:短時間で網羅的な学習が可能で逆転を狙う際に重宝するが,受け身の態度で動画に集中できないと効果は薄い
- 教室:講師やライバルとの化学反応で爆発的な伸びに期待でき,勉強の楽しさに気づくこともあるが,講師との相性や料金の問題がある
このうち自分に合うものを1つ選んで決めてもよいのですが,「英語は教室に通うが,理社は通信教育で」などと使い分けることも可能です。
最後に紹介した別会社のサービスも選択肢の1つに入れてみてください。
なお,自分が考えるZ会の弱みに「説明がわかりづらく,宣伝が下手」というものがあります。
記事を書くにあたって公式サイトを確認してみたのですが,良いサービスであるのに仕組みがよくわからないところがありました。
とはいえ,教育改革に対する動き出しは早かったですし色々と大胆な試みもしているので,すごく頑張っている会社であることは事実です。
過去に新海誠監督の動画を作ったりしていますし,最近においてもCMを頑張ったりしていますが,思ったほど知られていないのではないでしょうか↓
ちなみに,昔自分が東大マスターコースに通っていた頃,浪人生を対象にした授業が新規開講になったのですが,わずか1年でなくなってしまいました。
現役生が来る時間帯の授業では,満席が当たり前の超人気講師のクラスに生徒が10人もいないという,ある意味生徒からすれば最高の環境ではありましたが,経営的には明らかに失敗だったのでしょうね。
話が逸れましたが,受験を見据えたときに「学校の授業だけではダメだ」と思うことがありますが,その勘は正しいです。
実際に塾で教えている身としては,学校側がもっと頑張って生徒を教育していただけると助かります。
ところで最近は,「成績が悪いのは学校ではなく塾のせいだ」と考える家庭も多いようです。
たかが週に数日塾に来て勉強しても,家にいる時間の方が圧倒的に長いわけで,学力に大きく影響するのが家庭学習であることを強く認識しておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。