「マインドマップ」は様々な使い方ができるツールで,仕事の計画を立てるだけでなく,勉強に役立てることももちろんできます。
早い段階から書き方を学んでおくとより自分のモノにしやすくなるわけですから,それこそ小・中学生の頃から,学校のノートをマインドマップ形式で取ってみることは大変おすすめです。
幸運にも,現在では学校の授業形態も変化しており,昔のようにみんながみんな,先生の書いたとおりにノートを写すようなことは少なくなっています。
自分だけマインドマップでノートを取っていたところで注意されることにはならないでしょう。
私自身,普段のノートは何か特別な理由がない限りはマインドマップ形式で書いていますし,パソコンにもそれ用のソフトが入っていて,実際,当サイトの記事を書く際にも利用しています。
今回は,それほど便利なマインドマップの基本的なルールや書き方について解説し,勉強用ノートの実例なども交えながらみていくことにしましょう!
マインドマップで守るべきルール
マインドマップとはトニー・ブザン氏が発明した思考術のことです。
彼がそれを最初に思いついたのは1960年代半ばとのことですが,2018年にも書き方に関する新刊が出ているあたり,50年以上にわたって洗練されてきていることがわかります。
なお,似たような名前のものとして「メモリーツリー」や「図解技法」といったものもありますが,マインドマップとは異なる独自ルールで書かれていることが多いです。
実際,混同されていることも多いですし,トニーブザン氏が本を書くのはそういった現実を憂いでのことだったりもするわけですが,当記事においてもまず最初にマインドマップを書く際の基本ルールについてまとめておくことにします。
紙を正しく選ぶ
使用する紙から指定があり,無地で白いものを横にして使うことを基本とします。
サイズはA4以上のものが推奨されていますが,大きいものを用意するに越したことはありません。
過去にはなんと600m2もの大作が書かれたこともあるほどです(「書く」と「描く」のどちらがふさわしいか迷う場面もありますが,当記事では「書く」で統一させてください)。
人間,余白があるほどにそれを埋めようとする心理が働きやすくなりますし,背景が白だと他の色が引き立ちます。
なお,まとめたいテーマが多くの情報量を含んでいるような場合であっても,なるべく1枚に収めたいものです。
そうすることで,キーワード同士の繋がりがよりわかりやすくなります。
一見,何の関係もなさそうな単語同士に何らかの脈絡を感じたような場合は,新たなひらめきが生まれるチャンスです。
こういったことがあるので,できるだけ大きい用紙に書くべきだとされているのでしょう。
セントラルイメージは目立たせる
後述するように,マインドマップでは中央部分にテーマを書くところから始めるのですが,それは「セントラルイメージ」と呼ばれます。
このとき,最低でも3色を使って書くようにし,文字を書く場合には立体的かつ印象的にするのが原則です。
マインドマップを書いている最中は,セントラルイメージがやたらと目に留まります。
なので,より目立つようにしておくことで,テーマを見失う可能性が少なくなり,一貫性が保たれるというわけです。
会議でもそうですが,議論が進むにつれ(マインドマップでは末端部分について考えるにつれ),少しずつ話題が主題から逸れたり,新しいアイディアが生まれにくくなったりします。
これは読書をしていても同じで,気が付くと,何について読んでいたのかわからなくなってしまうことが少なくないわけで,そういうときにこそ当初の目的をパッと思い出せることが重要になってくるのです。
一般的に,文字だけで覚えるよりもイメージで覚える方が記憶に残りやすいと言われます。
無意味な単語の羅列として覚える代わりにイメージにすることで記憶しやすくするのは暗記術の基本で,例えば,「青・ブランコ・鹿・リュック・煎餅・プリン・靴下・電車」の8つの単語を覚えるとき,普通に覚えるのは難しいでしょう。
ですが,
青い服を着た子がブランコで遊んでいると鹿が近づいてきました。なのでリュックから煎餅を出してあげましたが,持っていたプリンまであやうく食べられそうになりました。お土産に靴下を買って電車で家に帰りました。
と頭に映像のように残せば,長期間覚えていられるだろうと感じます。
歴史の年号を覚える時に語呂合わせを使ったのも同じ理由でしょう。
キーワードを書き込む
マインドマップは文の形では書き込みません。
ノートを取る際,説明的にくどくどと書いてしまう人も多いでしょうが,それならテキストや資料を読めば良い話ですし,録音したり画像で残すこともできます。
もちろん,もう2度と聞けないという意識に焦らされて,一字一句を聞き逃すまいと殴り書きすることにもそれ相応の価値があるように思いますが,マインドマップ上では詳細はキーワードから想起することにし,あえて省略するのが正解です。
あくまでキーワード(またはシンボル)の形で書くことが重要で,抽象的で曖昧なものであるからこそ,偏見に囚われない自由な発想が可能になるわけです。
そういった意味では,プレゼンテーションのときに用意するメモのようなものに近いかもしれません。
自己紹介用にメモを残すのであれば
- 名前
- 部活
- 趣味
- 挨拶
などと単語で書くことが多いでしょう。
もっとも,これを上から順番に言うようでは思考は直線的になってしまうため,マインドマップが目指す放射思考は実現できません。
いずれにせよ,単語で書いて文は書かないことを徹底しましょう。
ブランチを繋ぐ
ブランチとは英語で「枝(branch)」を意味しますが,マインドマップではブランチを使ってキーワード同士を繋げていきます。
ブランチの上に先ほどのキーワードやシンボルを乗せるのですが,そのときのブランチの長さは,キーワードの文字数に応じたものにしましょう。
ここは変に余白を設けることなくピッタリにしてしまって構いません。
また,セントラルイメージから伸びるブランチごとに色を分けるようにし,1ブランチに1単語または1シンボルというのが原則です。
配置を工夫する
セントラルイメージを中心に置いたら,ブランチを放射線状に広げるように書いていきます。
このとき,中心部分に位置するものほど,印象に残るように抽象的な単語を乗せた太いブランチを書き,末端に行くに従って,具体的な単語を乗せた細い枝になるように意識すると,論理的に思考するのに都合が良いです。
マインドマップにおける見やすさは大きな重要ポイントなので,見映えはたえず意識しましょう。
ひと目で全体を見渡すことができ,色やイメージごとにどのような内容が書かれていたのかを難なく思い出せるのは,マインドマップを使っているからこそです。
似た例として「スパイダー図(イメージマップ)」を以下に示しますが,こちらは色を使うことが絶対視されていません↓
枝の太さにも差が付けられていないですし,単語同士を結ぶために使われています(囲っている丸は同じ太さです)。
このように,マインドマップのルールを知っておくと,他の物との違いがすぐにわかるようになってきます。
それでは次章で,実際にマインドマップを書きながら具体的手順を確認しましょう!
マインドマップを書く際の具体的手順
①中央部から取り掛かる
まずはセントラルイメージを書きます。
A4用紙の場合,縦横5cmが目安と言われますが,先述したように,強く印象に残りかつ創造力に訴えられるよう,3色以上を使い文字は太字にしてください。
②メインブランチを伸ばす
次にセントラルテーマからメインブランチを1つ伸ばし,その上にキーワードを1つ書きます。
ここでは「ルール」と書きましたが,枝は太い曲線にして,目立たせると同時に緩さを出しましょう(次章の画像で確認してください)。
あくまでアナログ的な緩さが大切で,決して機械的にしてはいけません。
③サブブランチを伸ばす
さらにそのキーワードからサブブランチを複数伸ばし,想起されるサブキーワードまたはシンボルを同じように書き足しますが,枝の太さはメインブランチと比べてかなり細いもの(ここでは1本線)にしています。
多少関係がないと思っても,あとになって何が役に立つのかわからないため,頭に浮かんだものはできるだけ書き残すようにしましょう。
使う色はここでは緑にしましたが,別のブランチを書く時は違う色にするのがポイントです。
④充実させる
同じ調子でメインブランチを書き足していきますが,全部で5~6つになるのが理想です。
というのも,人間の短期記憶的には「7つ」の事柄が限界だからであり,充実度と効率を求めた結果が上の数字なのでしょう(もちろん,7でも4でも構いませんが)。
枝ごとに別の色を使う意味ですが,楽しさに繋がったり,右脳に訴えやすかったりする理由があり,色ごとに自分なりの意味付けをしておくと記憶に残りやすくなるのでおすすめです。
これに関しては,後で英語の弱点を書き出すマインドマップのところを参考にしてください。
最後に全体を俯瞰し,ブランチごとに繋げられそうなものがあれば矢印で繋げたり,グループ化したいものを線で囲ってみたりと,仕上げ作業に入っていきます。
もっとも,マインドマップはかいて終わりではありません。
別の日に見直すことで,付け加えられそうなアイディアが浮かぶことも多々あるため,基本的に終わりはないと考えておきましょう。
マインドマップを勉強に用いる
マインドマップは,なにも特殊な職業の人だけが限定的な場面で用いるものではなく,誰でもいつでも使うことができます。
最初だけ一緒になって教えてあげれば,それこそ小学生であっても書けるようになりますし,用途は多岐にわたっており,仕事や勉強はもちろん,人生計画や創造的な作業,はたまた趣味的な内容や本日の献立をどうするか考える際にも役立つわけです。
マインドマップは枚数を書くほどに洗練されていくものなので,日々の生活にできるだけ取り入れるようにすると,どんどんコツがわかってきます。
1日に行うべきToDoリストや1週間の予定表を書く際にも使用すれば,マインドマップに触れる頻度を増やせるでしょうし,私は最初,英文法の不定詞とか関係代名詞などの単元ごとにマインドマップを書き,書く枚数を重ねるようにしました。
とはいえ,楽しくて面白いと感じたときにこそ最大の効果を発揮するものですので,無理してまで書く必要はないと思います。
勉強目的でマインドマップを使う場合,いくつかの用途が考えられます。
すぐ上で授業ノートを取ることについて言及しましたが,マインドマップ形式で書く人は周りにそういないでしょう。
とはいえ,ただ箇条書きにして書くようなものとは異なり,自分で頭を使いながら,今先生がどの話をしているのか考えながら,ブランチごとに書き分けていく作業を強いられるわけですから,脳内では大変高度な知的活動が行われています。
糖分や睡眠時間が足りないと眠くなる可能性がありますが,飽きずにいられることの方が多いでしょう。
学校の授業が退屈だから絵を描いていました
と告白する生徒の話をよく耳にしますが,マインドマップの作業自体に同様の作業が含まれているのは特筆すべきところで,しかもそれは暗記の手助けにもなるわけです。
マインドマップを書くことで論理的かつ創造的な思考を獲得できれば,それは21世紀を生き抜くための力にも繋がるでしょう。
様々な理由から,学校で書くのはちょっとと言う方は,家で授業内容をまとめる際に使ってみると良い復習になります。
社会の勉強法は?チェックペンの使い方やまとめノート術もで語った内容のことです。
小中学生の場合,学校で学んだことをマインドマップにして家族にプレゼンテーションしてみるのはいかがでしょうか。
長期休暇を利用すれば,自分の弱点分野を分析する際に利用することができ,例えば英語でマインドマップを書いてみると以下のようなものが出来上がります↓
これは,夏休みにそこまでに教えた範囲の総まとめテストを行った際の反省として,生徒に作らせたものです。
上のマインドマップでは5色を使いましたが,この色の通りにノートや本文を同じように色分けしていく(青色で前置詞,緑色で指示代名詞をチェックする)ことで,今後の学習においてより一層の注意を払うことができるようになります。
このような勉強法に興味がある方は英語ノートの作り方の記事も是非お読みください。
受験生であれば小論文が試験に含まれることもあるかと思うので,マインドマップを使って話の流れを考えてみると良いでしょう。
マインドマップは書き終わったあとに俯瞰できるところが優れていて,下書き段階で用いれば,漏れや重複がないかの確認ができて便利です。
マインドマップを書く際に役立つグッズ
最後に私がマインドマップを書く際に重宝しているグッズをいくつか紹介しましょう!
トリプラス
ステッドラー社のトリプラスは滑らかで細い文字を書くことができます。
太い字にしたり塗ったりするには向いていませんが,勉強に使う場合は情報量が多くなることが多く,この太さがぴったりで,色数も黒を除くと9色で発色も良いので使いやすいです。
蓋を折り曲げるとスタンドのようになって取り出しやすくなるため,集中を妨げません。
私は生徒用に10色のものを用意し,自分は20色用のものを使って指導しています。
美術の成績が良い子の場合,多くの色から選べる方を好むので,後者の方を買ってみるのも良いかもしれません。
トリプラスの特徴として,
- 持ちやすい三角形をしている
- キャップをし忘れても2日間ならいつでも書き出せる
- 水性なので服に付いても洗い落とせる
ところが優れているように思います。
ニーモシネ
maruman社のニーモシネはまさにマインドマップを書くために存在しているといっても過言ではないコンセプトのノートで,「書くこと,考えることが仕事を創造的にする→」というキャッチコピーが気に入っています。
ちょっと高級なので学生が使うのには贅沢かもしれませんが,アイディアにはそれだけの価値があると思う方におすすめで,ストレスなく書くことができ,用紙をミシン目に従って切り取れるところも使いやすいです。
発売当初は廃番にならないか心配していましたが,もう10年近く使い続けています。
おすすめは上に示した「特殊無地のA4」で印刷用紙だと使うペンによっては透けたり滲んだりしますが,ニーモシネは良質な紙を使っているので問題が生じません。
管理するという観点からみれば,日付やタイトルが記入できるところも優れています。
私は,授業を行った後にこれにその日の内容をまとめて生徒に渡すことが多いです。
xmind
xmindはこれまでの文房具とは打って変わって,パソコンのソフトウェアです。
私はシンボルや色をほとんど付けずに使ってしまっているので,今回紹介した原則に従えばマインドマップにはなっていませんが,かれこれもう10年以上使っていて,その扱いに関しては手慣れたものです。
例えば,コメントを挿入して,思いついたことはそちらにその都度残しておく使い方をしていますし,旗などのマーカーの色を変えることによって,重要度や緊急度を区別することができます↓
すぐにブランチを追加することができ,デジタルなので配置を移動するのもドラッグ&ドロップで簡単です。
とはいえ,マインドマップではデジタルらしさはあまり好まれないので注意してください。
料金は有料版もありますが,私はずっと無料版を使っています。
まとめ
以上みてきたように,マインドマップは勉強も含めて,多くの作業の効率を高めてくれる画期的なノート術です。
今回の記事を書くにあたって,トニー・ブザン氏の「マインドマップ最強の教科書」を参考にしましたが,他の著書も日本語版のものはほとんどすべて持っています。
同書には今回紹介した内容よりもずっと詳しいことが書かれているので,是非読んでみてください。
また,薄めの書籍(「マインドマップfor kids」など)は学生が読むのに最適です。
一般的に,マインドマップでは20分を目処に一区切りとすることで,集中力を高いレベルで保持できると聞きますが,今回具体的に示したものもその時間内に収まりました。
普段私が愛用しているグッズとしてはソフトウェアまで紹介しましたが,マインドマップを書く目的のものとしてはAyoaが有名で,こちらは個人というよりかは企業が導入している方が多いように思います。
マインドマップは知る人ぞ知る勉強ツールではありますが,最近だと学校で習うところもあるようです。
いずれにせよ,すでに「マインドマップ」というキーワードにたどり着いたみなさまだけに,是非ともこれから本腰を入れて鍛錬に励み,生涯使える思考ツールとしてあらゆる場面に生かしていただけたらと思います。
さて,最初の方で例に挙げた8つの単語をまだ覚えているでしょうか。
青い服を着た子どもの話です。
もしも覚えていられたのでしたら,イメージで記憶することはあなたにとって有効だということに他なりませんん。
そして,私の日々の生活においてマインドマップが役立つ場面はとても多いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。