大学入試にTOEICを活用したい高校生が知っておくべきこと

社会人が受けているイメージの強い「TOEIC」という試験ですが,2020年の入試改革の際には大学入試英語成績提供システムへの参加表明がありました。

ですが,後述するように,参加申し込みを真っ先に取り下げる運びとなり,さらにその後,英語成績提供システム自体も見送りになってしまったことは,大学受験に携わる人間であれば今でもはっきり思い出すことができるでしょう。

とはいえ,TOEICが大学入試に使えないわけではありません

これまで通り,総合型選抜や一般入試を有利に進めていくために用いることができます。

ここでは,2020年度以降,TOEICがどのような形で大学入試に使われているのか,最新の情報をまとめてみることにしましょう!

TOEICと英語成績提供システム

技能のイメージ

2018年3月,TOEICの大学入試英語成績提供システムへの参加が認められました。

TOEICは元々,参加することを希望していたわけです。

もちろん,それ以前からTOEICを大学入試に活用することは可能でしたが,2020年度からは,より大規模に用いられるという話になり,いよいよその実施日が近づくにつれ,多くの人の視線が新システムに向くようになります。

それが,2019年7月に以下のプレスリリースが公表となり,多くの受験関係者が驚きました↓

本システムへの社会的な要請が明らかになるにつれ,それらに対応するためには,受験申込から,実施運営,結果提供に至る処理が当初想定していたものよりかなり複雑なものになることが判明してまいりました(~中略~)これ以上意思決定時期を遅らせることで,受験者の皆様をはじめ,保護者,学校関係者の皆様にご迷惑をおかけしないように,当協会といたしましては,「TOEIC L&RおよびTOEIC S&Wの大学入試英語成績提供システムへの参加申込を取り下げる」との判断に至りました。

引用元:「大学入試英語成績提供システム」へのTOEIC® Tests参加申込取り下げのお知らせ

上記内容を補足すると,通常「TOEIC」といえば,600点とか750点といったスコアで語られるテストを思い浮かべますが,それはListening & Reading Test(L&R)のことを指していて,「聞く」と「読む」の2技能しか測れなかったわけです。

しかし,2020年以降の入試では英語の4技能をバランス良く養成することが求められるようになったため,大学入試英語の成績判定に用いられるテストは,L&Rだけでは不十分でした。

そこで,残りの「話す」と「書く」能力を測れるSpeaking & Writing Tests(S&W)も一緒に受けることで,これを解決できるという話になったのですが,L&RとS&Wが別々に実施される点が,大学入試センターとの協議を難航させてしまったようです。

平等性を期すためには,同一タイミングで行われるべきであり,受験しやすいように料金や会場の場所も考えるべきだとなると,元々の実施回数が年10回のL&Rと年24回のS&Wでしたし,S&Wの受験地が全国主要都市のみだった点などが仇となりました。

なお,料金についても高額で,L&Rの受験料は7810円ですが,S&Wに至っては10450円もかかります。

つまり,英語のテストだけで計18260円がかかることになり,これは大学入学共通テストの18000円(3教科以上受験で成績通知を希望しない場合の料金)と同等ですし,英検S-CBTの9000円(2級の場合)と比べると,特に割高であることがわかるでしょう↓

なお,S&Wでは受験者が回答した音源をアメリカのETSに送り,そこで複数の試験官が採点するなどと手間がかかっているため,値段はそれでもギリギリと聞きます。

日本の運営元であるIIBC(一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)が「今後,大学入試目的で受験する方が増えると,それに対応するための費用は増加し,厳しい状況が続く」と語っていたことからも,あまり期待できそうにはありませんでした。

そういったことも影響して,社会的な「受験しやすさの基準」を満たせそうになかったのだと思われます。

なお,比較に用いた英検であっても,2018年に比べると3000円以上値上げしていますし,試験会場や試験官を手配するための費用は年々増加傾向にあり,最近はコロナ禍も相まって実施がより難しくなっているのは確かです。

 

 

大学入試に利用できるTOEICテスト

TOEICを入試に活用できる大学(2020年度)

これは2020年度の大学入試で,TOEICスコアを活用している大学の数を示したもので,調査した769校のうち,約43%にあたる333校がそれに該当していました(引用元:TOEICの大学入試の活用状況)。

自分が受ける予定の大学が実際のところどうなっているかについては,最新の受験要項で確認する必要がありますが,大学入試で使われる可能性の高い「L&R・S&W・TOEIC Bridge L&R」という3つのテストについて以下にコメントしておきましょう。

「L&R」は最も有名な,まさにTOEICの代表格で,普通TOEICと言えばこれを指します。

他2つのテストと比べると,受験者の数が圧倒的に多く,その理由は社会人の英語力証明に使われているところが大きいのですが,大学入試においてもこのスコアを活用できるところは多いです。

なお,内容は2時間ぶっ通しでリスニング100問とリーディング100問の計200問を解く過酷なテストとなっています。

次の「S&W」はコンピュータを使って受けるテストで,スピーキングではヘッドセットを使って自分の声を吹き込み,ライティングでは英文をタイピングして入力するのが特徴です。

指定されたテストセンターで受けますが,最初の20分でスピーキングを,後半の1時間でライティングを行い,途中に休憩はなく,用意ができた人から順に受けて早く終わった人から帰って行きます(集合時間は決まっています)。

かなり特殊な試験ですが,最近では英検S-CBTも似た方式を取るようになっていますし,L&RとS&Wの両方を求める大学の数は今後より増えていくでしょう。

最後の「TOEIC Bridge L&R」は,通常のL&Rよりも試験内容は簡単で,初・中級者の基礎的な英語能力が測定できるTOEICの弟分みたいな存在ですが,扱うテーマがビジネスシーンではなく,日常生活に寄った仕様となっているところが特徴的です。

導入している大学の数こそ少ないですが,実は大学入試向きのテストだと言えるかもしれません。

リスニングを25分で50問,そしてリーディングは35分間で50問を解き,計1時間100問になりますので,長さ的にもより受けやすく,S&Wのテストもあります。

 

 

TOEICの大学入試での活用例

複数の部屋と扉

TOEICのスコアは生涯有効であるため,高校生の間に試験を受けたとしても,大学生になってからの就職活動にも使うことができます。

将来的な役立ち度でみれば,高校生の段階から勉強し始めたとしても決して無駄にはなりません。

ここでは,大学入試においてTOEICにどのような活用方法があるのかみていきましょう!

総合型選抜や学校推薦型選抜に使う

総合型・学校推薦型選抜と基準となるTOEICスコア

大学に入っても,TOEICが単位として認められるところもあるほどですから,総合型選抜や学校推薦型選抜にTOEICを活用できる大学があることは想像するに容易く,判定の際に有利に働いたり,出願資格に使われたりします。

基準点の例としては,「L&Rは500~650点(立命館大学),S&Wは240点(上智大学),Bridge L&Rは85点(杏林大学)」程度のところが多いです。

しかし,英語に力を入れている大学の場合ですと,L&R+S&Wの合計が1200点程度のスコアを要求する大学も出てくるなど,全体的に高くなっています。

 

一般入試

明治大学の一般入試と基準となるTOEICスコア

最近では,高いTOEICスコアを持っていると,一般入試で英語が免除になったり,英語の得点に加算されたりするようになりました。

もちろんそれ相応のスコアが求められることにはなるのですが,大学によっては総合型選抜ほどのスコアを要求されることなしに英語の試験を免除にしてくれるところもあるため,より多様な戦略が取れるようになったと考えておきましょう。

なお,スコアの例として,L&Rが560点以上(青山学院大学)のところがあった他,Bridge L&Rが94点以上(玉川大学)のところもありましたが,一部においては上の明治大学のように1100~1200点程度の高いスコアを要求されるところもありました。

 

 

まとめ

勉強道具が散在する机

以上,大学入試英語成績提供システムについて触れた後,3つのTOEICテスト(L&R・S&W・TOEIC Bridge L&R)がどのような形で2020年度以降の大学入試に活用できるかについてまとめてきました。

最後に,今回紹介したそれぞれのテスト内容について,実施概要を箇条書きにしたのでご確認ください。

まずはL&Rテストについてです↓

  • 年13回(都市によっては未実施月もあり)
  • 全都道府県で実施
  • 受験料は7810円(個人受験の場合)
  • マークシート方式(PBT)
  • 時間はリスニング45分,リーディング75分の計120分
  • スコアはどちらも5~495点の5点刻み

続けてS&Wについてですが,

  • 実施は年24回(毎月実施,午前と午後が選べる)
  • 受験地は主要都市
  • 受験料は10450円
  • テストはパソコンを用いたCBT形式
  • スピーキングが20分,ライティング60分の計80分
  • スコアはどちらも0~200点の10点刻み

のようになります。

TOEIC Bridge L&Rについては以下の通りです↓

  • 実施は年4回
  • 受験地は全国13都市
  • 受験料は4950円
  • マークシート方式(PBT)
  • リスニング25分,リーディング35分の計60分
  • スコアはどちらも15~50点の1点刻み

なお,大学入試英語成績提供システムの見送りにより,共通テストにおいても,民間の資格・検定試験ではなく,大学入試センターが作成した英語テストの方をしばらくは利用していくことになります。

共通テストについて詳しくは,大学入学共通テストとは?センター試験と何が違うのを参照してください。

-入試改革

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スタディサイトの管理人

某通信教育での添削や採点業務に加え,塾や家庭教師の講師歴は20年を超えました。東大で修士号を取得したのははるか昔のことですが,共通テストやTOEICの結果を見る限り,まだまだ学力は維持できています。小学生から高校生まで通じる勉強法を考案しつつ,副教材として使うスタディサプリのユーザー歴は5年以上となりました。オンライン上のやり取りにはなりますが,少しでもみなさまのお役に立てたら幸いです!