学習指導要領

教育現場でのICT環境の現状について

2020年の8月,文部科学省のHPで最新の「学校における教育の情報化の実態に関する調査結果」が発表になりました。

教育現場におけるICT(情報通信技術:Information and Communication Technology)の環境については,2020年度の教育改革の目玉となるテーマの1つでもあり,21世紀型の新しい学習の成否に直接影響を及ぼす力を秘めています。

今回はそんな,学校におけるICT環境の現状について,

  1. 学校におけるICT環境の整備状況
  2. 教員のICT活用指導力

の2つの面からみていくことにし,どのような態度でこれからの教育改革に向かい合っていくべきかについて考えてみましょう。

ICTを用いた学びについて

ICT環境の整った教室

ICTは学校において「一斉学習・個別学習・協働学習(アクティブラーニング)」といった3つの学びに活用することができます。

ここでは本題に入る前に,ICTを活用した指導がどのようなものとなるのかについて学んでおきましょう。

一斉学習

一斉学習とICTの関係

ICT環境の整った中での一斉学習では,実際に教師が実演した様子を電子黒板や子どもの持つ情報端末上に映したり,カメラで動きを連写したものを使って説明することが可能です。

後者であれば,例えば体育のときの一連の動きであったり,物を放り投げた後の動きであったりをスロー再生するなどが挙げられますが,「圧倒的な情報量」という点でICTの強みが生かされることが容易に想像できます。

余談ですが,以前TV番組で,前方に進むトラックの中から後方にボールを投げたときに,その速度が同じだと空中に止まったように見える様子を実験していましたが,まさにLIVEで子どもたちの前で実演できれば,彼らに与える影響もそれだけ大きくなるでしょう。

個別学習

個別学習とICT

ICTは個別学習においても有効です。

1人1人の習熟の度合いや誤答の傾向といったデータを蓄積し,搭載したAIがそれを分析することで,各自に応じた課題を提出するようになりますし,学習ペースも本人に合わせることができます

いわゆる個別最適化学習になりますが,最近では一般家庭向けにも提供されるようになってきました↓↓

また,PCなどを用いて発音を録音したり,書いたものを入力して残すことができるので,あとになってからの自己評価が容易になります。

もちろん教師自身が,集めたデータを有効利用することも可能になるはずです(宿題をやっていないけれど家に忘れたことにするといった,昔流の言い訳は残念ながらできなくなります)。

これは例えば英語の資格試験でスピーキングやライティングの採点にこれまでも用いられていましたが,それが普段の学校での学習に導入されるという点で大きいのでしょう。

オンライン英会話を始めとする新しい学習スタイルが,これからは学校という場においても積極的に取り入れられていくこととなりますが,最近はネイティブ講師を画面の向こうに置いて,英検の面接対策を行った学校がニュースに取り上げられていました。

アクティブラーニング

アクティブラーニングとITC

インターネットを使った調べものやプレゼンテーションの練習については,大学で本格的に学んだ方も多いでしょうが,これからは高大接続ということで,より早期のタイミングから行うことになりそうです。

グループごとに役割を分担し,情報端末を用いて同時並行で作業する,いわゆる「シェアワーキング」もアクティブラーニングの中に含まれます。

最近ではドラマで流れるような曲を作る際にもこのような形式が取られているように聞きました。

働く場所や時間を選ばないというのは,新しい仕事形態の1つでもありますね。

グループで協働作業することで,1人では得られないアイディアが浮かぶということも,多くの方が経験してきたことではないでしょうか。

実際の例としては,以下の記事も参考にしてください↓↓

 

ICT環境が整った学校とは

それではいよいよ,学校におけるICT環境の整備状況からみていくことにしますが,何をもって状況が良いとみなすのかについては,コンピュータや電子黒板,無線LANといった各種電子機器の整備率が重要になってきます。

ここでは理想と現実の間にどのくらいの乖離があるのかまとめましょう。

生徒1人あたり1台のコンピュータが用意されている

前章に挙げたようなICT学習を行うためには,学習デバイスとしてコンピュータが考えられます。

ここでいうコンピュータというものは,「平板上の外形をしていて,タッチパネル式の表示と入力ができるもの」を指しますが,タブレットの代表となるiPadなどを考えてみても,昔に比べてだいぶ安くなってきているもののまだまだ高額です。

現在の学校(公立の小学校から高等学校までを調査しています)では,生徒1人当たりにどのくらいの台数のコンピュータが用意できているのでしょう。

発表になったデータによると,現状は「1台のコンピュータを約5人で使う」ようです↓↓

コンピュータ1台当たりの児童生徒数

とはいえ上の数字は,学年がごちゃ混ぜでの数字で,詳しくみると小学校では1台を5.5人で使うということで多く感じますが,中学(4.8人),高校(4.1人)といった具合に学年が進むにつれて多少改善されているようです。

3年前から比べると,数字にして1人減った感じですが,それでもまだまだ十分な量が用意されているとは言えません。

教育改革がこれだけ騒がれている世の中においても,一気に整備が進んできていないことを考えると,コストや授業負担などの問題で,簡単に導入するには至らないのでしょう。

しかし,やはり理想は1人1台タブレットを持てることです。

もちろん複数人で教えあって使うことにも独自の授業効果はあるのでしょうが,やはりトータルでは得られるものは少なくなります。

「多くの人と1つのものを共有する」ということは,一人当たりの学ぶ機会がその分少なくなることを意味するからです。

例えば,世の中の塾においてマンツーマンレッスンの方がグループレッスンより安いのもそういう根拠があるからですし,大学で有名な教授がいる研究室であっても,彼が指導する生徒が10人もいるようでは,1人1人に手をかける時間が不十分となり,成果が上がらないという話もよく耳にします。

もっとも,授業時間をズラすなどして工夫すれば,1人1台使えていることになるので,厳密にこの数字が「1.0人」になる必要はないでしょう。

とはいえ,「すぐに3人に1台にはなる」などと言われていた時からすでに3年が経ちました。

コロナの影響で状況は加速するかもしれませんが,いずれにせよ,自宅に持ち帰ることができるコンピュータが学校から与えられないとなると,「学校はあくまでやり方を教わる場所」と考え,自宅での練習用タブレットについては別途用意する必要があるように思います。

大型提示装置と無線LANが完璧に整備されている

電子黒板は,教員が教材を提示するために使われます。

黒板と異なり,写真を拡大して見せたり,音声や動画も表示できるのが強みだといえるでしょう。

iPadのレビューを見ていると,教員の方が,実際の授業に(電子黒板などの投影用などで)使う予定だという方も見受けられますし,カラフルで刺激的な画像などは,子どもの興味や関心を高めるのに役立ちます。

2年前までは電子黒板の整備率を調査していましたが,今はプロジェクタやデジタルテレビも含めた「大型提示装置」の整備率を調査するようになりました。

そのため,データをこれまでとつなげて評価することはできませんが,大体数字を2で割ったくらいでしょう。

少しずつ増えてきてはいるようです↓↓

普通教室の大型提示装置整備率

大体教室の6割が備えているようですが,これよりもまずはタブレットの導入の方をもっと進めてほしいですね。

普通教室における無線LANの整備率はかなり改善され,最近は5割程度(5年前の2倍)になってきましたが,学校内でみればWi-fi環境はほぼ全校に(9割)備わっており,実際にICTの授業に支障が出なければ問題ない整備率だと思います。

教員側のパソコン普及率については,1人1台は2011年頃からすでに実現されていますので,職員室にはWi-fi環境はほぼ間違いなくありそうです。

どのようなICTを使った授業をするのかわかりませんが,100Mbps以上の超高速インターネットは77.8%の学校に整備されており,30Mbps以上に限ってみれば96.2%となっており十分でしょう。

 

ICT環境を生かせる教員の質とは

さて,ここからは,教員のICT指導能力についてみていきましょう。

教える側が「コンピュータが苦手」などとは,冗談でも言えない時代になりましたからね。

厳しくみていきたいです。

文部科学省の本調査においては,教員のICT活用の指導力を,

  1. 教材研究・指導の準備や評価・校務にICTを活用する能力
  2. 授業にICTを活用して指導する能力
  3. 生徒のICT活用を指導する能力
  4. 情報モラルなどを指導する能力

の4つの点から調べています。

Aは,教育効果を高めるための計画ができるか,ネットやCD-ROMでの情報収集に加え,プレゼン能力やデジタル独自の評価ができるかが問われました。

ネットや校内ネットワークを活用し,必要な情報の交換や共有化を図る能力もこちらに含められています。

学校に通わせる親の身からすれば,どのような様子で学校生活を送っているのか気になるところですし,教員間での情報共有も親身な対応には欠かせません。

Bでは,資料を効果的に提示でき,生徒の興味・モチベーション・理解を助ける工夫ができるかを自己評価します。

CとDについては後で考えることにして,まずは結果を見てみましょう↓↓

教員のICT活用指導力の状況

ちなみに3年前の結果と見比べると,Aは増加,Bは75.0%からの減少,Cは66.7%からの増加,Dはほぼ同じ値となっています。

Bは教員自身とても関心が高そうに思っていたのですが,意外でした。

Dは昨今ニュースで騒がれていることもあり,相変わらず徹底されているように感じます。

色々な権利(肖像権や著作権など)や常識に加え,犯罪に巻き込まれない立ち振る舞いや個人情報とセキュリティーについても深く学ばなければいけませんが,最近はそういったものの目をかいくぐるような事案が次から次に出てきています。

どちらかというと悪いことをしている側(大体は大人)を教育すべきで,子ども側には罪はないんでしょうけれども。

なお,Cの調査の質問としては,以下のようなものがありました↓↓

児童生徒のICT活用を指導する能力

この質問は教員に対してされたものですが,逆に生徒側の目線になってみれば,以下のような能力がICT環境においては求められることになることがわかります↓↓

  • コンピュータの基本操作を覚える
  • ネット上の情報を取捨選択できること(ネットリテラシー)
  • ワードやエクセル,パワーポイントを上手く使える
  • 意見交換や話し合いにコンピュータやソフトウェアを活用できる

家庭教育での参考にしていただけたらと思います。

 

まとめ

以上,教育現場におけるICT環境の現状と今後の課題についてでした。

2020年度はコロナの時代となり,不本意ながらICTの整備も急速に改善しつつあります。

これまでに明らかになった,タブレットの導入の限界や,新しい学びの形ゆえの指導に関する難しさがこれで大きく解決の方向に進むとよいのですが。

ちなみに今回紹介した調査結果については過去のものも含めて,以下のページで確認することができます↓↓

教育予算上の問題は大きいこともありますし,生徒の日常においては,学校の授業時間より自宅で過ごす時間の方が長いわけですから,前章の調査で指摘された内容をもとに,多忙な日常の合間を縫っては,子どもが自分1人でICTを扱えるように学んでいってほしいと思います。

特にスマホゲームやSNSなどの悪い面ばかりが強調され,ICTの効果を信じられない人がたくさんいる時代ですが,ICTで育った子どもたちが周りを納得させる結果を出していけば,周りの見る目も変わってくるでしょう。

現に将棋の藤井聡太さんの活躍で,AI相手に将棋を学ぶことが見直されたように思います。

そういったところにこそICTの大きな可能性は眠っているわけですので,最初から目を背けずにまずは挑戦してみてほしいですね。

もちろん教員だけでなく,生徒や保護者も含めて協力していくことが大切だということもお忘れなく!

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スタディサイト管理人

都内の塾運営にかかわってから,講師歴も15年以上になりました。小学生から高校生まで学校の定期テストから大学入試まで幅広く教えています。最近の関心事は「教育改革」で,塾に入ってくる情報に加え,セミナーや書籍,信頼のおける教育機関より得た情報をWebにまとめてみました。ネットを介したやり取りにはなりますが,少しでもみなさまのお役に立てたらと思います。
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