学習指導要領 教育改革

PISA・TIMSS型能力とは

学力調査というと,日本で毎年行われる文部科学省による全国学力調査が有名ですが,世界的な規模で子どもたちの学力を測る調査としては大きく2つが知られています。

1つはTIMSS(ティムズ)と呼ばれ,もう一つはPISA(ピサ)と呼ばれる調査です。

今回はその2つにおける,日本の中学生の学力の国際的な順位の移り変わりと,今後社会に羽ばたく子どもたちにどのような能力が世界標準として求められるのか考察していきたいと思います。

TIMSSとPISAって何??

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TIMSSとは Trends in International Mathematics and Science Study の略で,日本語では「国際数学・理科教育動向調査」と呼ばれているものです。主に小学4年生と中学2年生を対象にした調査になります。

簡単に言うと,学校で習った理数内容をどのくらいマスターできているかを調べるテストです。純粋なテスト以外にアンケートも行われ,理数科目が楽しいかどうか,役に立つと思うかといった意識も調べられます。

基本的には学校の成績が良い人ほど点が取れる問題で,科目は名前にある通り数学と理科の2科目で,4年ごとに行われます。

TIMSSの問題例

次にPISAについてですが,Programme for International Student Assessment の略で,「国際学習到達度調査」と言われています。経済協力開発機構が3年ごとに行っていて,15歳が対象となっています。

こちらは学校で習った能力(知識や技能)をどれだけ現実の生活に応用して役立てられるかを評価するテストで,主に読解力・数学力・科学力が問われます。2015年は科学的な能力がメインのテーマとなっていました。

PISAの問題例

どれも実際に頭を使って考えなければいけない問題ばかりで,応用力が問われるのがわかります。

 

 

学力調査と日本の順位

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それでは,TIMSSにおける日本の中学生の順位がどのように変わってきたのかみることにしましょう。1999年から4年ごとに,2015年までの調査結果を並べてあり,

  • 【数学】5位→5位→5位5位5位
  • 【理科】4位→6位3位4位2位

となりました(赤字や青字は後で説明に使います)。

そして次にPISAの結果です。こちらは2000年から3年ごとのデータを記載しており,最新は2015年の結果となっていて,

  • 【数学力】9位→6位→10位→9位→7位→5位
  • 【科学力】2位→1位→5位→5位→4位→2位
  • 【読解力】8位→圏外→圏外→8位→4位→8位

となります(圏外というのは11位以降を表します)。

さて,2003年頃からゆとり教育が開始されました。「ゆとり教育」と聞くと,勉強しない子供を量産してしまった愚策のように思えるかもしれません。ですが,ゆとり教育というのはそもそも,従来の詰め込み教育に反する考え方であり,受け身かつ詰め込み学習的な授業を減らし,能動的かつ自律的に学ばせようとする教育システムです。

つまり2020年の教育改革と同様,「PISA型の能力を上げよう」とする試みであったことは忘れてはいけません。

ですが,その目論見が結果を残せなかったことに問題があります。上の順位で赤字にしたところは,ゆとり教育を導入して3,4年後の結果となっていますが,TIMSSの理科の能力が上がった以外は順位を落としているのがわかります。肝心のPISA型能力が悪化してしまったことは特に問題視されました。

そのような経緯があって,この結果に危機感を覚えた政府は2011年から「脱ゆとり教育」を開始することになったわけです。導入して4年後の調査結果は青字で示しましたが,おおむね学力平均は回復してきたことがわかります。特に科学力(科学リテラシー)においては過去最高を記録しました。

ちなみにアンケート結果も含めてわかってきたこととしては,以下のようなものが挙げられています。

  • 男の子の方が女の子よりも,科学を学ぶのは楽しく,理科の学習が将来の仕事に役立つと思っていること
  • 理科の勉強が楽しいと思う子の割合は18%と,国際平均の44%に遠く及ばないこと
  • できる子とできない子の差がはっきりと2極化していること

こういった事実は,周りの大人が知っておくだけでも,子どもへの意識は変わりますよね!

 

 

TIMSSとPISAの結果から言えること

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これらの2大調査の信頼性は高いものですから,順位を大きく下げ続けた2003年~2011年頃の「子どもの学力低下問題」が大いに世間を賑やかしたことは当然であるように思います。脱ゆとり教育がひとまずの成果を出してよかったですね。

ここでゆとり教育についてもう一度考えたいのですが,実験などの体験型学習を増やしたり,子どもに自分で考えさせる時間を設けることは大いに評価できることです。しかし,それが成績に表れるためには大変な努力が必要だったように思います。

実際子どもに勉強を教えていると感じますが,子どもが「自分で学びなさい」と突然言われても,どうしていいかわからないでしょう。それになんといっても,現場で教える大人自体が詰め込み教育で育ってきてしまったわけですから,いかにマニュアルを読んでもうまく実践できないわけです(人は自分が体験していないことは教えられないのがほとんどですから)。

そしてそのマニュアル内容もどこか外国の実践例を元にしており,国内での日が浅ければ現場でのノウハウの蓄積もなかったことでしょう。いきなり指導して結果を出すには期間が短かったとも考えられます。

そのような経緯もあって,結局子供は勉強時間が減って遊べる時間が増えたように感じるわけですが,その空いた時間で何をしたのでしょうか。自然と触れ合ったり,自分の興味を広げられるような場に行って知的好奇心を刺激するような行動が取れるのでしょうか。

世の中をみれば,そこら中が生産性のない遊びでいっぱいです。望んでもいないのに,「これをしなきゃ時代に乗り遅れる」だの危機感をあおられ,どこにいようと沢山の魅了が誘惑してきます。免疫力のない子どもが貴重な時間をそういったものに浪費してしまうのは当たり前のことでしょう。

無論子ども自身がそういった失敗経験をし,反省することで将来の糧になるのは事実ですが,それ以上に大人の私たちが積極的に働きかけてやることはもっと大切だということです。

そして,この周り(近所コミュニティー)からの働きかけが,2020年以降の教育改革でも重要視されているのは興味深いですね。

 

 

知的好奇心に満ちた遊び場を用意すること

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今の子どもに必要なのは,知的好奇心で満ちた遊び場です。そういった場を大人の私たちが用意してやることが何よりも大切なことではないでしょうか。

子どもは興味を持ったら,なんでも「知りたい,やってみたい」と思うはずです。

現代社会において子どもが大好きなゲームも,プログラマーがプログラミングで作っているわけですし,音楽もパソコンのDTMソフトで作った音源を鳴らします。デザインも今や手書きではなくコンピューターを使って書きます。

現代は最新の科学技術を取り入れた製品を目にする機会も多いはずですので,ちょっとのきっかけを与えてやることによって,「与えられる側に甘んじるより,与える側に立ちたい」と思う子が出てくるかもしれません。

ですが,子どもがそんな素晴らしい気持ちになっても「難しそう」と感じてしまえば,そこから一歩も踏み出せなくなったり,自分には無理だと諦めてしまうものです(これは大人であっても同じですよね)。

もしここで誰かできる大人が,その難しそうなことを子どもの目の前でやってみせてやり,子どもが少しでも自分でできることがわかれば,他の誰のものでもない確かな経験を子どもはそこで手にすることになります

もちろんそれが将来の職業につながるという話ではありません。そういった知的好奇心を満たしていくことで,子どもは何かを自分一人で解決できたり,創意工夫をもって物事にあたれるようになってくるという点が重要です。

そのように育った人材というのは,どんな職に就こうと重宝されることに変わりありません。

どこかで見知った知識でも論理立てて話せば相手を説得できますし,ときに誰も思いつかなかったアイディアを出せるような人材は尊敬されますし結果も出せることでしょう。そしてそういう人たちのものの考え方は,子どものうちから培ってきたものだということを忘れてはいけないように思います。

 

 

終わりに

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TIMSSとPISA型能力から始まって,最後の方はだいぶ持論めいたものを書いてしまいましたが,みなさまはどのようなご意見をお持ちになりましたでしょうか。

世の中の動きはますます早くなってきており,求められる能力も日々変わってきています。

先の学力調査において読解力の低下の問題が挙げられていましたが,現代の子どもはスマホや小説などで,短い文章を読むことに慣れてしまっているので,長文が読めなくなってきているのはしょうがないと考えることもできます。漢字が書けない人が増えてきているという指摘に対しても,スマホなどで文字変換して正しい漢字に変換できれば,もはや生活で困ることはないでしょう。

ですがそんな時代だからこそ,これまでにないものの見方をしたり,得た知識を現代生活に役立てられる能力がこれまで以上に問われることになります。

知的好奇心を持ち続け,PISA型の能力を高いレベルで身に付けた人材を育てるために,大人の私たちが子どもたちに何をしてやれるかについて令和時代はしっかりと考え,専門性のある大人は子どもに積極的に働きかけて教えてあげる必要があるというのを結論といたしまして,終わりの言葉とさせていただきます。

ありがとうございました。

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