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PISA・TIMSSの最新結果と教育改革について考えます!

学力調査というと,日本で毎年行われる文部科学省による「全国学力調査」が有名ですが,世界的な規模で子どもたちの学力を測る調査としては大きく2つが知られています。

1つはTIMSS(ティムズ)と呼ばれ,もう一つはPISA(ピサ)と呼ばれる調査です。

今回はその2つにおける,日本の小中高生の学力の国際的な順位の移り変わりと,今後社会に羽ばたく子どもたちに,どのような能力が世界標準として求められているのかについて考察していきたいと思います。

 

 

TIMSSとPISAの違いって何??

geralt / Pixabay

TIMSSとは Trends in International Mathematics and Science Study の略で,日本語では「国際数学・理科教育動向調査」と呼ばれているもので,国際教育到達度評価学会(IEA)が実施する,小学4年生と中学2年生を対象にした調査になります。

簡単に言うと,学校で習った理数科目をどのくらい理解できているかを調べるテストです。

また,純粋なテスト以外にアンケートも行われ,理数科目を楽しいと思っているのか,役に立つと思うかといった意識調査も兼ねています。

基本的に学校の成績が良い人ほど点が取れる問題で,科目は日本での呼び名にある通り,数学と理科の2科目で,1995年からは4年ごとに行われます(調査自体は1964年から実施)。

TIMSSの問題例

以下の色々な物で,電気を通すものはどれでしょうか。

「木のスプーン・プラスチックのくし・銀のチェーン・ゴムボール・鉄のかぎ」

 

次にPISAについてですが,こちらはProgramme for International Student Assessment の略で,「国際学習到達度調査」と言われています。

2000年から経済協力開発機構(OECD)が3年ごとに行っていて,高校1年生が対象となっています。

こちらは学校で習った能力(知識や技能)をどれだけ現実の生活に応用して役立てられるのかを評価するためのテストで,主に読解力・数学力・科学力が問われます。

2015年は科学的な能力がメインのテーマとなっていました。

PISAの問題例

シミュレーションを実行し,以下の情報に基づいてデータを集めてください。その後①と②を埋めます。

「あるランナーが,暑くて湿度の低い日(気温40度,湿度20%)に1時間ランニングを行います。ランナーは水を飲みません。」

ランナーが直面する健康上の危険は①です。このことは,ランナーが1時間走った時点での②によって示されます。

PISAの問題は,実際に頭を使って考えなければいけないものばかりで,応用力が問われるのがわかりますね。

TIMSSとPISAはこのように全く別ものです。

どちらの調査結果の詳細は文部科学省のHPで確認できるので,以下のページを参照してください↓↓

 

 

国際学力調査結果と日本の順位

qimono / Pixabay

本章では,日本がこれらの国際調査でどのくらいの順位にいるのかについてまとめてみたいと思います。

まずは,TIMSSにおける日本の中学生の順位がどのように変わってきたのかみることにしましょう!

1999年から4年ごとに,2015年までの調査結果を並べてあり,

  • 【数学】5位→5位→5位5位5位
  • 【理科】4位→6位3位4位2位

となりました(赤字や青字は後で説明に使います)。

そして次にPISAの結果です。こちらは2000年から3年ごとのデータを記載しており,最新は2018年の結果となっていて,

  • 【数学力】9位→6位→10位→9位→7位→5位1位
  • 【科学力】2位→1位→5位→5位→4位→2位2位
  • 【読解力】8位→圏外→圏外→8位→4位→8位圏外

となります(圏外というのは11位以降を表します)。

さて,2003年頃からゆとり教育が開始されました。「ゆとり教育」と聞くと,勉強しない子供を量産してしまった愚策のように記憶しているかもしれません。

ですが,ゆとり教育というのはそもそも,従来の詰め込み教育に反する考え方であり,受け身かつ詰め込み学習的な授業を減らし,能動的かつ自律的に学ばせようとする教育システムのことです。

つまり2020年の教育改革と同様,「PISA型の能力を上げよう」とする試みであったことは忘れてはいけません。

とはいえ,その目論見が結果を残せなかったことに問題があります。

上の順位で赤字で示したところは,ゆとり教育を導入して3~4年後の結果となっていて,TIMSSの理科の能力が上がった以外,PISAも含めて順位を落としてしまいました。

肝心のPISA型能力が悪化してしまったことは特に問題視されるのは想像するに容易いでしょう。

このような経緯があって,結果に危機感を覚えた政府は2011年から「脱ゆとり教育」を開始することを決定します。

それを導入して4年後,8年後の調査結果は青字で示しましたが,おおむね学力平均は回復してきたことがわかるでしょう。

特に数学力と科学力においては過去最高を記録しました。

ただし,昔からずっと振るわない読解力は相変わらず低いままで,2020年の教育改革に期待したいですね(ニュースではさも最近の子に問題があるように語られがちではありますが,前回よりは有意に下がったものの,長期で見ると変わっていないと分析されています)。

ちなみにアンケート結果も含めてわかってきたこととして,以下のようなものもわかってきました。

  • 男の子の方が女の子よりも,科学を学ぶのは楽しく,理科の学習が将来の仕事に役立つと思っていること
  • 理科の勉強が楽しいと思う子の割合は18%と,国際平均の44%に遠く及ばないこと
  • できる子とできない子の差がはっきりと2極化していること

こういった事実を周りの大人が知っておくだけでも,子どもへの意識は変わりますよね!

 

 

TIMSSとPISAの結果から言えること

Maxxja / Pixabay

これらの2大調査の信頼性は高いものですから,順位を大きく下げ続けた2003年~2011年頃の「子どもの学力低下問題」が大いに世間を賑やかしたことは当然であるように思います。

ですが,その後の脱ゆとり教育がひとまずの成果を出してよかったです。

ここで「ゆとり教育」についてもう一度考えたいのですが,実験などの体験型学習を増やしたり,子どもに自分で考えさせる時間を設けることは大いに評価できることでしょう。

しかし,それが成績に表れてくるには大変な努力が必要なように思います。

実際子どもに勉強を教えていると感じますが,子どもが「自分で学びなさい」と突然言われても,どうしていいかわからないでしょう。

それになんといっても,現場で教える大人自体が詰め込み教育で育ってきてしまったわけですから,いかにマニュアルを読んでもうまく実践できないわけです(人は自分が体験していないことは教えられないのがほとんどですから)。

そしてそのマニュアル内容もどこか外国の実践例を元にするのが普通で,国内での実践してからの日数が浅ければ浅いほど現場でのノウハウ(経験値)の蓄積も少なかったことでしょう。

いきなり指導して結果を出すには期間が短すぎたとも考えられます。

そのような経緯もあって,結局子供は勉強時間が減って遊べる時間が増えたように感じるわけですが,その空いた時間で何をしたのでしょうか。

自然と触れ合ったり,自分の興味を広げられるような場に行って知的好奇心を刺激するような行動が取れたのでしょうか。

世の中をみれば,そこら中が生産性のない遊びでいっぱいです。

望んでもいないのに,「これをしなきゃ時代に乗り遅れる」と危機感をあおられ,どこにいようと沢山の魅力的な悪意が子どもを誘惑してきます(ゲームとかSNSとか)。

もちろん良いものもありますが,悪意のあるものも混じっているわけで,免疫力のない子どもが,貴重な時間をそういったものに浪費してしまうのは当たり前のことでしょう。

無論子ども自身がそういった失敗経験をし,反省することで将来の糧になるのは事実ですが,それ以上に大人の私たちが積極的に働きかけてやることはもっと大切だということです。

そして,この周り(近所コミュニティー)からの働きかけが,2020年以降の教育改革でも重要視されているのは興味深いですね。

特に「生きる力」の育成には,周りの大人の協力が求められており,教育改革はもはや子どもだけの問題ではありません↓↓

 

 

知的好奇心に満ちた遊び場を用意すること

makamuki0 / Pixabay

今の子どもに必要なのは,知的好奇心で満ちた遊び場です。

そういった場を大人の私たちが用意してやることが何よりも大切なことではないでしょうか。

子どもは興味を持ったら,なんでも「知りたい,やってみたい」と思うはずです。

現代社会において子どもが大好きなゲームも,プログラマーがプログラミングで作っているわけですし,音楽もパソコンのDTMソフトで作った音源を鳴らします。

デザインも今や手書きではなくコンピューターを使って書くのが普通です。

現代は最新の科学技術を取り入れた製品を目にする機会も多いはずですので,ちょっとのきっかけを与えてやることによって,「与えられる側に甘んじるより,与える側に立ちたい」と思う子が出てくるかもしれません。

ですが,子どもがそんな素晴らしい気持ちになっても「難しそう」と感じてしまえば,そこから一歩も踏み出せなくなったり,自分には無理だと諦めてしまうものです(これは大人であっても同じですよね)。

もしここで誰かできる大人が,その難しそうなことを子どもの目の前でやってみせてやり,子どもが少しでも自分でできることがわかれば,他の誰のものでもない確かな経験を子どもはそこで手にすることになります

もちろんそれが将来の職業につながるという話ではありません。そういった知的好奇心を満たしていくことで,子どもは何かを自分一人で解決できたり,創意工夫をもって物事にあたれるようになってくるという点が重要です。

そのように育った人材というのは,どんな職に就こうとも重宝されることに変わりありません。

どこかで見知った知識でも論理立てて話せば相手を説得できますし,ときに誰も思いつかなかったアイディアを出せるような人材は尊敬され,結果も残せることでしょう。

そしてそういう人たちのものの考え方は,子どものうちから培ってきたものだということを忘れてはいけないように思います。

 

 

終わりに

katjasv / Pixabay

TIMSSとPISA型能力から始まって,最後の方はだいぶ持論めいたものを書いてしまいましたが,みなさまはどのようなご意見をお持ちになっていますでしょうか。

世の中の動きはますます早くなってきており,求められる能力も日々変わってきています。

先の学力調査において読解力の低下の問題が挙げられていましたが,現代の子どもはスマホや小説などで,短い文章を読むことに慣れてしまっているので,長文が読めなくなってきているのはしょうがないかもしれません。

漢字が書けない人が増えてきているという指摘に対しては,スマホなどで文字変換して正しい漢字に変換できれば,もはや生活で困ることはないでしょうが,書かれた文章を読んで,その意味を誤解し,的を得ていない指摘をするようでは問題です。

読解力の低下については,以下の記事に解決のヒントめいたものを書いているので参考にしてください↓↓

これからの時代は,これまでにないものの見方をしたり,得た知識を現代生活に役立てられる能力がこれまで以上に問われることになります。

知的好奇心を持ち続け,PISA型の能力を高いレベルで身に付けた人材を育てるために,大人の私たちが子どもたちに何をしてやれるかについて令和時代はしっかりと考え,専門性のある大人は子どもに積極的に働きかけて教えてあげる必要があるというのを結論といたしまして,終わりの言葉とさせていただきます。

ありがとうございました。

  • この記事を書いた人

スタディサイト管理人

都内の塾運営にかかわってから,講師歴も15年以上になりました。小学生から高校生まで学校の定期テストから大学入試まで幅広く教えています。最近の関心事は「教育改革」で,塾に入ってくる情報に加え,セミナーや書籍,信頼のおける教育機関より得た情報をWebにまとめてみました。ネットを介したやり取りにはなりますが,少しでもみなさまのお役に立てたらと思います。
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