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PISAとTIMSSの最新結果!日本の順位と対策は

「学力調査」と聞くと日本で毎年行われている全国学力調査が身近ですが,世界的な規模でみてみると,子どもたちの学力を測る調査としては大きく2つが知られています。

そのうちの1つが「TIMSS(ティムズ)」であり,もう1つは「PISA(ピザ)」と呼ばれる調査です。

オリンピックではないですが,世界に日本の実力を示すことができる貴重な機会ということで高位を期待したいところですが,そもそも現在の順位がどのくらいなのかご存じでしょうか。

今回の記事では「TIMSSとPISAの調査で判明した日本の小中高生の学力」を中心に,今後世界に羽ばたく子どもたちに一体どのような能力が求められているかについても考察してみたいと思います。

TIMSSとPISAの違い

OECDのHPとPISAの文字

本題に入る前に,まずはTIMSSとPISAの違いをまとめましょう!

TIMSS

TIMSSとは「Trends in International Mathematics and Science Study」の略ですが,日本語では「国際数学・理科教育動向調査」と呼ばれており,国際教育到達度評価学会(IEA)が実施する,小学生と中学生(より正確に言えば小4生と中2生)を対象とした調査になります。

管理人
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受験人数は2023年のもので,小4生が3875人(141校),中2生が3905人(133校)で,参加国は前者が58ヶ国(36万人)の校舎が44ヶ国(30万人)でした。

乱暴に言ってしまえば,学校で習った理数科目をどのくらい理解できているかを調べるテストです。

とはいえ,以下にちゃんと公式の説明を引用しておきましょう↓

初等中等教育段階における児童・生徒の算数・数学及び理科の教育到達度を国際的な尺度によって測定し、児童・生徒の学習環境条件等の諸要因との関係を分析する(公式HPより)。

純粋なテスト以外にアンケートも行われ,「理数科目を楽しいと思っていますか」や「理数科目が社会の役に立つと思いますか」といった質問に代表される意識調査も兼ねています。

基本的には学校の成績が良い人ほど点数が取れる出題となっていて,がり勉ではないですが,最近あまり良い印象を持たれにくくなってはいるものの,歴史の年代や四字熟語について多くを知っていて損をすることがないように,TIMSSの順位が良いに越したことはありません。

なお,日本語の呼び名からも明らかなように教科は数学と理科の2つで,調査自体は1964年から実施されていますが,1995年以降は4年ごとに行われており,そこもオリンピックに似ています(1964年は東京オリンピックがあった年ですし)。

実際に出題される問題を1つみてみると以下のようなもので,教科書のどこかに書かれていそうな内容だということがすぐにわかるのではないでしょうか↓

TIMSSの問題例

素材の名称だけ挙げればよいところを,わざわざ身近な物に変えてあるあたりは,実体験もヒントにできるようにという実施者側の配慮なのかもしれません。

何にせよ,好奇心旺盛な小中学生であれば高得点が取れそうです。

 

PISA

続いてPISAについてですが,こちらは「Programme for International Student Assessment」の略で,「国際学習到達度調査」と呼ばれています。

こちらは開始年度も実施団体もTIMSSとは異なり,2000年から経済協力開発機構(OECD)が3年ごとに行っているもので,対象となるのは高校1年生です。

こちらは学校教育で培った能力(知識や技能)を,どれだけ現実の生活に応用して役立てていけるのかを評価するためのテストで,読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーをメインに扱う点が特徴と言えます。

管理人
管理人
先ほどのTIMSSもそうですが,海外の場合は日本と教育制度が違うので,日本と同じくらいの年齢の生徒が対象となっています。また,リテラシーとは英語で「能力=literacy」的な意味ですが,説明するときに長ったらしいので,以降は単に数学力・科学力とさせてください。

高校生は当然ながら小中学生よりも脳が発達しているわけですから,その分,高度な学力を見せつけなければなりません。

例えば,科学力を測定するために,PISAでは以下のような問題が採用されています↓

PISAの問題例

数字の大小と結果を比較して何らかの傾向を読み取ることが必要になりますが,デジタル画面の操作も必要とあって,生徒は学校の普段のテストとは一味違った体験をすることになるわけです。

もっとも,コンピュータが導入されたのは2015年の調査以降となります(TIMSSも2019年から導入されました)。

意識調査のアンケートではICT関連の質問も含まれますが,いずれにせよ,一度も聞かれたことのない質問に頭を使って答えなければならないわけで,知識だけでは解けないとだけ理解しておけば十分でしょう。

まとめると,ここまでに示したようにTIMSSとPISAは性質が全く異なるテストとなりますが,そもそも,同じテストであるならわざわざ2回もやる必要はないですよね。

どちらか一方が優れているとはなりませんが,最近の流行をみるに後者の能力の方が重要視されているように感じますし,「小中学生時代(TIMSS)と高校生時代(PISA)のどちらの成績が優れている方が嬉しいか」と尋ねられれば,迷うことなく後者と答える人が大半でしょう。

なお,これら学力調査の結果は古いものも含めて,文部科学省のHPからいつでも確認することができるので,気になった方は以下のページを参照してください↓

 

 

国際学力調査における日本の順位

順位を示す金銀銅のトロフィー

本章では,日本がこれらの国際調査でどのくらいの順位につけているかをまとめてみたいと思いますが,まず手始めにTIMSSの結果から,日本の中学生の学力の推移をみていきます。

1999年から4年ごとに,2023年までの調査結果をまとめると,

日本のTIMSS結果

数学:5位→5位→5位5位5位→4位→4位

理科:4位→6位3位4位2位→3位→3位

となりました。

見た目が複雑にならないよう,中学生のみをTIMSSの結果としてまとめましたが,小学生の最新結果は算数が5位の理科6位ということで,これまでは中学生のものと大差ありませんでしたが,2023年にはやや悪化しています。

この原因として,知識が不足していることが挙げられていましたが,国際調査ということで,日本の学校では教えない知識が出てきており(例:砂漠に生息する生物はどれか),単に「知らないからできなかった」ということです。

続いてPISAの結果ですが,こちらは2000年から2022年までの3年ごとのデータということで,やや数が多くなります(OECD加盟国ではなく全参加国の順位を示しています)↓

日本のPISA結果

数学力:9位→6位→10位→9位→7位→5位6位5位

科学力:2位→1位→5位→5位→4位→2位5位2位

読解力:8位→圏外→圏外→8位→4位→8位圏外3位

管理人
管理人
上の赤字・青字部分はすぐ後の説明で触れること,圏外は11位以降を示すことにご注意ください。

ところで,2003年頃から日本ではゆとり教育が開始されました。

名前から緩い印象を受けてしまうこともあって,勉強をしない子どもを量産してしまった愚策だと認識している方も多いかもしれません。

ですが,ゆとり教育というのはそもそも,従来の詰め込み教育に反する考え方であり,受け身かつ詰め込み学習を強いる授業を減らし,能動的かつ自律的に学ばせようとする教育システムのことを指しています↓

つまるところ,2020年以降の教育改革のときと同様,PISA型の能力を上げようとする素晴らしい試みの1つであったことに他なりません。

ですが,その目論見が結果を残せなかったために騒ぎを引き起こしてしまったわけです。

実際,先ほどの順位で赤字で示したところは,ゆとり教育を導入してから3~4年後の結果となっていて,TIMSSにおいて理科の能力が上がった以外は,PISAも含めてほとんどの項目で順位を落としてしまいました。

導入直後に肝心のPISA型能力が悪化してしまったわけですから,即座に非難されることになったのは想像するにたやすいでしょう

最初こそ「導入時の戸惑いがあったせいだ」と解釈されてもいたのですが,その次の2009年の結果も同じように振るわなかったため,危機感を覚えた政府は2011年から「脱ゆとり教育」を開始します。

その新方針を導入してからの調査結果を青字で示しましたが,おおむね学力平均は回復してきたことがわかるでしょう。

それどころか実際は過去最高記録かそれに迫る結果となったわけで,このように国の教育方針は子どもの学力にしっかりと表れてくるので実に重要ですね。

日本人が昔からずっと振るわないとされていた読解力も,2018年までは低いままだったのが2022年にはトップレベルにまで上昇しました。

これについては,2020年の教育改革が良い効果を及ぼしたという意見があった他,ICT環境の整備が進み,子どもがICT機器の扱いに慣れたことが影響した可能性もあるそうです。

とはいえ,コロナによる休校期間が日本だけ短かったことも指摘されているため,PISA2025でまた圏外になってしまってもおかしくありません。

それほどまでに日本人の読解力は長期にわたって変化してこなかったことが事実として知られているわけで,もうしばらくは様子見ですね。

ちなみに,アンケート結果も含めて判明した事柄として,以下のようなものが挙げられています↓

  • 理科の勉強が楽しいと思う子の割合が国際平均に遠く及ばない
  • できる子とできない子の差がはっきりと2極化している
  • 学校が再び休校になった際,自律的に学べる自信のない生徒が非常に多い

こういった事実を周りの大人が知っておくだけでも子どもに対する意識は変わると思うので,周知したいものです。

 

 

TIMSSとPISAの結果から言えること

数学の公式

TIMSSとPISAの信頼性は高いものですから,順位を大きく下げ続けた2003~2011年頃の「子どもの学力低下問題」が大いに世間を賑やかしたことは当然のことだと思います。

ここで再度「ゆとり教育」について考えてみたいのですが,実験などの体験型学習を増やしたり,子どもに自分で考えさせる時間を設けたりする試み自体は大いに評価できるものでしょう。

しかし,それが成績となって表れてくるには大変な努力が必要なように思います。

実際子どもに勉強を教えていると感じますが,子どもは「自分で学びなさい」と突然言われると,一体どうしてよいのかわからなくなってしまうものです。

そもそも,教育現場で教えている大人(教師)自体が詰め込み教育で育ってきてしまったわけですから,ゆとり教育のマニュアルをしっかり読んだところで上手く実践できないと思います。

全員が全員とはいいませんが,人は自分が体験していないことはあまりうまく教えられないものです。

もしマニュアルが作成されたとしても,最初はどこか他の国でうまくいった実例をお手本にするのが普通で,日本にはなじまないことも多く,国内で実践してからの日数が浅ければなおさらで,現場でのノウハウ(経験値)の蓄積は大層少なかったことでしょう。

いきなり指導して結果を出すには期間が短すぎたとも考えられます。

一方,子どもの立場からすれば勉強時間が減って自由な時間が増えたわけですが,その空いた時間で一体何をしたのでしょうか。

自然と触れ合ったり,自分の興味を広げられるような場に行って知的好奇心を刺激するような行動が取れたのでしょうか。

そんなことはありえません。

世の中を見渡すと,金儲けを目的として生み出された生産性のない遊びでいっぱいです。

もちろん,理想を語れば何も売れず,お金が動きませんから,今の現実で「幸せ」だと信じられている生活は送れないでしょう。

というわけで,本人はまったく望んでいないのに「これをしなければ時代に乗り遅れてしまいます!」などと危機感をあおられ,どこにいようと沢山の魅力(ゲームやSNSなど)が四六時中子どもたちを誘惑してくることになります。

もちろん,中には良いものもあるのでしょうが,そうでないものがないはずもなく,耐性がない子どもが貴重な時間をそういったものに浪費してしまうのは当たり前のことでしょう。

子ども自身がそういった失敗経験を通して反省することで将来の糧になることは確かですが,それ以上に周りの大人が積極的に働きかけて導いてやることはずっと大切だということです。

現に,周り(近所コミュニティー)からの働きかけが2020年以降の教育改革でも重要視されているわけですから,上記の点については十分注意しておく必要があります。

最近の学習指導要領においても周りにいる大人の協力が求められており,教育改革はもはや子どもだけの問題ではありません。

とはいえ,ゲーム会社に勤務する親がわが子に「ゲームばっかりやってないで勉強しなさい」と言う世界なだけに,並々ならぬ努力が必要です。

加えて,PISAでたびたび結果が悪い読解力の問題を解決するためには,情報を探し出して理解しそれを評価して熟考しなければなりませんが,そのためには各教科での言語能力に加えて情報活用能力を育成することが求められています。

こちらも学習指導要領にあるので,以下の記事でチェックしてみてください↓

 

 

知的好奇心を育むことの重要性

洞窟探検をしている少年

今の子どもに必要なのは,知的好奇心を大いに刺激する遊び場です。

そういった場を大人の私たちが用意してやることが何より大切なことではないでしょうか。

子どもは興味を持ちさえすれば,なんでも「知りたい,やってみたい」と思うはずです。

アインシュタインは,

I have no special talents. I am only passionately curious.

と言いました。

そう言えば,先日,姪を連れて回転寿司を食べに行ったのですが,ベルトコンベアの先がどうなっているかについて想像すらしたことがなかったようです。

興味がなければ,それについて何か想像することはないのでしょう。

周りの働きかけなしでは,人が吟味しやすいように秒速4cmのペースで15分くらいかけて1周した寿司が裏で廃棄されていることはおろか,バックヤードでスタッフが寿司をせっせと作って並べていることにすら気が回らないのも当然のことかもしれません。

子どもが大好きなゲームも,プログラマーがプログラミングを用いて作っているわけですし,音楽もパソコンのDTMソフトで作った音源を鳴らしたり,音程を強制的にチューニングしたものを聞かされたりしています。

デザインも今は手書きではなくコンピューターを使って書くのが普通で,生成AIが登場したことで,本物の人間と間違えるような動画も増えてきました。

最新の科学技術を取り入れた製品を目にする機会も多いはずですので,きっかけにさえ恵まれれば「与えられる側に甘んじるよりも与える側に立ちたい」と考える子どもの数は増えるように思います。

とはいえ,子どもがそんな素晴らしい気持ちになっても「難しそう」と感じてしまえば,そこから先に踏み出せなくなったり,自分には無理だと諦めてしまったりするものです(これは大人であっても同じです)。

しかし,もしここで誰かその道に詳しい大人が,その難しそうなことを子どもの目の前で簡単にやってみせて,子どもが自分でもできそうだとわかるとしたらどうなるでしょうか。

他の誰のものでもない確かな経験を,そこで子どもが実際に積めることになります。

もちろん,それが将来の職業に直接つながるという話ではありませんが,そういった知的好奇心を満たしていくことで,子どもは何かを自分一人で解決できたり,創意工夫をもって物事に取り組めたりするように育ってくるという事実こそが重要です。

成功体験は自己肯定感を高めてくれますし,自律した人材はSociety5.0においてどのような職業に就こうとも重宝されるように思います↓

どこかで見知った知識であっても,複数を集めてきて論理立てて話すことができれば相手を説得できますし,ときに誰も思いつかなかったアイディアを出せるような人材は尊敬され,大きな結果も残せるでしょう。

そしてそういう優秀な人間のものの考え方というのは,子どもの頃から時間をかけて培ってきたものだということを忘れてはいけません。

管理人
管理人
八方塞がりな状況を嘆く大人をたまに目にしますが,それはまるで人生ゲームにおいて地獄ルートに進んだ状態で良いマスに止まろうとしていることに他ならず,状況が不満ならばそもそも天国ルートに進むところからやり直すべきという思考が欠如しているように思います。

 

 

終わりに

以上,TIMSSとPISA型能力の説明から始まって,最後の方はだいぶ持論めいたものを書いてしまいましたが,みなさまはどのようなご意見をお持ちになったでしょうか。

世の中の動きはますます早くなってきており,求められる能力も日々変わっています。

先の学力調査において読解力の低下の問題が浮き彫りになりましたが,現代の子どもはスマホや小説などで短い文章を読むことに慣れてしまっているので,長文が読めなくなってきているのはしょうがないことなのかもしれません。

「漢字が書けない人が増えてきている」という指摘に対しては,スマホなどで文字変換して正しい漢字に変換できればもはや生活で困ることはないでしょう。

とはいえ,書かれた文章を読んでその意味を誤解した結果,的を得ない返答をしてしまうようでは大問題です。

ネットニュースのコメント欄や芸能人の発言に対する誹謗中傷においても,相手の言っていることを理解できずに的外れな回答をしている匿名の人たちをたくさん目にします。

読解力の低下問題については以下の記事に解決のヒントめいたものを書いているので,是非とも参考にしてください↓

令和の時代においては,これまでにないものの見方をしたり,得た知識を現代生活に役立てられる能力というのが今まで以上に問われることになるでしょう。

知的好奇心を持ち続け,PISA型の能力を高いレベルで身に付けた人材を育てるために,大人の私たちが子どもたちに何をしてやれるかについてしっかりと考え,専門性のある大人は子どもに積極的に働きかけて教えてあげる必要があるというのをスタディサイトの結論といたします。

最後までお読みいただき,ありがとうございました。

  • この記事を書いた人
学校の教室

スタディサイトの管理人

通信教育の添削や採点業務に加え,塾や家庭教師を含めた指導歴は20年以上になります。東大で修士号を取得したのはずっと昔のことですが,教授から数年に一度の秀才と評してもらったことは今でも心の支えです。小学生から高校生にまで通じる勉強法を考案しつつ,気に入っているスタディサプリのユーザー歴は7年を超えました。オンラインでのやり取りにはなりますが,少しでもみなさまのお役に立てれば幸いです。

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