小論文が課される大学を志す高校生が,本格的に受験対策を始める前に目を通しておきたいオンライン講座があります。
それはずばりスタディサプリの「各種小論文講座」になりますが,今回の記事では,具体的にどういった内容の講座があってどのような大学に対応しているのかだったり,対象学年やテキスト構成だったりと,みなさまが気になるであろうところを幅広くまとめてみることにしました。
小論文は第三者に習ったからといって成績が目に見えて上昇するようなものではないために対策しづらいですが,難しい数学のたった1問に何時間も費やすことが有効であるのと同様,時間をかけた分だけ得られるものは多くなります。
まずは,スタディサプリの小論文で取り組むべき課題が見つかるかどうか見極めるところから始めてみてください!
スタディサプリの小論文講座について
スタディサプリの小論文講座ですが,全部で4つあります↓
- [新版]ベーシックレベル小論文
- 高3ハイ&スタンダードレベル小論文
- 高3トップレベル小論文
- 総合型選抜対策講座<事前課題型小論文編>
次章以降で詳細に触れる関係で,ここでは簡単に言及するだけに留めますが,1の講座からは小論文の基本的な知識が得られ,高1・高2講座に属する唯一の小論文講座であることからも明らかなように,すぐにでも学んでおくべきものです。
2と3の講座を受ける前段階のものとして位置づけられていることもあり,高3生が学び始める場合であってもこの講座から視聴するのが良いでしょう。
扱う内容としては大学受験生が小論文で高得点を取る方法(テクニック含む)を学べる講座で,受ける大学のレベルに応じて2種類が用意されていると考えてください。
ちなみに,地方国公立やGMARCHレベルの問題であれば前者だけで対応可能です。
それ以上の大学を目指す場合や,過去問を解いてみた感じ,まだまだ不十分であると感じた場合に3まで視聴するようにします。
最後に挙げた4の講座ですが,こちらは総合型選抜の対策講座に含まれるものとなり,当日与えられた課題を解く形式ではなく,事前に小論文を作成する際の方法論について学べるもので,事前調査を行う方法や論文の読み込み方など,2や3とはアプローチが大きく異なることに注意してください。
この場合の小論文対策は,同じ総合型選抜対策講座内にあるスタートアップ編を受講したら4の講座へと移るだけでOKです。
これらの講座を担当するのは神﨑史彦先生ただ1人であるため,一貫した方法論でもって学んでいくことができます。
教え方が違うからと不要な混乱は生じませんし,奇をてらったことを言っていないので,後で別の塾や教材で学ぶ際に悪影響を及ぼすこともありません。
スタディサプリは大手のリクルートが提供しているために講師の質は一定レベル以上をキープしているように思いますが,氏の詳しい経歴について知りたい方は以下の記事をお読みください↓
それでは次章から,各講座の内容を詳しくみていきましょう!
[新版]ベーシックレベル小論文で学べること
ベーシックレベル小論文では,小論文の基本となる考え方や答案で自分をアピールするための方法などについて学ぶことができます。
幅広いテーマを扱うため,最後まで視聴した暁にはより視野が広がり多様な考え方ができるようになったように感じるはずです。
予習は不要ということで,予備知識なしにすぐにでも始めることができ,全20講義は6~8個のまとまりで大きく3つに分かれています。
以下でそれぞれについてみていきましょう。
第1~第8講
1つ目のまとまりは第1~第8講となり,小論文の基本的な作法(読む・考える・書く)について学ぶことになります。
設問を読む際の注意点から始まり,段落の構成をどうするかであったり原稿用紙の使い方だったりまで扱うので,あらゆる小論文に通じる基本事項を学べる講義があるのだと理解してください。
授業の流れですが,まずは「レクチャー」と呼ばれるチャプターでポイントを押さえます↓
ちなみに,含まれる20講義において構成自体に大きな差はありません。
「理由ばかりをくどくど説明されるよりも実際に手を動かして数をこなす方が良い」という意見もあるかもしれませんが,方向を見誤った状態で努力を重ねてみたところで学習効果は落ちますし,何か一つでも参考になるところが見つかれば儲けものといった姿勢で臨むのが良いでしょう。
テキストは上のようなワーク形式またはメモ欄が設けられているので,手を動かしながら受講することでうっかり聞き逃すことにはなりません。
要点を理解した後は続けて問題を解くことになりますが,例えば「人類の生活を豊かにした発明や開発を挙げ,その理由まで含めて400字で書きなさい」といった内容です。
小論文講座に限りませんが,ただ講義を聴いて終わりにせず,手を動かして答案を作るようにしましょう。
もっとも,スタディサプリの小論文講座には解答を作る上でのヒントをまとめた動画も用意されているため,難しいと感じる場合にそちらを利用することもできます。
この後,答案例の紹介や自己評価表を用いた解説があり,最後に発展学習として推薦図書の提示(レベルアップするために必要な書籍案内)があって1つの講義が終了です。
こうした発展学習ができるのも実が隠れた魅力だと思っていて,ベーシックレベル小論文の講座で出会った問題をきっかけに自分の考え方の幅を広げていくことができます。
特に時間にまだ余裕がある高1~高2生は,推薦図書についても是非読んでみてください!
純粋に読書することは国語の成績アップにも寄与します。
第9~第14講
続く第9~第14講では,小論文で用いられる思考スキルを網羅的に学ぶことが可能です。
とはいえ,受ける大学が決まっている方には不要な部分も含まれるので,試験本番まであまり時間がない高3生はこの部分を飛ばして,第15講以降で必要と思われる問題形式の対処法だけをピンポイントで学ぶでも構いません。
ここで扱うのは「演繹・帰納・反論・弁証法」といった,論文の内容をより充実させて説得力を高めていく手法ですが,これは他の科目にも応用できるものです。
例えば以下の弁証法ですが,英作文を書いたり,口述試験で面接を受けたりする際にも十分役立つアプローチだと思いました↓
なお,先述したように講義の構成自体はこれまでのものと大差ないので,10分弱から成る各チャプターをいつも通り学んでいきましょう!
第15~第20講
ベーシックレベル小論文の第15~第20講は実践的な内容となり,出題形式に合わせた解き方を学んでいきます。
小論文は要約・読解・論述問題として分類できたり,テーマ型か課題文型もしくはデータ型に分けられたりもしますが,それぞれに特定の解き方が存在しているわけです。
例えば,以下のようなグラフを与えられた場合は,割合が高いものや増加・減少しているものに着目するのが王道だと知っておけば,受験会場で焦ってしまっても落ち着いて対処できるでしょう↓
共通テストにおいても考えさせられる問題が多くなっている昨今ですので,ベーシックレベル小論文で学んで目の付け所を知っておくと,後々役立つ場面は多いように思います。
高3ハイ&スタンダードレベル小論文で学べること
高3のスタサプ生向けのハイ&スタンダードレベル小論文も20講義から成ります。
ベーシックレベルで学んだ内容を今度は大学の過去問を使って実践していくわけですが,対応できるレベルは地方国公立・GMARCH・関関同立などとされ,多くの大学に対応可能です。
もっとも,受ける学部によってはこれ以上の難易度の問題が出題されることもあるため,小論文を課す大学を受ける方はとりあえず本講座までを学び,その時点で志望校の過去問を解いてみて合格点が取れそうかどうかを判断する必要があります。
学んだ知識だけでは及ばないと感じたのであれば,次章で紹介する上位講座に進みましょう。
授業の進め方ですが,予め答案を自力で作成したら自己評価をします。
つまり,予習は必須だということです。
その際に使うことになるのは「ルーブリック」と呼ばれるもので,神﨑講師の授業では必ず目にするものです。
ベーシックレベルの方でもすでに登場してきていますが,本講座から開始する方はここで初めて学ぶことになります。
確かに小論文では第三者による評価は必要ですが,自己評価ができることも重要です。
良いアイディアが浮かばなくても,評価項目を知っていれば無難な答案を書くくらいはできますし,大学入試が小論文の成績だけで決まることはほとんどありませんから,その他の科目で逆転することも十分に考えられます。
全部で12個の項目が登場してきますが,それぞれを5段階で評価していきましょう↓
最終的にはこのような項目を念頭に置きながら問題を解いていくことになるので,自己評価はあくまでルーブリックに馴染むための練習と考えることができます。
ちなみに,テキストの巻末には完全な形のルーブリックが載っていて,何をもってSやAなどと評価するかについても書かれていますが,短時間で理解したければ「総合型選抜対策講座」の方を視聴してみるのも良いでしょう。
この評価方法に慣れると,自分の得点がどれほどのものか,ルーブリックなしでも判断できるようになります。
採点官の視点が獲得できると言いましょうか,つまりは自分の答案を正しく採点できるようになるわけです。
もちろん,アイディアが浮かばないこともあるでしょうから,問題を解き終わった後で,「他にどのような意見があるか生成AIに質問してみよう」などと行動することもできます↓
本講座が取り扱う内容は幅広いですが,本番ではどのような出題があるかわかりません。
人文科学系の学部を受験するからといって,自然科学分野の出題があることもざらです。
そのためにも,選り好みをせずに全ての問題を解くようにしてください↓
講義と扱う内容
第1~第7講=人文科学(主体的・対話的で深い学び,プログラミング教育,非認知能力など)
第8~第14講=社会科学(LGBTQ,SDGs,法とAIなど)
第15~第20講=自然科学(インフォームドコンセント,QOL,ストレスなど)
やや多様性に関するテーマが多いように感じましたが,人種や性別,宗教など,テーマは多岐にわたっていて被ることはありませんでした。
仮に同じテーマであっても,人文科学系な答案例と自然科学系の答案例とでは意見が異なるのも興味深いところです。
例えば性別1つとってみても,男と女の社会的な役割について語るアプローチと,動物的な行動学の視点から論述した小論文とでは,受ける印象はまったく異なるでしょう。
トップレベルの講座に出てくる問題と比べると具体性のあるものが多いですが,生きがいや人が働く意味など,書きづらい抽象的なテーマもいくつか含まれています。
いずれにせよ,本講座は2022年末と比較的最近登場してきただけあって,扱う内容は今でも話題になるものばかりで,まだまだ似たような出題が本番でも確認できるでしょう。
これら20講義のそれぞれにおいて,1つちゃんとした答えを用意しておくだけでも,本番で良いアイディアが浮かびやすくなるように思います。
冒頭で述べた通り,小論文を頑張っただけ点数が取れるようになることは確かです。
高3トップレベル小論文で学べること
前章で紹介したハイ&スタンダードレベルを終えて,さらなる高みを目指す必要があると判断した方,または受験本番までまだ日数があり,他教科の進捗にも問題が見られず,小論文で万全を期したい方は「高3トップレベル小論文」で学びましょう!
なお,ハイ&スタンダードレベルのものとは小論文のテーマが重複しないように工夫されています。
本講座で具体的に学ぶことになるのは「システム思考」と呼ばれるもので,問題に潜む課題を探る際に有効となる方法です。
最近はGMARCHであっても難しい出題が多いですから,本講座で学んでおくと本番で役に立ちます。
トップレベル小論文ですが,予習必須で,他人の答案例を自分で採点する作業が含まれるところもこれまで通りです↓
私自身,彼の授業を拝見したのはスタディサプリが初めてでしたが,難しい問題を題材にしてこの作業を行い続けていると,自分の答案をより正確に評価できるようになったように感じました。
なお,前章のハイ&スタンダードレベル小論文でも同じ作業をする(他人の答案を評価するのはトップレベル特有のものではない)ものの,難しいテーマを扱うとなると同じ作業であってもずっと難しく感じられるでしょう。
私的に特に大変だったテーマは,
- 真理と倫理の関係性
- 現代における知識人の意味
- 反知性主義
- 統計の意義と限界
でした。
最初に参考資料を長文で読まされることにはなるものの,テーマに馴染みがなかったり普段から興味を持っていなかったりすると,書きようがなかったりします。
総合型選抜対策講座<事前課題型小論文編>で学べること
総合型選抜講座についてはすでに以下の記事で詳しく述べましたが,その中の1つに「事前課題型小論文編」というものがありました↓
内容は,限られた時間内に書き上げる必要がない小論文やレポートの作成方法を学ぶための講座ですが,第1講では資料の文章を用いた要約問題を,第2講では読解問題を,そして第3講では論述問題を扱うのが特徴で,最後の第4講では一般的な基礎知識をまとめています↓
講義で扱うポイントは明確にされていますが,授業中はメモを取るようにしましょう!
なお,第4講のテキスト中にはルーブリックが収録されていて(ベーシックレベルのところで述べたものです),自分が書いた解答が内容や表記・表現の面でどのように評価されるのかを簡単に理解することができます↓
自分の答案をさらに良くしようと考えた場合に,自分の課題に気が付きやすくなるというが,事前課題型小論文編を受講する価値です。
テキストには,添削してもらった人のコメントを書き込むスペースも用意されているので,学校や塾の先生など,身の回りにいる大人に協力を要請してみてください。
まとめ
以上,スタディサプリに用意されている各種小論文講座のレビューでした。
今回の内容をまとめると,講座には
- ベーシックレベル小論文
- ハイ&スタンダード小論文
- トップレベル小論文
- 事前課題型小論文
の4種類があり,どの大学にも通じる基礎知識を学べる講座から,一般選抜や推薦型選抜に特化した対策までを行うことができます。
それぞれの講座を視聴するだけなら10時間程度で終わりますし,テキスト内容は充実していました。
できるだけ早いうちに予習不要なベーシックレベルを視聴し,高3生になったらスタンダード~トップレベルの講座を受講することで,より説得力のある小論文が書けるようになります。
最初の3つについて,再度内容の方をまとめてみると以下の通りです↓
ポイント
ベーシック=小論文の書き方を一から学ぶ。知識をどのように思考に用いていくかを習得し,600字程度の小論文が書けるようになる。
ハイ&スタンダード=GMARCHや地方国公立大レベルの大学に対応。社会科学,人文科学,自然科学の頻出テーマを演習し,800字程度の小論文が書けるようになる。
トップレベル=旧帝大,早慶上智レベルの大学に対応。ハイ&スタンダードレベルで学ぶ以上のアプローチである「システム思考」を習得することで1200字程度の小論文が書けるようになる。
余談ですが,これら3講座においてはテキストを購入することができますが,500ページ近い分量のうち,かなりの量のメモ欄や答案用紙が含まれます。
コピーで済ませるかどうかは,実際1講義分やってみてから判断するようにしてください↓
スタディサプリの小論文講座は高校1年生の段階から視聴可能で,早期に受講しておくことで純粋な国語力や論理力の強化に加え,実際の受験での選択肢の幅を広げることもでき,その恩恵は十分に受けられるでしょう。
今後急速に進む入試改革により,1つの明確な答えが用意されていない問題について考えて意見する機会が増えてくることが予想されますが,実はそうした問題を多く扱っているのが小論文です。
小論文で培ったスキルというのは,論文を読んでまとめるときや,自分の意見を発表する大学でのゼミや卒論,さらには就職活動や社会に出てからも役立ちます。
もちろん一般選抜においても,これからますます多くの大学が,記述力を測る問題を出してくるように変わってくることでしょう。
そのときの準備段階に使えることを考慮すると,月額2178円で受講できるスタディサプリは,高い授業料が必要な各種予備校の小論文講座(添削付き)を取る前に十分検討する価値があるものだと思います。
とはいえ,講師との相性や使い勝手もあるでしょうから,以下の記事内容も参考に,無料期間内に是非体験してみてください↓
最後までお読みいただいた方,ありがとうございました。