小論文が課される大学を志す高校生が,本格的な受験対策を始める前に一度は目を通しておきたいオンライン講座があります。
それは「スタディサプリの各種小論文講座」です。
今回の記事では,具体的にどのような内容の講座があるのか,そしてどれほどの大学に対応しているのか,さらには対象学年やどういったテキスト構成になっているのかなど,気になったところを中心に,なるべく多くをまとめてみることにしましょう。
スタディサプリの小論文講座について
スタディサプリの小論文講座ですが,全部で5つあります↓
- 【新版】ベーシックレベル小論文
- 高3ハイ&スタンダードレベル小論文
- 高3トップレベル小論文
- 慶應義塾大学 小論文対策講座
- 総合型選抜対策講座<事前課題型小論文編>
1の講座は小論文の基本知識が得られる講座で,高1・高2講座の唯一の小論文講座であることからも明らかなように,すぐにでも学んでおくべきものです。
2と3を受ける前段階にあたる講座なので,高3の方も,真っ先にこの講座を視聴するようにしてください。
2と3は高3生が小論文で高得点を取るための方法を学べる講座で,受ける大学のレベルに応じて2種類が用意されています。
地方国公立やGMARCHレベルまでは前者が対応可能です。
それ以上の大学を目指す場合は3までやるようにしてください。
ちなみに,4に関しては慶應義塾大学を志望する受験生に特化した講座となっていますが,まずは3で学ぶことを推奨します。
というのも,4で扱う問題は古めであるため,小論文の教材がなくなったときに使うか,解き方のヒントを得る目的で用いる程度のものだからです(とはいえ,いつの時代においても,小論文の普遍的な解き方というのは確かに存在します)。
最後の5についてですが,こちらは総合型選抜の対策講座の1つとなり,事前に小論文を作成する際の方法を学びますが,事前調査を行う方法や論文の読み込み方など,こちらも用途は限定的です。
いずれの講座も次章から詳しくみていくので,ここでの紹介はこのくらいにしておきましょう。
担当講師ですが,4のみが小柴大輔先生,他はすべて神﨑史彦先生です。
両者の詳しい経歴について知りたい方は,以下の記事をお読みください↓
それでは次章から,各講座の内容について詳しくみていくことにしましょう!
【新版】ベーシックレベル小論文で学べること
ベーシックレベル小論文では,小論文の基本・考え方・答案で自分をアピールするための方法について学びます。
幅広いテーマを扱うため,受講した暁にはより視野が広がって多様な考え方ができるようになっているはずです。
なお,予習は不要となっており,全20講義は6~8個のまとまりで,大きく3つに分けることができます。
第1講~第8講
1つ目のまとまりは第1講~第8講で,小論文の基本的な作法(読む・考える・書く)について学びますが,設問を読むところの注意点から始まり,段落構成をどうするかであったり,はたまた原稿用紙の使い方までを扱うので,あらゆる小論文に通じる基本事項を扱っていると理解してください。
授業の流れですが,まずは「レクチャー」と呼ばれるチャプターでポイントを押さえます(なお,講義の構成に関しては,全20講義で差は見られません)↓
テキストには上のようなワークが設けられているので,うっかり聞き逃すようなことにはなりません。
別に小論文講座に限らないのですが,ただ聴いているだけで終わりにせず,とにかく手を動かすようにしましょう。
理解した後は続けて問題を解くことになりますが,解答を作る上でのヒントをまとめた動画が用意されているため,難しいと感じる場合はそちらを利用することもできます。
この後,答案例の紹介や自己評価表を用いた解説があり,最後に発展学習として推薦図書の提示(レベルアップのための読書案内)もありました。
ベーシックレベル小論文の講座で出会った問題を1つのきっかけととして自分の考え方の幅を広げられるので,推薦図書については高1や高2の時間があるときにこそ読んでおきたいものです。
第9講~第14講
第9講~第14講では,小論文で用いる思考スキルを網羅的に学ぶことができます。
しかしこれは,受ける大学が決まっている方においては不要なところが含まれることをも意味するわけで,試験本番までほとんど時間がないような方であれば,このまとまりは飛ばして,第15講以降で必要と思われる問題形式の対処法をピンポイントで学ぶようにしてください。
ここでは演繹・帰納・反論・弁証法といった,論文の内容をより充実させて説得力を高めていくための手法について学ぶことになりますが,これは他の科目にも応用できるでしょう。
例えば以下の弁証法ですが,英作文を書いたり,口述試験において面接をしたりする際に十分役立つアプローチです↓
なお,講義自体の構成はこれまでのものと違いはないので,10分弱から成る各チャプターをいつも通り学んでいきましょう!
第15講~第20講
ベーシックレベル小論文の第15講~第20講は実践的な内容で,出題形式に合わせた解き方を学んでいきます。
小論文は要約問題・読解問題・論述問題のいずれかだったり,テーマ型か課題文型もしくはデータ型だったりするのですが,それぞれに特定の解き方が存在しているわけです↓
例えば,グラフを与えられた場合は,割合が高いものや増加・減少しているものに着目するべきなのですが,受験会場で焦っている中,このような方針さえ理解できていれば,落ち着いて対処することができます。
共通テストにおいても考えさせられる問題が多くなっている昨今で。
ベーシックレベル小論文を使って目の付け所を知っておくと,後々役立つ場面は多いでしょう。
高3ハイ&スタンダードレベル小論文で学べること
高3のハイ&スタンダードレベル小論文は全部で20講義です。
ベーシックレベルで学んだことを大学の過去問を使って実践していきます。
対応できるレベルは地方国公立,GMARCH,関関同立などとなっていますが,受ける大学によってはこれだけだと不十分に感じるところもあるはずです。
小論文を課す大学を受ける方はまずは本講座で学び,それで志望校の過去問を解いてみて,合格点を取れるかどうかを確認してみてください。
足りない場合は次章で紹介する上位講座に進みましょう。
授業の進め方ですが,予め答案を自力で作成したら,自己評価をしてみます。
その際使うことになるのは「ルーブリック」で,神﨑講師の授業では必ず目にすることになるものです。
全部で12個の項目が登場してきますが,それぞれを5段階で評価していきます↓
ちなみに,テキストの巻末には完全な形のルーブリックが載っていて,何をもってSとかAとかするのかも書かれているのですが,具体例については「総合型選抜対策講座」のところを参照してください。
この評価方法に慣れてしまうと,自分の得点がどれほどのものか,ルーブリックなしでも判断できるようになります。
扱う内容は幅広いですが,どのような出題でも対応できるようになるため,選り好みをせずに全ての問題を解くようにしてください↓
講義と扱う内容
第1講~第7講=人文科学(主体的・対話的で深い学び,プログラミング教育,非認知能力など)
第8講~第14講=社会科学(LGBTQ,SDGs,法とAIなど)
第15講~第20講=自然科学(インフォームドコンセント,QOL,ストレスなど)
やや多様性に関するテーマが多いように感じましたが,人種や性別,宗教など,それだけテーマは多岐にわたるので被ることはありません。
仮に,同じテーマであっても,人文科学系な答案例と自然科学系の答案例とでは意見が異なります。
例えば性別においては,男と女の社会的な役割について語るアプローチと,動物的な行動学の視点から語る小論文では受ける印象はもはや別物と呼べるほどです。
トップレベルのものと比べると具体性のあるものが多いですが,生きがいや人が働く意味,問いかけることなど,書きづらい抽象的なテーマもいくつか含まれます。
いずれにせよ,本講座は2022年末に新しく誕生しただけあって,扱う内容は最近よく話題になるものばかりで,本番でも似たような出題がされるでしょう。
これら20講義を通して,何らかの答えを用意しておくだけでも,本番で良いアイディアが浮かびやすいように思われます。
高3トップレベル小論文で学べること
前章で紹介したハイ&スタンダードレベルを終えて,さらなる高みを目指す必要があると判断した方,または受験日までまだ日数があり,他教科の進みも遅れはなく,小論文で万全を期したいような方は「高3トップレベル小論文」で学びましょう!
なお,ハイ&スタンダードレベルのものとは,小論文のテーマが重複しないよう工夫されています。
具体的に学ぶことになるのは「システム思考」と呼ばれるもので,問題に潜む課題を探る際に有効となる方法です。
最近はGMARCHであっても難しい出題が多いですから,本講座で学んでおくと本番で大いに役に立ちます。
トップレベル小論文ですが,予習必須で,他人の答案例を自分で採点する作業が含まれるところもこれまで通りです↓
私自身,彼の授業を受けたのは初めてでしたが,難しい問題を題材にしてこの作業を行うことによって,自分の答案をより正確に評価できるようになったように感じています。
なお,前章のハイ&スタンダードレベル小論文でも同じ作業をすることになるので,他人の答案例の評価がトップレベルに特有のものというわけではありませんが,やはり難しいテーマになると同じ作業であってもずっと難しく感じるものです。
特に大変だったテーマは,
- 真理と倫理の関係性
- 現代における知識人の意味
- 反知性主義
- 統計の意義と限界
でした。
最初に参考資料を長文で読むことにはなるものの,テーマに馴染みがなかったり普段から興味を持っていなかったりすると,書きようがなかったりします。
慶應義塾大学小論文対策講座で学べること
慶應大学の文学部・法学部・経済学部・SFCなどを受ける予定がある方におすすめなのが,スタディサプリの志望校対策講座の中にある「慶應義塾大学小論文対策講座」です。
この講座では上記4つの各学部につき2講義が用意され,小柴先生が出題傾向を解説してくれます。
授業の流れですが,実際に出題された過去問を材料に,文章の読み方や要約,意見の発想方法を学んでいきましょう!
例えば法学部の場合,文学部や経済学部と異なり,要約と意見論述が同一の問題内で行われるという特徴があることがわかります↓
ただし,これらの問題を解く際の基礎となるのは,ベーシック小論文の講義で学んだ知識です。
そのため,慶應大学法学部を受験する方であっても,まずはそちらを受講して基本的な解き方について学んでからこちらの講座を視聴するようにしてください。
実際の問題についてですが,1講義についてテキストは15ページ前後で,解答例は複数個が載っているため,1つの問題から多くを学べる仕様となっていました↓
解答例は何度も読み込んで,使える技やネタをどんどん吸収していきましょう!
本講義を受講したら,後は自分が受けるところの過去問で実際に書く練習を行い,然るべき人に添削してもらってください。
慶應のような大学であっても,結局は解いた問題数が多い生徒が勝ちます。
私の経験上,国語が得意な生徒はさらに有利です。
総合型選抜対策講座<事前課題型小論文編>で学べること
総合型選抜講座についてはすでに以下の記事で述べましたが,その中の1つに「事前課題型小論文編」というものがありました↓
限られた時間内に書き上げる必要がない小論文やレポートの作成方法を学ぶための講座になりますが,第1講では資料の文章を用いた要約問題を,第2講では読解問題を,そして第3講では論述問題を扱うのが特徴で,最後の第4講では一般的な基礎知識をまとめています↓
講義で扱うポイントは明確で,授業はメモを取りながら受けるようにしましょう。
なお,第4講のテキストの中にはルーブリックという評価指標が収録されていて,自分が書いた解答が内容や表記・表現の面で,どのように評価されるのかが簡単に理解できます↓
そのため,自分の答案をさらに良くしようとした場合に,自分の課題に気が付きやすいのが事前課題型小論文編の魅力だと言えるでしょう。
テキストには,添削してもらった人のコメントを書き込むためのスペースも用意されていました。
まとめ
以上,スタディサプリに用意されている各種小論文講座のレビューでした。
今回の内容をまとめると,講座には「ベーシックレベル小論文,ハイ&スタンダード小論文,トップレベル小論文,慶應義塾大学対策講座,事前課題型小論文」の5種類があり,どの大学にも通じる基礎を学べる講座から,慶應大の志願者や推薦型選抜に特化した対策まで行うことができます。
視聴するのにかかる時間としては,大体が10時間程度となっていて,テキスト内容も充実していました。
メインとなるのは大学受験講座の通年講座にあるもので,予習不要なベーシックレベルを始め,スタンダード~トップレベルの講座を受講することで,より高度な小論文を書けるようになります。
具体的にまとめると以下の通りです↓
ポイント
ベーシック=小論文の書き方を一から学ぶ。知識をどのように思考に用いていくかを習得し,600字程度の小論文が書けるようになる。
ハイ&スタンダード=GMARCHや地方国公立大レベルの大学に対応。社会科学,人文科学,自然科学の頻出テーマを演習し,800字程度の小論文が書けるようになる。
トップレベル=旧帝大,早慶上智レベルの大学に対応。ハイ&スタンダードレベルで学ぶ以上のアプローチである「システム思考」を習得することで1200字程度の小論文が書けるようになる。
なお,上の3講座においてはテキストを購入することができますが,500ページ近い分量のうち,かなりの量のメモ欄や答案用紙が含まれます。
コピーで済ませるかどうかは,実際1講義分やってみてから判断するようにしてください↓
スタディサプリの小論文講座は高校1年生の段階から視聴可能で,早期に受講しておくことで純粋な国語力や論理力の強化に加え,実際の受験での選択肢の幅を広げることもでき,その恩恵は十分に受けられます。
今後急速に進む入試改革により,1つの明確な答えが用意されていない問題について考えて意見する機会が増えてくることが予想されますが,実はそうした問題を多く扱っているのが小論文です。
小柴先生が講義で口を酸っぱくして言うように,小論文で培ったスキルというのは,論文を読んでまとめたり,自分の意見を発表する大学でのゼミや卒論,さらには就職活動や社会に出てからも役立ちます。
もちろん一般選抜においても,これからますます多くの大学が,記述力を測るための問題を出してくるようになるでしょう。
そのときの準備段階に使えることを考えれば,月額2178円で受講できるスタディサプリは,高い授業料が必要な各種予備校の小論文講座(添削付き)を取る前に十分検討する価値があるものだと思います。
とはいえ,講師との相性や使い勝手もあるでしょうから,以下の記事内容も参考に,お得に開始してみてください↓
最後までお読みいただいた方,ありがとうございました。