英検の2級ですが,取得に必要な学力レベルは「高校卒業程度」ということで,多くの生徒が目標にしやすい検定試験となっています。
効率面を考えると,中学・高校の授業内容を覚えているうちに取っておくというのがベストなタイミングだと言えるでしょう。
もちろん,英語4技能を測定するのにうってつけの英検ですから,社会人の学び直しや生涯学習の一環としても大いに利用できます。
今や英語の学習教材は簡単に手に入るので,相手の実力を見定めて自分の現在位置との距離さえ正しく把握できれば,具体的な勉強手段にはさほど困ることはありません。
相手の姿が掴めないまま何となく勉強していると,自分が今勉強していることが本当に合格に役立つのか疑ってしまうものですし,あともう一歩のところまで来ているにもかかわらず途中で諦めてしまいがちです。
そこで今回は,そんな「英検2級の受かり方」について,実際の問題を例に用いながら考えてみることにしたいと思います。
本格的に学び始める前の導入としてお読みいただけると幸いです。
英検2級の概要について知る
英検2級に受かるための第一歩は,大まかな検定内容を知るところから始まります。
実際に問題を解いてその難しさを身をもって体験することももちろん必要ですが,それについては次章以降で解説することにして,本章では全体の問題数や試験時間などを確認しましょう。
なお,当記事では二次試験を別日に行う「一般向け」の試験についてまとめています。
すべてが1日で終わる「1日完結型」の英検については以下の記事を参考にしてください↓
さて,英検の2級では一次試験において読み・書き・聞く能力が測定され,二次試験において話す能力が問われることになります。
一次試験は筆記試験とリスニングから成りますが,前者に属する大問4つのうち,最後の問題が英作文です。
リスニングはその名の通り聞く能力が,そして二次試験は面接となるため,相手とコミュニケーションを取る中で話す能力が測定されます↓
英検2級の試験内容
筆記試験:短文の空所補充が17問,長文の空所補充が6問,内容一致問題が8問,英作文が2題あり,これらを85分で解く。
リスニング:会話の内容一致と文の内容一致がそれぞれ15問ずつで,制限時間は計25分。
面接:音読した文章に関連する質問,イラストの説明問題,それに関する意見を述べる問題,一般的な事柄に対して意見を述べる問題がある。大体7分の試験時間。
評価欄では各技能650点満点で得点が付けられるものの,配点は1問何点などと決まっていません。
偏差値的と言いますか,受験者の平均点やバラつきなどを考慮に入れて統計的に得点が算出されることに注意してください。
いわゆる「英検CSEスコア」と呼ばれるものですが,詳しくはこちらのページに書かれています。
とはいえ,同一の技能を測る問題内においてはすべてが同じ重みで計算されることを覚えておきましょう。
筆記試験のリーディング問題のうち,長文の内容一致問題(大問3)のようなものは,大学入試などでは配点が高くなる傾向にあります。
しかし英検の場合,短文のカッコに語句を入れる単語テストのような問題(大問1)と1問あたりの価値は同じと見なされるのです。
文章内容を正確に理解してようやく正解にたどり着いた1問と,ちょうど試験前に覚えた単語が出てきて瞬時に正解できた1問が同じ価値になるとわかれば,
「英検では語彙力が重要だ」
と多くの人が言うのも納得できるでしょう。
ところで英検では受験すると間もなく,公式HPで解答が発表になるために自己採点がしやすいです。
英作文の採点を正確に行うのは難しいですが,それ以外の2技能(リーディングとリスニング)は答えを問題用紙に書き込んであるために,かなり正確に合否判定ができるでしょう。
英作文の採点方法については以下の記事内容を参考にしてください↓
一般的な目安として言えることは,英検2級では各技能60%以上の正答率であればほぼ合格だということです。
ライティング以外でこの程度得点できているのであれば,一次試験の合否発表を待つまでもなくすぐに二次試験の準備に移りましょう!
以上,英検2級について最初に知っておくべきことでした。
次章では過去問を通して自分の弱点を知ることの重要性についてまとめていきたいと思います。
過去問を使って弱点を分析する
英検2級に受かるためには,どの分野も満遍なくできることが重要です。
4技能の分野ごとに650点満点で計算されるわけですから,極端な話,英作文を解くことなくリーディング問題にすべての時間を費やしてしまうようでは間違いなく合格点に届きません。
人間,苦手なものに目を向けると自分ができないことがはっきりとわかってしまうため,精神的に辛くなりがちですが,弱点部分に向き合うことこそが合格に必要なので嫌でも逃げずにやってください。
英語の勉強では1つの弱点を無くすことでそれとは一見関係がなさそうなところの得点が上がることも多く,結果的に楽ができることになります。
例えば文法の能力を上げることで英作文ができるようになったり,読解の能力を上げることでリスニングの成績が上がることも多いのです。
それに,高校入試を経験したことがある方なら,評定を2から3に上げるために必要な努力と4から5に引き上げるために要した努力量は,同じ1という上げ幅であっても大きな違いがあることをよくご存じでしょう。
もちろん後者の方が大変なわけで,塾で中学生に教える際も,評定が2の子を3や4に上げるのは簡単であっても,すでに4ある生徒の評定を5にしてくれと頼まれるとかなり綿密な指導計画が必要となり,状況次第では「無理です」と答えることもあるくらいです。
ゆえに,まずは苦手分野をなくすことを心がけましょう。
得点率が6割に満たない分野から取り組めばよいので,弱点を見つけること自体は難しくありません。
英検のサイトでは直近3回分の過去問が利用できるので,早速1つ解いてみてください。
解答はもちろんリスニング音源まで利用できるわけですから,変な話,あとはWeb辞書を使って勉強するだけでも(教材など何1つ購入せずとも),かなりの対策ができてしまいます。
私がおすすめする過去問のやり方は,
- 問題を印刷して解く
- 解答を見て丸を付ける
- 正答率を数える
と極めて普通なものです。
なお,「時間制限あり」にして本番と同じ条件でやってみますが,もし時間内に終わらないようでしたら,そのまま時間制限を無視して全ての問題を解くようにして,それでも正答率が6割に届かないようでしたら確実に自分の実力が足りないことがわかります。
解くスピードに関しては,何回か解いているうちに自分に合った時間配分が比較的すぐできるようになるのに対し,実力ばかりは時間をかけて勉強しない限り高まることはありません。
逆に,現時点で制限時間内に解けてしまうようであれば,準1級のテストも検討してみてください↓
最後に,費やす時間の参考となるデータを挙げておきましょう↓
英検2級の解く時間の目安
- 大問1は17問を8分で解く
- 大問2は6問を19分で解く
- 大問3は9問を24分で解く
- 大問4は2題を34分で解く
- リスニングは1部と2部ともに15問からなり,放送の指示通りに解く
問題ごとに対策を施す
それでは最後に,各問題のポイントと対策方法をまとめましょう!
筆記の大問1
大問1では大体この程度の長さの短文を読むか2人の人物による会話を読み,カッコ内に入る語句を選びます。
こういった問題にまで時間をかける人がいますが,はっきり言って選択肢の単語の意味を覚えていなければどれだけ悩んだところで正解できません。
なので単語の勉強は試験当日までやり続けましょう!
語彙力が増えてくると,これまで1つもわからなかった選択肢のうち2つ3つは意味がわかるようになってきます。
それだけでも答えが絞られることになり,勘が的中する確率も上がるわけです。
全く知らなければ25%の正解率ですが,選択肢のうち3つの意味を知っていたらどうなるか計算してみてください。
知っている単語に正解があればそれでOKですし,なかったとしても残りの単語を選べばよいわけですから,正解率は100%です!
ただし,大問1には語彙問題以外に文法問題もありますから,そちらの対策も忘れないでください。
文法がしっかりしてくると文章を正確に読めるようになりますので,筆記試験の大問2や3,さらにはライティングやリスニングにも良い影響を及ぼします。
筆記の大問2
大問2ですが,AとBの長文があり,3つある空所に文脈に合う語句を選ぶ問題です。
単語自体は大問1ほどは難しくないのですが,文章の流れを追えていないと答えが1つに決められないものがあったり,論理展開を示すディスコースマーカーの出題もあったりするため,こちらは時間をかけた分だけ正答率が上がります。
ゆえに大問1で時間を無駄にせず,大問2や大問3に時間を使う方が正答率はより上がることになるわけです。
英語の文章の決まり事として,段落が変わると要点も変えなければなりません。
その知識を利用して,文章の流れに合った語句を選ぶようにしてください。
筆記の大問3
筆記試験の大問3はA~Cの3つに分かれ,AがEメール,BとCがエッセイです。
上に示したのは2020年第1回のものですが,Bパートは「Opera is a traditional performance」で始まり,Cパートは「Many animals move from one place to another」となっており,文系・理系分野の両方から出題される傾向にあることがわかります。
「私は文系だから理系のことは知らなくて良い」などといった極端な考えでいると,これからの時代,通用しない場面が増えてきてしまいますのですぐにでも改めるようにしてください。
同じ理由で,国語や社会だけ勉強して数学や理科には手を出さないとか,英語だけ得意で他の教科には目もくれないといった態度もいけません。
2024年のリニューアル以降は思考力や判断力,表現力を問う問題が増えました。
大問3の選択肢はこのように,疑問文に答えるものの他,文の続きとなるにふさわしいものを選ぶものがあります↓
なお,英文を読むスピードが遅いと,このような質問文を読むのにも手間取ってしまうため,時間通りに解き切れない方は,意味が分かっている長文を素早く読む練習を積むようにしてください。
また読解問題では,英語を読んで理解した後に国語力が必要となってくるので,時間を無制限にして解いたときにおいても上のような問題が解けない場合,自分の読む力を疑ってみましょう。
残念ながらその場合,すぐに合格点を取ることは難しいので,大問1でより正答率を上げるという戦略を取らざるを得なくなります。
人によっては現代文の勉強も検討してください。
筆記の大問4
大問4は英作文です。
全部で2つが出題され,前者では与えられたトピックに対する自分の意見と,その理由を2つくらい書きましょう。
語数は80~100語ですが,よくある型を覚えてしまえばそれほど大変ではありません。
コツは自分が知っている文法と単語のみを使って書くことで,これは,運動部に属する選手が普段練習していないことを試合本番でやろうとしないことに似ています。
その他,問題文の表現をそのまま拝借したり,自分が書きやすい展開に持ち込んだりする工夫も考えられるはずです。
先に紹介した英作文の記事に詳しく書きましたが,誤った語彙を使うことや文法でのミスは確実に減点されますし,賛成や反対の立場を明確にしないで書き進めたりお洒落な言い回しを試みたりすると,大抵は時間のロスに繋がって失敗することになるのでおすすめしません。
もちろん,型通りの書き方をすることについては私も思うところがあります。
例えば上の問題も
- I think(トピック内容からの拝借)
- First~,Second~,For these two reasons(最初の文の繰り返し)
といったお決まりの書き方を採用するだけでも,かなりの点数が取れてしまうでしょう。
何だか勉強とは違うような感じがしますし,ズルしているような後ろめたさもありますが,英検の2級くらいまではこの態度を許容してください。
まずは型通りの文章が書けるようになることを最優先にし,それができるようになったら少し自分らしさを足してみたり,より説得力のあるサポートセンテンスを書き足したりしましょう。
英作文の2つ目は要約問題になります。
これは日本語で要約するときと同じ手順を経ますが,各段落ごとに大意を書き出すようにして,あとはそれらを繋げるだけです。
字数制限に応じて逆接部分を省略したり逆に具体例を含めたりしますが,基本的には最低限のことを書くようにすることを心掛けてください。
無理に加筆するより,そこまでの内容を見直して,文法やスペルのミスがないかどうかチェックする方が高得点に繋がりやすいです。
リスニング第1部
英検2級のリスニング第1部は男女の会話を聞き,質問の答えとして正しいものを4択から選ぶものとなります。
読まれるスピードは普通に早いですし一度しか読まれないので,聞いた英語は日本語に直さずそのまま理解することが大切です。
つまり,頭の中に場面をイメージしながら聴くことになります。
基本的にリスニングというのは,英語の音に対する感覚を研ぎ澄ませることが重要で,毎日数分でも構わないので未知の英語を聴く練習を重ねない限りは実力が伸びません。
根本的なリスニング力を付けた生徒であれば,選択肢から会話の方向を予想するなどの上級テクニックも使いこなせるでしょう。
しかしそのためには一定レベルの「実力」があることが前提です。
リスニング第2部
第2部ですが,60語前後の英語を聞くことになります。
ある人物に起こった出来事についての話が半分を占め,その他,アナウンスや文系や理系のトピックに関するものが残り半分を占めるでしょうか。
こちらも第1部と同様,リスニングの基礎体力がものを言いますが,とりあえず解いてみて間違えた問題が一体上で言うところのいずれのパターンに属するものなのか分析することも重要です。
もし,明確な弱点が見つかればそれと同じ内容の英文だけを選んで聴くようにします。
しばらく聞いていると,文章の構成に特徴があることもわかってくるでしょう。
聴き取れない音声が英語のスピーチであれば,まるで自分が相手に語りかけているかのように音読するのが有効です。
二次試験
英検2級の二次試験については先の公式サイトから過去問を利用することができず,2013年のサンプル問題があるだけですが,一次試験を突破できた人の二次通過率は高いです。
私の塾でも7~8割は合格できていますので,それほど心配せずに受験することが重要だと思います。
面接に行くと上のような問題カードが渡され,60語程度の英文と3コマ漫画,そしてカード上の英文を黙読してから音読するように求められ,その後4つの質問をされる流れです。
3コマ漫画の説明を実際にできるのか不安になる方は多いですが,カードを見るとかなり使える表現が印刷されているので,一見自由なようでいて意外と受験者の答えは同じようなものに落ち着きます。
これまでに出題されたテーマとしては,「ダイエット・魚不足・珍しいペット・外国人向けのサービス・食文化・インターンシップ」などと多岐にわたるので,あらかじめ予測するのは難しいです。
それならば,簡単にできることに目を向け,Attitudeの項目で満点を狙うようにしたり,音読のコツを学んで少しでも点数を上げる努力をする方が良いでしょう。
例えば,声を大きく出すことや相手の目を見て話すこと,さらにはあらかじめ挨拶をどうするか決めておくなどしておけば,無策で挑むよりも結果はずっと良くなります。
「面接会場に来るのに道に迷ってしまった。でもそれを想定して30分前に着くようにしていたので良い運動になりました」などと笑顔で伝えるだけでも,面接官のあなたへの印象はだいぶ変わってくるでしょう。
音読では発音に気を付ける他,意味のまとまりごとに一息で読む癖をつけることが大切です。
また,全くちんぷんかんぷんな答えをするくらいなら(これはゼロ点になる恐れがあります),「I beg your pardon?」や「Sorry?」を多用してでも何とか聴き取るようにすれば最低評価とはならないでしょう。
必死さや笑顔というのは思った以上に大切です。
なお,面接における聞き返しは基本的にはOKとされ,沈黙は厳禁ということを肝に銘じておいてください。
以上のことに気を付けて,1つか2つくらい完璧な受け答えができれば高確率で受かります。
まとめ
以上,英検2級の受かり方について,試験自体の概要から問題ごとの特徴,そして対策に役立ちそうなヒントまでをまとめてきましたがいかがだったでしょうか。
中高生が受験する場合,普段学校で英語の授業を受けているわけですし,二次試験の面接も同じように英検を受ける友達と一緒に練習したり,英作文は学校の先生に見てもらったりなど,色々な工夫ができるはずです。
命運を分ける単語(大問1)に関しては何かしらの単語帳を毎日やるべきで,学校で使っているものがあればその索引部分を用いて,大問1の単語のうちどのくらいの単語が載っているのか試しに調べてみてください。
TOEICなどと異なり,英検2級くらいであれば大学受験用の単語帳でもかなりの範囲をカバーできるように感じています。
ただし,リスニングやスピーキングは普段から英語を使っている人とそうでない人とで大きく差が出てくるものです。
とはいえ,音を使った学習というのはなかなかに実践するのが難しいものですし,活字だけでは伝えられる内容には限界があります。
そのような場合は,スタディサプリのようなオンライン教育サービスを使って動画を観ては声出しやリスニングの練習を積むことをおすすめします↓
アプリの強みはリスニングやスピーキングの練習を自分1人でも行えてしまうことです。
これから英検を受けられる方の合格を祈っています。
頑張ってください!