英検の2級についてですが,取得に必要な学力レベルは「高校卒業程度」ということで,多くの学生が目標にしやすい検定試験となっています。
効率面を考えても,中学・高校の授業内容を覚えているうちに取っておくのがベストなタイミングであると言えるでしょう。
もっとも,英語4技能を測定するのにうってつけの英検ですから,社会人の学び直しや生涯学習の一環としても大いに利用することができます。
今や英語の学習教材が簡単に手に入る時代なので,合格に必要な学力と現状の実力差を正しく把握することができれば,具体的な勉強手段に困ることはさほどありません。
逆に,相手の姿が掴めないまま何となく勉強してしまうと,自分が今勉強していることが本当に合格に役立つものなのか疑ってしまうでしょうし,あともう一歩のところまで来ているにもかかわらず途中で諦めてしまいがちです。
そこで今回は,そんな「英検2級の受かり方」について,実際の問題を例に用いながら考えてみることにしたいと思います。
本格的に学び始める前の導入としてお読みいただけると幸いです。
英検2級の概要について知る
英検2級に受かるための第一歩は,大まかな検定内容について知るところから始まります。
実際に問題を解いてその難しさを身をもって体験することになるわけですが,それについては次章以降で解説することにして,本章では全体の問題数や試験時間などを確認しましょう。
なお,当記事では二次試験を別日に行う「一般向け」試験の攻略法についてまとめています。
スピーキング試験までが1日で終わる「1日完結型」の英検については以下の記事を参考にしてください↓
さて,英検の2級では一次試験において,読み・書き・聞くの3技能が測定され,二次試験において話す能力が問われることになります。
一次試験は筆記試験とリスニングから成りますが,前者に属する大問5つのうち,最後の2つが英作文です。
大問1の単語問題こそ10分で解けても,大問6に30分かかることも普通にあるため,時間配分を間違えないようにしないと後に十分な解答時間が残らないことに注意してください。
続くリスニングは決められたペースで進むために時間配分は気にせずに済みますが,試験時間や配点はそこそこあります。
これらの試験で合格点を取ると晴れて二次試験の面接に進むことができ,試験官とコミュニケーションを取りながら話す能力が測定されることになるわけです↓
英検2級の試験内容
筆記試験:短文の空所補充が17問,長文の空所補充が6問,内容一致問題が8問,英作文が2題あり,これらを85分で解く。
リスニング:会話と長文の内容一致選択問題が各15問で,制限時間は計25分。
面接:音読した文章に関連する質問,イラストを説明する問題,それに関する意見を述べる問題,一般的な事柄に対して意見を述べる問題から成る。大体7分の試験時間。
筆記試験とリスニングの間に休みはない他,評価欄では各技能650点満点で得点が付けられるものの,配点は「1問何点」などと具体的には決まっていません。
偏差値的と言えばよいでしょうか,受験者の平均点やバラつきなどを考慮に入れて統計的に得点が算出されることに注意してください。
とはいえ,同一の技能を測る問題内においてはすべてが同じ重みで計算されることをしっかり覚えておきましょう。
一般的に,筆記試験にあるリーディング問題のうち,長文の内容一致選択(大問3)のようなものは,大学入試などにおいて配点が高くなる傾向にあります。
「選択肢を見ただけで解ける文法問題と数百語から成る長文を読んでからでないと解けない問題が同じ配点のはずがない」というのが,普通の人が抱く感想でしょう。
しかし英検の場合,短文のカッコに語句を入れる単語問題(大問1)と長文問題(大問3B)の1問が持つ価値は同じと見なされるのです。
文章内容を正確に理解してようやく正解にたどり着ける1問と,ちょうど試験前に覚えた単語が出てきて瞬時に正解できる1問が同じ価値だとわかれば,
英検では語彙力がすべてだ
と多くの人が口をそろえて言うのも納得できるでしょう。
ところで英検では受験すると間もなく,公式HPで解答が発表となるために自己採点がしやすいことでも有名です。
もっとも,英作文の採点を正確に行うのは至難の業ですが,それ以外の2技能(リーディングとリスニング)は答えを問題用紙に書き込んでおけば,かなり正確に合否判定ができるでしょう。
英作文の採点方法については以下の記事内容を参考にしてください↓
一般的な目安として言えることは,英検2級では各技能60%以上の正答率であればほぼ合格だということです(良い試験であれば,平均点は50%となります)。
ライティング以外でこの程度得点できているのであれば,一次試験の合否発表を待つまでもなく二次試験の準備へと移りましょう!
以上,英検2級について最初に知っておくべきことでした。
次章では過去問を通して自分の弱点を知ることの重要性についてまとめていきたいと思います。
過去問を使って弱点を分析する
英検2級に受かるためには,どの分野も満遍なくできることが重要です。
4技能の分野ごとに650点満点で計算されるわけですから,極端な話,英作文を解くことなくリーディング問題にすべての時間を費やして合格を狙うような戦略は意味を成しません。
人間,苦手なものに向き合えば自分ができないことがはっきりとわかってしまうため,精神的に辛くなりがちですが,弱点部分に向き合うことこそが合格に必要なことですので逃げずにやってください。
英語の勉強では1つの弱点を無くすことで,それとは一見関係がなさそうなところの得点が上がることも多く,結果的に楽ができることに繋がります。
例えば文法の能力を上げることで英作文ができるようになったり,読解の能力を上げることでリスニングの成績が上がったりすることも多いのです。
それに,高校入試を経験したことがある方なら,評定を2から3に上げるために必要な努力と4から5に引き上げるために要した努力の量は,同じ1という上げ幅であっても大きな違いがあることをよくご存じでしょう。
ゆえに,苦手分野をなくすことを第一に心がけましょう。
具体的には得点率が6割に満たない分野から取り組めばよいので,弱点を見つけること自体は難しくありません。
英検のサイトでは直近3回分の過去問が利用できるので,早速1つ解いてみてください。
解答はもちろんリスニング音源まで利用できるわけですから,変な話,あとはWeb辞書を使って勉強するだけでも(教材など何1つ購入せずとも),かなりの対策ができてしまいます。
私がおすすめする過去問のやり方は,
- 問題を印刷して解く
- 解答を見て丸を付ける
- 正答率を算出する
という,極めてオーソドックスなものです。
なお,最初こそ「時間制限あり」にして本番と同条件でやってみますが,もし時間内に終わらないようでしたら,そのまま時間制限を無視して全ての問題を解くようにし,それでも正答率が6割に届かなければ,確実に自分の実力が足りないと判断できます。
解くスピードに関しては,何回か解いているうちに自分に合った時間配分が比較的すぐ身に付くのに対し,実力ばかりは時間をかけて勉強しない限りは自然に高まることがありません。
英検準2級から2級の壁は想像以上に厚く,1年以上の勉強が必要となることから,2025年度から準2級プラスが新しく創設されたので検討してみてください。
逆に,現時点で制限時間内に合格点が取れてしまうようであれば,準1級のテストを目標に頑張ってみるのも良いでしょう↓
最後に,費やす時間の参考となるデータを示しておきます↓
英検2級の解く時間の目安
- 大問1は17問を8~10分で解く
- 大問2は6問を18~20分で解く
- 大問3は9問を24~28分で解く
- 大問4は1題を15分で解く
- 大問5は1題を15分で解く
- リスニングは1部と2部ともに15問からなり,放送の指示通り約25分で解く
問題ごとに対策を施す
それでは最後に,各問題のポイントと対策方法をまとめましょう!
筆記の大問1
大問1は上のような長さの短文を読むか2人の人物による会話を読み,カッコ内に入る語句を選ぶものです。
こういった問題に時間をかけてしまう人がいますが,はっきり言って選択肢の単語の意味を覚えていなければ,どれだけ悩んだところで正解できません。
わからなければ勘でマークすること,そして単語勉強は試験当日までやり続けることの2つを覚えておきましょう!
語彙力が増えてくると,これまで1つもわからなかった選択肢のうち2つ3つは意味がわかるようになってきます。
それだけでも答えが絞られることになり,勘が的中する確率が上がるわけです。
全く知らなければ25%の正解率ですが,選択肢のうち3つの意味を知っていたらどうなるか計算してみてください。
知っている単語内に正解が見つかればそれでOKですし,なかったとしても残りの単語を選べばよいわけですから,正解率は100%となります。
明らかな文法問題は出題されませんが,文法知識がなければ文構造がわかりませんし,大問2以降を解く際の正答率も変わってくるため,学んでおくことは重要です。
筆記の大問2
大問2ですが,AとBの長文があり,ぞれぞれ3つある空所に適した語句を選ぶ問題です。
単語自体は大問1ほど難しくはないのですが,文章の流れを追えていないと答えが1つに決められないものがあったり,論理展開を示すディスコースマーカーを問う出題もあったりするため,こちらは時間をかけた分だけ正答率が上がる傾向にあります。
ゆえに,大問1で時間を無駄にせず,大問2や大問3に時間を使う方が正答率はより上がることになるわけです。
英語の文章の決まり事として,段落を変えるのであれば要点(言いたいこと)も変えなければなりません。
この知識を利用して,文章の流れに合った語句を選んでみてください。
筆記の大問3
筆記試験の大問3はAとBの3つに分かれ,AがEメール,Bがエッセイです。
問題数にも違いがあり,前者は3問,後者は5問あります。
B問題の内容に関しては,文系・理系分野のどちらからの出題になってもおかしくありません。
「私は文系だから理系のことは知らなくて良い」などといった極端な考えでいると,これからの時代,通用しない場面が増えてきてしまいますので,すぐにでも改めましょう。
同じ理由で,国語や社会だけ勉強して数学や理科には手を出さないだとか,英語だけ得意で他の教科には目もくれないといった態度もいけません。
2024年のリニューアル以降は思考力や判断力,表現力を問う問題が増えたので,ぼんやりと読んでいたり,どこかに書かれていないかと探してみたところで正解できないはずです(ただし根拠は必ず文中にあることを忘れないでください)。
大問3の選択肢についても見ておくと,疑問文に答えるもの以外に,文の続きにふさわしいものを選ぶものがあります↓
すぐに答えが見つかればよいですが,消去法を用いると4つの選択肢すべてを読む羽目になるはずで,英文を読むスピードが遅いと質問文を読むのに手間取ってしまうものです。
時間通りに解き切れないという方は,意味が分かっている長文(代表例は英検の過去問)を素早く読む練習を積んでください。
また,読解問題では英語を読んで理解した後に国語力が必要となるため,時間を無制限にして解いても間違ってしまうようであれば,自分の読む力を疑ってみましょう。
その場合は残念ながら,すぐに合格点を取ることは難しいので,大問1の正答率を上げる戦略を取らざるを得なくなります。
国語力は参考書を読むときの速度や理解力にも影響を及ぼすものです。
人によっては現代文の勉強も検討してみてください。
筆記の大問4
大問4は要約問題で,2023年までは大問4のBで出題されていた形式です。
英作文の試験ということで,解答は英語で書きます。
とはいえ,解法は日本語で要約するときと同じ手順を経ることとし,段落ごとに大意を書き出すようにしてみては,あとはそれらを繋げるだけです。
字数制限に応じて逆接部分を省略したり逆に具体例を含めたりしますが,基本的には最低限のことを書くようにすることを心掛けてください。
無理に加筆するより,そこまでの内容を見直して,文法やスペルのミスがないかどうかチェックする方が高得点に繋がりやすいです。
筆記の大問5
大問5ですが,与えられたトピックに対する自分の意見を表明し,その理由を2つ書きます。
語数は80~100語ですが,よくある型を覚えてしまえばそれほど大変な量ではありません。
おまけに,POINTSのところで理由に含められるヒントが3つ与えられているわけです。
言うまでもありませんが,自分が書きやすいと思うものを選びましょう。
ここでのコツは自分が知っている文法と単語のみを使って書くことで,これは,運動部に属する選手が普段練習していないことを試合本番でやろうとしないことに似ています。
その他,問題文の表現をそのまま拝借してみたり,過去問を解いていて自分が書きやすいと思った展開に持ち込んだりする工夫が考えられるでしょう。
先に紹介した英作文の記事に詳しく書きましたが,誤った語彙を使うことや文法でのミスは確実に減点されますし,賛成や反対の立場を明確にしないで書き進めたりお洒落な言い回しを試みたりすると,大抵の場合は時間のロスに繋がって失敗することになるのでおすすめしません。
もちろん,型通りの書き方をすることについては私自身,思うところがあります。
例えば上の問題も
- I think(トピック内容からの拝借)
- First~,Second~,For these two reasons(最初の文の繰り返し)
といったお決まりの書き方を採用するだけでも,かなりの点数が取れてしまうでしょう。
何だか知的活動とはほど遠い感じがしますし,ズルしているような後ろめたさがありますが,英検の2級まではこの態度を許容するようにしてください。
まずは型通りの文章が書けるようになることを最優先にし,それができるようになったら少し自分らしさを足してみたり,より説得力のあるサポートセンテンスを書き足したりしましょう。
リスニング第1部
英検2級のリスニング第1部は男女の会話を聞き,質問の答えとして正しいものを4択から選ぶものとなります。
読まれるスピードは普通に早いですし,たった一度しか読まれないので,何を聞き取るべきか選択肢から判断して臨むようにしてください。
なお,基本的にリスニングは英語の音に対する感覚を研ぎ澄ませておくことが重要で,毎日数分でも構わないので,未知の英語(話の結末を知らない英会話)を聴く練習を重ねない限りは実力が伸びません。
根本的なリスニング力を付けた生徒であれば,選択肢から会話の方向を予想するなどの上級テクニックも使いこなせるでしょう。
しかしそのためには一定レベルの「実力」があることが前提です。
リスニング第2部
第2部ですが,60語前後の英語を聞くことになります。
ある人物に起こった出来事についての話が半分を占め,その他,アナウンスや文系や理系のトピックに関するものが残り半分を占めていることが多いでしょうか。
こちらも第1部のときと同様,リスニングの基礎体力がものを言いますが,とりあえず解いてみて間違えた問題が一体上で言うところのいずれのパターンに属するものなのか分析することも重要です。
もし,明確な弱点が見つかればそれと同じ内容の英文だけ選んで聴くようにします。
しばらく聞いていると,文章の構成に特徴があることに気付けるかもしれません。
聴き取れない音声が英語のスピーチであれば,まるで自分が相手に語りかけているかのように音読するのが有効です。
二次試験
英検2級の二次試験については先の公式サイトから過去問を利用することができず,10年以上前のサンプル問題が1つあるだけですが,一次試験を突破できた人の二次通過率は高いです。
私の塾でも7~8割の生徒は合格できていますので,それほど心配せずに受験することが重要だと思います。
面接に行くと上のような問題カードが渡され,60語程度の英文と3コマ漫画,そしてカード上の英文を黙読してから音読するように求められ,その後4つの質問をされるといった流れです。
3コマ漫画の説明を実際にできるのか不安になる方は多いのですが,カードをよく見ると使える表現がいくつも印刷されているので,一見自由なようでいて,意外と受験者の答えは同じようなものに落ち着く傾向にあります。
これまでに出題されたテーマとしては,「ダイエット・魚不足・珍しいペット・外国人向けのサービス・食文化・インターンシップ」などと多岐にわたり,あらかじめ予測するのは難しいです。
それならば,簡単にできることに目を向け,Attitudeの項目で満点を狙うようにしたり,音読のコツを学んで少しでも点数を上げる努力をしたりする方が良いでしょう。
例えば,声を大きく出すことや相手の目を見て話すこと,さらにはあらかじめ挨拶をどうするか決めておくなどしておけば,無策で挑むよりも結果はずっと良くなります。
面接会場に来るのに道に迷ってしまいました。でもそれを想定して30分前に着くようにしていたのでむしろ良い運動になりました!
などと笑顔で伝えるだけでも,面接官のあなたへの印象はだいぶ変わってくるでしょう。
音読では発音に気を付ける他,意味のまとまりごとに一息で読む癖をつけることが大切です。
また,全くちんぷんかんぷんな答えをするくらいなら(これはゼロ点になる恐れがあります),「I beg your pardon?」や「Sorry?」を多用してでも何とか聴き取るようにすれば最低評価とはならないでしょう。
必死さや笑顔というのは,思った以上に合否に繋がる要素です。
なお,面接における聞き返しは基本的にはOKとされ,沈黙は厳禁ということを肝に銘じておいてください。
以上のことに気を付けて,1つか2つくらい完璧な受け答えができれば高確率で受かります。
まとめ
以上,英検2級の受かり方について,試験自体の概要から問題ごとの特徴,そして対策に役立ちそうなヒントまでをまとめてきましたがいかがだったでしょうか。
中高生が本級を受験する場合,普段学校で英語の授業を受けているわけですし,二次試験の面接も同じように英検を受ける友達と一緒に練習したり,英作文は学校の先生に見てもらったりなど,色々な工夫ができるはずです。
命運を分ける単語(大問1)に関しては何かしらの単語帳を毎日やるべきで,学校で使っているものがあればその索引部分を用いて,大問1の単語のうちどのくらいの単語が載っているのか試しに調べてみてください。
TOEICなどと異なり,英検2級くらいであれば大学受験用の単語帳でもかなりの範囲をカバーできるように感じています。
ただし,リスニングやスピーキングは普段から英語を使っている人とそうでない人とで大きく差が出てくるものです。
そもそも,音を使った学習というのはなかなかに実践するのが難しいものですし,活字だけでは伝えられる内容には限界があります。
そのような場合は,スタディサプリのようなオンライン教育サービスを使って,動画を観るようにしては声出しやリスニングの練習を積むことをおすすめします↓
1次試験の対策ももちろん可能で,アプリの強みはリスニングやスピーキングの練習を自分1人でも行えてしまうところです。
これから英検を受けられる方の合格を祈っています。
頑張ってください!