今回は,漢字が苦手な小学生に役立つ「マンガを使った勉強法」を紹介してみたいと思います。
とはいえ,「マンガで学ぶ漢字」などといったタイトルの参考書を購入するわけではありません。
あくまで,娯楽として読むマンガを教材に使うということです。
今回紹介する方法は,勉強習慣が身に付いていなかったり勉強が嫌いだったりする子どもが,楽しみながら漢字に慣れ親しむことを主な目的としています。
そもそも効率面だけを考えるのであれば,漢字ドリルをガリガリやらせる方が良いでしょう。
とはいえ,今回紹介する漢字勉強法も,上手に工夫して行うことができれば要約力や論理的思考力をアップさせることもできますし,ちょっとした空き時間に行うこともできるため子どもとのコミュニケーション手段としても有効です。
マンガを勉強に使う理由
マンガを嫌いな子どもはいないでしょう。
純粋に読んでいて楽しいですし,元気をもらえます。
読み終わると何かしらの教訓が得られるものも数多く,登場したキャラクターのように生きたいと思ったり,ためになる知識や考え方を学べたりするはずです。
映画の主人公に影響されてその言動を真似るようになったり,日本各地を巡る旅行系のTVゲームで遊ぶことで,地理や特産物に詳しくなったりすることも同じような理由から来ているのでしょう。
より勉強色の強い使い方をする場合,例えば語学目的ですと,あるマンガの日本語版と英語版を2種類用意し,同じ内容を別の言語で読み比べすることが考えられます。
最初に日本語で大まかな内容を頭に入れてから英語版を読むことで,未知の英単語に出会ったときの内容を推測しやすくなり,いちいち止まることなく多読することができるようになりますし,教科書で学ぶときと比べて,ずっと楽しく実用的です。
もっとも今の時代,英語版さえあればそれを日本語に機械翻訳することも容易いです(日本語版から英語にするのは正確性が評価しにくいのでおすすめしません)。
その他科目においては,歴史や数学をマンガで学んだ方も多いのではないでしょうか↓
イラストが理解の助けになりますし,思った以上に詳しく書かれているものも少なくありません。
自分が慣れ親しんだキャラクターが説明してもらえれば,より身近に感じられるでしょう。
これは小学館のような版権物を抱えている出版社が得意としていることで,ドラえもんやコナンといった人気キャラクターが登場する教材は昔から世に出ています。
全部がマンガで書かれていなくても,導入部分にだけマンガを使った参考書も目にするでしょう。
こちらに関しては,学習したい単元の全体像をぼんやりとでも把握してから,いよいよ教科書を使って詳しく学んでいくことで,勉強を苦手と感じるきっかけになりがちな「初印象で難しいと感じてしまうリスク」を大きく減らすことが可能です。
また,私がこれまでに助けられた経験に,源氏物語をマンガで読んであらすじを理解することがあり,大学入試のときに出題があった際,大変有利に働きました。
今回のテーマは「小学生の漢字」ですので,次章ではそれとマンガの関係についてみていくことにしましょう!
マンガで漢字を勉強するときの手順
マンガの対象年齢が厳密に何歳になっているのかは定かではありませんが,幼年漫画や少年・少女漫画は小学生以上が対象とされ,年齢の低い小学生でも読めるようにルビが振ってあるものが多く,セリフが多い作品だとかなりの数の漢字が登場してきます。
ここでは「名探偵コナン」を例に説明していきますが,第1巻だけからも以下のような漢字に出会うことができました↓
コナン第1巻に登場する漢字
窓,害,構造,神経,策,危ない,約束,事件,鉄棒,観察,基本,遊園地,助手,拝見,故障,除外,救世主,鋼鉄,切断,器具,博士,薬,成分,不思議,密輸,危害,要求,使用済み,預かる,解決など
思った以上に数があるように感じていただけると嬉しいのですが,このような漢字をただ個別に書き出して暗記していくだけだとあまりにも芸がありませんので,なんとか工夫して学びたいものです。
基本的な考え方
そこで,小学生向けにマンガを使った漢字勉強法では,以下の物を準備するようにします↓
- マンガ
- ノート
- コピー機または写し紙
- ハサミ
- 糊
これらをどのように使うかですが,
最初にマンガを使って未知の漢字を含むコマをいくつか選んでは,それらをコピーして,ハサミで切り取ったものをノートに貼って,文章を創作する
のが基本ルールです。
私が塾で生徒に行う場合,私と生徒の対決方式で学ばせることが多いのですが,その際,できあがった文章を評価する第三者が別に必要となります。
例えば,先の画像にまとめたものだと,以下のような文章が創作できました↓
起承転結を意識した文章例
起(場面や状況を伝え興味を引く):宅配業者の車の中でコナンたちは死体を発見します。
承(物語を展開し厚みを持たせる):そこで,携帯電話を使って刑事に検問を頼むことにしました。
転(驚くべき重大な出来事が起こる):しかし,電波が悪く,高木刑事も阿笠博士にも繋がりません。
結(オチ部分で決着させる):結局助けてくれたのは,道を譲らないことに腹を立てたバーボンでした。
紹介用ということで真面目な内容にしていますが,受け狙いでも構いません。
こういった文章をノートに書き出すだけでも良いのですが,使用した漢字さえ書き留めておけば,口頭で説明してもらうだけでも十分です。
4コマ漫画の作り方
なお,塾での指導は「2時間」という時間制限がある中で完結させる必要があることから,何が起こったかを伝えるダイジェスト形式(起承転結を意識した4コマ漫画が理想形)で仕上げさせることが多いです。
先のものだと以下のような4コマ漫画が出来上がります↓
なお,上記はコピーの代わりに市販の写し紙を用いたものです。
写し紙を使うデメリットは時間がかかることで,上のものだと30分くらいかかっています。
とはいえ,自分の好きな表情や絵を用いることができますし,セリフも自分で書き込めるメリットがある他,ペープサート教材(竹串に貼り合わせて人形劇のように演じる学習法)として用いることも可能です。
トレーシングペーパーだと高いですが,子ども用の写し紙は30枚が300円くらいで買えます。
4コマ漫画を作るのは難しいので,特に最初は1つの事件の内容を4コマ漫画で要約してもらうだけでも構いません。
評価の仕方
小学生は作った物に対して評価されることを楽しみにしているものなので,完成した文章はすぐさま評価すべきですが,その際の基準として,以下の2つを主に設定しています↓
- 文章としての面白さ,または分かりやすさを「内容点」として評価する
- 出てきた漢字は「構成点」として評価し,1と合わせて総合得点を算出
例えば,過去の授業の中では以下のようなプリントを配りました↓
内容点ですが,2人の生徒を競わせる場合は「勝ち=10点;負け=0点」とすることが多いものの,場合に応じて「とても良い=10点;良い=5点;普通=3点」などとしても構いませんし,あくまで楽しむことを目的に点数を設定することが重要です。
とはいえ,高学年で学ぶ漢字の点数を高くすることで,難しい漢字をできるだけ選んでもらえる工夫をしてもらえたらと思います。
例えば,上に示した画像の例では,「恐らく・刑事・携帯・譲る」が中学レベルなので7点,「電源・宅配」が小6レベルで6点,「検問」が小5レベルなので5点と採点しました。
なお,漢字がどの学年のものに該当するかを調べる際には,参考書を1つ購入する(旺文社の「小学漢字1026字の正しい書き方」など)か,文科省のサイトにある学年別漢字配当表からも学習指導要領にある漢字について確認することができます。
上の画像に示した弐や四や伍は特殊ルールとなりますので,こうしたものは教える小学生の性格に合わせて設定するようにしてください(ちなみに「最終手段」というのはいつも結末に使う変顔だったり,すべてを無に帰すようなセリフのことです)。
なお,連続するシーンばかりを使って文章の構成に頭を使わなくなったり,複数の漢字が含まれるコマばかりを選ぶようになったりすることはできるだけ避けるように誘導してください。
マンガの内容を上手にまとめることは要約の練習になりますし,得点を競うことによるゲーム性もある他,指導者が子どもとコミュニケーションを通して信頼関係を芽生えさせるという副次的な効果も期待できます。
復習の仕方
しばらく続けて,登場してきた漢字が結構な数が貯まってきたら,総仕上げとして上のような復習テストを作って解かせることで勉強効果を高められます。
子どもが自主的に学んでいるようであれば,これまでに学んだ漢字の中からランダムに10問選んでは1問10点の確認テストを作成してやってください。
そのときに間違えた漢字は,翌週の食卓の時間などに何度も尋ねて書かせるようにすれば長く忘れません。
付箋に書いてトイレに貼り付けておくでもOKで,しつこく思い出させることが重要です。
次章では,漢字勉強に適したマンガの選び方のポイントを解説しましょう。
小学生の漢字勉強法に使うマンガの選び方
私は小学生に漢字を教える際に「名探偵コナン」を使うことが多いです。
この理由としては,
- 推理マンガなので論理的である
- セリフが多い
- どの巻からも始めやすい
ことが挙げられますが,以下で漢字勉強に使うマンガを選ぶときのポイントについてまとめます。
学びがあるものを選ぶ
名探偵コナンは,論理に矛盾がないように書かれている他,豆知識も多く登場してくるところが特徴です。
ゆえに,起承転結がわかりやすいですし,例えば第45巻の釣りの回では「ボウズ;お祭り;ウキ;テトラポッド」といった用語に詳しくなれた他,足音が防波堤に響いて水中の魚を驚かせてしまうような豆知識も登場してきました。
難しい漢字や用語の意味を聞かれた際は,子どもとの会話を発展させて好奇心を刺激できるチャンスですので,色々と教えてあげましょう!
コナン率いる少年探偵団は小学生なので,会話がその年代に沿ったものになるところも大きいですね。
英語を映画で学ぶ際,自分の年代や性別に近いものを観るように指導されることも,同じ理由が根底にあります。
セリフ量が多いものを選ぶ
コナンですが,セリフ量は以下のようにすごく多いです↓
これだけのセリフ量があれば,繰り返し読むだけでも多くの漢字に触れることができるでしょう。
なお,コナンのマンガを購入するときの注意点として劇場版は選ばないようにしてください。
というのも,こちらは映画そのままのコマ割りになっているため,どうしてもセリフが少なくなってしまうからです(読み切りなので買いやすく,フルカラーで見やすいなどの長所はあるのですが)↓
子どもと一緒に古本屋に出向くのも良いでしょう。
「漢字を頑張るなら買ってあげる」などと約束を交わしながら,一緒に選ぶようにしますが,最新版でなければ多くは100~300円ほどで購入できるはずです。
どこから読んでも始めやすいものを選ぶ
名探偵コナンという作品は,前の話とのつながりが少なく,どの巻からでも読み始められる点が使いやすく,複数巻購入する際にはあえて連続しないように買うことで,前の巻との繋がりを少なくし,より多くのシーンが登場してくるように工夫できます。
もちろん,まったく違うマンガを組み合わせるでも構いません。
例えば,週刊雑誌を購入していて古紙回収日にどうせ捨ててしまうくらいなら,コピーではなく直接ハサミで切り取って使うことも容易でしょう。
もちろん,裏面のコマは使用不可になりますが,その分,連続したコマを使う可能性は低くなります。
まとめ
以上,小学生が漢字を勉強する際にマンガを使う方法についてでした。
マンガというのは一見勉強に不向きだと考える人が多いものの,名探偵コナンのようにセリフや内容に多くの学びがある作品もたくさんありますし,特に小学生の学びにおいては,苦手意識を植え付けないことが大切です。
そのためにも好きなマンガを選ぶようにしては,ゲーム要素や創作要素を取り入れ,さらには写し紙やブギーボードのような筆記ツールなどで楽しませながらコミュニケーション手段の一環のように取り組むようにしましょう。
その他,マンガを買ってあげる交換条件に文章作成をノルマにすることで多少の強制力を生むことができるでしょうし,延々とマンガで学べというわけでもないので,機を見計らって漢字ドリルや漢検学習に移行してください。
国語学習としては,作文だったり別の通信教育に繋げたりすることもできます↓
スマホが発達した現代において,漢字を書く機会は著しく減少しました。
そういった意味では,平仮名を正しい漢字に変換できさえすれば良いのでしょうが,正確な漢字が書けなかったり読めなかったりする人というのは,どこかしら信頼できない雰囲気を醸し出してしまいますし,実際,漢字変換する際のミスも多いです。
私自身,この前病院に行って「耳鼻咽喉科」の漢字がうまく書けなかった際は非常に恥ずかしい思いをしました。
漢字を苦手とする小学生が周りにいる方は,是非,今回紹介した勉強法を試してみてください!
最後までお付き合いいただき,ありがとうございました。