スマホが普及してから年月が経つほどに新しいサービスが登場するのは世の常ですが,良い思いができる一方で,問題点が指摘されることも目立ってきました。
その矛先は,主にインターネットに関連するものの他,SNSやアプリを介したものに向いているわけですが,これらを使うこと自体に何ら問題はなく,その使い方に注意を払うべきだということを忘れてはいけません。
そして,使用する際の善悪を測るための物差しとなるのが「情報モラル」であり,学習指導要領によると,これは「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方や態度」と定義されています。
ここで一度,基本的な考え方や過去の失敗例を知り,対処法について学ぶことで,未知の問題に対しても正しく判断できる力を身に付けましょう!
情報モラルにおける基本的な考え方
現在,SNS上での誹謗中傷やいじめ,またはネットやゲームに過度に依存することによる健康被害など,スマホの普及に端を発する有害性や犯罪が問題視されています。
いじめの中でもネットで行われるものは全体の3~20%程度と少数派ですが,無視していいことにはならないでしょう。
つい先日には,YouTubeを運営するグーグルの日本法人と,クリエイターを抱えるUUUMやカバー株式会社などからなる誹謗中傷対策検討会が設置されたばかりです(参考:誹謗中傷対策検討会のプレスリリース)。
また,文科省による学校保健統計調査では子どもの視力が低下傾向にあるとされていますし,第三者との接触による重大事件が連日世間を騒がせていることは,ここで具体的に言わずとも皆さまご存じだと思います。
とはいえ,いったん世の中に知れわたってしまった以上,スマホを禁止するわけにもいきません。
昔は「学校にそんなものを持ってくるな」で済んでいた話ですが,GIGAスクール構想においてはICTも必要な文房具の1つとして見なされています↓
親の指導方法についても,「~してはダメ」と禁止事項を増やすようでは失敗と見なされ,子どもは陰に隠れてこそこそと使うようになり,周りの大人に相談しない人間関係が構築されてしまうからです。
ゲーム機も然りで,金庫に隠したところで,あらゆる手を駆使して突破されてしまいます(そのことを知らないのは親だけだったりします)。
そのため,むしろ積極的に使わせるようにして,賢い使い方を身に付けさせることが正解だということをまず最初に覚えておきましょう。
ChatGPTに代表される生成AIについても同様で,使用自体が今後禁止されることはありません。
とはいえ,スマホを子どもに自由に使わせてしまうようでは問題です。
使用前に,各自が情報モラルについてしっかりと学んでおく必要があります。
これは何も子どもに限らず,大人でも情報モラルを身に付けていない人が多いように思われますが,幼少期にスマホが普及していなかった時代に育った人であればそれも当然なわけで,それほどまでに教育が大切だということを物語っているわけです。
より具体的には,以下に関する知識を身に付けた上で,未知の場面に遭遇した際にどう対処するかを正しく判断していくことが重要になってきます↓
- 情報発信による他人や社会への影響
- ネット上のルールやマナーを守る意味
- 情報には自分や他人の権利がある
- 情報には誤ったものや危険なものがある
- 健康を害する行動
学習指導要領をみると,「自分や他人の権利を尊重し,情報社会での行動に責任が持てる」,「犯罪被害などの危険が回避できるよう,情報を正しく安全に利用できる」,「情報機器の使用が健康に与える影響について理解している」などと書かれていましたが,言いたいことは同じでしょう。
ちなみに,情報モラルは学習基盤である情報活用能力に含まれるものの1つです。
これらは,学校の内外に関係なくICTを活用することが増えるほどに意識できるようになりますが,次章では関連するデータをいくつか提示してみようと思います。
また,保護者が子どものためにできることや情報モラルを学ぶのに有益なサイト紹介もしていますので参考にしてください。
子どものICT活用にまつわるデータ
子どもがICTを使うことによる被害ですが,主に,健康的な被害と犯罪に関わるものに2分できます。
後者は知らず知らずの間に被害にあっていたりもしますので,予め知識として頭に入れておくことは重要です。
まずは内閣府発表の調査結果をみてみましょう!
ここで注目すべきはインターネットの利用時間です。
10歳以上の小学生でも4割近くが自分専用のスマートフォンを持っている時代ですが,結果は平日1日あたり小学生(10歳以上)が214分,中学生が277分,高校生は345分ほどとなっていて,趣味・娯楽には全学年を平均して169分ほどの時間を費やしていることが判明しました。
毎年増加傾向にあり,令和元年と4年度のものを比べると1.5倍程度にまで増えています。
その利用目的ですが,勉強に使用することも意外と多い(7割以上)ですが,小学生は動画とゲーム,中学生は動画と検索とゲーム,高校生は動画と検索と音楽を聴くが多いのが8割以上を占めているのが特徴です。
毎日2.5時間の利用で年間の授業時間に相当するなどと言われますが,趣味娯楽だけでも超えてしまっているので,後述する人間の特性を念頭に入れつつ,それだけの時間を費やす価値があるかどうかについてはよく考えておくべきでしょう。
スマホを使うことで,慢性的な寝不足になってしまったり相手にやり取りを強要したりするようになれば,それは依存と呼べるものなので病院での治療も検討してください。
ゲームや動画は止め時が難しく,失敗を重ねるのも将来に繋がる経験にはなりますが,
その他の健康面に関しては,
- 正しい姿勢で画面との距離が近くなり過ぎない
- 連続使用時間が長くならないようにする
ことに注意してください。
また,著作権や肖像権のような権利について学び,不適切なサイトに惑わされないことが重要です。
余談ですが,数年前に親戚の1人が我が家で写真を撮って,その様子をブログで公開したそうなのですが,その際GPSがオンだったがために撮影場所の位置情報が画像データに取り込まれてしまい,我が家の場所が流出しまったことがありました。
サイバーパトロールで指摘されるまでわからなかったそうですから,自分が間接的に被害にあうこともあるわけです。
あまりに鮮明な画像ですと,そこに書かれた情報から色々と特定されてしまったり,肖像権などの問題も出てきますので,これまた注意しておきましょう(友達と映った画像をSNSのトップ画にする際にも許可が要ります)。
コミュニケーションの際に注意すること
人間の性質を念頭に置く
言うまでもありませんが,人とのコミュニケーションは難しいものです。
例えば,1回でも誤った発言をしてしまえば,それは地雷となって後から取り消せなくなります。
また,背景知識(生きてきた環境)などの違いにより,ある人の常識が通じなかったりしますし,読む力が不足しているために,意図をくみ取ってもらえないこともあるわけです↓
言葉はその人の鏡なので,言っていることを聞いていればその人の偏見や先入観が見えてきます。
とはいえ,対面であれば問題にならないようなことも,表情が見えなくなるだけで誤解が生じてくるものです。
それではビデオ会議はどうかというと,これもまた雰囲気が伝わりづらいため,場所を共有するミーティングには及びません。
匿名性のある電子掲示板やチャットなどでは,参加している年齢はもとい,生きてきた背景もさらに雑多になります。
社会では入学試験や入社試験などもあって,ある程度同じような境遇の人が揃うところが,ネット上ではそうなっていません。
同じ組織にいる人においても難しいコミュニケーションが,顔も見えない不特定多数を相手にすることでより難しくなるのは当然でしょう。
人間は,あえて仲間外れを作ることで自分たちの絆を確かめようとする生き物です。
また,親切心で言ったことも逆効果になったり,正義感から誹謗中傷行為に及ぶ「○○警察」などと揶揄される人も出てくるわけですから,ネットでの発言は慎重に行ってください。
情報の偏りを前提に聞く
情報は発信された時点で何らかの意図が含まれるのが自然です。
ニュースのインタビューを行う際には,質問者が望む答えを切り取って使うこともあります。
加えて,情報は伝言ゲームのように,多くの人を介すごとに信ぴょう性が低くなっていくものです。
とある政治家を批判する人を見つけたときは,「それでは,その人の良いところを挙げてみてください」と言ってみてください。
それで何一つ答えられないようであれば,その人の発言に説得力はありません。
この他,根拠について調べ直したり,事実と推測や感想を区別できるようにクリティカルシンキング的な態度ができるようだと理想的です。
世の中について懐疑的になることは重要だと思います。
その一方で,気持ちに余裕を持っておくことでコミュニケーションで嫌な思いをすることは少なくなるでしょう。
揚げ足を取って誰にでも噛みつくのではなく,万人にやさしく接することができれば理想的です。
親が子どものためにできること
子どもに接する態度を工夫する
親が子どもに接する時間は多いので,家庭における立ち振る舞いは大きな影響を及ぼします。
ここでは4つの工夫を紹介しましょう↓
- 会話の話題に出す:ネットの良い点や悪い点を伝えるようにします。情報モラルについては会社でも取り上げられることが多いでしょうから,親子がともに学んでいけると良いですね。
- 言い方を工夫する:先述したように,「~してはダメ」というのではなく「~しよう」という口調を中心に具体的に理由も添えて説くようにしましょう。反対はしても,代替案を一切言わない人にならないでください。禁止事項を作らないことで,子が親に相談しやすい環境づくりにも役立ちます。
- 子どもの使い方に関心を持つ:子どもが使っているSNSを無理のない範囲で一緒にやってみるなど,寄り添うことも重要です。
- 家庭でのルールを決める:勝手に物を買わない,名前や住所を載せない,夜11時を過ぎたら部屋に持ち込まないなどの決まりを作っている家庭が目立ちます。ちなみに,小学生では8割を超える家庭でルールを決めていて,中学生だと7割,高校生になると5割弱というのが,先ほどの内閣府による調査結果にありました。
フィルタリングを利用する
各携帯会社が提供するように義務付けられているのがフィルタリングサービスなのですが,その存在についてはご存じでしたでしょうか。
平均して4割程度がフィルタリングを使っているわけですから,警察庁発表のフィルタリングを利用していてSNS関連の被害にあった児童の使用割合が1割ちょっとであることを考えると,被害に遭う確率を低くしてくれていることは確かです(参考:警察庁の発表資料)。
特定のリストにあるサイトへのアクセスを禁止する「ブラックリスト方式」の他,リスト内のURLだけにアクセスが可能な「ホワイトリスト方式」の2つがあります。
ちなみに,解除するタイミングで事件に巻き込まれる子どもが多いので,変遷期には特に注意が必要です。
総務省のアンケートによると,解除時期で1番多いのが高校1年生,そして2番目に多いのが中学1年生だとされています(参考:総務省の報道資料)。
フィルタリングに似たものとしてペアレンタルコントロールがありますが,これは子どもがアクセスできるサイトやアプリなどを親が管理できるものとなり,身近なものだとゲーム機の機能として備わっているものが有名です。
万一のときの選択肢を増やす
被害にあったときは証拠を押さえることが一番で,匿名のサービスであっても,犯罪となれば加害者を特定することができます。
メールであれば削除はせず,書き込みについては消されてしまわぬようにスクリーンショットで撮っておくのがおすすめです。
もちろん,各方面に相談するのも良い選択でしょう。
いじめや家庭内の問題に悩んでいる子どもであっても,文部科学省の24時間子どもSOSダイヤルや法務省による子どもの人権110番が利用できます。
前者はいつでも電話がかけられる点が,後者はLINEやメールなどでも相談できる点がユニークです。
情報モラルを学ぶのに役立つサイト
ここまでに学んできた内容ですが,私自身,これまでに色々なサイトを読みながら理解してきたものだったりします。
そこで,本章では家庭で情報モラルを教える際に役立つページをいくつか紹介するので,興味のあるものを選んで,各自で学びを深めるようにしてください↓
ネット社会の歩き方では,動画形式の教材から,イラスト教材,シミュレーション教材,そして冊子教材までが揃っていて,幼児を相手にしても利用することが可能です。
図鑑のように詳しく調べられるものもあれば,マンガを読む感覚で最近の事例について理解を深めたり動画で学んだりすることもできます。
GIGAワークブックとうきょうでは,ワークブック形式で情報活用力をアップさせることが可能です。
大変詳しい内容で,チェックリストやグループワークができるように空欄交じりの教材がダウンロードできるのですが,複数人が意見を出し合いながら学ぶものなので答えはありません。
大人の道しるべでは,その名の通り,成人になるにあたって役立つ内容(お酒やクレジットカードや少年法など)を中心に学ぶことができます。
簡単なマンガを読んで理解を深めたら,クイズを解いて解説を読むことで理解を深めましょう。
同じ法務省の作成したもので,人権について学べるページもあります。
情報科社会の新たな問題を考えるための教材ということですが,作りこまれたYouTube動画が新鮮です。
対象年齢が小1から中学1年生までと低年齢寄りなものの,数分間の動画は解説付きで問題点がわかりやすく気軽に観ることができます。
インターネットトラブル事例集は,「ネットで親身になってくれた相談相手に会いたい」などの具体的な事例ごとに解説してあるのが特徴です。
全部で16個と学びやすく,よくある質問からはリンクを辿ることでより知識を深めていけます。
性的な犯罪に対しては,警察庁のページから啓発資料を読んでみてください。
まとめ
以上,長くならないように適度に字数を抑えつつも,情報モラルについて大切な事柄をまとめてきましたが,何らかの学びがありましたら幸いです。
情報は正しく活用すれば,日々の生活をより充実したものに変えてくれます。
多才なクリエイターが作った動画は多くの学びを含んでいますし,色々な人とコミュニケーションをすることは楽しいものです(実際,今の小中高生が1日の自由時間の多くをインターネットに費やすと聞かされたときも私は驚きませんでした)。
しかし,その一方で,知らず知らずのうちに誰かを傷つけたり,犯罪に巻き込まれてしまう危険性もはらんでいるわけで,情報モラルを学ぶことなしに好き勝手に使うことは危険です。
多人数で弱者を責め立てるのは人間の特性ですし,責任の所在を他人に擦り付けることは昔から行われていることでしょうから,匿名という群れの中に逃げ隠れて,こちらに悪意を向けてくる人間が出てきてもおかしくありません。
もちろん,悪いことをする人がいなくなる世界を実現することが理想なのですが,今日もメールボックスにたくさんの詐欺まがいのメールが届いていたのを見るに,残念ながらその道は険しいように思いました。
みなさまには本記事の内容や紹介したサイトをもとに,情報モラルについての知識を充実させていただき,それでも扱いに困るような際には,「これは自分の成長や他人の幸せに繋がるのか」を基準に判断していただけたらと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。