スタディサプリでは,7月と8月を夏期と見なしています。
そして,この期間に使われることを意図した「季節演習講座」が用意されているわけですが,別料金を取られずに利用することが可能です。
夏は「受験の天王山と」呼ばれており,誰もが本気で受験勉強に取り組む時期であるだけに,自分が周りよりもリードを広げる(偏差値を上げる)ためには,効率的に学習するだけでなく,各教科の基礎固めを徹底する必要があります。
なお,「基礎」といってもどこまでのレベルを指すのかが分かりにくいため,夏の間に到達しておかなければならないレベルを肌で感じ取ることも重要で,それによって勉強の目標が定まり,高いレベルでのやる気を維持できるわけです。
ただし,独学しているだけだとなかなかその状態に至ることができず,周りに同じくらいの熱量でもって頑張っている同級生が少ない高校生や宅浪生などは,特に苦労することになります。
そのような時にこそ夏期講習の出番となるわけですが,当記事を読んで,スタディサプリにある講座の特徴や種類についての理解を深めたら,自分の夏の勉強計画に加えられないかどうか検討してみてください。
スタディサプリの夏期講習の特徴
1年かけて受験勉強をする場合,夏休みは基礎を固められる最後のタイミングです。
確かに,2学期に入ってからも基礎固めはできるのですが,その分,応用知識を身に付けるための時間が減ってしまうことになるため,「できる限り,夏の間に基礎固めを終えてもらいたい」というのが,私を含めた塾講師たちの本音でもあります。
夏休みになって,新しい問題集を大量に買い込んでは最初のページから取り組み始める生徒も多いですが,最近になって部活を引退し,ようやく受験勉強を開始することになった高3生は,勉強の仕方すら把握していないことが多いわけです。
そのため,あらゆるところで余計な時間を取られることとなり,立てた学習計画通りには決して進まないのが現状だったりします。
そのため,各科目ごとに「ここだけは夏の間にやっておきたい」という最低限の内容を,夏期講習期間にまずは終えるようにし,その上で残った時間をさらなる学習にあてるのが正しい考え方です。
難しい問題に取り組むのは大いに結構ですが,偏差値60以下の大学に確実に受かるためにも,弱点科目の予習と復習,つまりは足りない知識の補完に多くの時間を割く方が,良い結果に繋がりやすいことは,塾で多くの生徒をみてきた経験上,確からしいことのように思われます。
とりわけ,理科や社会のような暗記科目においては,直前期に詰め込み学習を行なう前に,重要とされる範囲だけでも,夏の段階で一通りは目を通しておきたいものです。
浅く広く学ぶスタイルを採用して構いません。
しかし,これをしておくかどうかで結果は大きく変わってきます。

ちなみに,スタディサプリにはかつて「特別講習」と呼ばれる別サービスが存在していました。
これは,今あるスタディサプリ高校・大学受験講座とは別物で,講師がリアルタイムで授業を行い,チャット欄でコミュニケーションができるもので,夏だけの利用で料金は2万円以上しました。
当時に開講されていた講座のラインナップを見てみると,「基礎完成」や「総まくり」といった名を冠する講座が数多く用意されていたものです↓
このことから,スタディサプリ側は,通常講座以外に上のような内容を学ぶ必要性を感じていたことがわかり,特別講習がサービスを終了した今においては,各自が工夫して学ばなければなりません。
簡単に言ってしまうと,
- 夏までに学んだ内容のうち,身に付きにくいとされる内容(通年講座で学べる)を見直しする
- 夏のうちに予習できる内容は早めに完成させておく
ことの2点です。
秋以降は応用問題を解くことが増えてきますが,このとき,いくつかの基礎知識を駆使して解くことが少なくありません。

それでは次章で,実際にあったスタディサプリの夏期講習のラインナップをまとめてみることにしましょう。
スタディサプリの夏期講習のラインナップ
スタディサプリの夏期講習ですが,2026年3月31日までは「季節演習講座(夏期)」として一部が存続しているので,そちらを用いていただけたらと思います(ただし,以下で紹介している数学IIIの講座などは存在しません)。
内容的には,
- 演習講座
- 短期集中講座
に分けられ,前者は本番に向けての実戦力を身に付けることが目的となり,秋以降の学習の先取りができるのに対し,後者は,まだ学んでから日が浅い会員向けに,特定の単元を集中的に学べる講座です。
もっとも,両者ともに通年講座を受講し終わっていることが前提となっているため,そちらが未習の方がいきなり季節演習講座で学んでみたところで,あまり得られるものがないことに注意してください。
スタディサプリの夏期講習としては,全部で以下の講座が用意されていました↓
夏期講習の教科別講座数
英語5講座,数学8講座,国語8講座,理科9講座,社会11講座
以下で,教科別に詳しくみていきますが,折角なので,担当講師ごとにまとめてみることにしました。
講師名に心当たりがない方は,スタディサプリの講師紹介!気になる先生を見つけようを確認してみてください。
英語
関正生先生の講座
- スタンダード&ハイレベル英語<文法編>
- トップ&ハイレベル英語<文法編>
関先生の担当する内容は通常講座のときと同様,文法です。
前者は共通テストや日東駒専の入試レベルで,後者はMARCH以上の難関大レベルとなっています。
ただし,MARCH志望であっても文法が苦手な方であれば,前者の講座を完璧にするところから始めましょう。
その後,余裕があれば後者も受講するようにしてください。
肘井学先生の講座
- スタンダードレベル英語<長文編>
- 難関私立大英語
- 難関国公立大英語
英語の長文は肘井先生の講座で扱います。
スタンダードレベル英語は入門的な位置づけで,講義数は3つしかないので気楽に受講できるでしょう。
しかし,スタディサプリを利用している受験生の多くは英語に対する意識が高く,夏の時点ですでに標準以上のレベルに達している方も多いように思われます。
残りの2講座はそんな方にピッタリの内容で,実際の入試問題を使った出題となるため,難関私立大英語では正誤問題,国公立大英語では自由英作文にも挑戦してみてください!
数学
堺義明先生の講座
- 理系数学
- 難関大理系数学
- 最難関大理系数学
- 数学III基礎完成<複素数平面編>
- 数学III基礎完成<極限編>
- 数学III基礎完成<微積分編>
最初の3つは,志望校のレベル別に夏期講習期間中に押さえておきたい知識をまとめた講座です。
堺先生が担当する講座にはもれなく数IIICの内容が含まれており,上では複素数・級数・極形式・微積・体積・媒介変数といった入試で狙われやすいテーマが目立ちます。
その他,数IIICの基礎部分に弱点がある方は,夏の時期に完成させる必要があることがわかるでしょう。
山内恵介先生の講座
- センター数学IA
- センター数学IIB
数学はIAIIBだけの範囲でよい方は,山内先生が担当するものを受講してください。
講座の名称は「センター」となっていますが,内容としては,共通テストや私立入試における誘導付きのマーク問題も扱っているので,今後の入試にも十分対応できる,実践的でかつ数学IAIIBの重要単元を広く学べる講座です。
国語
柳生好之先生の講座
- 難関私立大現代文
- 早大現代文
- 難関国公立大現代文
- 最難関国公立大現代文
早稲田大学を志望する方は,難関私立大のものから始めて,早大現代文へと進んでください。
東大や京大,一橋大を志望する方であれば,難関国公立大現代文→最難関国公立大現代文の順で受講します。
確認するところはどちらも基礎部分からですが,難関大を志望する人はやる量を増やすことが大切ということがわかるでしょう。
なお,後述の伊藤先生による「日本史<文化史編>」でも,古文や現代文で出題される文学史を扱っているので,そちらも併せて受講しておきたいところです。
小柴大輔先生の講座
- スタンダード現代文
現代文が苦手な方は,小柴先生の講座を通して実力アップを図りましょう!
問題の難易度は標準レベルで,難問や奇問の類は見られず,問題形式は記述式と選択式の両方が含まれていて扱うものは評論や小説と,バランスが取れていて取り組みやすい講座だと思いました。
岡本梨奈先生の講座
- 古文<読解演習>
- 古文<ハイレベル読解演習>
- 漢文<演習>
岡本先生の講座ですが,どれも基本的な文法・単語力が身に付いていることが前提です。
その段階から怪しい人は,夏期講習が開始になる前に通年講座で彼女の授業を一通り視聴しておきましょう。
内容ですが,1つ目と3つ目は共通テストや私大に対応しており,過去問を使って実践的な演習を行います。
一方で,国公立の記述問題には対応していません。
古文のみハイレベルが存在しますが,これはMARCHレベル以上の志望者が対象で,上智や早稲田の過去問を扱います。
理科
坂田薫先生の講座
- 化学基礎完成<理論編>
- 化学基礎完成<無機編>
- 化学基礎完成<有機編>
- 化学基礎完成<高分子>
化学では無機と有機の学習が遅れている方が多いので,坂田先生の講座で化学反応式についてであったり,異性体や脂肪族の内容だったりを復習しておきましょう(今では利用できないので,代わりに通年講座で同内容を学ぶようにします)。
高分子は以前,秋期講習で扱っていた内容ですので,余裕があれば学んでみてください。
中野喜允先生の講座
- 物理基礎完成<力学編>
- 物理基礎完成<電磁気編>
- 物理基礎完成<波動・熱力学編>
どれもGMARCH・理科大・地方国公立以上を受験する方が対象ということで,基本の確認から標準レベルの入試問題までを解くことになります。
通年講座にある「高3スタンダードレベル物理」を視聴してから受けるべきと書かれていましたが,その理由は,そこで学んだ知識を活用することが本講座の目標となっていたからです。
牧島央武先生の講座
- 生物基礎完成<遺伝編>
- 生物テーマ別対策<計算・グラフ対策>
生物はラインナップが少なく,牧島先生の上記2講座のみです。
とはいえ,計算やグラフ対策に関しては秋以降で悠長にやっていることができないので,夏の間に時間をかけて取り組むようにしましょう。
遺伝の法則についてしっかりと学んでおきたい方は前者を受講してください。
受験で理科を2科目必要とする方は,生物に関してはこの2つだけで良しと割り切り,残りの時間を理科の残り1科目に回すことをおすすめします。
社会
伊藤賀一先生の講座
- 日本史速効総まくり<実践演習>
- 日本史速効総まくり<現代史編(昭和・平成)>
- 日本史速効総まくり<文化史編>
- 日本史速効総まくり<年代暗記編>
- 倫理速効総まくり
- 政経・現社速効総まくり
日本史の全分野をわずか3講義で総復習できてしまうという,驚くべき講座が1つ目の「実践演習」です。
それ以外にも,普通にやっていると最後まで残ってしまう近現代史を夏のうちにかじってみたり,入試頻出の宗教史・美術史・教育史を学んだりもできます。
歴史の流れを学ぶ際,年代暗記ができていると,その時代背景が浮かびやすいでしょう。
伊藤先生は幅広いジャンルに慣れ親しんでおり,実際,スタディサプリの中学講座では地歴公民すべての教科を1人で教えているくらいですから,高校の倫理,政経や現社もお手の物です。
どれも,広範囲にわたって抜けた知識がないかどうかを復習できる講座となっています。

村山秀太郎先生の講座
- 世界史 速効総まくり<欧米史中心編>
- 世界史 速効総まくり<東部ユーラシア史編>
- 世界史 速効総まくり<中東・アフリカ現代史編>
- 世界史 速効総まくり<前近代編>
村山先生の講座は,共通テストや国公立,私立大受験などの区別がなく,すべて基礎レベルからの受講が可能です。
全講座ともに5つの講義からなり,基本事項と因果関係を中心に解説が進んでいきます。
とはいえ,問題をあらかじめすべて解いてくることが求められるので,人によっては予習段階で通年講座を確認する必要があることに注意してください。
求められるレベルは思った以上に高く,早慶レベルの正誤問題を解くことも予習内容に含まれていました。
鈴木達人先生の講座
- 地理<テクニック徹底マスター>
地理ですが,前半の4講義で正誤問題を中心に入試に必要なテクニックを学び,後半2講義のテーマは統計の内容です。
地理問題特有の解法を学ぶというのは夏期講習に行う内容にふさわしく,共通テストはもちろん,本試験にも対応できます。
スタディサプリの夏期講習の料金
冒頭でも述べたように,スタディサプリの夏期講習(夏期演習講座)を受講するのに別料金は不要です。
とはいえ,今回みてきた講座は実は過去において税込26180円で販売されていたものだったりします。
1講座だけでも5478円していたこともあり,確かに当時とは視聴期限の長さに差がつけられてなどはいるものの,かつてのスタサプ生はこのくらいの料金を夏期講習期間中に支払っていたことは覚えておくべきでしょう。
例えば,問題集を購入する費用の目安になります(予備校で夏期講習を受けると1講座で2万円くらい取られることは普通にあるので,安かったことは確かです)。
ただし,スタディサプリにある基本講座の内容が理解できていなければ,その先のステップに進むことは考えられないので,まずは1学期に学ぶべき通年講座の内容を完璧に理解することから始めてください。

ちなみに,まだ夏が始まって段階で当記事を読んでいる方であれば,スタディサプリで学んでから予備校の夏期講習を取るという選択ができます。
夏前にはキャンペーンが行われることも少なくないので,以下の記事をチェックして1ヶ月の間だけでも学んでみてください↓
まとめ
以上,スタディサプリの夏期講習についてのまとめでした。
夏に限りませんが,学力を高める上で重要なことは,今できない問題のうち,最も簡単に理解できる難易度のものから,少しずつ知識を増やしていくことです。
私はかつて,大手予備校の夏期講習において,センター試験で数学IIBが6割も取れないレベルだったのにもかかわらず,東大志望だからと「東大数学」を受講してしまい,全く役に立たなかったことをよく覚えています。
申し込んだ講座の数も,受験科目が多かった関係でつい取りすぎてしまい,満足に予習や復習ができないまま講習に臨むことになった挙句,数十万円もの講習費用を親に負担させ,かなりの迷惑をかけてしまいました。
当時にスタディサプリの夏期講習を利用できたら,このような悲劇は防げたでしょうし,似た犠牲者を増やさないために当記事を書いた次第です。
学校が休みの間,学習ペースをキープするためにも,1日の決まった時間に受講するようにすることで習慣化できます。
もちろん,いつでも視聴できるところがスタディサプリの魅力ですので,やる気にまかせて受講しまくるというのも,料金は変わりませんし,若者らしい態度で大いに結構です。
是非,この夏はスタディサプリで頑張ってみてください!
なお,各講習期間における一般的な過ごし方については,スタサプを使う高校生は講習期間をどう過ごすべきかにまとめてあります。
併せてお読みいただけたら幸いです。