勉強用のアプリが少しずつ教育界に受け入れられてくると同時に,反転学習(反転授業)と呼ばれる勉強法について耳にすることが増えてきました。
2017年10月には,反転学習を取り入れた楽天の英語学習サービスである「Rakuten Super English」が本格的に開業し,世間を賑わせました。
今回は,そんな反転学習のメリットとデメリットに加え,実際のサービスを紹介しながら,2020年以降の学習で注意したいポイントについて考えてみたいと思います。
反転学習とは
そもそも「反転学習」という言葉を知らない方も多いかと思います。
「反転」と付くからにはそもそも元となる学習の形があり,それを反転させた学習スタイルを「反転学習」と呼ぶわけです。
従来の学習の流れというのは,
- 学校で先生に何かを習う
- 問題集を自宅に持ち帰って復習する
このようなものでした。
ですが,学習アプリを始め,オンラインの動画授業などの豊富な教材が自由に利用できるようになった現代において,教育の方法は変わりつつあります。
反転学習においては,
- 生徒が教材を使って未習範囲を独学する
- 学校で疑問点の解消や反復演習,発展事項を扱う
といった具合に授業スタイルが反転するわけです。
さて,この反転学習,従来の学習法に比べて一体どのような効果があるのでしょう。
次章で反転学習のメリットについてみてみましょう!
反転学習のメリット
反転学習のメリットの1つ目は,自分で理解しようという自立性が養われるということです。
通常の塾に通っていると講師に依存しすぎてしまい,誰かに習わないことには自分で何もできない(しようとしない)子どもが生まれてきてしまいます。
講師は教えるプロですから説明はわかりやすく,学校で1週間かけて学ぶ範囲であってもわずか2時間の授業で終わらせることは簡単です。
そしてこの場合,時間対効果は最高のように思えます。
しかしその一方で,生徒側としては「誰かに習った方が簡単にすぐわかるようになるんだから,わざわざ進んで何かをやろうとしなくていいや」と無意識的に刷り込まれてしまい,講師に言われたことだけをやる機械と化し,自分からは何もしなくなってしまうわけです。
反転学習では,予習の時点で大事なポイントを自ら発見し,わからなかった部分についてはどこがどのようにわからなかったまで明確にし,さらには実際の授業で講師に積極的に質問しなければなりません。
さらに,そのときの質疑応答を介して,講師(他人)と意思疎通を取る時間が増えるわけで,自分の意見を正確にわかりやすく相手に伝える練習にもなります。
このようなアウトプット中心の授業で培われる能力というのは,今後の入試改革(教育改革)の柱ともいえる大切な能力であり,今後,試験や社会でますます問われるようになっていくはずです。
反転学習のデメリット
逆にその反面,教材や教師の質さらには管理が徹底されていないと反転学習はうまくいきません。
反転学習で大切になってくるのは予習段階ですが,そこでうまく学習できることが大切です。
塾に週に1回通う場合,授業時間はたかが数時間です。
残った6日間は何もないわけですから,予習に使える時間の方が圧倒的に長いことになります。
ですが,そんな膨大な時間があっても,冒頭部分で言ったような条件が揃っていなければ,貴重な自由時間を無意味に過ごしてしまうでしょう。
いくら「自分で予習を頑張ってやれ」と言っても,わかりにくい教材であれば理解できないでしょうし,難しくてつまらなければ長続きはしません。
また,どういうペースでどこまでやったらいいのかをしっかり教えないと,ちょっと学んだら「今日はもうお終い」などと考えてしまうものです。
予習がうまくいっているかどうかを管理する作業も大切になります。
そういった,うまくいかない場合を先回りして教育できるところが,先に述べた楽天であったりZ会やリクルートだと言えるでしょう。
反転学習を成功させるためのポイント
上記企業から学べる「反転学習をうまく進めるためのポイント」ですが,以下の3つが主なものとなっています↓↓
- モチベーションを維持する
- すき間時間を利用させる
- 大人が管理できる
まず最初に,モチベーションの維持に役立つのは楽しさです。
楽しいからこそ勉強は続くわけです。
もちろん勉強内容が楽しいと思えるのであれば申し分ありませんが,大体の子どもにとって勉強は辛くて苦しいもの。
ですから,その苦しみに耐えて自分が成長したことを実感させては,「あー,よかった!」だとか「やればできるんだ!」といった嬉しさを感じさせる必要があります。
褒めてやったり,自己肯定感を高めるための工夫をしましょう↓↓
次に,最近の子どもの勉強事情ですが,平日はやることが多すぎてまとまった時間はほとんど取ることができません。
そのため,学校の行き帰りのちょっとした時間や寝る前のわずかな時間,さらには週末を利用して効率良く学習することが求められています。
例えばZ会の公立高校向けの教材は週に1時間の復習だけで学校の勉強についていけるよう工夫されていますし,ディアロやスタディサプリ,Rakuten ABCmouseではスマホやタブレットを用いて「すき間時間」に取り組めるような学習教材の利用が前提です↓↓
関連
さらに,ITツールという性格上,保護者や監督者が子どもの学習の進歩状況を逐一確認できるため,親と子と先生の間には共通の理解が生まれることになります。
子どもが塾で頑張っていることを親も管理画面を通して理解していることがさらなる好循環へとつながっていくわけです。
上で名前を挙げたスタディサプリについては,2017年の9月から渋谷区のすべての区立小中学校において,自主学習教材としての利用開始が始まりました。
生徒1人に1台のタブレットが配られ,子どもがいつでもどこでも学べる学習環境が同区では整備され,文科省に学びのツールとして認定されたのは記憶に新しいです↓↓
子どもの学習環境は変わっていきますが,それに合わせて教師や親も意識改革を行っていくべきだというのが,同年に行われた「教育ITソリューションEXPO」でのセミナー内容でした。
そこではしきりに「タブレットは新しい文房具だ」と言われていましたが,こういった真新しいサービスも積極的に使っていただけたらと思います。
最後に
少しずつ反転学習の成果が認められ,自立的な生徒の育成と対話重視の教育スタイルを掲げる塾やサービスが増えてきました。
成果を上げているところでは,教師の質はもちろん,モチベーションの維持やすき間時間を意識した教材,そして親が子供の勉強の進歩状況を管理できるシステムがしっかりしています。
逆に言えば,古い価値観にとらわれて,新しいIT技術に見向きもしない塾やサービスは,未来から目を背けた怠慢な経営をしていると考えられるので,選ぶ側としては避けたいところです。
もちろんデジタルとアナログの間に埋まらない溝があるのも事実ですが(例えば紙の本とデジタルの本),それぞれの持つ特徴を生かした使い方をしては,その場に応じて使い分けていくことこそ,今後の社会でますます重宝される能力の一つではないでしょうか。
是非,本記事で指摘した点を意識して,学び場所を選ぶようにしてみてください。