大学受験の化学で困ることといえば,有機化学が最後まで終わらないことでしょう。
特に,高分子化合物の対策は後回しになりがちで,そのまま受験期を迎え,医学部や獣医学部などの入試で大問1つ分出題されてしまい,「ただ覚えるだけなんだから,面倒くさがらずにやっておけばよかった」と後悔するまでがお決まりです。
私も昔,「糖類だけ勉強していけばなんとかなるだろう」と高を括っていましたが,試験会場で目にしたのは油脂やゴムの問題ばかりだった覚えがあります。
令和時代になって,より網羅的な出題が多くなった大学入試なだけに,弱点分野を無くすことを最優先にすべきで,高分子化合物に関しては有機化学から独立させて考えるくらいがちょうど良いのかもしれません。
もっとも,有機分野に登場する物質が登場してきても,総合問題らしく,理論化学や無機分野と絡めた出題も多く見られるため,得点力を高めるためには総合的に学ぶことが必要です。
その際に便利なのがタイトルにある「スタディサプリ」で,ここでは有機分野に関する内容から始めて,その速習方法についてまとめた後,化学全体の講座についても言及したいと思います。
化学を得点源にしたい方や,これからスタサプを使おうか迷っている方は是非参考にしてください!
スタディサプリの有機化学講座の特徴
スタディサプリで有機化学を学ぶ場合,以下の講座が利用できます(化学基礎の内容が終わっていることが前提です)↓
- ベーシックレベル化学(第15講以降)
- 高3スタンダードレベル化学<有機編>
- 高3トップ&ハイレベル化学<有機編>
これ以外にも,季節演習講座や共通テスト・志望校対策講座にもいくつか有機内容が確認できはするものの,メインは上に挙げた通年講座であり,ここでもそれらに限って解説していきます。
必要に応じて,以下の記事をお読みください↓
さて,先に挙げた3つの講座ですが,扱う問題の数と難易度が下に位置するものほど難しくなります。
なので,時間に余裕がある場合,ベーシックレベル化学から進めるのが基本ですが,大学受験生が素早く全範囲を学び終えたい場合,高3生向けのどちらか1講座だけを終わらせるようにします。
このとき,基礎知識が疎かであれば「スタンダードレベル」を選んでください。
後述しますが,こちらの講座は予習が不要かつ問題のレベルがそこまでではないので,負担を感じることなく進めていけるはずです。
もちろん,基本知識は必要ですが,わざわざ高1・高2化学にまで戻って始める必要はありません。
具体的な手順については次章で解説しますが,基本は1日1講座のペースとし,もしも一度に2講座分,視聴できる時間があっても決して欲張らず,余った時間は問題集を解く時間だったり他教科の学習だったりに充てるようにしてください(その上で次の講座に進むのであれば構いません)。
GMARCH以下の大学(共通テストで70点を目標とするレベル)であればスタンダードレベルで十分対応可能なので,化学の有機は無理なく素早く完成させ,別の弱点教科を伸ばす方が受験ではうまくいきます。
冒頭でも述べたように,有機分野の一部分について詳しく知っているよりも全体の知識が揃っていることの方が大切なので,広く浅くであっても全範囲を網羅的に学び終えてしまうことの方が重要です。
逆に,教科書や問題集が手元にあり,学校の授業内容は多少覚えているという方で難関大を目指すと言うのであれば,トップ&ハイレベルの講座を受講するようにしてください。
また,高3生向けの講座を2つとも受講する必要はないでしょう。
スタンダードレベルでは難しい表現を使わなかったり,あえて難しい内容に触れなかったり(不飽和度の計算など)といった違いはありますが,授業での解説内容にほぼ違いはありません(左がスタンダードレベル,右がトップ&ハイレベル化学です)↓
一方で,扱う演習問題についてはレベル間での差が大きいです↓
左がスタンダードレベルで,右がトップ&ハイレベルになりますが,演習問題の難易度が明らかに高く,全ての問題で計算が必要となるので時間がかかるわけですが,受験生御用達の「セミナー化学」という参考書を普段使っている方は,以下のように捉えておくと理解しやすいでしょう↓
スタディサプリと市販参考書のレベル
ベーシックレベル化学=プロセス~基本問題レベル
高3スタンダードレベル化学=基本問題レベル
高3トップ&ハイレベル化学=発展問題レベル
もっとも,セミナー化学を用いて独学することと比べれば,スタディサプリの学習はさほど大変ではありません。
というのも,講義動画で詳しい解説が行われるからです。
人に習うと断然取り組みやすさが違いますし,極端な話,全部の問題に間違えたとしても,その後復習してできるようになればまったく問題ありません。
ただし,このときの注意点として,理論化学の分野に弱点があると解説が理解できないことに注意してください。
例えば,上で示した高3トップ&ハイレベル化学の問題においても,有機化学の知識以外に理論化学で学ぶ「中和」や「物質量」,「ファントホッフの法則」といった知識が併せて必要でした。
共通テストや難関大の問題では総合力が問われる出題が多くみられ,一見有機化学の問題のようでありながらも化学全体の知識が試される問題があることに注意しましょう(その場合,有機化学の知識不足が間違いの原因とはならないわけです)。
本章の最後に,各種テキストのボリュームと,解くことになる問題数をまとめておきます↓
スタサプ有機化学講座の学習量
ベーシックレベル化学=331ページ・175問
高3スタンダードレベル化学=164ページ・58問
高3トップ&ハイレベル化学=208ページ・82問
先ほど挙げたセミナー化学の問題数が,プロセスから基本問題まで400問弱なので,スタディサプリの演習量が極端に少ないわけではありません。
スタディサプリを使った有機化学の速習法
ここでは有機化学の速習方法についてみていきますが,前章の内容に従って受講すべき講座が1つ決まったら,早速使っていきましょう!

予習する
高3トップ&ハイレベル化学では最初に予習をしますが,テキスト内容に不明点が見られた場合,そこを教科書や準拠問題集を使って復習してから授業に臨むのが基本方針です。
とはいえ,1講義あたりに目を通すべき要点はわずか2ページ程度ですので,そこまで予習に時間はかからないでしょう↓
例えば,上の第3講の場合ですと,幾何・光学異性体やシス・トランス型の区別,鏡像体,不斉炭素原子という用語に慣れておくことが必要なので,問題集のまとめ部分や基本問題を解いて確認しておくようにします↓
とはいえ,予習段階においてはそこまで頑張りすぎないことも重要です。
実際,講義で演習問題を解くときや講義後に復習するときの方が多くの時間や気力を必要とするわけで,予習での理解が多少甘かったとしても,講義で「あれ,これ何だっけ?」と気になったときに調べれば構いません。
基本はそれでOKですが,広範囲にわたってあまりに分からないようであれば,その講だけスタンダードレベルの演習問題を解いてみるのも良いでしょう。
一方,高3トップ&ハイレベル化学以外の講座では予習が不要です。
これら講座については,いきなり動画を視聴しては,完璧になるまで復習しましょう!
講義を視聴する
高3講座の講義時間は1つにつき60分程度で,高1・高2のベーシックレベルは30分程度に調整されています。
1つの講義は要点を説明し終わったところや演習問題を解き終わったところなどのキリのよいところで複数のチャプターに分けられ,トップ&ハイレベル化学の進め方は次のようなものです↓
- 要点講義(24分24秒)→問題解説(23分42秒)→問題解説(25分24秒)
- 要点講義(17分44秒)→問題解説(9分39秒)→要点講義(10分28秒)→問題解説(4分43秒)
要点を解説するチャプターを視聴する際は,ただぼうっとテキストを読んで済ませることがないようにしてください。
そこでは知識の整理が行われ,高3トップ&ハイレベル化学の授業では応用知識について語られることもあるため,取りこぼさないように手を動かしては,一字一句をテキストに書き込むようにしましょう!
上の第3講ではマレイン酸とフマル酸の溶解度,融点,さらには電離定数(第2段階まで)の違いにまで踏み込み,その理由について講師の坂田薫先生と一緒に考えることになりました。
「なぜこのような現象が起こるのか」,「どのような順番で反応が進むのか」などを深く理解することこそが,思考問題中心の難関大入試攻略に役立つわけです。

復習する
講義時間内に理解しきれなかった部分については,たっぷりと時間をかけて復習します。
速習する場合,時間を長くかけすぎないように注意しますが,貴重な時間は主に復習作業に充てるようにしてください。
速く学んでみたところで全く身になっていなければ,それはただの時間の無駄遣いになってしまうでしょう。
「何か学んだはずだけれど,思い出せない」といったことがないよう,自分の気持ち(わからないという気持ち)に正直になってください。

復習方法ですが,自己流で構いません。
テキストを読み,問題をただ解き直すだけでなく,「化学図録」のような参考書を使ってビジュアルで確認してみたり,以下のような分子模型を使って考えてみたりすると勉強になります↓
上のレベルを目指すのであれば,「化学の新研究」のような詳しい参考書を使って調べるのがおすすめです。
例えば,先ほど登場したマレイン酸はフマル酸と比べると登場頻度が少なく,異性体のときくらいにしか出番がない不憫な物質ですが,以下のように調べ上げることができました↓
マレイン酸は極性が強く水によく溶ける(有毒)のは極性が強いからである。また,フマル酸よりも融点が圧倒的に低い(フマル酸の300℃に対し133℃)理由は,分子内水素結合(写真の①の部分)をするため,分子間の水素結合(②の部分)の数が少なくなるからとされる。第1電離定数が高いのは,水素が電離し,残りのカルボキシル基のH原子を引き付けて分子内水素結合を作って安定化するからであるが,それゆえ第2電離は起こりにくく,第2電離定数はフマル酸より小さい。
ゆとり教育と詰め込み教育の記事のところでも語りましたが,1問1問を大切にして,深いところまで理解しておくと忘れにくくなります。
もちろん,こういった調べものはテキストに書き込んでおきましょう!
先の授業動画で扱った演習問題にまったく手が出なかったようでしたら(解答が出せず,ただ講義動画を観るだけだった場合は),復習段階で再度解き直してください。
講義を聞いたときは理解できても,自分でいざやり直してみるとできないことが多々あります。
学んだ直後だからと油断することなく,心してやってみましょう(同じ「できる」であっても,早くできたのであればそれは大きな成長です)。
仕上げに「確認テスト」を解きますが,これは全く新しい問題であるものの,講義内に登場してきた知識で解ける内容になっています↓
これは高3トップ&ハイレベル化学の例になりますが,演習問題と比べてずっと簡単です(解説がなく,解答のみが手短に書かれているのはそのためです)。
必ず正解するようにしましょう!
また,その日の復習だけで終わりとはせずに,数週間経った頃に演習問題だけを解き直すことも重要です。
授業まで観返す必要はありませんが,再度間違えてしまった問題があれば,動画を見返してみても良いでしょう。
これもまた,その1問に対する印象を深める目的があります。
理論・無機化学を含めたスタディサプリの化学講座
講座を担当するのはすべて坂田薫先生で,全部で14個の講座が存在します↓
- 高校3年生向け=全12講座
- 高校1・2年生向け=全3講座(1講座が高3と共通)
以下で具体的な講座名を挙げていきましょう!
高校3年生向け
高校3年生向け講座は通年講座だけでなく,各種対策講座や季節演習講座にまで及ぶことに注意してください↓
- 高3スタンダードレベル化学<理論編>
- 高3スタンダードレベル化学<有機編>
- 高3化学<無機編>
- 高3トップ&ハイレベル化学<理論編>
- 高3トップ&ハイレベル化学<有機編>
- 高1・高2・高3化学基礎
- 共通テスト対策講座化学基礎
- 共通テスト対策講座化学
- 東京大学化学対策講座
- 京都大学化学対策講座
- [冬期]スタンダードレベル化学
- [冬期]トップ&ハイレベル化学
赤色で示したものはすでに有機講座として紹介したものを,そして青で示したものは化学基礎を扱ったものを表します。
レベル別に複数講座が存在する他,特定分野に限って学習できることが魅力です。
高校1年生・2年生向け
- ベーシックレベル化学
- ベーシックレベル化学基礎
- (高1・高2・高3化学基礎)
なお,例によって赤色は有機講座(ただし全部ではなく一部),青は化学基礎講座となり,カッコで示したものは旧課程の講座となります。
高1生と高2生とで学ぶ内容は同じですが,英数と比べて化学はそこまで積み重ねが必要な教科ではありません。
とはいえ,高3になるまでに全範囲に目を通しておき,遅くとも高3の夏までに通年講座の内容を完璧に理解するペースが通常です。
まとめ
以上,スタディサプリの高校・大学受験講座から有機化学の授業を取り上げ,その内容と速習方法についてまとめてきましたがいかがだったでしょうか。
今回の要点について書き出してみると以下のようになります↓
- スタサプの有機化学講座は主に3つある
- 高3スタンダードレベルは基礎知識が乏しい方向け
- 高3トップ&ハイレベル化学はGMARCH以上の志望者向け
- 予習は高3トップ&ハイレベル化学のみで必要
- 講義中は手を動かしながら聞く
- 復習では問題を解き直し,疑問点を残さない
- ただ視聴するだけの,身にならない学習は避ける
できない問題を解けるようになったときにこそ学力はアップするものなので,復習の際は,なるべく頑張って食い下がるようにしてください。
「ノルマは1日1講義」などと決め,大体以下のような目安時間になります↓
- 予習は0~30分
- 講義は90~120分
- 復習は30~60分
ただし,復習は別日に回すことが望ましいため,2日かけて1講義が終わる計算です。
有機分野に限れば,この学習ペースで2ヶ月もあれば全範囲をマスターできます。
もちろん,速く学んだ分,忘れるのも早くなるため,もう1ヶ月は演習問題や参考書を解き直す時間を取ることが必要になるでしょう。
これからスタディサプリを使われる方は,以下のページでお得情報がないかどうかを確認してから始めるようにしてください↓
最後までお付き合いいただきありがとうございました。