大学入学共通テストの試行調査や試作問題のまとめ

AD/PR

大学入試センターから「大学入学共通テストの試行調査(プレテスト)」の日程が発表されたのは2017年のことです。

従来のセンター試験が廃止になることは大きなニュースで,多くの人の注目を集めたことを今でも覚えています。

しかし,実施直前の2019年になると,英語の成績提供システムと共通テストの記述式問題の導入が突如見送られることになり,さらには新型コロナウイルスの影響も相まって,共通テストは中々に厳しい船出となりました。

それまでの間に大規模な試行調査が行われてきており,すでに多くのデータが出揃った状態でのドタバタ劇だったわけですが,教育界での大きな変化というのは10年単位で起こるものです。

センター試験に関しては実に30年も続きましたし,その前の共通一次が実施されたのは10年間でした。

その他,学習指導要領の改訂も同様のペースで行われています。

こういった節目の時期には試験科目や内容に大きな変更が施されることが多く,今回の記事では,共通テストの準備段階として行われた「試行調査や試行問題に対する理解」を深めていくことにしましょう!

なお,本番(完成形)の詳しい実施内容につきましては,以下の記事を確認してください↓

共通テストの試行調査の実施について

2017年10月6日に,大学入試センターの方から試行調査に関するアナウンスがありました。

具体的にどのような報告だったかと言うと,

大学入学共通テスト(以下,共通テストと略します)の問題を仮作成したので,受けて感想を聞かせてください。

といった内容になります。

その規模は実に大きく,初回の試行調査を実施したのは全国にある約1900校の高等学校と中等教育学校(協力校)です↓

初回の試行調査協力校

全国には高等学校が約5000校しかないわけですから,4割近い学校を巻き込んでの一大ムーブメントとなったわけです。

初回の実施日は2017年11月でした。

先に紹介した記事で述べたように,共通テストではこれまでのセンター試験よりも深い理解が求められ,思考力や表現力を重視した,いわゆる「新形式の問題」が出題されることになっています。

これは,2020年の教育改革において,今後の時代を担う人材が備えるべき能力が新しく定められたからです(参考:新学習指導要領と「生きる力」について)。

実施元である大学入試センターが配布した資料に目を通してみると,試行調査を行う意図として,

  • 生徒の解答状況を分析し,今後の問題作成に役立てる
  • 記述式でどのようなトラブルが想定されるか見極める

という2点が主に挙げられていました。

共通テストにふさわしい高品質な出題がされていることはもちろん,記述式の問題に関しては客観性がしっかりと保証されているか(採点官によって採点にばらつきが出ないか)だったり,採点し終えるまでの一連の業務を迅速に行うことができるかだったりも検証しています。

マークシートでない答案用紙だと,機械が自動で処理することができないわけで,私も仕事で採点業務を行っていた時期がありますが,デジタルで添削業務ができる時代になったとはいえ,自分の目で評価基準を逐一確認しながら採点してくと,どうしてもある程度の時間を要するわけです。

続く2018年2月に行われた2回目の試行調査は,初回と比べるとやや小規模なものとなり,英語の試験を158の協力校(6720人)で実施するとともに,受検上の配慮(点字問題など含む運営)が十分かどうかの検証も行われました。

さらに,同年の11月には試験会場を協力校から実際の大学へと移し,最終調整も兼ねた本番さながらの試験が大規模で実施されたわけですが,このときに受検した高校生の人数は約10万人にも及んだわけです。

以下で,当時のスケジュールとその内容について確認しておきましょう↓

試行調査から共通テスト実施までのスケジュール

平成29年度分:2017年11月(英語以外)+2018年2月(英語)

平成30年度分:2018年11月(全教科)

平成33年度分:2021年1月(第1回目共通テスト)

このように書くと,本番を除いて試行調査が全部で3回行われたように見えるのですが,平成29年度は英語とそれ以外の教科とで時期を別にしただけなので,実質2回分のテストです。

また,上の画像内で「試行調査(プレテスト)」という書き方が目立つのですが,これまで単に「プレテスト」と呼んでいたものを,「実施の趣旨がわかりにくい」という意見を踏まえてより詳しく呼ぶようにしたという経緯があります。

管理人
管理人
よって,正しくは「試行調査」と呼ぶべきものです。

 

 

各回の試行調査の試験形式について

それでは実際に行われた2回分(2年分)の試行調査を用いて,試験の形式(解答形式・実施科目・試験時間など)について簡単にまとめていきましょう!

これらの問題については,以下ページにある「平成29・30年度試行調査(プレテスト)」の先からダウンロードすることができます↓

第1回(英語以外)

第1回の試行調査(2017年11月13~24日実施)における,科目の種類や試験時間,受検者数は以下の通りです↓

平成29年度分の英語以外の試行調査概要

英語以外の出題は11月にまとめて実施されました。

なお,1回目のプレテストで記述式の問題が出されたのは国語と数学IAの2科目においてのみです。

記述式専用の大問が1つ追加された形になるため,従来のセンター試験よりもその分だけ試験時間が長くなりました

  • 国語:80分→100分
  • 数学IA:60分→70分
管理人
管理人
厳密に言えば,マーク式の問題も従来のものと違いがあり,教育改革が目指す深い知識や思考力を問う新傾向の問題が混ざっていたことは覚えておきましょう。

 

第1回(英語)

1回目の試行調査のうち未実施だった英語は,2018年2~3月にかけて以下の条件で実施されました↓

試行調査第1回目英語

英語は問題の制作元をどこにするかで議論がありましたが,しばらくは大学入試センターが作った試験を利用する予定とのことです。

英語の民間試験を利用する話につきましては,以下の記事にまとめたように見送りとなっています↓

英語の試験科目は大きく分けてリーディング(筆記)とリスニングの2つからなり,前者の大問数は6つで時間は80分です。

難易度はCEFRの記事で述べたA1~B1レベルの問題で構成されていました。

いきなり,第1問から必要な情報を読み取る問題になっています↓

試行調査英語の第1回第1問

従来の発音やアクセント,語句整序問題は「読むこと」に当たらないため,筆記のところでは出題されませんでした

一方でリスニングの試験時間は30分となり,読み手に英語の非ネイティブが登場する場面も見られました。

このときのリスニングでは,すべての問題が2回繰り返し読まれる「A問題」と,1回しか読まれない「B問題」の2つのバリエーションが用意され,その結果の比較が行われたのが印象的でした(問題自体はほぼ同じです)。

最も難しかったのは,メモを取りながら解答を考える第5問でしょう↓

試行調査英語第1回第5問

全体的に,要約となっているか複数の情報を総合して答えを判断する出題が多く,有識者の間では

実力差がはっきり表れる良い問題に変わった。

と高評価だったことを付け加えておきます。

 

第2回

2回目のプレテストは2018年11月に行われました。

「A日程」と「B日程」の間で実施日や実施科目が異なっていたり,実際に受ける生徒の学年も異なっていたりしたのが特徴的でした↓

  • A日程:11月10日実施。科目は国語と数学①。高2生対象。
  • B日程:11月10日と11日実施。科目は全科目。高3生対象。

試験内容と試験時間について,表にまとめたものが以下です↓

試行調査第2回の試験概要

受検生の多くが気にしていたであろう記述問題ですが,出題されたのは,今回も国語と数学Iにおいてのみで,解答用紙を見てみると国語は3問(20~30字・40~50字・80~120字)あり↓

第2回試行調査の国語解答用紙

数学においては,画像右に見られる記述用のスペースが設けられていました↓

第2回試行調査の数学の解答用紙

なお,1回目の英語リスニングで物議を醸した音声の読みあげ回数は,1回読みと2回読みを混在させた出題方式へと変更になっています。

それでは次章で,これら2回のテストの分析結果をみてみましょう!

 

 

共通テストの試行調査の結果と分析

1回目(平成29年度)

1回目はある意味実験的な試みだったので,結果についてそこまで詳しく分析する必要はありません。

この結果を受けて2回目で修正が行われたため,ここでは問題視された点を述べるに留めます↓

国語の課題

  • 記述式で完璧な解答をした生徒は0.7%。無回答が6.6%いた
  • 30%の問題で正答率が50%を切っていた

数学の課題

  • IAの記述3問の正答率はそれぞれ2.0%,4.7%,8.4%となっており,無回答率は49.8%,57.0%,46.5%だった
  • 数学的な論理性の欠如がある生徒が見られた
  • 正答率が50%を切ったものは,IAで31.1%,IIBで24.4%含まれていた

英語の課題

  • リーディングは32.4%の問題で正答率が50%以下
  • リスニングではA問題で30.0%,B問題で40.0%の生徒が正答率50%以下

英語リスニングの全体的な正答率は低かったものの,すべての問題が難しかったわけではなく,第1問Bの問5のように90%近い正答率のものもありました。

参考までに,最低の正答率となったのは,A問題の第1問Bの問6(12.6%)とB問題の第4問Aの問21(3.2%)です。

 

2回目(平成30年度)

科目別に見られる問題の工夫や改善点については,先の大学入試センターのページ(「結果」の項目)から確認することができますが,資料が膨大であるため,各問題の特徴については目に留まったところだけを箇条書きにし,結果を簡単に述べてみたいと思います。

国語

  • 全部で5つの大問で,1問は記述式,4問が古文,5問が漢文
  • 100分で200点+記述式の評価で採点
  • 文学・古典の題材に加え,詩や故事成語と比較する問題が新傾向

第2回国語の問題

第1問がいきなり記述式だったので,面食らった生徒も少なくなかったでしょう。

数学

  • 無回答にならないよう,数式や短い文章で答えさせる出題
  • ICT(ソフト)や日常生活をうかがわせる場面設定
  • IAとIIBともに大問は5つで,どちらも70分100点満点

試行調査第2回数学の問題例

センター試験でお馴染みの見た目をした問題も多かったのですが,上の問題のように,実際の生活と数学の知識が結び付いた出題もありました。

英語

  • 読解の大問は6つで80分100点満点
  • 文章から質問に答えるための情報をいち早く読み取る能力が必要
  • リスニングも大問の数は6つを30分で100点満点
  • 1回読みの問題が第4問以降で出題,最難度(B1レベル)を誇る

リーディングでは第1問から以下のような問題が登場してきたので,センター試験しか受けたことがない世代からすれば驚きでした↓

試行調査第2回英語の筆記第1問

純粋な文法問題も見られません。

理科

  • 60分100点
  • 物理,化学,生物は大問数4,5,5で構成
  • 考察させる問題が多いがセンター試験と形式的には類似

試行調査第2回化学の問題例

日常生活や社会問題を元にした考察問題が意識的に多く盛り込まれている感はあったものの,特に大きく変わった印象は受けませんでした。

普通に勉強していれば解ける内容でしょう。

社会

  • 教科書で扱われない初見問題あり
  • 考察力が求められる出題が多い
  • 世界史Bと地理Bは大問5。日本史Bや現社は6つ。残りは4
  • 60分100点満点

試行調査第2回日本史の第1問

日本史Bや世界史Bでは,歴史の流れを問うといった,知識だけでは解けない問題が多かったように思います。

これらの結果は2019年4月に発表され,これまた資料が膨大なので詳細は省きますが,平均正答率などが科目ごとに算出されました↓

第2回試行調査の平均得点率や受検者数

今後工夫できることとして,平均正答率を50%に近づけ,得点の分布表は中央に集中するように調整するとのことです。

管理人
管理人
この方針は,実際の共通テストの問題を分析する際の基準にもなるので覚えておくとよいでしょう。

数学においては無回答(空欄)が目立ったようですが,これは問題文が長すぎて試験時間が不足した可能性が否めないようで,解答に時間を要する,問題発見から解決までの全過程を問う問題は極力減らし,過程の一部を問う問題を増やす方向で調整に入るようです。

学生側としては,自分の記述した答案と採点結果が一致するよう,より多くの例示や出題の工夫をして欲しいところですが,今回の結果をみるに,国語は7割,数学が8~9割程度の一致率でした(これは初回試験と同等の数値です)。

 

 

共通テストの試作問題について

ここまでは試行調査でしたが,ここからは学習指導要領の変更に伴う,共通テストの実施要項の動向に迫ります。

2025年1月に実施される試験から,科目内容に大きな変更があったわけで,6教科31科目だったものは7教科20科目になりました。

もっとも,新しい教科書を使って学んできている受験生がほとんどであるだけに,科目自体には対応できているのですが,対策に使える問題集や過去問が手に入らないわけです。

そこで,試作問題の出番となるわけですが,これは「令和7年度大学入学共通テストの問題作成の方向性及び試作問題等について」という名称で,2022年11月9日に公表されました。

その後の流れは

  1. 試作問題が発表になる(2~3年前)
  2. 実施大綱や実際の出題方法や問題作成方針が出る(1~2年前)
  3. 共通テストの実施要項が公表される

となり,今後も同様のものになることが予想されます↓

共通テストの実施要項の変更に伴う試作問題などの計画

試作問題は発表になって終わりではなく,それに関する有識者の意見なども随時反映されて更新されていくのが特徴で,一般からの意見も幅広く募集していたところが印象的でした。

 

 

まとめ

最後に,今回の試行調査・試作問題における,内容上の要点をまとめます↓

  • 試行調査は大学入学共通テストのひな型
  • 初回の調査は協力校内で行い,2回目は大学を使って大規模に
  • 記述式問題は国語と数学Iでのみ出題された
  • マーク式の問題にも新形式の出題が見られた
  • 英語の問題を筆頭に,問題の質が有識者の間で高く評価された
  • 英語のリスニングで1回読みの問題は特に難しかった
  • 国語の記述式問題の採点の一致率は7割と低かった
  • 試作問題は約2年前に公表され,本実施の意見募集が募られる

調査後のアンケートで「第1回目のプレテストが難しかった」と回答した生徒は全科目で50%を上回っていましたが,平均点はその分下がるわけですし,そもそも簡単に解けるようであれば試験の意味をなさないわけで,試験の難易度が高いことを極度に恐れる必要はありません。

とはいえ,平均正答率が50%にすることを目標に作り変えられるという話なので,今回みてきた試行調査よりも本番は易化するでしょう。

なお,上で赤字で示した部分は特に注意が必要で,直近の共通テストでは記述式問題の導入が見送られることが決定しました。

その理由の1つに,自己採点と実際の得点との一致率が低かったことが挙げられていたのは特筆すべきことです。

試作問題に関しては,変更になってから間もない段階で利用できる過去問の数は少ないので重宝することになるでしょう。

しかし,実際はその存在を知らない受験生も少なくありません。

最後になりましたが,これからの大学入試においては,頭を使って考える練習を普段から積んでおくことが重要になってきます。

時間制限が設けられた中で必要な情報を読み取る必要があったり,単なる知識では解けずに考察することが求められたりと,記述式の問題から逃げるわけにはいかないですし,私大入試や国公立の2次試験で記述式問題を目にすることが今後増えるでしょう。

そういった新しい問題に対応できるようになるために,たとえ本番がマーク式だからといって,記述式問題を避けることのないようにしてください。

選択問題を解いていても,選択肢をみる前にまっさらな状態で答えを考えるように工夫するだけでも,記述式問題を解くのと似た思考プロセスを経ることができるはずです。

色々と試行錯誤しながら,受験勉強を頑張りましょう!

  • この記事を書いた人
学校の教室

スタディサイトの管理人

通信教育の添削や採点業務に加え,塾や家庭教師を含めた指導歴は20年以上になります。東大で修士号を取得したのは遥か昔のことですが,教授から,数年に一度の秀才と評してもらったことは今でも心の支えです。小学生から高校生まで通じる勉強法を考案しつつ,お気に入りのスタディサプリのユーザー歴は8年を超えました。オンラインでのやり取りにはなりますが,少しでもみなさまのお役に立てれば幸いです。

-入試改革