2020年度の教育改革以降,中学生の学習スタイルは大きく変わりましたが,自宅での勉強法は従来のものとあまり変わっていない家庭も少なくありません。
ですが,使える教材,求められる資質・能力が増えた時代ですから,自宅での学習方法も変わるというのが当然でしょう。
とはいえ,学校では協働的な学びが中心に行われているので,自宅では個別最適化された学びに専念するという考え方は正しく,これは以前と大して変わっていません。
最近の各種教育関連イベントに参加して見えてきたことは,学校の教員がやるべきことと学生側が自主的に行わなければならないことは分けて考えるべきだということでした。
しかし,肝心なのは中学生が自宅で学習する際のアプローチです。
例えば,オンラインや生成AIを活用した学習法を採用し,令和時代に重視される科目を中心に学ぶことが考えられます。
実際,私も塾で未来ある生徒を指導をする立場にありますので,ここで一度,「令和時代に生きる中学生がどのように勉強していけばよいか」について整理してみることにしましょう!
令和の中学生も自宅学習を重視すべき
教育改革では,「協働的な学び」や「主体的・対話的で深い学び」といった聞き慣れない言葉が目立つ傾向にありますが,それはあくまで学校で教員がどのような指導法でもって授業をするかを示したものにすぎません。
中学生は,定期的に改訂される学習指導要領に即した内容の授業を受けることになるわけですが,新しい学び方をさせられたとしても,そのときのパフォーマンスが,各々がこれまでに身に付けた知識量に左右されることは明らかです。
科学的に思考,吟味し活用することを求められても,最低限の基礎知識がなければ決してうまくいきません。
もちろん先に挙げたような学びは,相手がいるときにこそ真価が発揮されるものなので,それを学校でやることは理に適っています。
小学生と違い,部活が放課後の時間の多くを占めるようになり,自由に遊ぶ時間といっても,口数が少なくても没頭できるスマホアプリが増えていますし,共働きの家庭も多く自宅での会話も減る傾向にあるために,自然状態では中学生が他人と議論を交わす機会はあまりなさそうです。
おまけに,学校での教育内容が他者とのコミュニケーションを重視したものに変わった関係で,従来の授業で教えていたこと,例えば教科書を読んで知識を得るようなことに割ける時間は減っています。
人によっては,「詰め込んだ知識は実社会では役に立たず,頭でっかちな人間を作ってしまう」といった声を耳にすることもあるでしょう。
しかし,教員の間では「そういった知識が前提として頭に入っているからこそ深い学びが可能になる」というのが共通認識となっています↓
つまり,これまで学校で教えていた内容は自宅で学生が責任をもって行うべき事となったというのが正確な理解で,学校ではそれらの知識を前提とした上で,発展的な内容(各教科や分野をまたぐような考え方の獲得や討論など)に時間を割くというのが,最新の教育改革の正しい捉え方です。
朗報としては,情報が簡単に手に入るようになった現代社会なだけに,時や場所を選ばず効率的に知識を得られるようになったことでしょう。
確かにゲームの操作一つ取ってみても,今の中学生はファミコン世代の大人では到底太刀打ちできないような技術を動画やウェブサイトから学び取っていますし,アイドルやマンガのキャラクターについてもSNSやアプリを駆使し,出演情報からプライベート事情まで本当によく知っているものです。
こうした世界には多くの誘惑があることも事実ですが,今後の中学生はそれを自らの意思で断ち切る方法について学ぶことまでもが期待されています。
次章から,どのような科目をどうやって勉強していけばよいかについて具体的にまとめてみることにしましょう!
優先科目を中心に勉強する
自宅学習の重要性についてわかっていただけたかと思いますが,中学生が独学で勉強すべきこととして,一体どのようなものが考えられるでしょうか。
教科書に書かれた内容を全教科満遍なく理解できれば最高ですが,それは現実的ではありません。
ここでは,学校の定期テストの成績を高く維持しながらも,将来的に大きく立ちはだかる大学受験や就職試験に役立つかどうかといった観点から,優先すべき内容を「英語・苦手科目・読む力・情報活用能力」の4つに絞って解説してみたいと思います。
英語
自宅学習において,最も優先したい科目は英語です。
特に「話す」や「聞く」機会が増え,英語を英語のまま理解するような教育が中心に行われるようになった中学校では,すでに従来の文法中心の受験英語を独学する必要性が高まっています。
加えて高校受験では,英検を取得しておくことで内申点に可算されるところも多く,今後有利に事を進めるためにはより高い級が必要となり,英検の準2級プラスも新設され,特に影響を受けるのが中学生です↓
一昔前は準2級に中学生が合格すると大喜びしていたものですが,最近は2級,はたまた準1級に中3で受かる生徒も出現するようになり,大学受験も含めて,偏差値の高い学校に入ろうと思った場合は,英語が得意でなければ話になりません。
文法に精通していないと手も足も出ないのが自由英作文ですが,公立高校を受験する際に大きな配点を占めることになりますし,MARCHを始めとする試験科目数が少ない上位私立大の中には一時期,学校のHPに「英語が得意でないと合格はほぼ不可能です」と書かれていたところがあったほどです。
それほどまでに,英語という科目はもはや普通にできる程度では不十分になってきていることは,もはや見逃せない事実として心に留めておいてください。
さらに,就職時においても,TOEICを始めとする英語の各種資格・検定試験の結果は高く評価されますし,就職試験で代表されるSPIのようなWebテストにおいても英文読解の問題が出題されるわけです。
めでたく会社に入っても,昇進などの条件に英語力が多少なりとも響いてきます。
自由になる時間がない社会人にとって,英語を入社後に勉強するのは実に大変なことです。
記憶力の著しい青年期に英語をできるだけ学んでおくことを,老婆心ながら強くおすすめします。
苦手科目
英語に関しては,平均くらいにはできていてもさらに得意にすることを勧めますが,内申点や模試の成績を上げるための勉強では,弱点科目をなくすことも忘れてはいけません。
つまり,英語以外の科目で平均点に届いていない科目を人並みにできるようにすることも,効率良く学習を進めていくためには優先すべき事項と言えるわけです。
そもそも,内申で2が付いてしまう科目というのは,みんなが知っている基礎的な知識を自分だけが知らずに間違えてしまっている場合がほとんどだったりします。
私の経験上,内申が2の科目を3にすることは比較的簡単ですが,4の成績を5にするのは同じ1上げるのでも大変さが全く異なるので注意してください。
中でも英語と並んで数学は知識の積み重ねが必要なので,苦手科目としている場合,できない原因がだいぶ初期の段階にあることが多いです。
塾においては,特に中学3年生になってから本格的に受験勉強をする場合,中学1年生の教科書レベルから始めることがよくあります。
自宅で高速学習する場合には後述するオンライン教育サービスが有効で,短期間で中学内容の総復習が可能になるので,積極的に採用してみてください。
読む力
最近注目を集めているのが「読む力」です。
これは,教科書などに書いてある文章内容を文字通りに理解する能力なのですが,その詳細についてはまだまだ未知の部分も多いため,具体的な勉強法は確立していません。
が,以下のような問題が解けない中学生の場合,周りと同じ教科書を使って勉強していても,吸収できる知識量が人よりも少なくなってしまうため,他人の指導を仰ぐ勉強法を採用するのが賢明かと思います↓
この問題の正答率は中1で23.5%,中2で30.6%,そして中3でも51.4%なのですが,答えは決まりましたでしょうか。
正解は①です。
こういった問題ができない中学生は読む力がないため,教科書をどんなに頑張って読んだとしても,書いてある内容を理解しきれなかったり誤解したりしてしまいます。
そのせいで現代文が全然解けないばかりか,他の科目で日本語で書かれた質問の意味すらわからないことが起こり得るわけです。
この能力はようやく最近脚光を浴びるようになりましたが,その影響は学問領域にとどまらず,マニュアルを読んだり相手の気持ちを理解したりといった,社会生活すべてに通じる能力とも考えられており,看過することはできません↓
情報活用能力
情報活用能力も読む力と同じく学力の根本部分を支えるものですが,情報モラルについて学ぶことがその一助となります。
ChatGPTに代表される生成AIについても中学生が活用することが大いに考えられ,AIが得意にしていることと不得意なことについて知っておくことは有用でしょう。
いわゆるクリティカルシンキングにも通じてきます。
情報活用能力については,中学だと技術の時間に学ぶことができる他,教科横断学習でも触れることになりますが,自宅で学ぶ場合は専用の教材を使う他,高校の情報Iの予習をするのもおすすめです↓
自宅ではオンライン教育や生成AIを活用しよう
さて,中学生の勉強の場として最も多くの時間が取れるのは自宅ですが,そこでの基本は独学です。
しかし,塾に来ている中学生を見ていると,参考書をただ闇雲に読むだけでは大変そうですし,人に教えてもらうことで「なんだ,こんなに簡単だったのか」と思ってくれるもので,みなさんもYouTube上で似た経験をしているでしょう。
先述したように「動画を観る」ことと「スマホを巧みに操作する」という2つは,現代の中学生にとって得意中の得意です。
ただし動画で学ぶ場合,内容の質であったり網羅的に扱っていることだったりを検討し,信頼できる動画を短時間で見つけ出さなければならないことは忘れてはいけません。
そのため,令和時代の自宅学習の基本は,質の高いオンライン教育サービスを利用することをおすすめします。
オンライン教育を利用すれば,通学時においても動画を視聴することが可能となり,短期間で大量の知識を効率的に習得することが可能です。
画面越しではありますが,一定基準を満たした講師が教えてくれますし,最近の学習指導要領に沿ったカリキュラムに更新され続けています。
確かに,人との対話を重視したりするのであれば,塾に通って自分に合った学習計画を立ててもらう方が良いかもしれません。
ですが,気楽に始められるのは明らかにオンラインの方で,基本的な知識を身に付けてから塾の門戸を叩いても遅くないです。
なお,自宅学習上で生じた疑問は生成AIが解決してくれます。
スマホにアプリを入れておけば,すぐに開けて音声入力もできるのでおすすめです。
独学した分野の小テストも頼めば作成してくれますし,学習計画も普遍的な案を複数提示してきてくれるので,それをヒントに自分で学習計画を管理することもできるでしょう。
自立的な学習ができることも,令和時代においては重要な資質・能力です↓
まとめ
以上,令和時代に生きる中学生に向けた勉強法のコツについて紹介してきました。
各章の要点を以下にまとめてみると,
- 昨今の教育改革で自宅学習の重要性が増した
- 独学で優先したいのは英語と苦手教科と基礎能力
- 読む力や情報活用能力がないと独学は難しい
- オンライン教育や生成AIを使って学ぶ
といった具合です。
なお,機械の操作についてはスマホやタブレットを操作できるだけでは不十分で,PCを使った操作にも慣れておきましょう(オンライン教育をパソコンで受けると一石二鳥です)。
これは,会社で実際に扱っている機材が,スマホのようなタッチパネル式ではないことが大きな原因で,以前企業の方の話を聞いた際も,新入社員に期待する能力の1つに挙げられていました。
最後になりましたが,こういった学習を可能にするためには,中学生一人一人が目標から逆算して勉強計画を立てられるようになることと,そのゴールの実現に正しく進んでいることを客観的にチェックすることが重要です。
このとき第三者の助けは必ずしも必須ではありません。
オンライン教育や生成AIを使って学んでいれば,自ずとその考え方は身に付きます。
本人自らが自立的になり,管理意識を持ちつつも,今後の人生で長い付き合いとなる独自の勉強法を身に付けることで,これからの中学生活を乗り切っていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。