入試改革の際には,大学受験生の英語力を測る民間テストの1つとして採用されていた「TEAP」ですが,英検やTOEICなどと比べると,その内容について詳しく知らない方が多いように思われます。
にもかかわらず,「みんなで次の回のTEAPを受けましょう!」などと学校から突然言われたりするわけですから,対策する学生の身にもなって欲しいものです。
実際,私の教え子もそのような目に遭ってしまったわけですが,今回の記事では,そんなTEAPの試験内容や対策の仕方についてまとめてみることにしましょう!
TEAPとは
TEAPとはTest of English for Academic Purposesの頭文字を取ったもので,TOEFLとその目的は同じように思えますが,実施対象が日本人それも高校生を対象としている点で,世界標準であるTOEFLとは異なります。
開発したのは,英検で有名な「公益財団法人 日本英語検定協会」と「上智大学」です。
後者については,最初に聞くと驚くかもしれませんが,輩出した英語の達人は数知れず,日本の英語教育界を牽引する有数の教育機関ですからね。
5年という歳月を経て,TEAPは開発されました。
その問題内容とレベルですが,TEAPにおける出題は,日本の学習指導要領において求められる英語力に準拠しているところが特徴です。
そのため,難易度は英検で言うところの準2級~準1級程度となっています。
参考ですが,高校卒業時の目安が準2級です。
なお,英検とTEAPのデータ比較の正確性については,実施団体がどちらも日本英語検定協会ということもあって信頼の置けるものでしょう(IELTSという試験も同様です)↓
逆にこのように言うと,「英検を受けるのとそう変わらないのでは?」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが,文章や状況がすべて大学教育の中で遭遇するものを想定して作られているところがTEAPらしさなのだと理解してください。
試験情報(CBTは除く)に関してまとめてみると,以下のようになります↓
- 受験人数:1.5万人程度
- 受験回数:年3回(7月・9月・11月)。申込締切は1ヶ月ほど前
- 会場:26都道府県(北海道・宮城・秋田・福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・新潟・富山・石川・長野・静岡・愛知・京都・大阪・兵庫・広島・香川・福岡・長崎・熊本・沖縄)
- 受験料:15000円(英語4技能)または6000円(L&Rの2技能)
- 受験資格:高校1年生以上
なお,有効期間が「取得後2年度の間」と設定されているため,例えば2022年度に受けた場合,2023年度の入試か2024年度の入試にしか活用できません。
また,TEAPにはCBT(コンピューターで受けるもの)もあり,そちらは「試験日が6・8・10月で,会場は13都道府県,そして2技能の受験はできない」といった点が主な違いとなります。
試験時間や問題内容について詳しく見ていく前に,大学入試におけるTEAPの活用状況について次章で確認させてください。
TEAPの採用大学について
2017年度の入試では,TEAPのCBTが15校,TEAPでも70ちょっとの大学でスコア利用ができるに過ぎませんでした。
それが2020年度の試験では,前者が108校,後者は184校へと激増しています。
今では270以上の大学で入学試験の優遇を受けられるようです。
これにはいわゆる「TEAPスコア利用型入試」が含まれ,大学ごとに定められた基準を満たすことで,入学試験が有利に進められるのが特徴で,開発元の上智大学の例ですと,「TEAPスコア利用型」の一般選抜では,保有するTEAPの点数と入試での英語以外の得点を合計して合否が決まります。
もっとも,TEAPで良い点数が取れることが前提ですので,入試利用に関しては実際にTEAPを受けた後で調べてみてください。
ここでの理解としては,日東駒専やMARCHに始まり,はたまた早稲田においてもTEAPの利用が可能な学部・学科が存在し,うまく使うことで合格可能性を高められるということだけ押さえておきましょう。
ちなみに,結果については1ヶ月が経った辺りに送られてきます(ウェブからも確認できます)↓
上はTEAP CBTの成績表の例ですが,TEAPが400点満点(各技能20~100点)であるのに対し,TEAP CBTは800点満点(各技能0~200点)でスコアが計算され(E),それに対応するCEFRのレベル(F)とアドバイス(H)が書かれている点はTEAPと同様です。
なお,Iの位置に表示されているスコアは「CSEスコア」と呼ばれるもので,英検やIELTSなどと比較する際に役立つでしょう。
実際の大学に提出するのはEにあるスコアになることが多いのですが,英検2級に合格できるレベルの場合,TEAPで220~300点,CBTだと420~600点が見込めます(以下の表のB1レベル相当)。
ちなみに,英検準1級はCEFRのB2レベルに相当しますので,難関大私大のTEAPスコアで求められることの多い「L&Rが70以上」というのはまさにその基準を指すことになるわけです↓
TEAPの試験時間
それではTEAPの試験内容について詳しくみていきましょう!
まずは試験時間からです↓
4技能で受験すると,午前9時から最大午後17時すぎまでの約8時間も拘束されてしまう,1日がかりの試験です。
とはいえ,その間に昼ご飯の休憩が30分ちょっと,さらには最後のスピーキング試験は14時20分から順次開始で1人10分で終わるわけですから,試験自体は全部で約200分(3時間20分)です。
一方,TEAP CBTの方は,そのような待ち時間もなく,以下のような時間割で行われます↓
TEAPの問題内容と対策
ここではTEAPのものを中心に説明していくことにし,CBTとは問題数の点などにおいて多少の違いがあることにご注意ください。
また,問題の詳細についてはすべてTEAPのHP上に記載されており,詳しくは以下で確認できます↓
リーディング
リーディングパートは全部で70分,問題数は60問でマークシート式です。
Part1(20問)は語彙問題,Part2(20問)は図表やメール,短文の読み取りが主で,Part3(20問)は長文の読み取りとなります。
Part1がこのような感じで始まり↓
以下のような短文を読んで答える問題がPart2です↓
Part3は長文問題で↓
Part3のBともなれば,共通テストを思わせる図表が出てくる長文問題が出てきたりもします。
考えられる対策についてですが,以下の3つが有効です↓
- 語彙問題は教科書に出てきたものを例文ごと覚え,決まり文句はそのまま使えるようにする
- 英文と選択肢の内容が正確に読み取れるようにする
- 段落ごとの要点を把握し,ディスコースマーカーやキーワードから文章の流れを追う練習を行う
これは,単語は教科書レベルのものをしっかりと覚え,短文や精読の練習から始めて最終的には長文の論理展開も追う練習を行うことを意味し,大学入試のための勉強とも内容的に重なります。
リスニング
リーディングから休憩を挟まず,続けてリスニングパートが始まります。
時間にして50分,問題数は50問でこちらも形式はマークシートです。
短文パートと長文パートの2つに大別され,Part1と2で25問ずつとなります。
最初のPartはこのような問題が見られ↓
長文を扱うPart2ではこのような英文が流れます↓
上の長文に対して,質問は4問ありました↓
なお,英語の音声は1回だけしか流されないので注意してください。
対策ですが,教科書を使うでも構わないので,とにかく日頃から英語の音に慣れておくことが重要です↓
- リスニング教材(学校で配布されたもの・英検の教材・ラジオ英語など)を毎日聴く
発音記号について理解が怪しい方は,英語発音の読み方と発音のコツも参考にしてください。
リスニングは,まとまった期間,毎日聴くようにするとすぐにスコアがアップします。
教材の確保と日々の習慣づけが大変ですが,それさえクリアしてしまえば後はさほど大変ではありません。
何より,声を出すことで勉強中に眠くならないのが良いですね!
ライティング
試験時間にして70分,問題数は要約とエッセイが1問ずつ,そしてこちらは記述式となります。
要約問題は,説明文や評論文を読んでその内容を70語程度に要約するものですが↓
2つ目のエッセイでは,論点を把握した上で自分の意見を含めて200語でまとめなければなりません↓
1つ目の要約問題については,リーディングのときにも述べた,
- 論理展開を把握するための勉強
が役立ちます。
また,2つ目の対策としては,
- 問題と解答例を見て,どんな模範解答を書けばよいのか知る
だけでも,かなり見通しが明るくなるでしょう。
大学で学ぶようなアカデミックライティングになりますと,最初の段落で「序論」,2~3段落目で「自分の意見とそのサポート」,4段落目で「結論」を書くようにしますが,TEAPの場合はそれとはやや異なり,
- 全体のテーマや状況について書く
- 1つ目の文の要約
- 2つ目の文の意見をまとめる
- 自分の意見を理由付きで書く
といった流れになっています。
文法ミスは確実に減点されますが,内容こそが一番大切なので,まずはしっかりと書きあげることに専念し,最後に通しで読みながら文法的におかしいところがないかチェックしていくのが良いでしょう。
問題文に何を書くべきかは細かく指定されているので,それに従って1段落ごとに答えを書いていけば模範解答に近づくように思います。
スピーキング
試験時間は約10分で,問題数は全4問,英検と同じく面接形式です。
今のところ,尋ねられる内容については以下のようになっており,試験内容は録音されて採点時に使われます↓
- 受験者自身について
- 試験監督にインタビューする
- あるテーマについてスピーチを行う
- Q&A
Part1から質問責めになるのが辛いところですが,試験時間の短いスピーキングではこのような形式が普通です。
その場の雰囲気にいち早く適応してください。
以下はその時の質問例です↓
Part2ではトピックカードが配られ,「試験官を何かに見立ててインタビューする」というユニークな出題がなされます。
以下は,試験官を「高校教師」と想定して質問を考えた例です↓
ある程度慣れてしまうと,尋ね方のコツがわかってくると思うので,自分なりの質問パターンを身に付けてみてください。
Part3はカードに書かれたトピックについてスピーチをします↓
最後は時事的な問題についての質問が複数飛んできますから,覚悟をしておきましょう↓
これらの質問に答えるためには,普段から英語を話す練習をしておくことが肝要です。
大人の私たちでも,突然外国人に道を尋ねられると何も言えなくなってしまうことがありますからね。
TEAPのスピーキングテストにおいて最も良くないことは黙ってしまうことです。
日ごろからしっかりと声を出す練習を積んでおきましょう!
まとめ
以上,TEAPとTEAP CBTについて,理解を深めることができたでしょうか。
試験の時間配分や問題内容,加えて普段の対策の仕方について簡単に学んでおくことだけでも,確実にスコアはアップするように思います。
なお,市販されているTEAP対策本につきましては,2015年あたりの旺文社のものを筆頭に10数冊は確認していますが,2020年になってもいまいち新刊が発売されてこないのが気になるところで,もし良いものが見つからなければ,受験勉強を頑張るか似た形式を持る試験用の参考書で練習しましょう。
最後の章で具体的な対策についてみてきましたが,TEAPの基本方針としては「バランス良く英語力を身に付ける」ことに尽きます。
英検でもそうですが,特殊な専門用語(ある業界でしか使われないような単語)は目にしませんし,文法問題も早慶の入試で出てくるような重箱の隅をつつくようなものも出題されません。
とはいえ,普段対策しにくい「リスニング・ライティング・スピーキング」については,普段からどれだけ英語を使っているかによってスコアが大きく変わるものなので,付け焼刃的な対策を施した程度では大した結果には繋がりません。
特にスピーキングやライティングについては学習相手が必要となりますので,学校の先生やクラスメイトを練習相手に指名できるようだと最高です。
とはいえ,何も話せず書く英語も全く浮かんでこない状態では,実戦練習もなにもあったものではありません。
そんなときに有効だと思えるのは,オンライン教材を用いて英語を毎日アウトプットすることです。
具体的には英検対策について語った記事が参考になるかと思います↓
TEAPの本番までそれほど時間が残っていない場合でも,特にライティングの解答例だけは確認しておいてください。
図表を読み取って200語にまとめる問題では,「こんな解答でも点数になるのか!」ということに気が付くだけでも,スコアは大きく変わります。
色々語ってきて何ですが,普段,学校の勉強に付いていくことができている真面目な生徒であれば,ほとんど対策しなくても意外に良い点が取れてしまうのもTEAPの特徴です。
過剰に恐れる必要はなく,残された時間でわずかでもスコアアップに繋がるよう,時間の許す限り,最後まで頑張ってみてください!
お読みいただきありがとうございました。